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若林 晃弘(巨人)内野手のルーキー回顧へ







若林 晃弘(24歳・JX-ENEOS)内野 180/77 右/両 (桐蔭学園-法大出身) 
 




                  「左は癖ないが右は癖がある」





最近の日本球界では珍しいスイッチヒッターである 若林 晃弘 。 左打席は非常に癖のないコンパクトのスイングする一方で、右打席は腰の逃げが早く、独特の払うような腰の入らないスイングなのだ。


走塁面:
☆☆☆★ 3.5 走塁偏差値 56

 一塁までの塁間は、左打席から4.03秒。これをドラフト指名された左打者のタイムで偏差値化すると、走塁偏差値は 56 (上位30%以内)。昨年のENEOSでの成績では、142打数で5盗塁。プロのレギュラークラスである500打席で換算すると、18個 ペースで1シーズン走っていることになる。これは社会人の選手としては、けして図向けた数ではない。法大時代も4年春・秋のシーズンともに、4盗塁ずつを記録。現状そこから判断すると、プロの打者の中では中の上~上の下レベルという感じではないのだろうか。走力を全面に出したプレーヤー、そんな感じはしない。

守備面:
☆☆☆★ 3.5

 二塁手としては、無難というか可も不可もなしといった感じで印象が薄い。都市対抗では補強選手としてサードを守っていたが、三塁手としては、キャッチング・打球への反応・肩などもまずまずで上手い部類。プロでも三塁手としてならば、即戦力になるのではないのだろうか。スケール的には二塁を務めて欲しいタイプではあるのだが、二塁手としては平凡で物足りない可能性も。





(打撃内容)

 今年の都市対抗・日本生命戦では、先制の本塁打をライトスタンドに叩き込んだ。ただしオーバーフェンスする長打力よりも、二塁打・三塁打の多いタイプとの印象が強い。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 右打席も左打席でも、構え方は良く似ている。前の足を軽くて引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わりはほどよく、背筋もしっかり伸ばされている。全体のバランス・両眼で前を見据える姿勢も悪くなく、全体的に癖のない好い構えではないのだろうか。

<仕掛け> 早め~平均的

 だいたい動き出しは、投手の重心が下がり始める~底に到達する時点。すなわち「早め」~「平均的」なタイミング。すなわちアベレージヒッター~中距離・ポイントゲッタータイプ という感じで、打席によっても多少違う。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足を引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してくる。始動~着地までの「間」も取れており、速球でも変化球でもスピードの変化にも幅広く対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも対応しうる万能型。踏み込んだ足元もブレないので、外角の球や低めの球にも「開き」を我慢してついてゆくことができる。

 左右の違いでは、右打席だと腰が早く逃げてしまうところを、足元が開かないことでなんとかある程度のところで我慢するという感じに。そのため外の球を叩く時に力が入らず、何か払うようなスイングになってしまう。左打席では、そういった心配はないので悲観することはなさそうだ。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、力みなくボールを呼び込めるところは好いところ。バットの振り出しも、上からみートポイントまで無駄なく振り下ろすインサイド・アウトのスイング軌道。真ん中~内角寄り球を引っ張るのには適しているので、後はいかにプロの強い外角球へ対応できるか? 右打席だと払う感じなので、高めの球じゃないと外角球は辛いかもしれない。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げ静かなので、目線の上下動は少なめ。身体の「開き」も我慢できいるが、軸足の安定感・強さには特別ものは感じられなかった。

(打撃のまとめ)

 打撃技術としてはほぼ完成されており、技術的にはしっかりしたものを持っている。右打席は意外性でやや確実性では劣る可能性はあるが、左打席は確実性もそれなりに高いのではないのだろうか。けして力感溢れるスイングではないが、打球も鋭くひ弱な打者ではけしてない。


(最後に)

 守備でも走塁でも打撃でも、中の上タイプでありその点はアピールポイントを何処に置くかで変わってくる。実戦で強さを発揮するタイプなので、控え選手としてはそれなりに実力を発揮してもおかしくはない。しかし特徴が見えづらいだけに、埋もれてしまわないかという不安も残る。そういう隙間をぬってゆく選手なので、チームに需要があるか、活かす首脳陣の理解によっても変わってきそう。

 個人的には何度も観てきた割に、あまりピンと来たことが少ない選手。指名リストに名前を残そうとは思わなかったが、球界をしぶとく生き残って行ける生命力は感じる選手だった。活かしようによっては、貴重な存在として長く貢献してくれるかもしれない。


(2017年 都市対抗)