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宮本 秀明(DeNA)内野&外野手のルーキー回顧へ






宮本 秀明(21歳・パナソニック)内野&外野 178/81 右/左 (秀岳館出身) 





                    「まともに見たことがない」





 高卒選手をあまり採用しないパナソニックが、前のパナソニック監督を務めていた鍛冶者監督とのつてで採用した珍しいパターンの選手がいたと記憶しています。元々は遊撃手でしたが、秀岳館に松尾大河(DeNA)が入学してきたため、三塁へコンバートされたとか。パナソニックでは、二塁・三塁・外野などを務める控え選手で、なかなか大きな大会でそのプレーを確認することができない選手でした。この春のスポニチ大会では、ライトでノックを。秋の日本選手権では、センターで試合前ノックに参加。その日本選手権では、9番・DHでスタメン出場し、ショート内野安打を記録しています。名門社会人チームの選手ですが、その実態がほとんどわからない隠れた存在でした。


(守備・走塁面)

 試合前ノックを見ていると、かなり肩は強い外野手に見えます。打球への勘や落下点への入りは、いまいちよくわかりませんでした。高校時代の三塁のプレーぶりが動画であがっていてみたのですが、元々遊撃手だけに動きの良い三塁手という感じ。プロでも三塁手としては、充分やって行けるハンドリング・守備範囲・反応の良さを感じます。二塁でも出場していたようなので、内外野幅の広い起用は想定できそうな選手です。

 一塁までの塁間は、左打席から4.0秒前後を記録。特に内野安打が多いので、ボールを転がす意識が強いとのこと。打球次第では、3.9秒台も期待できる脚力はありそうです。総じて見ていると、肩は中の上~上の下ぐらいのレベルはありそうですし、走力もそのぐらいの能力はありそう。DeNAは内野手として、この選手のことを見ているようです。そうすると二塁・三塁あたりでの起用が予想されます。守備走塁も絶対的なものはまだないのかもしれませんが、身体能力は高そうなので、これからの鍛え方次第では重宝されるかもしれません。





(打撃内容)

 転がす打球が多く、内野安打が多いのが特徴だと訊きます。しかし打球自体は結構鋭いので、けして非弱さは感じません。むしろ高いレベルの投手に対する、対応力・タイミングの合わせ方に改善の余地がありそうです。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 軽くクローズ気味に構える選手で、グリップは平均的でリラックスを心がけているようです。腰の据わり・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスとしては並ぐらいでしょうか。クロスに立っていることからも、外角の球を三遊間・センター方向に転がることに、主眼が置かれていることが伺われます。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が沈みきった時に動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。これは、ある程度の確実性や長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られます。彼の今のプレースタイルをみると、もう少し「間」を取れるように早めに始動して、いろいろな球に対応できるようにした方がいいかもしれません。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて、ベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。しかし見ているとあまり上手くタイミングを合わられていないので、この辺は改善の余地があるように感じます。

 ベース側に踏み出すように、外角への意識が強いことがわかります。踏み込んだ足元はブレないので、外に逃げてゆく球や低めへの球にも「開き」を我慢して食らいつけます。ただし左打者がインステップすると内角が窮屈になりがちで、率が残り難いという弊害もあります。


<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れているので、立ち遅れる心配はありません。むしろ早めに「トップ」のところまでグリップを引いているために、リストワークに遊びがなく柔軟性が損なわれているのは気になります。

 バットの振り出しも、けしてインサイド・アウトではないので、ボールと身体との距離をある程度確保しないと捌けません。肘の抜き方などを見ていても、内角の捌きに課題があるように感じます。逆に外角の球に対しては、結構弧の大きなスイングをして来るのには驚きました。バットの先端であるヘッドも下がらないので、フェアゾーンにボールを転がしやすいスイングにはなっています。少しポイントが後ろなので、打球も三遊間方向に転がりやすいように打っているフシはあります。


<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが静かなので、目線の上下動は少なめ。錯覚を起こすことなく、ボールを的確に捉えることができます。身体の開きも我慢でき、軸足の形も大きくは崩れません。軸が崩れ難い、調子の波が少ないスイングはできています。


(打撃のまとめ)

 打球は転がし内野安打が多いという話でしたが、けしてスイング自体は当てにゆく小さなスイングではないように感じます。リストワークに遊びがないのとタイミングのとり方の問題や内角の捌きの窮屈さなどで、打てる球は限られているように感じられます。この辺のスイングを、今後いかに広げて行けるかではないのでしょうか。






(野球への意識)

 打席への入りを見ていると、ラインを踏んだり・踏まなかったりと、特にそういった細かいところに意識が及ぶタイプではないようです。そういった意味では、ニ遊間のような繊細さが求められるポジションよりは、三塁や外野などがの方が合う性格なのかもしれません。

 足場の馴らし方を見ていると、それなりに自分の打撃にはこだわりが感じられます。けして意識が低い選手ではなさそうなので、これからいろいろなものが吸収することが期待できるかもしれません。今回の指名には、元横浜の田中充コーチの推薦も大きかったなんて話しもあります。実績が乏しいのに指名されたのには、彼をよく知るコーチが推すだけのものがあったからではないのでしょうか。



(最後に)

 パナソニックでも出場がままならかったように、即戦力でどうこうという選手ではないでしょう。厳しい社会人野球の環境を経験したことで、ある程度の基礎体力・基礎技術・常識を身につけた育成段階・発展途上の好素材といった感じでしょうか。

守備・走塁・打撃ともにまだまだですが、身体能力の高さがある選手なのは間違いなさそうです。2年ぐらいファームで漬け込んだ時に、どのぐらいの選手になっているのか、楽しみに待ちたいと思います。残念ながらプレーをしっかり確認できた選手ではありませんので、評価づけはできません。ただしもし見ていたとしても、「旬」を迎えたとは思えなかったでしょうから、指名リストに名前を載せたということはなかったと思いますが・・・。DeNAでいえば、百瀬大騎 的な選手が、一人加わった感じでしょうか。