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伊藤 優輔(巨人)投手のルーキー回顧へ







伊藤 優輔(23歳・MHPS)投手 178/82 右/右 (都小山台-中央大出身) 





 「えらく速くなっている」





 昨秋大阪ドームで行われた日本選手権では、MAX148キロだった 伊藤 優輔 。しかし1年後、同じ大阪ドームで行われた都市対抗では、150キロ台中盤のボールを連発していて驚いた。球場のガンが変わったのか? 本人のスピード能力が、この一年の間に格段に上がったのか?


(投球内容)

 都立小山台時代から140キロ台を越える好投手と知られていましたが、中央大では主戦ではあったものの、イマイチ伸び悩んだ感がありました。しかし、MHPSに進み、その才能を大いに伸びしたといえるでしょう。

ストレート 常時150~156キロ ☆☆☆☆ 4.0 

 大阪ドームが、この一年でトラックマン表示になったのかはわかりません。しかし、この一年で5キロ以上、コンスタントに速くなっていたのは驚きました。ボール高めに抜けたりアバウトなのですが、両サイドにはある程度投げ分けるコントロールはあります。ストレートの勢い・球威は感じますが、ビシバシ空振りを誘えるといった球質ではないように思います。。

変化球 カットボール・スプリットなど ☆☆☆☆ 4.0

 むしろ魅力なのは、このストレートと見分けの難しい、カットボール・スプリットの存在があることです。ストレートが暴れる分、カットボールでカウントを整えられます。また見逃されることが多いのですが、スプリットもあるので相手としては的が絞り難くなっています。たまに、もう少し緩いスライダーにツーシーム的な球も織り交ぜていました。左打者内角を突くカットボールでは空振りを奪えますが、基本的に相手を詰まらせて打ち取るタイプだと言えるのではないのでしょうか。

その他

 牽制は適度に鋭いものを織り交ぜ、クィックも1.0~1.1秒ぐらいとまずまずです。フィールディンの動きもまずまずでしたが、昨年観られなかった牽制を積極的に入れてきていたのは印象的でした。

(投球のまとめ)

 大学時代は、スライダー・カーブといった明確な曲がりする変化球が武器でした。しかし社会人に進んでからは、カットボール・スプリットなど、ストレートとの見分けの難しい小さな変化が中心になりました。そして社会人2年目には、そういった配球に加えストレートの球速を格段に引き上げてきました。牽制の部分を観ていても、かなり課題を持って取り組んできたことは伺えます。


(投球フォーム)

 ではフォームの部分で、昨年からの大きな上積みがあったのか? 考えてみたいと思います。セットポジションから、スッと足を引き上げます。軸足の膝にはあまり力みはなく、適度にバランス良く立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としは、多少甘さは残すもののある程度落とせています。そのためカーブやフォークといった捻り出して投げる球種も、投げられないほどではありません。また「着地」までの粘りは平均的で、身体を捻り出す時間は並ぐらい。曲がりの大きな変化球よりも、スライダーやチェンジアップ、それに速球に近い小さな変化球でピッチングを組み立ててゆくことになります。実際現在も、そういったピッチングになっています。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。したがって、ボールは両コーナーに散らしやすいと言えるでしょう。しかし、足の甲での地面への押しつけが浮いてしまっており、力を入れて投げるとボールが上吊りやすいのは気になります。それでも「球持ち」はまずまずで、前でボールを放せており、なんとか投球を壊さないように投球ができていました。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としに甘さは残すものの、悲観するほどではないでしょう。ましてカーブやフォークといった球種も殆ど見られず、縦の変化も握りの浅いスプリットということで、窮屈になる機会は少ないのではないかと。そのため肘への負担は、さほど大きくはないと言えます。

 腕の送り出しを観ても、肩への負担は感じられません。また、速球派ではありますが、そこまで力投派でもないので、比較的疲労も溜め難いのではないのでしょうか。したがって、ある程度タフな登板にも耐えうる身体ではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りが平凡な上、ボールの出どころもやや見やすいように見えます。そういった意味では、コースを突いた球でも打たれたり、縦の変化が見極められやすい傾向にあります。それを補う意味で、微妙に小さく動く変化が有効なのかもしれません。

 腕の振りは強く勢いがあるので、小さな球を投げる時には効果的ではあると言えます。上記のようにボールが見やすいので、空振りを誘うには適していない可能性はあります。またボールには適度に体重を乗せられており、打者の手元まで強い球が投げられるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「開き」が平凡なのは気になります。しかし、それを補う意味でも、小さく動く変化は有効に作用しているのかもしれません。足の甲が浮いてボールが上吊ってしまうのは気になりますが、故障のリスクが低いところはリリーフを想定すると明るい材料。決め手不足も、小さく動かして詰まらせるというピッチングスタイルを確立できているので、悲観することはないと言えます。フォームに関しては、昨年からほとんどいじっていないのではないのでしょうか。

(最後に)


 ストレートのコマンドが低いのは気になるところですが、むしろ今はカットボールを中心とした投球スタイルに移行できています。そのため、この球でカウントを整えられアバウトな制球でも投球を壊さないで力で押すピッチングが可能になりました。

 個人的には、中央大時代からあまり良い印象はなかったです。しかし、課題に対し真摯に向き合い、改善できている点。そして、今年は大幅にパワーアップできていたことを考えると、危うさは感じますがプロでも年々順応してゆく進化が期待できるのではないかと思ってきました。ドラフト4位での指名を考えれば、充分ありの指名ではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2020年 都市対抗) 










伊藤 優輔(22歳・MHPS)投手 178/77 右/右 (都小山台-中央大出身) 





 「膝下に良い球が決まる」





 都立小山台時代は、140キロ台のボールは投げていたものの、好投手タイプだった 伊藤 優輔 。中央大時代は良い球は投げていたが、ピリッとしないで中々勝ちきれない投手との印象が強かった。しかし社会人に進み、投球にメリハリがついてきた。今ならば、プロの世界も現実味を帯びてきているのではないのだろうか。


(投球内容)

 セットポジションから、落ち着いて投げることができている。社会人公式戦1年目には、12試合に登板し5勝をあげ、防御率 2.57 とまずまず。チーム内への期待も、並々でないことを昨年は強く実感した。

ストレート 常時145キロ前後~MAX148キロ 
☆☆☆★ 3.5

 秋の日本選手権では、リリーフでの登板だった。そのため球速もコンスタントに145キロを記録し、登板した3試合でいずれも最速148キロを記録。彼のストレートは、ものすごく手元でグ~ンと伸びるとかピュッと切れるような球質ではない。しかし、低め膝下にズバッと決まることが多く、打者が思わず見逃しをしてしまう。昨年は42イニングで36奪三振と、三振比率は1イニングあたり 0.86個 。先発としては0.8個以上は優秀だが、リリーフだと0.9個以上は欲しいところ。ボール自体は、プロを想定すると微妙なところにあるとも考えられる。

変化球 スライダー・カーブ・カットボール・チェンジアップ・スプリットなど 
☆☆☆★ 3.5

 大学時代は、ブレーキの効いたカーブや外角低めにスライダーを集めるなど、しっかり曲がる変化球が中心だった。しかし社会人では、カットボールやスプリットなどよりストレートとの見分けの難しい小さな変化で勝負することが多くなった。このへんが、投球に良い循環を生んでいるように思える。そのため縦の変化も結構使ってくるが、打者からはあまり空振りは奪えていません。微妙に芯をズラして、打たせて取るというピッチングスタイルなのかと。

その他

 クィックは、1.05~1.10秒ぐらいと基準以上。フィールディングの動きも良く、上手い部類だと言えます。しいて言えば、ランナーが出塁しても、牽制が観られないのはどうでしょうか?

(投球のまとめ)

 大学時代は、左打者相手になると制球が定まらず四球を出してしまうケースが少なくありませんでした。社会人では、42イニングで25四死球。四死球率は、59.5% と、相変わらずアバウトな部分を残します(目安は33.3%以下)。ひとつひとつのボールは良いけれど、勝ちきれないという部分は、何処まで改善されているかは数字からみると微妙です。

 しかし実際の投球を見る限り、だいぶ投球にメリハリはついているように見えて、ルーキーイヤーに5勝をあげたのは偶然ではないのではと。そのへんは、フォームを分析してどの程度実戦的になっているのか検証してみたいと思います。


(投球フォーム)

 足をスッと、勢いよく高く引き上げてきます。軸足一本で立った時のバランスも、まずまずといった感じです。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としには甘さは残すものの、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種を投げられないほどではありません。ただしキレや曲がりという意味では、中途半端になりやすいのではと。

 「着地」までの粘りもそれなりで、身体を捻り出す時間もそこそこ。決め球にするような変化球の習得は厳しいかもしれませんが、いろいろな球を投げられる下地はありそうです。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は抑え込めています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいのでは。しかし足の甲の地面への捉えが浮いてしまい、浮き上がろうとする力を充分抑え込めていません。そのため高めに抜ける球も少ないないのですが、球持ちが良く押し込めている時は低め膝下にボールが行きます。高低のリリースの安定が、一つ課題なのではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブを投げる機会も少なくフォークではなく負担の少ないスプリットを使います。そのため窮屈になる機会も少なく、肘への負担は少なめではないかと判断します。

 また腕の送り出しにも無理は感じず、肩への負担も少なそう。けして力投派というほどでもないので、疲労も溜め難いのではないかと。そういったと意味では、故障へのリスクは少ないフォームだと言えます。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも並ぐらい。特に苦になるというほど、イヤらしいフォームではありません。腕は適度に振れており、空振りを誘える勢いは感じられます。しかしボールの出どころがさほど隠せていないので、その効果が得られ難いのではないのでしょうか。

 足が地面から浮いて投げているので、下半身のエネルギー伝達ができず球威のある球が生まれ難いメカニズムに。あくまでも上半身や腕の振りの鋭さで、キレを生み出てゆくしかありません。そのため高めに甘く浮く球を、苦になく打たれる危険性はあります。ちなみ公式戦42イニングでヒットは30本と、被安打率は 71.4% と、非常に低く抑えられています。これは、コースよりも微妙に動かす球種で、上手く芯をずらす投球が功を奏しているからではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」において、「球持ち」以外には改善の余地が残されていることがわかります。特に体重移動では足の甲が地面から浮いてしまい、下半身のエネルギー伝達が上手くできていないところは気になります。

 武器になる変化球の習得は厳しいかもしれませんが多彩な球種を操れる土台があり、足の甲が地面を捉えていない割には低めへ球は行きます。また故障のリスクが低いことは、新たしい技術をどんどん習得するのに試せるという意味では、明るい材料ではないのでしょうか。まだ実戦的というほどではありませんが、全体的にはそこそこまとまっているとは評価できます。


(最後に)

 大学時代よりは、確実に良くなっています。しかしそれだから一年目から、プロで大活躍できるレベルなのかと言われると微妙です。しかし指名ボーダーラインには来ていると思うので、順位にこだわらない姿勢とうまくアピールを続けられれば、指名される可能性はあるとみています。果たしてチームのエースとして、存在感を示せる2年目となるか注目です。


(2019年 日本選手権) 









伊藤 優輔(中央大4年)投手 179/80 右/右 (都立小山台出身) 
 




 「ボールは良いのになぁ」





 コンスタントに140キロ台中盤の速球を投げ込めるのに不思議と点を取られている、そんな投球を続けているのが、伊藤 優輔 投手。都立小山台時代には、甲子園のマウンドに昇った好投手。果たして、彼の投球の何処に問題があるのか考えてみたい。


(投球内容)

それほど身体は大きくないが、正統派の好投手といった感じがします。

常時140キロ台~MAX149キロ 
☆☆☆★ 3.5

 ほとんどの試合で、最速140キロ台後半を刻んできます。その球を、右打者外角にしっかり集めることができます。その一方で、左打者に対しては的をつけられず制球に苦しむことが少なくありません。またそれまで良くても、四球を出して一気に崩れることも少なくありません。

変化球 スライダー・チェンジアップ・スプリット・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 右打者の外角には、スライダーをしっかり集めてくる。また左打者や追い込むとチェンジアップやスプリットの縦の変化球も使って来る。またブレーキの効いたカーブで緩急をつけたりもでき、ボール一つ一つは、けして悪くありません。

(投球のまとめ)

 ストレートの勢い・球速、変化球の曲がり・精度など、ボール一つ一つには良いものを持っています。その一方で、左打者への投球に課題があったり、四死球からガタガタ崩れだす脆さがあり、そのへんが結果を残せない要因でしょうか? 今度は、データの観点から、もう少し傾向をみてゆきましょう。


(成績から考える)

この春の成績は、

10試合 1勝5敗 46回1/3 50安 29四死 35奪 防 5.05

1、被安打は投球回数の80%以下 ✕

 被安打は投球回数を上回るなど、打たれ過ぎていることがわかる。打たれだすと止まらない部分があり、そのへんが数字にも現れている。先発ならば、イニングの80以下に抑えたい。

2、四死球は、投球回数の1/3以下 ✕

 四死球率も62.6%と、基準の倍近いペースで出している。被安打が多かったり、防御率の悪さは、細かいコントロールに欠けるのが大きな原因かもしれない。投球を観ている限り、そこまでコントロールが悪いようには見えないのだが・・・。

3、奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ✕

 奪三振は、1イニングあたり 0.76個 。基準である0.8個に近い数は取れているが、決め手があるというほどではない。しかしボールの威力自体が、この成績の悪さの問題ではないということだろう。

4,防御率は1点台以内 ✕

 防御率が5点台というのも少々考えづらいものがあるが、ドラフト候補ならば1点台の数字を残したいところ。ここまでの通算でも5.05という数字なので、今シーズンが特別悪かったわけではないようだ。

(成績からわかること)

 球速はあるものの、制球力・打たれ難さ・決め手になる球など、課題が山積みであることがわかってきた。やはり大学からのプロ入りは、現状厳しいとみるしかないだろう。

(最後に)

 劇的に春~秋に向けて良くならない限りは、強豪社会人などに進むことになるのではないのだろうか。良いものは持っているので、そこでさらに勝てる術を身につけたい。ちょっと現時点では、ドラフト候補として追いかけてゆくのは厳しいという判断になってしまう。良いものは持っているので、うまくそれを活かせるようになればと。


(2018年 春季リーグ戦)









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