17sp-7
阿部 翔太(28歳・日本生命)投手 178/80 右/左 (酒田南-成美大出身) | |
28歳で指名された 阿部 翔太 。確か彼が旬ではないかと評価したのは、社会人3年目の25歳の時。あれから3年の月日が流れ、何か大きな変化があったのだろうか? (投球内容) スラッとした投手体型で、非常にキレイなフォームから投げ込んでくる正統派です。 ストレート 常時140キロ台~MAX147キロ ☆☆☆★ 3.5 球威や球速に驚くほどのものはないのですが、球質の良い真っ直ぐを投げ込んできます。特にボールを内外角に投げ分けるコントロールに優れ、打者の外角一杯にズバッと決められるコマンドの高さが光ります。プロの打者相手でも、こういった投球ができるのではあれば、それほど痛手は喰らわないのではないかとも思えます。 変化球 フォーク・カットボール・スライダーなど ☆☆☆ 3.0 スライダー・カット系のボールもあるように見えますが、投球のほとんどはフォークとのコンビネーション。またこのフォークが、ストンと落ちる感じではなく、ちょっとチェンジアップ気味にカウントが取れたり、引っ掛ける感じの球になります。リリーフを想定して獲得したのであればアリだとは思いますが、プロの先発をやってゆくには球種が単調であるように感じられます。 その他 クィックは、1.0~1.1秒ぐらいでまとめられており、まずまず素早い。牽制も適度に鋭く、走者を出してもじっくりと対処できている。特に投球以外の部分でも、大きな欠点は見当たらない。 (投球のまとめ) 3年前は都市対抗でも充分にアピールできたといった内容ではなかったし、今年の都市対抗でも2回1/3を無難に抑えたものの、緒戦で敗退。特に内容が、3年前に比べて大きく変わった印象は受けなかった。ただし3年前の登板では、微妙な制球が決まらず苦しんだ。しかし今回は、持ち味を発揮できた投球ではあったという違いではあったのだが。また、全日本の一員として国際大会のマウンドにも上がっており、そういった経験が随分と積めていたことは間違いない。 (投球フォーム) 今度はフォームが何か変わったのか? 3年前のフォームと比較して考えて行きたい。足を引き上げる勢いや高さはそれなりにあり、自分の「間」を大事にしているというよりは意外にリリーフタイプなのかなと。それでも軸足一本で立った時には膝に余裕があり、Yの字で立てるバランスの良さを魅せている。 <広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばされており、お尻は一塁側にしっかり落とせるフォームです。したがって身体を捻り出すスペースが確保され、カーブやフォークといった球種を投げるのにも無理はありません。 「着地」までの地面の捉えにも粘りが感じられ、適度に身体を捻り出す時間を確保。キレや曲がりの大きな変化球の習得が可能そうなフォームで投げていますが、実際には変化は小さく決め手に欠ける印象があります。 <ボールの支配> ☆☆☆☆★ 4.5 グラブを最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのため軸がブレ難く、両サイドへのコントロールも安定しやすい。また足の甲での地面の捉えもしっかりできており、浮き上がろうとする力も抑えられ、高めには抜け難い。「球持ち」も良く、形として実にコントロールが安定しやすいフォームではないのだろうか。3年前よりも、下半身の沈みや球持ちが良くなっている。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻が落とせるフォームなので、フォークを多投しても窮屈になり難いと考えられる。したがって肘への負担も少なく、こういった極端な配球も可能なのではないかと。 腕の送り出しを観ていても無理は感じられず、肩への負担も少なめ。けして力投派という感じでもないので、疲れも溜まり難く故障のリスクの低いフォームに見えた。腕を縦に振ってきたりフォークを多投するというリスクは感じられるものの、フォームの構造上は極めて負担は少ないのではないかとみている。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは作れており、打者としては「イチ・ニ~のサン」の「ニ~」のタメによってタイミングは図り難くなっている。その割にボールの出どころはやや早く見えるので、球筋がいち早く読まれてしまって縦の変化では空振りが誘い難いのは気になる。 また球持ち自体はあって粘っこいフォームではあるものの、腕の振り自体は平凡でそれほど打者は吊られ難い。彼の三振を取っているのをみると、空振りの三振よりもズバッとコース一杯に決めた見逃しの三振が多いのはそのせいなのかもしれない。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」が若干早いのが気になる材料。あとの部分は、3年前よりも粘っこく良くなっている感じがする。制球を司る動作に優れ、故障のリスクも少ない。これだけの土台があれば、もっと武器になる変化球を習得したり、多彩な球種で勝負して行けそうなものなのだが・・・。 フォーム的にはかなり完成度が高くなっており、これにオリックス特有の肉体改造がマッチすると、29歳での入団でもイメージを一変させるような変化が望めるかもという期待は抱きたくなる。 (最後に) 投球の変化よりも、フォームの成長を強く実感させられた。それでもボールの見やすさがあり、フォークを充分活かしきれていないピッチングスタイルは気になる材料。高校生を軒並み指名した穴埋めではあると思うのだが、28歳にしてあえて指名するほどの内容だったのかなと言われると疑問が残る。私ならば指名リストに残したかと言われれば、しなかったのだろう。それだけに、☆ を付けるという評価には今は至らない。しかし完成度された投手なのだが、あえてオリックスの球速アップが望める環境にマッチした時に、新たな魅力が引き出されるのではないかという期待感は抱きたくなった。 (2020年 都市対抗) |
阿部 翔太(25歳・日本生命)投手 178/78 右/左 (酒田南-成美大出身) | |
成美大時代から評判の速球派だった 阿部 翔太 。しかし日本生命入社後は肘を痛め、ようやく頭角を現したのは昨秋の日本選手権の頃から。そして社会人3年目の今年は、チームの絶対的エースに成長し、チームを都市対抗に導いた。今年で社会人3年目を迎える25歳、プロ入りにはラストチャンスの年齢に差し掛かっている。 (投球内容) セットポジションから静かに入ってくるフォームではあるが、手足の長い投手体型でダイナミックなフォームは体格以上に大きく魅せる。 ストレート 常時140キロ台~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5 MAX150キロと言われるが、先発だと140キロ~中盤ぐらい。腕を上から叩くことができるので、178センチぐらいの上背でもボールには角度が感じられる。またス~と伸びてくる、キレイな球筋のストレート。とくに球威があるとか、抜群の伸びがあるというほどではないが、打者の外角中心に集めることができる。 変化球 フォーク? スライダー ☆☆☆ 3.0 変化球の殆どは、フォークなのかスプリットなのかわからないが、沈む球とのコンビネーション。この球でカウントを稼ぐことが多いが、意外に打者に見極められてしまって低めのボールゾーンに落としても打者が振って来ないのは気になった。その他にもスライダー・カットボールなどもあるようだが、ほぼこの球しか使って来ないと考えて好いだろう。 その他 クィックは、1.0~1.1秒ぐらいでまとめられており、まずまず素早い。牽制も適度に鋭く、走者を出してもじっくりと対処できている。特に投球以外の部分でも、大きな欠点は見当たらない。 (投球のまとめ) 初の都市対抗登板となった今年のMHPS横浜戦では、4回で途中降板。充分にアピールできた、という内容ではけしてなかった。そういった意味では、もう少し他の試合での登板を確認したかった。特にストレートでも変化球でも、微妙にハズレて全体的に収まりの悪い内容。普段からこうなのか? それとも初の大舞台で緊張したからなのかは定かではない。 予選では2試合・13回2/3イニングを投げて、自責点2(防御率 1.32)と安定した内容でチームをドームに導いた。四死球4個はイニングの1/3以下だし、奪三振はイニングを上回る14個。被安打に至っても7安打とイニングの半数強ぐらいという予選の内容を考えると、本選では満足のゆく投球ではなかったことが伺われる。 (投球フォーム) そこでフォーム分析をすることで、彼の可能性について考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばされており、お尻は甘さは残すものの一塁側に落ちている。これによって体を捻り出すスペースは適度に確保できており、カーブで緩急を利かしたりフォークのような縦の変化球を投げるのにも無理がないと考えられる。 また「着地」までの粘りは並で、体を捻り出す時間は平均的。これにより変化球のキレや曲がりに絶対的なものがないのも、ここに原因があるように感じられる。この辺がよくなると、もっと変化球にも特徴が出てくるのではないのだろうか。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブはなんとか最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲の地面への押しつけが少し浅いので、力を入れて投げてしまうとボールが上吊りやすいのかもしれない。「球持ち」は並で、それほど指先まで力を伝えられているというほどではない。大まかに狙ったところにはボールが集められるものの、それほど繊細なコントロールまではつけられないようだ。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻の落としは甘さは残すものの、カーブやフォークといった球種を投げても負担は少ない。しかしながら変化球のほとんどはフォークなので、その点で肘を痛めやすいのかもしれない。 腕の角度には無理は感じられないが、腕を縦に送り出そうとするので多少の無理を感じなくはない。その辺が、故障で悩まされてきた一つの原因ではないかと思う。しかし現在はそれほど力投派ではないので、負担の大きなフォームという感じはしないのだが・・・。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りや体の「開き」は並で、打者としては苦になるフォームではないだろう。ましてキレイな球筋であり、相手にとっては嫌らしさは感じないはず。 投げ終わった後に、腕は絡むなど空振りは誘う勢いはある。ボールへの体重の乗せはそれほどでもなく、打者の手元まで球威のある球が投げられているのかと言われると、微妙な気がする。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に大きな欠点はないかわりに、とくに優れている点も見当たらない。力を入れて投げるとボールが上吊ってしまう危険性があり、多少セーブしないとコントロールが付けにくい可能性。故障のリスクは現在高いとは思えないものの、過去の故障などを考えるとどうだろうか? またいろいろな球を投げられる下地はあるものの、武器になる球を身につけられるかには今後も疑問が残るフォームだということ。 (最後に) 都市対抗の投球も、フォーム分析をしても微妙な投手という印象は否めなかった。小林 慶祐(日本生命-オリックス)のようなボールに迫力がない分どうかと思うが、まとまりという意味ではこの阿部の方が上だと言えよう。 本人がどの程度プロ志向が高いのかにもよるが、小林が5位指名だったことを考えると、それと同じかそれ以下で終わる可能性が高い。それでもプロ入りしたいという意志があるならば、名門社会人チームのエースとしての実績があるだけに評価はされているだろう。しかし指名の有無は、日本選手権の予選の内容次第かもしれない。社会人の残留の有無は外に漏れ難いのだが、会議当日に名前が呼ばれるか注視したい。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2017年 都市対抗) |