18dp-25





上茶谷 大河(DeNA)投手のルーキー回顧へ







 上茶谷 大河(東洋大4年)投手 181/85 右/右 (京都学園出身)





「この春一番の出世株」 





 全国の大学生の中でも、最終学年で最も評価を急上昇させたのが、この 上茶谷 大河 ではないのだろうか。昨年の大学選手権では、わずか1/3イニングで打たれて降板。あれから一年、チームのエースとして全国の舞台に導くまでに成長した。今や有力な1位候補というだけでなく、即戦力NO.1候補として複数球団からの1位競合が予想されるまでになった。


(投球内容)

非常に体重移動が滑らかな、キレイなフォームで投げ込む正統派。

ストレート 常時140キロ台~150キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 3月に行われた楽天との交流戦では、150キロ台を記録。その後も駒沢大とのリーグ戦で奪三振記録を樹立した試合でも、先発ながら150キロ台を表示した。しかし普段の投球を見ていると、140キロ~中盤ぐらいの球速帯で構成されている。時々必用に応じて力を入れると、140キロ台後半~150キロ台が計測するといったタイプ。けして球威・球速で圧倒するタイプではなく、回転の好いボールの伸びや質で勝負るタイプだと言えよう。どちらかというと、低め膝下に決まるということはなく、両サイドに散らしつつ(内角を厳しく突くことも)、その高さは真ん中~高めに集まる。しかし彼の持ち味は、高めの速球で空振りを誘うことにあるのではないのだろうか。

変化球 カットボール・スライダー・チェンジアップ・スプリットなど 
☆☆☆☆ 4.0

 ストレート以外だと、小さくズレるカットボールとチェンジアップでカウントを整えてくる。それだけでなくフィニッシュボールとして、右打者の外角低めのボールゾーンに逃げてゆくスライダーを振らせたり、小さく高速で沈むスプリットでも三振を奪うことができるのだ。この投手は、一つの球を続けるというよりも、こういった球を巧みに織り交ぜたコンビネーションで投球を組み立ててくる。

その他

 牽制は、走者を刺してやろうという鋭い牽制を入れてくる。クィックは、1.15秒~1.20秒ぐらいと並。運動神経に優れているというよりも、野球センスに秀でたタイプ。

(投球のまとめ)

 ゲームメイクをできるだけの、センスと投球術を持っている。それもカウントをしっかり整えつつ、ストレート・スライダー・スプリットと3つのフィニッシュボールを持っている強味がある。そのため今春のリーグ戦では、75回1/3イニングで93奪三振という極めて高い奪三振率を誇る。大学選手権の九州産業大戦では、変な当たりでランナーを出したり、審判との相性が悪くストライクを拾ってもらえなかったりとリズムに乗れなかった。リーグ戦の疲れもあったのだろうが、ちょっと残念な全国大会の登板となり一年前のリベンジとはならなかった。





(投球フォーム)

 ランナーがいなくてもセットポジションから投げるのですが、滑らかな体重移動や柔らかい身のこなしが目を惹きます。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足はやや地面に向け気味なのですが、お尻の一塁側への落としは悪くありません。したがって身体を捻り出すスペースが確保できているので、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化球を投げても無理はなさそうです。

 「着地」までの粘りもよく、身体を捻り出す時間も確保。キレや曲がり幅のある変化球の習得も可能です。実際各変化球のキレも好いですし、スライダーの曲がりも大きいです。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲の地面への押しつけがやや浅いところはあるので、そのへんが球筋が真ん中~高めに集まりやすい要因かもしれません。「球持ち」がよく、指先の感覚にも非常に優れたタイプなのではないのでしょうか。そのため微妙なコントロールがつき、ボール球を振らせたり四死球が少ないのだと考えられます。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は落とせるフォームであり、カーブは見られませんし、フォークよりも負担の少ないスプリットを武器にしています。そういった意味では、肘への負担も少なめなのではないのでしょうか。

 腕の送り出しにも無理がありませんので、肩への負担も少ないと考えられます。ただしこの春は、元々のシーズン通しての経験がないなかで、エースとしてマウンドに上がり続け、多くの球数を投げたことで疲労は大きかったと考えられます。個人的な意見ですが、春はもう休んで欲しいなというのが率直な感想です。反動で、秋のシーズンのパフォーマンスが心配されますので。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までも粘りも作れている上に、身体の「開き」も平均的。それほど、合わせやすいというほどのフォームではないように思います。しかし素直なフォームではあるので、やはり甘く入ると苦になく打たれてしまうことがあります。そのへんは、九産大は逃してはくれませんでした。

 腕は強く振れて勢いがあるので、打者からは空振りが誘いやすい。またリリースをギリギリまで我慢できるので、しっかり体重を乗せてから投げ込むことができています。ボールに伸びがあるだけでなく、ある程度の球威も兼ね備えているところは好いところかと。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」とともに、大きな欠点がありません。「開き」こそ並ですが、あとは非常に粘っこい動作ができて我慢できています。

 故障のリスクも高くありませんし、制球を司る動作も悪くありません。投球の幅を広げて行ける下地もありますので、今以上にいろいろな球で、引き出しを増やすことも可能性でしょう。フォームとしては、お手本にしたいぐらいの完成度の高さがあります。


(最後に)

 今後日本代表などに選出されてしまったりすると、春の激闘のまま休むことなく、秋のシーズンに突入しないといけない。そうなってしまうと、秋のシーズンでは春ほどのパフォーマンスは期待できないのではないかと危惧します。

 そういった心配は別にして、純粋にこの春のパフォーマンスから判断すれば1位指名の可能性は極めて高いです。秋も順調ぶりをアピールできれば、開幕ローテーション候補として1位重複も充分に期待できます。それだけの技術、ボールの力、センスを持った選手ではないのでしょうか。



蔵の評価:
☆☆☆☆ (1位指名級)


(2018年 大学選手権)