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中村 稔弥(亜細亜大4年)投手 177/86 左/左 (清峰出身) | |
中村 稔弥 という投手をみていると、何が明確に好いのか、何処が物足りないのか、なかなか説明が難しい特殊な投手だといった気がする。確かに抜群の安定感を示し続けてきた選手なのだが、その理由を説明することは極めて難しい。 (投球内容) テイクバックを小さくとることで、打者のタイミングを図り難くしています。それでも彼がもし右投げだったならば、ドラフトで指名されることはなかったでしょう。 ストレート 常時135~140キロ強 ☆☆☆ 3.0 リーグ戦のときには先発だということもあり、135~140キロぐらいのことが多い。この球速では、左腕とはいえドラフト指名選手としては平均以下の球威・球速だろう。また余計な四死球こそ出さないが、それほど相手打者がボールに苦労している感じもしない。そのためコースに散らしたような球でも、簡単に合わせられることも少なくない。ましてプロの打者相手では、今のストレートでは厳しいのではないのかと思われる。 それでもリリーフで登板したときには、コンスタントに140キロ前後を記録し140キロ台中盤まで記録します。その時のボールの勢い・球威はそれなりに感じられ、むしろこの選手はプロではリリーフ向きなのではないかと思う部分があります。しかし力を入れて投げると、バランスを崩し制球を乱すことになります。そのようなことを考えると、身体はへの負担や投球の安定感という意味では、一概にリリーフが好いというのも微妙です。しかしそのぐらい力を入れたボールじゃないと、プロの一軍打者を打ち取るのは厳しいのではないのでしょうか。 変化球 カットボール・スライダー・ツーシーム・カーブなど ☆☆☆ 3.0 左打者には外角にカットボール、右打者にはカットボールと小さく外に逃げるツーシーム系のボールを織り交ぜてきます。また余裕のあるときには、緩いカーブもみられます。また左打者の外角に低めのボールゾーンに逃げてゆくスライダーもあるので、この球のキレは悪くありません。ボールになるスライダーを上手く振らせているときは良いのですが、そこまで追い込む前に打たれていることも少なくないように思うのです。 ただしこの投手、それほど左投手の割に左打者を得意とはしていない感じ。むしろ投げづらそうに投げていて、さらに被安打も少なくありません。左の先発・左の中継ぎという狙いで起用するよりは、左右関係なく抑えられるかで判断すべき選手ではないのでしょうか。 その他 クィックは、1.15~1.25秒ぐらいと左腕としては平均的。牽制も適度に間を外すために入れることも多いのですが、強めに投げてもそれほど走者を刺すというほどのものではありません。ランナーを背負うとボールを長く持って相手を焦らすなどの、そういった危険回避能力には優れています。 (投球のまとめ) 元来は、自分の「間」を大切にして打ち取る先発タイプだと思います。しかし球威・球速が明らかに物足りない先発だと、プロのローテーションを任されるかは微妙です。またリリーフだとある程度球威・球速が上がるぶん抑えられる可能性はあるのですが、その時にフォームのバランスを崩したりして制球を乱れがち。そうなると持ち味の「間」や投球術がいかせず、コントロールも不安定になるデメリットも生じます。そういった意味では、どちらが良いのか悩ましい選手ではあるように思います。使い勝手が良さそうに見えて、使い所が非常に難しくなる可能性があります。 (投球フォーム) では投球フォームの観点から、プロで通用するような技術の持ち主なのか検討してみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合は)に落ちずバッテリーライン上に残ってしまいます。そのため身体を捻り出すのに必要なスペースが確保できず、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さないフォームです。 それでも「着地」までは、地面に着きそうなところまで足を降ろしてから前にグイっとひと伸びでします。そのため身体捻り出す時間は確保できており、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種でなければ、キレや曲がりの大きな変化球の習得も期待はできるでしょう。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへのコントロールはつけやすい。足の甲での地面への押しつけもできており、ボールも上吊り難いのではないのだろうか。「球持ち」自体も粘っこいというほどではないが、指先の感覚は悪くないように見えます。投球フォーム全体もバランスはとれており、制球を大きく乱す要素は少ない。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻を落とせるフォームではないものの、カーブもそれほど投げないしフォークのような球種も見られない。そういった意味では、窮屈さを感じることは少なく、肘への負担は少ないのではないのだろうか。 グラブを持っている肩が下がり、ボールを持っている肩が上がり気味ではあるのだが、これも負担がかかるといったほどではないのだろう。まして力投派でもないので、疲労も溜め難いと考えられる。問題は、自分のキャパ以上でリリーフの場合に投げようとした時に、負担が生じる可能性があるということ。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りがありタイミングが図り難いだけでなく、球の出どころも隠れており打者としては打ち難い。 腕も適度に振れて身体に絡んでおり、空振りは誘いやすいのではないのだろうか。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできており、どちらかというキレというよりも球威型の球質だと言えよう。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」に、大きな欠点は見当たらない。制球を司る動作にも欠点はなく、故障のリスクも過度な起用がなければさほど気にすることはないだろう。カーブで緩急をフォークで空振りをといった投球は作り難いが、他の球で代用してピッチングの幅を広げてゆくことも可能なはず。物凄く打ち難いフォームではないが、プロでも通用するだけの実戦的なフォームではないのだろうか。 (最後に) プロの先発では物足りず、中継ぎだとフォームを乱し持ち味が損なわれるリスクがあるという不安材料は残る。理想なのは、普段の投球をベースに、パワーアップを遂げることができればといった感じはする。相手にとっては、なかなか気持ち悪い存在でもあり、うまくハマれば5位でも即戦力になれる可能性を秘めたサウスポー。美味しい指名となるか、全く通用しないかの判断には迷うが、試してみる価値は充分あるのではないのだろうか。その半信半疑なところが、これだけの実績を残してきたサウスポーにもかかわらず、5位指名にまで残っていた理由ではないのだろうか。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2018年 秋季リーグ戦) |