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甲斐野 央(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







甲斐野 央(東洋大4年)投手 185/75 右/左 (東洋大姫路出身)
 




 「ソフトバンクだからいい」





 甲斐野 央 は、東洋大入学後はほとんどリリーフ専門にやってきた。先発への適性がないとは思わないが、しかしそれを一年目から期待するのは難しい。そういった意味では、慣れ親しんだリリーフでの起用を前提に獲得するチームがいい。その条件にピッタリだったのが、指名されたソフトバンクだったのである。甲斐野が指名されるとしたら、このチームが一番良かったのではないかと私自身は思っている。


(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。この秋も生で彼を見てきたので、その辺も書き込んでみたい。

ストレート 常時140キロ台後半~150キロ台中盤 
☆☆☆☆ 4.0

 観戦したどの試合でも、ほぼ150キロ台中盤を記録してきます。球速という意味では、今のアマチュア界で一番速い投手ではないのでしょうか。しかし指先の感覚が悪いのか?結構ばらついて、細かいコントロールがありません。この秋も15回1/3イニングを投げて四死球は10個とかなり悪い。カウントを悪くして、力んで力技でいったストレートを打たれるというケースを、今年何度もみました。

 またコントロールが悪いだけならば良いのですが、そのストレートが意外に苦になく打ち返される。アマレベルの打者にこれだけ対応されてしまうのですから、プロの打者は当然対応して来るでしょう。下級生の頃は被安打も少なめだったのですが、この秋は15安打とほぼ投球回数と同じぐらいに打たれています。

変化球 スライダー・フォーク・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 小さく横滑りするスライダーでカウントを整え、緩いカーブで緩急。さらに縦の変化球で、空振りを誘ってくる。投球回数と同等~それ以上のペースで三振が取れる。この選手は、あくまでもストレートを意識させておいて変化球で仕留めるというタイプの投手だろう。それを大学では、勝負どころでストレートにこだわり過ぎて打たれている印象が強い。

その他

 クィックは春まで1.15秒前後だったのが、この秋は1.05秒前後と0.1秒ぐらい早くなっている。逆にランナーを背負うと、早く投げようという意識が強すぎてタイミングが合わせやすくなっていたのかもしれない。牽制もランナーを出すと執拗に入れるところがあり、うまいのだが投球に集中できていない印象を受ける。フィールディングでは、落ちついてボールは処理できているのだが。

(投球のまとめ)

 被安打が投球回数並にあり、四死球も多いのでランナーを背負う場面が多い。その割に防御率が1点台で済むのは、やはり三振がとれて切り抜けられるからではないのだろうか。だいたい打たれている時は、変化球を打たれるというよりも無理に力勝負した速球を打たれているケースが多い。ストレートを魅せておいての変化球という投球パターンを重視して、速球へのこだわりを捨てられれば、もっと安心して見ていられる投球になるのでは? 特に力みからボールの質が低下しているので、そのへんも変化球があるのだという思いが強くなれば、無駄の力も抜けるのではないのだろうか。


(投球フォーム)

春は成績から検証したので、一年ぶりにフォームを分析して問題を考えてゆきたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の一塁側への落としは、昨年フォーム分析をした時よりもよくなっている。甘さは残すものの、ある程度落とせるようになっている。体を捻り出すスペースはある程度確保でき、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種にも無理がなくなってきた。

 しかし「着地」までの粘りは平均的で、それほど粘りは感じられない。そのため体を捻り出す時間は並で、いろいろな球種は投げられても、キレや曲がり幅は平凡であり決め球になるほどの球が習得できるかは微妙だろう。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドへのコントロールはつけやすい。足の甲でも地面を捉えることができており、ボールが上吊るのを防げている。気になるのは、指先の感覚が悪くリリースが安定しない点。ボールが押し込めずリリースが早めなので、どうしても繊細なコントロールがつけ難いのではないのだろうか。それでも土台となる部分は悪くないので、変に力まなければストライクゾーンにはボールが自然と集まってきそうなものなのだが。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻がある程度落とせるようになっていることで、カーブやフォークを多少混ぜても肘への負担は軽減しているとは言える。また腕の送り出しにも無理は感じず、肩への負担も少ないのではないのだろうか。無理にストレートで仕留めに行く時は力投派に豹変するものの、普段はバランス重視のフォームなのでそれほど疲労も溜まり難いのではないかと思っている。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りが平凡な上に、球の出どころが見やすいフォームになっている。そのためこれだけのボールを投げていても、打者は意外なほど対応してくる。

 腕はしっかり投げ終わったあと腕に絡んでくるの、腕の振り自体は速球と変化球の見極めは難しいはず。気になるのは、「開き」が早いことで、いち早く球筋を読まれてしまってフォークなどが見逃されやすいこと。ボールへの体重の乗せは発展途上であり、さらに「球持ち」が良くなればグッと体重が乗って、打者の手元までの迫力・勢いが増すと考えられる。これだけの球速を誇りながらも、「体重移動」は発展途上なのだ。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に課題があり、あとの部分も並で発展途上なのがわかった。お尻が落とせるようになり、故障へのリスクが減ったこと。元々コントロールを司る動作自体は悪くないので、指先の感覚を意識して投球ができるようになると精度が上がって来る可能性はある。球種自体は一通り投げられるフォームではあるが、今後武器になるほどの変化球を覚えられるかが1つ大きな鍵となる。


(投球のまとめ)

 この選手は変化球の曲がり自体は凄いと思わないのだが、その精度は低くない。速球は破格の球速の割に、苦になく合わされてしまう。この辺を、速球を意識させておいて変化球でも仕留められるのだという切り替えがプロ入り後できるかに懸かっている。そういったこだわりが早い段階でできれば、一年目からリリーフでならば即戦力になりえる可能性を秘めている。もちえるスペックは高いし、器用な選手ではあるはず。考え方次第で、この選手の成績は大きく変わってきそうだ。評価的には、春と据え置きで最終評価としたい。プロの環境に慣れてきたら、先発での適性もあるのではないかとみている。


蔵の評価:
☆☆☆☆(1位指名級)


(2018年 秋季リーグ戦)









甲斐野 央(東洋大4年)投手 187/76 右/左 (東洋大姫路出身) 
 




                   「いまアマチュアで一番速い」





 今シーズンから東洋大のリリーフにまわった 甲斐野 央 。登板する各試合では、150キロ~150キロ台中盤を安定して叩き出す。恐らく、球速という意味ではアマで随一の存在だろう。しかしその速球は、思ったよりも簡単に打ち返されるのに驚かされる。その理由について、考えて行きたい。


(投球内容)

小さめなテイクバックから、投げ込んでくる。

ストレート 常時150キロ前後~150キロ台中盤 
☆☆☆☆ 4.0

 球速的には破格で、ボールにもそれなりに勢いは感じさせる。しかし合わされやすいフォームのせいか? 打者は思いのほか苦にならないのである。またリリーフでめいいっぱい投げようとすると、先発の時よりもコントロールがアバウトになる。両サイドにはボールは散っている、やや高めに集まりやすい。そのため高めに浮いた球を、痛打される場面も少なくないのだ。澤村拓一(中央大-巨人)が、破格の球速を投げながらスコンスコン打ち返されていたのを思い出させる。

変化球 スライダー・フォーク・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 元々先発のときには、変化球とのコンビネーションで抑えるタイプだった。小さく手元で切れるスライダーを軸に、縦に落とすことも少なくない。リリーフだと見られないが、先発のときにはブレーキの効いたカーブも持っている。スライダーが高めに多少甘く入るときがあったり、フォークがストンと落ちるというほど絶対的なものはない。

その他

 牽制が、非常に上手い。本人も自信を持っているのか、ランナーを出すと執拗に入れてくる。クィックも1.15秒前後と基準レベルで、フィールディングも落ち着いて処理できている。運動神経に優れているというよりも、野球センスに優れたタイプ。投球以外の部分にも、意識をもって取り組んできたことが伺える。

(投球のまとめ)

 元来は、微妙なところを突いたりしながら、変化球をうまく交えて抑えてくる先発タイプだと思います。チーム事情でリリーフをやっていますが、力で抑え込もうとして雑になっているのが気になります。ストレートで抑え込むタイプではないのに、甘く入った速球を打たれる場面が多いわけです。将来的には、先発で勝負していって欲しい選手だと思っています。


(成績から考える)

 オフシーズンで作成した寸評では、フォーム分析を行いました。今回は、この春残した成績から傾向を考えてみましょう。ちなみにこの春の成績は

9試合 1勝0敗 20回 10安 8四死 27奪 防 1.80

1,被安打はイニングの80%以下 ◎

 被安打率は、50% 。結構痛打を浴びている印象ですが、素晴らしい数字なのがわかります。昨秋先発をしていた時は、48.6% ですから、先発でもリリーフでも被安打は大きくは変りません。速球を魅せながら、多彩な変化球が的を絞らせないことはできているのでしょう。

2、四死球は、イニングの1/3以下 △

 四死球率は40%であり、基準である33.3%以下にはなっておらず、ややアバウトなことがわかります。昨秋も同じ40%だったので、先発でもリリーフでも四死球率は変わらないことがわかりました。

3、奪三振は1イニングあたり0.9個以上 ◎

 奪三振率は、1イニングあたり1.35個と遥かに投球回数を上回ります。昨秋の成績では、1.14個であり、多少リリーフの方が三振を奪う確率は上がっています。そのへんは、めいいっぱい投げるリリーフならではという気がします。

4、防御率は1点台 ◯

 今春の防御率は、1.80 と基準は満たしています。しかしリリーフならば1.50位内、できれば0点台の絶対的な数字を残して欲しい気はします。昨秋は先発で、2.06で2位の成績でした。まだ数字の上では、絶対的に相手を抑え込むほどの投球はできていないことがわかります。

(成績からわかること)

 ほとんど、先発でもリリーフでも傾向が変わらないことがわかりました。またややアバウトな制球力に、絶対的な安定感がないことは数字の上からわかってきました。この辺が、時々甘い球を痛打されるという印象に繋がっているのだと感じます。


(最後に)

 確かに破格の球速、適度なまとまりと変化球を持ち合わせています。しかしながらまだ未完成の投手であり、絶対的な領域には達していません。実績的には東洋3羽ガラスでも一番だった選手ですが、この春は3人の中で最も地味な役回りでした。それだけに大学日本代表では、確かな実績を残してアピールして欲しいところ。

 先発でもリリーフでも、一年目から一軍でやれる力があると評価しています。先発ならば6~8勝ぐらい、リリーフならば7,8回あたりを任され勝利の方程式に入ってきても不思議ではないのではないのでしょうか。少なくても単なるリリーフタイプと見るのは間違いで、むしろ先発の方が持ち味が発揮される投手だとみています。


蔵の評価:
☆☆☆☆(1位指名級)


(2018年 全日本平塚合宿)








甲斐野 央(東洋大3年)投手 187/76 右/左 (東洋大姫路出身) 
 




                     「今すぐローテーションに入れそう」





 スケール型の 梅津晃大 に対し、この 甲斐野央 は、まさに投球センスに優れた実戦型投手といった感じがする。多彩な変化球、投手としてのマウンド捌き、ボールの力を見ていても、今すぐプロでも先発入りできそうな力量の持ち主ではないのだろうか。


(投球内容)

手足の長い細身の投手体型で、少しテイクバックを小さめにして投げ込んできます。

ストレート 常時145キロ~MAX152キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 秋のリーグ戦では、ほとんどの試合で最速150キロオーバーを記録。安定して、145キロ以上の球速を刻んできます。その球を両サイドに散らしつつ、球筋も真ん中近辺の高さに集まり、高めに抜ける球はあまり見られません。キレ型の球質のためか、高めに浮くと簡単に打ち返されてしまう球威ですが、ボールの質自体はキレがあって空振りが誘えます。

 気になるのは、少しセットになると制球が乱れるということ。この点に注意して投球すれば、大学生としてはトップクラスの投手です。

変化球 スライダー・ツーシーム・フォーク・カーブ 
☆☆☆☆ 4.0

 多彩な球種を、自在に操る器用なタイプ。速球とスライダーを軸に投球は組み立てるものの、緩いカーブで緩急をつけたり、ツーシームような球も織り交ぜます。また追い込むとフォークも結構確実に落としきますし、実に狙い球をどう絞ればよいか悩むタイプでしょう。スライダーのコマンドが若干不安定ですが、それ以外はかなり精度の高い変化球の担い手です。あくまでもストレートを見せ球にしておいての、変化球勝負。あるいは、変化球を魅せておいてのズバッとストレート勝負と、どっちの配球も可能です。

その他

 牽制が、非常に上手いです。本人も自信があるのでしょう、ランナーを出すと執拗に入れてきます。クィックも1.15秒前後と基準レベルですし、フィールディングも落ち着いて処理できています。運動神経に優れているというよりも、野球センスに優れたタイプといった感じがします。投球以外の部分にも、意識をもって取り組んできたことが伺えます。

(投球のまとめ)

 力と技がうまく噛み合った感じの投球であり、プロでも今すぐローテーションに加われる力があると評価します。今後最終学年で、さらに資質を伸ばすのか? それとも伸び代はこの辺が限界なのか? 見定める1年となりそうです。


(投球フォーム)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。またテイクバックは小さめで、150キロ以上記録してもスケール感溢れる素材には見えません。

<広がる可能性> 
☆☆ 2.0

 引き上げた足は地面に向けて伸ばされており、お尻はバッテリーライン上に落ち気味。そのため身体を捻り出すスペースは十分んではなく、カーブやフォークを投げるには適したフォームとは言えません。

 「着地」の粘りも充分といった感じではないので、身体を捻り出す時間 という意味でも充分ではありません。そういった意味では、良い変化球を修得できるのか?という疑問は残ります。しかし実際には、多彩な変化球を織り交ぜ、うまく投球しているので気にしなくても良さそうです。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドの制球は安定しやすい。足の甲の押し付けでも地面を捉えており、ボールが浮き上がるのを防げている。「球持ち」は悪くないものの、もっとボールを押し込めるようになったら低めに安定して集められるのではないのでしょうか。特にセットになると、多少ボールが上吊るような印象は受けます。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻が落とせないフォームの割に、カーブやフォークを投げようとするので窮屈になり肘への負担は少なくないと考えられます。ただし腕の送り出し自体には無理は感じないので、肩への負担は少ないのでは。また力投派ではないので、疲労を貯めやすいタイプではなく、フォームを乱し故障の原因になるということも少なそうです。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りがさほどないので、打者としては苦になく合わされそう。それでも身体の(開き」は抑えられているので、コースを間違えなければ、そう痛手は喰らわないかもしれません。

 長い腕は身体に絡むぐらい振れており、速球と変化球の見極めはつき難いはず。ボールにしっかり体重が乗り切る前にリリースを迎えているせいか? どうしても球質がキレ型で、打者の手元まで球威のある球が投げ込めません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」だと「着地」「体重移動」に、もう少し粘りが欲しいことがわかりました。また「球持ち」自体は悪くないのですが、もう少しリリースでボールを押し込めるとさらに低めに集められそう。故障のリスクは、肘への負担が心配されます。今後ピッチングの幅を広げられるか?という疑問は残るのですが、現時点でも充分引き出せてるいるので、この辺は問題ないでしょう。


(最後に)

 現レベルの投球を最終学年も続けるだけで、ハズレ1位から2位ぐらいでは消える投手だと思います。更に内容を高めて来られれば、単独1位指名や即戦力候補として競合する域まで到達できるかもしれません。18年度は実戦派の大学生も少なくないのですが、そのなかでも技術的にはトップランク。さらに球速、体格、制球力を兼ね備えている稀な存在です。今年のドラフトにおいて、大学生では中心をなしてゆく存在になるのではないのでしょうか。


(2017年 明治神宮大会)