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奥村 政稔(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







奥村 政稔(26歳・MHPS横浜)投手 178/80 右/右 (中津商-九州国際大-重工長崎出身) 
 




 「何故今年なのか?」





 もう1,2年ほど前から、指名される力はあった 奥村 政稔 。しかし指名されることなく、ドラフト適齢期は過ぎていった。社会人4年目の今年指名されたわけだが、いまさら感は否めない。何か大きく、変わったのだろうか?


(投球内容)

腕が突っ張って投げる、ややアーム式の腕のを振りをしている。

ストレート 常時140キロ前後~後半 
☆☆☆ 3.0

 素直な真っ直ぐを投げることは少なく、投球の多くは140キロ前後のカットボールのような微妙に動かしてくることが多い。しかし相手を仕留めるに行く時やランナーが得点圏に進んだりすると、140キロ台中盤前後の力のあるフォーシームを使ってくる。ズシッと球威と勢いがあるのだが、あまり空振りを誘う球質ではない。またストレート自体のコマンドは、バラツキがあってアバウト。両サイドには散らせることができるが、力んで高めに抜けることも少なくない。以前よりも力で押すことが少なくなり、投球が少しおとなしくなった感じがする。

変化球 カットボール・カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォークなど 
☆☆☆★ 3.5

 ストレートのコマンドはアバウトでも、ボールがズレる感じのカットボールではカウントを整えることができる。低めで小さく曲がるスライダー、縦に大きく割れるカーブ、チェンジアップやフォークなど的を絞り難い。どの球も絶対的なキレや曲がり幅は大きいわけではないのだが、低めに集めることができ痛手を喰らい難い。

その他

 ランナーを背負っても、牽制はあまりみられません。しかしフィールディングの動きはまずまずで、打球へのも素早く反応できます。クィックも、1.0~1.1秒ぐらいでまとめられることが多く、昨年よりも0.1秒ぐらい平均して早くなっていました。

(投球のまとめ)

 目に見えて昨年と変わったようには見えないのですが、変化球が低めに集めることができ、より精度を増したかなという気はします。またクィックも昨年より鋭くなっており、そういった細かい部分での進化は感じられます。以前ほど力でねじ伏せようという意識は、だいぶ薄れてきて余計な力みがなくなってきました。本当に細かい部分での変化は感じ、微妙な成長を続けている印象です。


(投球フォーム)

 今度は技術的に、何か変わっているのか探ってみたい。ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んでくる。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としは、甘さは残すものの落とせている。そのため身体を捻り出すスペースはある程度確保できており、カーブで緩急を効かせたり、フォークのような縦の変化球を投げることも可能性なはず。

 「着地」までの粘りもそれなりで、適度に身体を捻り出す時間も作れている。そのため多彩な変化球を使い、投球を広げることは可能で、実際にそういった投球をしている。どの球にも絶対的なものがないのは、これらの動作に甘さが残すためなのかもしれない。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後までしっかり内に抱えられており、両サイドにボールは散らせやすい。しかし足の甲での地面への押しつけができず浮いてしまっていて、力を入れて投げるとボールが上吊ってしまう。「球持ち」も良い方ではないので、大まかに両サイドに散らせて来るといったタイプなのだろう。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークを結構使ってきても窮屈にはなり難い。そういった意味では、肘への負担はそれほど気にしなくても良いのでは?

 むしろ心配なのは、ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がるように、執拗に角度をつけて投げていること。特に腕をブンと振って肩で投げているようなフォームのために、肩への負担はかなり大きいのではないのだろうか? フォーム自体は以前よりも力を抜いて投げられるようにはなっており、疲労は溜め難くはなっていると思うのだが・・・。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りはそれなりで、身体の「開き」も平凡なので、打者としては苦になるフォームではないだろう。腕は強く振られており勢いがあるので、速球と変化球の見極めは難しい。ボールへの体重乗せ具合は微妙で、それでも打者の手元まで球威のある球は投げられている。ただし、打者の手元までグッと迫ってくるような勢いはあまり感じられない。球速ほどは、打者は速く感じられない投手なのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特別優れているところはなく、極端に悪いところもない。良く言えばまだ伸び代が残されているともいえ、悪く言えば年齢の割には完成されていない。

 足の甲の押し付けができないために高めに上吊りやすいこと、肩への負担が大きなフォームなのはマイナス材料。多彩な投球を作り出すことは可能であり、現在でもそういった投球になっている。


(最後に)

 ボールが一定のレベルにありながら指名を逃してきたのは、年齢の割に技術的に完成度が未完成だったからではないのだろうか。それでも2年前、あるいは悪くても昨年あたりには指名されても不思議ではなかった。何故、今年だったのだろうという今更感は否めない。

 しかし今年のソフトバンクの指名選手の中では、1位の 甲斐野 央(東洋大)と共に1年目から一軍を意識できる選手。役割はリリーフ中心に求められると思うが、どのぐらいやれるのか注目したい。このように適齢期を過ぎても微妙な成長を続けてきた選手と言えば、摂津 正(ソフトバンク)のアマチュア時代を思い出す。球団も彼と重ね合わせるような思いで、指名に踏み切ったのかもしれない。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2018年 日本選手権)









 奥村 政稔(25歳・MHPS横浜)投手 176/68 右/右 (中津東-重工長崎)





                    「今年は指名されるよね」





 中津東商時代から注目されてきた投手で、重工長崎時代でも毎年のようにドラフト候補として期待されてきた 奥村 政稔 。チームが重工横浜と合併したことで、拠点を関東に移すことになった。そんな新しい環境になり、ワンランクレベルアップしてきたのだ。毎年少しずつだが進化しており、今年はいよいよ指名領域に入ってきた、そう実感をさせられる。


(投球内容)

少しアーム式で、ブンと腕を外から強引に振ってくるフォーム。

ストレート 常時145キロ前後~MAX147キロ 
☆☆☆★ 3.5

 投球の多くはカットボールを使うことが多く、フォーシームの真っ直ぐは勝負どころで使うことが多い。そのため先発でもフォーシームを投げるときは力が入っており、コンスタントに145キロ前後を記録し威力があります。逆に完全に球質が球威型なので、空振りを誘うというよりは、詰まらせるタイプの真っ直ぐ。

変化球 カットボール・チェンジアップ・スライダー・フォークなど 
☆☆☆★ 3.5

 上記にも書いたように、投球は140キロ前後のカットボール中心に組み立てられます。そのため少しボールがズレるような感じで、バットの芯を外します。その他チェンジアップだかフォークのようなドロンとした縦の変化がありますが、この球がキレイに抜けて空振りが取れる時と低めに行っても見極められてしまうこともあります。たまにスライダーやチェンジアップなどの、中間球の球も使いますが、こういったボールをあまり使わないで投球を組み立てる珍しいタイプかと。

 変化球の投げミスは少ないのですが、速球共々微妙にボールになったり収まりが悪い部分があります。基本的には、アバウトな投手だと言えるでしょう。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的。走者を背負っても、牽制はして来ない。走者への目配せ、注意力が低い選手ではないように見えます。しかし投球以外の部分も、やや不器用な感じはします。

(最後に)

 内外角にボールを散らせたり、甘いゾーンにはあまり入ってきません。しかし微妙にストライクが欲しいところでボールになったりと、ボールが先行することも少なくありません。いわゆる見ていて、収まりの悪い投手で、球数はどうしても多めになっているのではないのでしょうか。

 非常にボール自体に力があるので、この点では今年の社会人でも上位だと今年何度も見てきて思っています。投球が両サイドに散らせつつ、縦の変化を多く混ぜてくるので的が絞り難い。比較的低い順位で獲るのならば、面白い存在ではないのでしょうか。


(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、彼の可能性について考えてみよう。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばされており、お尻は甘さは残すものの一塁側へは落とせている。これにより体を捻り出すスペースはある程度確保できており、カーブで緩急をフォークで空振りを誘う投球は可能となる。

 「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間は並。そのため変化球のキレや曲がりは、どうしても並になり特徴を見出し難い。フォークもややドロンとしてキレイに抜けないのは、この辺の動作が大きいのかも。ストレートも含めて微妙にズラしたり詰まらせることで、打たせてとるのがこの選手の身上。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲の押し付けが地面から浮いてしまい、力を入れて投げるとボールが上吊ってしまいがち。「球持ち」も平均的で、ボールを押し込めたり、バックスピンをかけて回転の好いボールが投げられるわけではない。現状は大まかには散らすことはできるが、微妙に決まらず収まりが悪い。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻は落とせているので、カーブやフォークなどを投げても無理のないフォームではある。そういった意味では、肘への負担は少ないのでは?

 しかし振り下ろす腕の角度があり、送り出しにも無理が感じられ肩への負担が大きいそう。さらに腕も体から離れ外旋し、肩で投げている感じ。そういった意味では、肩への負担が大変大きなフォームではないかと。頑強そうな体つきではあるが、力投派なので疲れも貯めやすく登板過多になると不安は大きい。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りや体の「開き」は平均的で、フォーム自体それほど苦になるわけではない。その分ボールを微妙に動かしたり、球威のある球で詰まらせることに走っている。

 腕を強く振れており、変化球では空振りを誘いやすい。ボールへの体重の乗せは充分とは言えず、この辺がもう少し上手くゆくと、打者の手元までもっと来る感じの球になるのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点がないかわりに優れた部分もない。もう少し「体重移動」が上手くできると、球の質なども改善されそう。

 足の甲の押し付けが浮きがちでボールが高めに抜けやすいこと、肩への負担が大きなフォーム、「着地」の早さから多彩な球種は投げられる下地があるものの決め球になるほどの球が見出し難いフォームであることは理解しておきたい。


(最後に)

 25歳にしてはまとまりの悪い部分はあるものの、制球力、変化球などの部分が許容範囲に入ってきた。まして社会人でも上位の球威・球速を誇り、この辺は推せる材料。あまり高い順位でのプロ入りには賛同できないが、下位指名で意外に使えるという指名ならば、面白い選手ではないかと思う。年々少しずつ技量を伸ばしてきた点も買える材料で、今年は指名リストに名前を入れてみたい。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名以降ならば)


(2017年 都市対抗)