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梅津 晃大(中日)投手のルーキー回顧へ







梅津 晃大(東洋大4年)投手 187/90 右/右 (仙台育英出身) 
 




 「ようやく1勝」





 4年秋のシーズンで、ようやく大学初勝利をあげた 梅津 晃大 。 しかし持ち得るポテンシャルは、今年の大学NO.1と誰もが認める素材の持ち主。ラストシーズンの梅津は、どのような内容だったのか振り返ってみたい。


(投球内容)

 梅津のリーグ戦初勝利となった、国学院大戦を生で観戦しました。私が今まで観てきた中でも、この試合が一番良かったのではないかと思います。

ストレート 145キロ前後~94マイル(151キロ)  
☆☆☆☆ 4.0

 この日の投球では、先発でもコンスタントに145キロ前後~151キロを記録。一本の線で繋がっているような、糸をひくような球筋です。しかし球威や勢いは感じさせるものの、それほど空振りを誘える球質ではありません。その球を両サイドや低めに集めて、詰まらせて打ち取るのが持ち味です。この秋は、32回2/3イニングで12四死球で、四死球率は35.7%。四死球で自滅するような数字ではありませんが、全体的に大まかにボールを散らせて来る感じです。この選手の良さは、これだけの球速を誇りながら、ボールが低め膝下に決まる割合が高いことではないのでしょうか。

変化球 スライダー・カーブ・カットボール・フォークなど 
☆☆☆★ 3.5

 スライダーの曲がりは大きく、この球の威力はあります。その他、時々緩いカーブで緩急。こまめにカットボールやフォークなどを織り交ぜ、的を絞らせない投球ができます。32回2/3イニングで奪三振23個であり、1イニングあたり0.71個ですから、平均強ぐらいの割合。けして、大学生相手でも決め手があるといった三振が取れる球があるわけではありません。まだまだスライダー以外の変化球は、発展途上だと言えるでしょう。

その他

 クィックは、1.15秒ぐらいで、春よりも0.1秒ぐらい平均して遅い印象。これは、ランナーをあまり気にせずに打者に専念しようという意識に変わってきたのかもしれません。それでも平均的なタイムであり、このぐらいならば気にすることはないでしょう。牽制はそれなりで、けして下手ではありません。またフィールディングも、基準以上で悪くありませんでした。特別投球以外が優れているわけではありませんが、プロでも平均レベルの技量はすでにあります。

(投球のまとめ)

 この試合では、4回を無四球・1安打・無失点と、危なげない内容でリーグ戦初勝利をあげました。この投球を、彼の到達点として評価して好いのか、たまたま良かったのかの判断に悩むところではあります。この秋は、32回2/3イニングで被安打は24本、被安打率は、73.6%と、基準である80%以下に留め、防御率も1.65と、6試合登板して残しました。それでも今までの4年間は、なかなか持ち得る潜在能力を示すことができなかったことを考えれば、シーズン通して投げられたことは、評価できる内容だったのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

 春はフォーム分析をしていないので、昨年以来のフォーム分析をして昨年から変化があったか考えてみたいと思います。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としは甘さを残すものの、ある程度は一塁側には落とせています。そういった意味では、カーブやフォークが投げられないというほどではないようです。

 「着地」までの粘りもそれなりで、適度に体を捻り出す時間も確保。ただしまだ粘りが充分とは言えないので、キレや曲がり具合は平凡で、決め手となる変化球は習得できないのではないかと考えられます。それでも昨年に比べると、お尻の落としや粘りは若干良くはなってきています。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くにはあり、両サイドへの投げ分けは安定。しかし足の甲の地面への押しつけは浮いてしまっており、ボールは力を入れて投げると上吊りやすいです。しかし実際には、高めに浮くというよりも引っかかり過ぎて地面にワンバンするような球の方が多いです。その理由は、「球持ち」がよくボールを押し込めているから。ただし指先の感覚はそれほどではなく、まだボールを充分には制御できていないのでしょう。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻はある程度は落とせているので、カーブやフォークを投げても窮屈というほどではないはず。しかし結構フォークへの依存度は高いので、将来的に肘を痛めてしまう危険性はあります。

 腕の送り出しは無理はなく、肩への負担は少ないと言えるでしょう。それほど力投派でもないので、疲労を溜めやすいということはありません。ただしここまで、あまり無理ができないできた投手なので、急に球数が増えた時は危険です。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそこそこで、球の出どころは並ぐらいでしょうか。そのため、特に合わされ難いわけでも合わしやすいわけでもありません。それよりは、コントロールが甘く入るかどうかの方が重要な気がします。

 腕はそれなりに振れており、勢いは感じます。ある程度体重を乗せてからリリースもできているのですが、物足りないのは足の甲が地面から浮いてしまって下半身のエネルギーが逃げてしまってます。そのへんが改善されてくると、もっと手元まで生きた球が投げられるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に課題を残している気がします。これは今後、股関節の柔軟性を養いつつ、下半身の筋力を強化して改善して行くことが求められます。


(最後に)

 春に比べると、少し将来の青写真が見え始めてきたのかなと思える部分はあります。非常に緩やかな成長曲線ではありますが、少しずつ良くなっています。素材は文句なしだけれどまだ未完成という意味では、元大洋の 斎藤 隆を 彷彿とさせます。彼は一年目未勝利に終わりましたが、2年目には8勝と成長を遂げ、やがてメジャーリーガーになりました。梅津も順調にゆけば、いずれは海外に出てゆくぐらいの器の投手だと思います。投手の育成力に定評がある中日が、彼をどのように導いてゆくのか大変楽しみです。即戦力とみなければ、文句なしの素材ではないのでしょうか。評価としては春と据え置きですが、内容はワンランク秋の方が良かったと思います。


蔵の評価:
☆☆☆☆ (1位指名級)


(2018年 秋季リーグ戦)










梅津 晃大(東洋大4年)投手 187/77 右/右 (仙台育英出身) 





 「スペックは一番」





 今年のドラフト候補全般を見渡した中でも、この 梅津 晃大 が、ポテンシャル的にはNO.1だというのは多くの人のが異論がないところではなかろうか。しかし期待された今春のリーグ戦でも、わずか1試合の登板にとどまる。大学選手権でも、病み上がりの中リリーフでの投球。まだまだ本来の出来からは、程遠いまま大会を終えてしまった。それでも秋のドラフト会議では、1位指名が濃厚な存在なのは何故なのか考えてゆきたい。


(投球内容)

ノーワインドアップながら、恵まれた体格をダイナミックに使ってきます。

ストレート 常時145キロ前後 
☆☆☆☆ 4.0

 梅津の最大の良さは、ボールに角度を感じさせ、その球を膝下に決めることができる点にある。高めに速い球を投げられる投手は珍しくないが、力を入れた時のボールが膝下いっぱいに決まって見逃しを誘う。こういった球を投げられる投手は、なかなかいない。また繊細なコントロールがあるわけでではないが、ストレートのコマンドもけして低くはない。今週唯一登板した中大戦では、7イニングを投げて2四死球。大学選手権の九州産業大戦でも、4回1/3イニングで無四球に抑えている。まだまだ未完成な投手ではあるが、四死球で自滅するような危うさはない。

変化球 スライダー・フォーク・カーブ・カットボールなど 
☆☆☆ 3.0

 ストレートに比べると、変化球の精度・キレは平凡。スライダーは低めで曲がるが早く曲がり過ぎて以外に空振りが奪えない。そのためカウントを整えるために、曲がりの小さいカットボールを使ってくることもある。縦の変化球であるフォークも発展途上ではあるが、こちらは落差があって空振りも誘える。まだここぞの場面に使えるのかという信頼度の問題はあるが、将来的には速球とフォークとのコンビネーションが中心になるのではないのだろうか。

その他

 クィックは、1.05秒とまずまず。牽制は並ぐらいで、投球以外の部分は特別秀でているわけではない。特に野球センスや運動神経の高さを感じさせる素材ではなく、純粋に速い球を投げられるという能力が破格ということだろう。

(投球のまとめ)

 将来は物凄い投手になりそうという青写真は描けるものの、まだ形にはなっていない。近い将来 千賀 滉大(ソフトバンク)級になっても、何の不思議もない素材なのだ。 しかし一年目からバシバシ勝てるような投手になのかと言われると疑問で、本格化するのは順調にいっても数年後ではないのだろうか。


(成績から考える)

 フォームに関しては、オフに作成したレポートの時と変わっていなかったので、今回は取り上げません。わずかではありますが、この春に登板した中央大戦と九州産業大戦の数字から、今後の可能性について考えます。今回は、両方の試合を合計したものから算出します。

2試合 11回1/3 11安 2四死 12奪 自責4 防 3.19

 打ち込まれた九産大の数字が入っているので、数字も平凡なものに留まっている。しかし現状の梅津の力は、この程度だとみておいた方がいいのかもしれない。

1、被安打は投球回数の80%以下 ✕

 被安打率は、ほぼ投球回数と同じ97.3%。そう考えると、現状は自慢のストレートだけで押し切るほどの力もなければ、変化球で仕留めきれるほどの球がないことがわかる。

2,四死球は投球回数の1/3以下 ◎

 四死球率は、17.7%であり、基準である33.3%の約半分と大変優秀。サンプルが少ないので鵜呑みにはできないが、四死球で自滅するような危うさはない。

3,奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◎

 1イニングあたりの奪三振は、1.06個と投球回数を上回っている。先発の基準どころか、リリーフの基準も充分クリアできており、能力の片鱗は伺わせる。これは、ストレートをズバッと低めの手の出せないところ見逃しの三振を奪えること。また、落差のあるフォークが決まり出すと容易に捉えることができないからだろう。

4,防御率は1点台以内 ✕

 防御率は3.19とドラフト候補としては平凡で、まだまだ実戦力は物足りない。昨秋も4試合ほど登板しているが、防御率は2.70と並な数字に留まっている。

(成績から考える)

 四死球の少なさと奪三振の多さは優秀だが、被安打と防御率はまだまだと言った感じ。速球派でありながら、コントロールに大きな欠点がないところが素晴らしい。その反面、まだボールの力だけでは押し切れるものがなく、防御率も並の数字に留まっている。


(最後に)

 実際の投球同様に、誰もが認めるぐらいの素材の良さは感じていても、成績的には即戦力を期待するのは厳しそうだというものがでている。あくまでも一軍で投げるにしても、短いイニングじゃないと苦しいだろうということ。

 そういった意味では、1年ぐらいはファームで漬け込むぐらいの育成力・覚悟のある球団じゃないとオススメできない。それでもチームのエースになれる素材を、欲しいという球団が食指を伸ばすのではないのだろうか。おそらくドラフト会議でも、複数球団が1位指名に名乗りをあげてきそうだ。


蔵の評価:
☆☆☆☆ (1位指名級)


(2018年 大学選手権) 









梅津 晃大(東洋大3年)投手 187/77 右/右 (仙台育英出身) 





                     「一番気になる大学生」





 2018年度組の大学生のなかでも、一番気になる選手は?と訊かれたら、私は間違いなく 梅津 晃大 だと応えるだろう。そのぐらい私にとって、彼は魅力的な素材なのだ。


(どんな選手?)

 仙台育英時代から、プロから注目されていた素質の持ち主でした。不思議と全国大会での登板はなかったので、そのまま東洋大に進学。1年春に二部リーグながら、公式戦に登板。しかし以後、3年春のシーズンまで公式戦の登板は一切なし。しかし夏のオープン戦で153キロを記録し、3年秋のシーズンに公式戦に復帰。登板した4試合では、すべて150キロ台を計測。しかし国学院戦で怪我をしたため明治神宮での登板は回避され、またも全国大会の登板を果たせないまま最終学年を迎えようとしている。


(投球内容)

187センチの恵まれた体格を活かし、雄大なフォームから投げ込む本格派。

ストレート 145~152キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 けして力を入れているわけでもないのに、コンスタントに145~150キロ強の球速を刻んでくる。またその球が、比較的低めに集まるところは良いところ。高めに抜けるというよりは、指にひっかかり過ぎてワンバウンドになる球が多い。ただし、左打者相手になるとコントロールがアバウトになると、セットポジションになると制球を乱し抜け球が増えることがある。

変化球 スライダー・フォーク・カットボールなど 
☆☆★ 2.5

 変化球は、スピードのある小さな変化が中心。特に沈む球は大きく落差があるというよりも、スプリットのような小さな沈み方をする球種で、それほど空振りを誘えない。変化球の精度・キレはもう一つで、どうしても速球に頼る依存度は高い。今後のことを考えると、いかに変化球でカウントを整え、変化球で仕留められる技量を磨けるかにかかっている。

その他

 クィックは、1.05秒前後と基準以上。牽制も鋭く、投球以外の技術が低いわけではない。ただしランナーを背負うと、制球を乱すなど投球に集中しきれなくなる部分があり、精神面に不安を感じなくはない。

(投球のまとめ)

高校・大学での実績は乏しく、あくまでも素材型の域は脱しられていない。ちなみにこの秋の成績は、

4試合 10回 6安 4四死 11奪 防 2.70

といった成績。この成績が示すとおり、ボールの威力は被安打が少なく上位。ランナーを背負うと制球を乱すように、状況に応じて制球が変わる。奪三振11個が示すとおり、イニングを上回るほどの決め手を持っている。

 資質があるのは間違いないので、問題は公式戦・それも注目される中で、いかに実績を残せるかだろう。平常時のボールは、素晴らしいものを持っているので。






(投球フォーム)

今度はフォームを分析して、今後の可能性と課題を考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残ってしまいます。そのため身体を捻り出すスペースは充分確保できず、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げるのには窮屈になりがち。

 また着地までの粘りは平凡で、身体を捻り出す時間も充分とは言えません。そのためカーブやフォークといった球種だけでなく、キレがあったり曲がり幅の大きな変化を期待し難いフォームだといえます。そのためカットボール・スプリットなどの小さく速い変化の方が適しているといえるでしょう。あとは、スライダーやチェンジアップをいかに上手く織り交ぜられるかではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くに抱えられているのですが、最後後ろに解け気味。その分、両サイドの制球が多少ブレる可能性があります。また足の甲の押し付けが浅いので、ボールが上吊りやすいフォーム。これは、「球持ち」が良くボールを押し込むことができ、抜けるのを防ぎことはできています。繊細なコントロールがあるわけではありませんが、大まかに低めに集められる制球力はあるのではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせず窮屈なのに、結構フォークを使って来るので肘への負担が大きいのが気になります。腕の送り出しには無理を感じないので、肩への負担は少なそうに見えるのですが。速球派ですが、それほど力投派ではないので消耗が激しいタイプではないと考えられます。肘を中心に、痛めないか注意を払う必要がありそうです。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地までの粘りが充分とは言えないものの、身体の「開き」は抑えられており合わされやすいということはなさそう。球速相応の効果は、投球から期待できるのではないのでしょうか。

 腕はしっかり身体に絡み、空振りを誘いやすい勢いは感じます。ボールにも適度に体重は乗せてからリリースできており、打者の手元まで活きた球が投げられ空振りを誘えます。速くても簡単に打ち返される、そういったことはないのではないのでしょうか。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」までの粘りがもう一つ欲しいものの、後は大きな欠点はありません。本格派ですが、比較的実戦的なフォームにはなっています。

 故障のリスク・制球を司る動作もそれなりですが、今後投球の幅を広げて行けるのかという変化球に不安要素が。実際の投球もそこに課題がある投手だけに、気になる部分です。



(最後に)

 高校・大学と名門にいながら、不思議と全国大会に縁がないのは気になります。また高校時代もバリバリのエースだったわけでもないですし、リーグ戦での実績も乏しい。そういった意味では、最終学年でどのぐらいの実績が作れるのかではないのでしょうか?

 素材的には申し分ないものの、大学の4年間では才能が爆発できないで終わる可能性もあります。しかし怪我なく順調に行けば、大学からプロ入りする可能性は高いと見ています。またアピール次第では、いっきに1位指名で競合しても不思議ではない素材と期待しています。そうなることを期待して、春の訪れを待ちたいところです。



(2017年 秋季リーグ戦)