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菅野 秀哉(法政大4年)投手 183/73 右/右 (小高工出身) | |
3年春のリーグ戦では、防御率 1.39 と最優秀防御率に輝いた。しかしこの春は、1勝5敗 防御率 3.89 と低迷。しかしその投球を見ていると、特に何が悪いという感じでもないのだ。今回の不調の原因がどこにあるのか、検証してみたい。 (投球内容) スラッとした投手体型で、セットポジションからスッと足を上げて投げ込んくるオーソドックスなタイプ。 ストレート 140~140キロ台中盤 ☆☆☆ 3.0 ほとんどの速球は140キロ台を越えてきて、最速だと140キロ台中盤を刻んできます。大学・社会人のドラフト候補としては平均的な球速で、ボール勢いなども悪くはありません。打者の外角中心に球を集めますが、時々高めに甘く浮いた球を打たれることも少なくありません。その投げミスが、失点につながるケースが多いように感じます。 変化球 スライダー・カーブ・フォーク・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5 右打者にも左打者にも、小さく曲がるスライダーでカウントを整えてきます。またブレーキの効いた大きなカーブでもカウントをとれますし、チェンジアップやフォーク系の縦の変化も交え、コンビネーションで討ち取ってきます。絶対的な球はないのですが、縦の変化でも空振りもとれますし、変化球のキレ・精度は一定水準あると評価できます。 その他 牽制はまずまず上手いのですが、クィックは、1.3秒前後と遅いのが気になります。フィールディングなどの動きは良いのですが、クィックをすることでフォームやリズムを崩すことを嫌っているのでしょうか? クィックに関しては、今後改善してゆきたいポイントです。 (投球のまとめ) ストレートの勢い・多彩な変化球のキレ・精度も悪くなく、特に悪いところは見当たらない。別の言い方をすれば、特別何か良いところがあるというほどでもありません。そういった意味では、クィックの技術含めて、社会人でもう少し自分の特徴・武器を磨いてからでもという気がします。 (投球フォーム) では今度はフォームの観点で、今後の可能性や改善点について考えて行きましょう。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 お尻は甘さを残すものの、適度に一塁側には落ちています。そういった意味では、身体を捻り出すスペースはある程度確保。カーブで緩急をつけたり、フォークのような捻り出して投げる球種を投げても窮屈さは感じません。 また「着地」までの粘りもそれなりで、身体を捻り出す時間も悪くありません。変化球のキレや曲がり幅もとれ、良い変化球を投げられる下地はあります。多彩な変化球でそれなりに扱えるのは、このフォームによるところが大きいのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブはしっかり抱えられているわけではないのですが、最後まで身体の近くにはあります。そのため、両サイドへの投げ分けも適度にできています。むしろ気になるのは、足の甲での地面への押しつけが浮いてしまっていて、力を入れて投げるとボールが上吊ってしまうということ。このへんが、高めに甘く浮いた球を打たれる要因ではないのでしょうか。 「球持ち」も並で、リリース際のボールの押し込みもいまいち。こういった部分が、あまり低めにボールの集まらない要因を作っているのかもしれません。ただし四死球は基準以内の投手で、フォアボールを連発することは少なく、ストライクゾーンの枠の中でのコントロールに課題があります。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻の落としに甘さは残すものの一塁側には落とせておりお、カーブやフォークを投げても肘への負担は少なめ。腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担は少ないのではないのでしょうか。それほど力投派でもないので、疲労も溜まり難いのではないのでしょうか。全体的に、故障のリスクは低いフォームです。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までのタイミングが早すぎる感じはしないのですが、身体の「開き」が早く球筋が見極められやすい傾向にあります。そのためコースを突いたような球でも、打ち返されやすいわけです。被安打率が高いのは、この辺に原因がありそうです。 振り下ろした腕は身体に絡んできており、腕の振りに勢いがないわけではなさそう。むしろ問題なのは、体重移動が発展途上であり、思ったほど前にグッと体重が乗っていっていないことではないのでしょうか。腕の振りでキレは生み出すことはできても、体重が乗っていないので球威に欠ける傾向があるようです。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「体重移動」に課題を残します。そのため甘くない球でも打ち返されてしまったり、打者の手元まで球威のある球が投げ込めず被安打が多くなっていると考えられます。 足の甲での押しつけができないために、ボールが高めに集まりやすい。しかし故障のリスクと、投球の幅を広げてゆくという部分では優れていると言えます。 (最後に) 合わされやすいフォームの改善と体重が前にグッと来るような球威を身につけたいところ。この2つを改善するだけでも、投球内容は劇的に変わってくると思われます。できれば大学の間にそれが改善できると良いのですが、社会人などを経てからの方がプロ入りは良いように思います。秋までに大幅な変化がないようならば、まずは社会人でスキルアップを図った方が良いという判断になりそうです。 (2018年 春季リーグ戦) |
菅野 秀哉(小高工業)投手 182/69 右/右 |
「こっちの方がドラフト候補っぽい」 福島ではこの秋、大和田 啓亮(日大東北)右腕が話題になっていたが、来夏ぐらいにはこちらの 菅野 秀哉 の方が、ドラフト候補として注目されているのではないかと思っている。現時点では大和田に及ばないが、スラッとした投手体型と余力のある投球からは、まだまだ伸び代を秘めているように感じられる。 (投球内容) けして力でねじ伏せようとするのではなく、コースに丹念にボールを集め、打たせて取る投球に徹します。妙に脱力してくる部分もあり、打者としてはタイミングが計り難い部分があります。 ストレート 常時135~MAX140キロ 現状驚くような球威・球速はありませんが、ボールの勢いはそれなりにあります。なにより、右打者外角一杯の微妙なところで勝負できるコントロールがあり、コースを突く制球力とそこで勝負できる投球術を持ち合わせます。 変化球 カーブ・スライダー・フォーク 結構緩いカーブでカウントを稼いだりしますが、腕が緩んでカーブを狙い打たれるケースがもあります。主な変化球は、スライダーとのコンビネーション。これに、時々指にうまくかかると落差のあるフォークが決まります。一つ一つの球の精度が上がれば、コンビネーションも冴えて面白いことハマりそう。 その他 微妙なところで勝負できる投球術、落ち着いたマウンド捌きにはセンスを感じます。ただフィールディングやクィックなどの動きを見ていると、まだまだ改善の余地があり、凄く野球センスが秀でているとか、運動神経に優れているという印象はありません。 (投球のまとめ) 均整の取れた体格から、安定した制球力と落ち着いたマウンド捌き、速球・変化球レベルなども悪くありません。そういった意味では、バランスの取れた投球をしてきます。 まだまだボールや体から凄みは感じられませんが、素材としては奥行きがあり、一冬越えてビシッとしてくるとドラフト候補として名前が浮上してくる可能性を感じます。この冬の間に、本人がどのぐらい志しを高く持って取り組めるかで、高校からプロに行けるのか決まってくるのではないのでしょうか。 (投球フォーム) <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばしているものの、やや二塁側に送り込み過ぎているので、お尻の一縷側への落としは甘くなっています。それでも適度に体を捻り出すスペースを確保できるので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げるにも無理は感じません。 「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間も並ぐらい。特にどの球種を投げるのにも無理は感じませんが、キレのある変化球や武器になるほど大きな曲がりを望めるのかは微妙なところ。特に腕の振りがスリークオーターなので、カーブやフォークをきっちり投げるのは、難しいかもしれません。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドの投げ分けは安定。足の甲の地面への押し付けが遅いせいか、充分に低めにボールを押し込められません。「球持ち」はよく、指先の感覚も悪くないので、将来的には精度の高いコントロールを身につけられる可能性は高そう。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ お尻は落とせるので、カーブやフォークといった球種を投げても肘への負担は少ないのでは。腕の角度にも無理がないので、腕の送り出しもよく肩への負担も少ないはず。力投派でもないので、体の消耗も少なそうで故障の可能性は低そうだ。 <実戦的な術> ☆☆ 「着地」までの粘りは平均的で、体の「開き」も並だろう。そういった意味では、特別合わせやすいフォームでもなければ、苦になるフォームでもない。 振り下ろした腕は、手足が長い割には絡んで来ない。これは、まだまだ腕の振りが弱いからではないかと考えられる。またボールへの体重の乗せも充分ではなく、打者の手元まで球威のある球を投げられない要因ではないのだろうか。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」こそ良いが、「開き」と「着地」は並ぐらい。特に「体重移動」に課題を残している。 それでもコントロールを司る動作や故障にし難いフォームであり、その点では素直に伸びて行ける可能性は感じられう。 (最後に) 現状は、球威・球速を増してスケール型になるよりも、安定した制球・実戦的な投球などで勝負する実戦派としての成長が期待される。 一冬越えてビシッとしてくるかで、ドラフト候補になり得るか決まってくるだろうが、その可能性は高いとみている。2014年度の福島、いや東北を代表する素材として、これからの飛躍を期待してやまない。 (2013年夏・福島大会) |