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山本 隆広(関西大3年)投手 172/77 右/左 (桜宮出身) 





 「久々に当たらない速球をみた」





 久々に、速球が来るとわかっていても当たらないストレートを見た気がする。そんな球を魅せてくれたのは、神宮大会・創価大戦でリリーフで登場してきた 山本 隆広 。リーグ戦では先発が多い投手だが、リリーフでの全力投球で魅せてくれた。わかっていても当たらない投手といえば、大石 達也(早大-西武)以来の右投手かもしれない。


(投球内容)

小さな身体ながら、全身を使って投げ込んでくる力投派。

ストレート 145~149キロ 
☆☆☆☆★ 4.5

 この試合ではリリーフということもあり、球速は145~149キロを連発。高めに抜け気味に浮くことも多いのだが、面白いように空振りを奪えていた。コマンドという意味では低いが、ボールの勢いや質という意味ではA級のストレートを投げられる投手だろう。

変化球 スライダー・フォーク・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 スライダーのブレーキ自体は悪くないし、チェンジアップやフォーク系の球も悪くない。ただしこの神宮大会の創大戦においては、変化球も微妙に決まらないケースが多かった。秋のリーグ戦での成績を見てみると、奪三振率は1イニングあたり0.71個とそれほど多くはない。そうやってみると、変化球の精度はそれほどは高くないのではないのだろうか。

その他

 クィックは、1.05秒前後とまずまずだったが、牽制やフィールディングに関してはよくわからず。

(投球のまとめ)

 非常に気持の強さを感じさせる投手で、プロならばリリーフタイプではないのでしょうか。先発ではここまで荒れ荒れではないと思いますが、この秋季リーグ戦の四死球率は61.3%。こういった数字からも、四死球は多々ある投手なのだということを実感させられる。





(投球フォーム)

 今回は、この当たらない速球を生み出すメカニズムを考えてみたい。力投派ながら、フォームの入りは静かにゆったり入ってくる。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばされており、お尻は適度に一塁側には落とせています。そういった意味では、カーブで緩急をつけたり、フォークのような捻り出して投げる球にも無理はありません。

 「着地」までの粘りも適度にあり、けして淡白なフォームではありません。身体を捻り出す時間も適度には確保できているので、キレのある変化球や大きな変化のある球の修得も期待できます。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドにはボールが散りやすいはず。気になるのは、足の甲が地面から完全に浮いてしまっている点で、ボールが高めに抜けてしまうのもこのせいではないのだろうか? 「球持ち」は悪くないのだが、指先まで神経を通わせてコントロールをつけるというよりも、強烈なバックスピンを生み出すことを重視しているように感じられる。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻は落とせているのでカーブやフォークといった球種を投げても、窮屈さは少なく肘への負担は少ないのでは?むしろ気になるのは、腕の送り出しの際にボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がるので、肩への負担が大きいということ。またかなりの力投派でもあるので、消耗も激しいことが予想される。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそこそこあるので、特に合わせやすいことはないだろう。しかし「開き」は並ぐらいなので、フォークなどが見極められないかは微妙。それでもボールが見えてからでも、非常に回転の好い球質で打者の空振りを誘っている。

 腕が短い体型のせいか? 腕を強く振っている割にはあまり身体に絡んで来ない。またリリースあたりで後ろから見るとがに股であり、「体重移動」は悪くないもののエネルギーロスをまだまだしている可能性は否定できない。何故そう言えるかというと、これだけの速球を投げる投手にしては、地面の蹴り上げが思ったほどではないからだ。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、極端に悪い部分はない。しかし物凄く優れている部分もないので、まだ発展途上という見方もできる。足の甲が浮くことでの高めにボールが抜けやすい球筋、角度を付けすぎることでの肩への負担などが気になる材料。しかし投球の引き出しは、今後も増やしてゆくことが期待できるフォームとなっている。


(最後に)

 2年秋からの3シーズンで、15勝3敗という圧倒的な成績を先発でも残している。しかしプロでは、そのハートの強さ・ボールの威力でリリーフでの起用が想定される。けして上背がある投手ではないが、ガッチリもしているし短いイニングならば面白いのではないのだろうか。何よりあの当たらない速球は、プロの打者でも容易には捉えられないのではないかというワクワクするものを持っている。最終学年では、どのようなプレーを魅せてくれるのか今から楽しみな1人である。


(2017年 神宮大会)