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谷川 昌希(阪神)投手のルーキー回顧へ







谷川 昌希(25歳・九州三菱自動車)投手 (筑陽学園-東京農大出身) 





                  「使い勝手は良さそう」





 東京農業時代から、回転の良いボールを投げ込んでくる実戦的な投手だった 谷川 昌希 。昨年まで2枚看板だった 有吉 優樹(ロッテ)が抜け、今年は自らの力でチームを都市対抗に導いた。社会人3年目の今年は、悲願のプロ入りは実現するのだろうか?


(投球内容)

 MAX149キロを誇ると評判ですが、驚くような球威・球速で圧倒するタイプではありません。むしろ安定感、ボールを振らせるピッチングの上手さなどで抑える実戦派です。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX143キロ 
☆☆☆★ 3.5

 先発だと常時140キロ前後と、ドラフト指名される右投手としてはむしろ並以下かもしれません。しかしそれ以上に感じさせる回転の効いた球質であり、球速よりも見栄えがしますし威力も感じます。結構の良いところに決められたりしますが、ストレートは全体的に高い傾向にあります。追い込むまでのコントロールはさほど高くないので、早いカウントで被弾しやすいのではないかと感じます。リリーフだと145キロ前後出せるので、そういったときはもう少し見栄えのするボールで押せるのではないのでしょうか。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆☆ 4.0

 むしろこの投手は、速球よりも変化球に良さがあるタイプだと思います。特に追い込んでから、ボールになるスライダーを振らせたり、縦の変化球があったりと。更に一辺倒にならないように、カーブを使って緩急に心がけます。そういった変化球で組み立てたり、空振りを奪えたりできるなど実戦的な投球が持ち味。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的で、牽制も適度に挟んで来る程度。フィールディングはよくわかりませんでしたが、他は適度にこなせるといったタイプで、際立ってそういう部分に優れた投手には見えません。

(投球のまとめ)

 追い込んでからはボール球を振らせるのがうまく、ピンチでも精神的に強くて踏ん張りの利くタイプかと。むしろ心配なのは、追い込むまでの投球にアバウトな部分があり、そこで痛手を喰らわないかなという心配はあります。現状ドラフト指名となると、低い順位でとって意外に活躍する、そういったところが良いかと。5位で入団した有吉がリリーフで貴重な役割を果たしているように、彼もそういった位置づけの投手になるのではないのでしょうか。





(投球フォーム)

先発でも、結構勢いよく足を引き上げて来るリリーフタイプです。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足は比較的高い位置で伸ばされており、お尻は甘さは残すものの一塁側に落ちています。そういった意味では、身体を捻り出すスペースはある程度確保できており、捻り出して投げるカーブで緩急をフォークで縦の変化というピッチングはできなくはありません。

 「着地」までの粘りは平均的で、多彩な球種を操れないわけではないでしょう。むしろこの選手の変化球は、良く曲がるというよりもボールゾーンを振らせる上手さにあるように思います。現状うまく変化球を扱えているので、悲観することはなさそうです。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くに留めており、両サイドの投げ分けは安定しやすい。ただし足の甲での地面への押しつけが浅いので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」は悪くないように見えるもののボールを押し込めているという感じではないので、この辺も改善できると低めにもっと集まりそう。両サイドよりも、高低への制球が課題かと。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としには甘さは残るものの、肘への負担という意味ではそれほど気にしなくても良さそう。腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担は少なそう。フォームは結構勢いよく入ってくるものの、動作自体はそれほど力投派でもないので、消耗は少ない使い減りしなそうな投手には見えるのだが。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りがあるタイプではないので、打者としてはそれほど苦にならなそう。身体の「開き」も平均的で、甘く入ると痛打を浴びやすいのではないのだろうか。

 腕は振れていないわけではないが、投げ終わったあと身体にそれほど絡んで来ない。ボールへの体重乗せは悪くなく、打者の手元まで勢いのある球が投げられている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に大きな欠点は見当たらない。その反面、特に優れている部分もなく可も不可もなしといった感じ。

 故障のリスクは高くないのは良いが、高めに不用意に甘く入る球を少なくしたい。投球の幅はすでに結構引き出しを持っているので、今後どこまで幅を広げられるだろうか?


(最後に)

 素材的には、プロに入るか入らないか微妙なレベルだと思われる。しかしその分、変化球の活かし方に優れた投球術、ピンチで強い精神力があり、個人的には指名リストに入れてみたいと評価する。今後の更なる上積みに期待というよりも、今ある技量で何処まで通用するかというタイプ。それだけに指名は、下位ぐらいで順位よりも良いじゃないかという期待を狙いたいタイプではないのだろうか。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2017年 都市対抗)