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須永 悦司(桐蔭横浜大4年)投手 190/89 右/右 (桐蔭学園出身) 
 




 「重い」





 190/89 の体格から投げ下ろして来る速球は、日本人離れした重さが感じられる。この球は、容易にはスタンドインさせることはできないだろうと強く実感した。そういった意味では、非常に希少価値の高い投手ではないのだろうか。この春のリーグ戦では、4勝をあげ防御率1.25の好成績。リーグの、最優秀投手賞 にも選出されている。


(投球内容)

 サイドに近いスリークォーターといった感じの腕の振りで、セットポジションから勢いよく足を引き上げて来る。

ストレート 常時140キロ前後~MAX91マイル・146キロ 
☆☆☆★ 3.5

 MAX152キロと言われる素材ですが、先発ということもあり常時140キロ前後とコントロール重視で抑えて投げているのが伝わってきました。それでも結構ボールはバラついていて、細かいコントロールはありません。あくまでも日本人離れした速球を、ストライクゾーンの枠の中に集めて来るといった投球。この春は、41回1/3イニングで19四死球。四死球率は、46.0ということからも伺える(基準は投球回数の1/3以下)。

変化球 スライダー・シンカー 
☆☆☆★ 3.5

 スライダーの曲がりが大きく、この球とのコンビネーション。ちょっと曲がり過ぎるきらいはあるが、そう簡単に右打者は捉えられないのではないのだろうか? また左打者の外角低めにシンカーのような沈む球もあり、実際確認できたのは1球だけだったが上手く沈んで空振りを奪えていた。いつもこの精度で使えるのならば、大いなる武器になりそう。変化球のキレ・曲がり自体は、想像以上に良い投手だった。これにカットボールなど小さな変化で簡単にカウントが整えられるようになると、もっと大胆なピッチングもできそうだ。

その他

 牽制は平均的で、クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと基準レベル。ただしフィールディングを見る限り、動きは緩慢で平均以下といった印象は受けた。大型選手なのもあり、投球以外の部分のレベルは低め。

(投球のまとめ)

 あくまでも重い球を軸に、打たせて取るのが基本スタイルではないかと思われる。奪三振は、41回1/3で36個であり、1イニングあたり0.87個と、先発投手としては基準を上回っている。これは、変化球の威力が高いからだと考えられる。

 サイド・スリークォーター系ではあるが、被安打率は 82.3% とさほど高くない。それだからこそ多少コントロールがアバウトでも、防御率1.25と安定した成績を残せたのだろう。まだまだあくまでも素材型の域を脱していないが、今後の伸び代は大いに秘めているといえるのではないのだろうか。





(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、今後の可能性を模索してみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は甘さを残すものの、適度に一塁側に落とせている。そのため身体を捻り出すスペースは確保できているので、カーブやフォークのような捻り出して投げる球種を投げるのにも無理はない。ただし腕がかなり下がって投げているので、こういった球種は投げ難いというか、上手く曲がらない可能性が高いのだが・・・。

 「着地」までの粘りもそれなりで、けして淡白というほどではない。そのため身体を捻り出す時間も確保できており、キレや曲がりの大きな変化球を投げられる。将来的には、さらに球種を増やしピッチングの幅を広げて行ける可能性を秘めている。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは内に抱えられているのだが、最後後ろで解けてしまっている。そのため両サイドの投げ分けも、ブレやすくなっているのかもしれない。足の甲での地面への押しつけも短く、もう少し地面をしっかり捉えていたい。このへんがしっかりしてくると、球筋も低めに集まってきそう。「球持ち」も悪くはないが、もうワンランク上の粘りが欲しく、指先の感覚を磨いて欲しい。動作自体の土台は悪くないが、結構荒っぽい投げ方をしている。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻はある程度落とせている上に、カーブやフォークといった球種を確認できなかった。そういった意味では、窮屈になることもなく肘への負担は少なめではないのだろうか。

 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も少ないだろう。力投派に見えるものの、まだ身体を活かしきれていない部分もあり、疲労が溜まりやすいかはよくわからない。将来的には、かなりタフな登板に耐え得るリリーフ投手のイメージが強い。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは悪くなく「開き」も抑えられているので、コントロールを間違わなければ痛手は食らい難いのでは? 

 気になるのは、投げ終わったあと腕が絡んで来ないなど腕の振りに勢いがないところ。しかも「着地」の割には、体重が前に乗ってこない感じで、打者の手元までグッと来るような勢いには乏しい。ボールは重いのだが、手元までボールが来ている感じがしなく質の点で物足りない。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」に物足りなさを感じる。このへんが変わって来ると、もっとメリハリの効いた投球になってくるのではないのだろうか。

 故障のリスクが低いのと投球の幅を将来的に広げて行けそうなのは明るい材料だが、制球を司る動作に甘さを残す。ここが改善されてくると、もっと大胆な腕の振りも期待できそうだ。


(最後に)

 まだまだ発展途上の投手ではあるが、日本人離れしたスペックの持ち主でプロでも苦労しそうなボールの重さがあるところは興味深い。常識的な範疇で考えれば、社会人を経由するという判断になりそう。しかしこの春実績を残したことや、本人のプロへの意欲次第では、下位指名~育成枠ぐらいならば可能性がないとは言えないだろう。春~秋に、もうワンランク上の投球ができれば、面白いのではないのだろうか。引き続き、秋まで追ってみたい1人だった。


蔵の評価:
追跡級!


(2018年 春季リーグ戦)