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高橋 優貴(巨人)投手のルーキー回顧へ







高橋 優貴(八戸学院大4年)投手 178/82 左/左 (東海大菅生出身) 





「ハマったときはNO.1」 





 今年のサウスポーの中でも、ハマったときの投球はNO.1ではないかと言われているのが、高橋 優貴 。東海大菅生時代も、3年夏に素質が一気に開花。夏の予選で、140キロ台中盤の速球をビシバシ投げ込んでいたのが印象深い。八戸学院大に進んでから、1年時から頭角を現す。途中低迷したシーズンもあったが、昨秋は復活して防御率 0.89 の好成績。特に奪三振率の高さには、目を見張るものがある。残念ながら全国大会出場は逃したが、シーズン前の関東遠征でその勇姿を確認することができた。


(投球内容)

少し肘の下がった、スリークォーターから投げ込んできます。

ストレート 常時140キロ台~MAX91マイル・146キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 好調時には150キロ前後のストレートで三振を奪ってくるが、今シーズンはどうもストレートのキレ・勢いが冴えなかったようだ。私が観戦した試合でも、コンスタントに140キロ台を記録したものの、ストレートの勢いで圧倒するほどの迫力は示せなかった。大雑把に両サイドにボールは散っているものの、球筋も高い球が多く細かいコントロールはない。本当の制球力がないので、相手にじっくり観られてしまうと苦しい印象を受けた。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・ツーシームなど 
☆☆☆★ 3.5

 この選手の良さは、速球の勢いでなく各変化球で三振が奪える決め手があるということ。カーブで緩急も使えるし、曲がりながら沈むスライダーや低めで沈むチェンジアップ系の球でも空振りを誘える。そのためある程度真っ直ぐが走っていれば、投球回数を上回る奪三振が奪えるのだ。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒ぐらいとまずまず。牽制は、走者を刺してやろうという鋭い送球ではない。「間」を外したりするために、軽く投げることが多い。運動神経自体は悪くない選手だと思うが、野球センスに優れた駆け引きに優れたタイプではないのだろう。

(投球のまとめ)

 高校時代から、勢いのある真っ直ぐに決め手のある変化球で三振が奪えるサウスポー。しかし本当の制球力やコントロールがないので、勢いで押せないときはどうしても苦しくなる。そのためあくまでもボールは凄いけれど、勝てるピッチング・試合を作るという意味では、まだまだ計算できない投手ということなのではないのだろうか。しかし好調時の爆発力は素晴らしいので、そういった力を安定して出せるようになれば、プロでも一流の選手になるだろう。





(投球フォーム)

今度は、フォームの観点からその将来について考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足は、けして低い位置で伸ばされているわけではありません。しかしながら、お尻の三塁側(左投手の場合)の落としは甘く、バッテリーライン上に残りがち。したがって身体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化にはあまり適しません。特に腕の振りがスリークォーターなので、縦の変化には適していないでしょう。

 しかし「着地」までの粘りはまずまずで、身体を捻り出す時間は確保。そのためカーブやフォークといった球種以外の変化球は、キレや曲がり幅の大きなものを習得できる可能性があります。特にスライダーやチェンジアップのキレは良いので、そのへんがこの動作で生きているのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲での地面の押しつけもできており、それほど抜けたりはしません。ただしリリースが浅いせいなのか? ボールが押し込めず全体的にボールが高いという欠点があります。ここを改善できれば、指先の感覚も良くなるのではないかと考えられます。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせない割に、カーブを結構使って来るのが気になります。スペースが確保できず窮屈なのに、無理に捻り出して投げるカーブは、肘への負担がかかりやすいと考えられます。今シーズン内容がいまいちだったのは、ひょっとすると身体の何処かの調子が悪かった可能性があるのかもしれません。

 腕の送り出しには無理がないので、肩への負担は小さいと考えます。またけして普段は力投派というほどではないので、消耗が激しいフォームではないように思います。特に大学で先発をやる機会が増え、以前よりも落ち着いて投げられるフォームになっています。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは適度にある上に、身体の「開き」も抑えられ合わされやすいということはないはず。実際今まで残してきた成績では、被安打率はかなり低いと言えます(今シーズンは不明)。

 気になるのは、投げ終わったあと腕が身体に絡んで来ないという部分。それでも速球のキレと変化球の良さから抜群の奪三振率を誇っているのですが、球に粘っこさがないのは確かです。また「球離れ」が早いので、ボールに体重を乗せきる前にリリースを迎えてしまっています。すなわちボールに体重が乗せられておらず、打者の手元まで球威のある球が投げられないわけです。あくまでも鋭い上半身の振りでキレを生み出しますが、まともに捉えられると球威に欠けるぶん痛打を浴びてしまいやすいわけです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」に課題を残します。制球を司る動作が良い割にコントロールがアバウトなのは、「球持ち」の浅さから来るボールが押し込めないことと、リリース不安定さにあるからかと。

 お尻が落とせないままカーブを結構使ってくるので、肘への負担が心配。お尻が落とせないことで、緩急や縦の変化をいかに作って行けるかが課題ではないのでしょうか。ただしカーブ自体のブレーキは悪くなく、またフォークに頼らなくても曲がりながら沈むスライダーや低めで沈むチェンジアップ系の球で三振が奪えます。そういった意味では、それほどこの点は悲観しなくても良いのかもしれません。


(最後に)

 今シーズンは、どうも良い時と比べると、絶対的な内容ではなかったようです。まして優勝にリーチをかけながら、富士大に逆転優勝を許してしまいました。そういったここぞの勝負強さ、実戦力の無さが、大事なところで出てしまったのではないかと危惧します。

 素材やハマったときの絶対値は素晴らしいのですが、それを素直に成績に繋げられない課題があるということは間違いないでしょう。位置づけとしては、昨年の 高橋 遥人(亜大-阪神2位)に似た状況であり、ドラフトでも今のままだと3位前後ぐらいにとどまる可能性があります。しかし秋に、その能力を遺憾なく示すことができれば、1位の12名に入ってきても不思議ではないのではないかと思います。果たしてラストシーズン、どんな投球を魅せてくれるのか密かに期待して待ちたいところです。


蔵の評価:
☆☆☆(上位指名級)


(2018年 春季オープン戦)