17sp-3
高木 渉(真颯館3年)投手 180/75 右/左 |
「センスの良さは感じる」 昨夏、2試合ほど彼の出場する試合を見た。個人的には投手としてマークしていた素材だが、故障で最後の夏は調整不足。スカウト達は、打者としての才能を評価していたのだという。確かに昨夏の時点から、チームの4番打者を担っていた。その柔らかいハンドリングからは、非凡な打撃センスが感じられる。 (守備・走塁面) 残念ながら昨夏2試合ほどみたが、守備・走塁の詳細はわからず。ただし投手としては牽制などの動作は鋭く、ピンチになると長くボールを持つなど野球センスの高さを感じさせる選手だった。内野をこなすような俊敏さは感じなかったが、外野手ならば問題ないだろう。故障の回復にもよるが、2年夏の時点で140キロ台の勢いのある真っ直ぐを投げていたので、地肩が強いのは間違いない。 またセカンドゴロの際の一塁到達タイムは、左打席から4.38秒ぐらい。もう少し本気で走り抜けたとしても、あと0.2秒ぐらい早い 4.15秒前後だと思われ、走力で魅了するような圧倒的な脚力があるとは思えない。 そういった意味では、走力・守備でスカウト陣を魅了するほどのものがあるのかは疑問なのだ。やはりこの選手は、非凡な打撃の才能を評価されての選手なのだろう。 (打撃内容) 残念ながら今年のプレーを直に確認できなかったので、昨年2試合の模様から判断したい。ただし動画で、この夏ホームランを放ったものがあったので、昨年のフォームと比較しながら考えてみたい。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 前足を軽く引いて、グリップを高めに添えます。腰の据わりも程よくなり、背筋をしっかり伸ばし構えます。両目で前を見据える姿勢も悪くないですし、全体的に昨年よりもバランスがよくなっています。特にあごをグッと引いて、打席での集中力が高まりました。 <仕掛け> 遅すぎ 早めにつま先立ちして構えるのですが、始動自体はリリース直前というのは、昨夏と変わらず。これは「遅すぎる仕掛け」に相当し、日本人の筋力やヘッドスピードを考えると、プロレベルのスピードに対応するのは厳しくなります。それでも手元までボールを呼び込むので、より長打力を意識したスタイルだと言えるでしょう。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を小さく上げて、真っ直ぐ踏み出します。始動~着地までの「間」がなく、どうしても狙い球を絞って叩く 点 の打撃になってしまい確実性が乏しくなります。この夏の予選でも、3試合で12打数2安打 打率.167厘と低迷しました。 真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。昨夏まではベース側に踏み込むインステップを採用していましたが、この夏は真っ直ぐ踏み出すことで、内角でも外角でも幅広く対応したいという意志が感じられます。踏み込んだ足元も、インパクトの際までブレないのは、昨夏同様に良いところ。そのため外角に逃げてゆく球や低めの球にも食らいつけます。昨夏も、レフト方向へ流す打球も見られました。 <リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0 打撃の準備である、「トップ」の形をつくるのは自然体。昨夏は少し遅すぎるぐらいだったので、この辺は改善され動作に余裕が生まれました。バットの振り出しは、けしてインサイド・アウトという最短距離で出てくるタイプではありません。むしろ外の球をしなりを活かしたスイングで、インパクトの際にもヘッド下がらず外角の厳しい球でもうまく拾える印象があります。 しかしこの夏のホームランの映像を見ると、実にうまく肘を畳んでボールを裁けています。けしてインサイド・アウトではないのに、ボールとの距離をうまくとって内角の球に対応。スイング自体は、けしてスイングの弧が大きいとか、フォロースルー使っている感じはしません。うまくリストを使って、ボールを乗っけて角度をつけることができています。 <軸> ☆☆☆☆ 4.0 昨年から変わらず素晴らしいのは、足の上げ下げが小さいので目線の上下動が小さいこと。身体の開きを我慢でき、軸足の形も崩れない軸の安定感ではないのでしょうか。 (打撃のまとめ) 始動が遅すぎることで、どうしても打てるポイントが限られてしまう。その辺が、確実性が上がらない理由かもしれません。実は昨夏の準々決勝・準決勝で一本もヒットを放っていませんでした。昨夏の打撃の印象がなかったのも、そのせいでしょう。 ただしトップの形成が若干早めたり、真っ直ぐ踏み出すことでさばけるコースが増すなど、打撃の幅は広がっていました。そのことが、今年になり大きく打撃が伸びた要因ではないかと考えられます。 (最後に) 確かに惚れ惚れするような柔らかいリストワーク、内角のボールの捌きなどを見ていると特殊な能力を秘めているのではないかと感じます。しかしその一方で、守備・走塁に光るものがなく、それでいて長距離打者というよりも好打者タイプの左打ち外野手となると評価は得にくいように感じます。 タイプ的には、ベイスターズに1位指名された 北 篤(巨人)に似たタイプ。あるいは、より彼を柔らかくした好打者タイプのイメージでしょうか? ちょっと評価し難いタイプですが、育成枠あたりで指名する球団が出て来るかもしれません。しかし現状は、本会議で指名するのには勇気がいる素材だという感じです。実際最終学年のプレーを見られたわけではないので評価付けはできませんが、指名リストに載せられるかと言われると、私なら難しいのではないかと感じました。プロ側の評価は高いようですが、果たしてドラフト当日彼を指名して来る球団は出てくるのでしょうか? (2017年夏 福岡大会) |
高木 渉(真颯館2年)投手 180/75 右/左 |
「この冬の成長次第では」 福岡に1人、ちょっと気になる投手がいる。その男の名前は、 高木 渉 。均整の取れた体格から投げ込まれる速球と縦に鋭く落ちるスライダーに威力があり、この冬の成長次第では、ドラフト候補に入ってきても不思議ではない男なのだ。 (投球内容) ストレート 常時135キロ前後~MAX143キロ ☆☆★ 2.5 2年夏の時点では、常時135キロ前後ぐらいか。夏前にはMAX143キロまで到達したのだというが、まだまだ好い球と悪い球のバラツキは大きい。時々指にかかった時のボールに可能性を感じさせる投手で、そういった球が安定して投げられるようになると面白い。それほど細かいコントロールはないものの、おおよそ打者の外角に集めることができていた。物凄くグ~ンと手元で伸びるとか、ピュッと空振りを取れるキレはないが、適度に勢いを感じさせるボールを投げている。 変化球 カーブ・縦スラ ☆☆☆ 3.0 カーブなのかスライダーなのかわからないが、カーブのような縦に曲がりながら落ちる球でカウントを整える。しかし投球の多くは、速球で押すピッチングスタイル。追い込むと、縦のスライダーで空振りを奪うことができる。落差自体はしっかりしているので、あとはもう少しストライクゾーンからボールゾーンにコントロールできるようになれば、高校生ではなかなか打てない代物となる。 その他 牽制は鋭く、クィックも1.05~1.15秒でまとめられており、投球以外の能力も高そう。打ってもチームの4番を務めるなど、野球センスに優れている。ランナーを背負ってからも、ボールを長く持ったりとする投球センスも秘めている。 (投球のまとめ) 2年夏の時点では、私学の強いところと戦うと厳しい部分はあった。しかしストレートの勢い・縦スラの威力は本物で、さらに投手としてのセンス、運動神経にも優れたものを持っている。志しを高く持って冬のトレーニングを積んで行ければ、春季大会では福岡でも話題になりそうな投手なのは間違いない。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、この選手の可能性を考えてみよう。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 お尻はバッテリーライン上に残ってしまっており、身体を捻り出すスペースは充分とはいえない。そのためカーブやフォークといった身体を捻り出して投げる球だと、どうしてもフォームが窮屈になりがち。 「着地」までの粘りもそれほどではなく、身体を捻り出す時間も並ぐらい。こうなると手元で鋭くキレる変化球や曲がり幅が大きい球の習得は心配になるが、カーブのブレーキも悪くないし、縦スラの落差も空振りが誘えるものを持っているので悲観することはない。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分け安定。足の甲でも地面を捉えており、ボールもそれほど上吊らない。「球持ち」もそれなりで、更にボールが押し込めるようになると、低めにも集まってきそう。現時点ではそれほど細かいコントロールはないものの、下半身が安定してくれば制球の好い部類になるかもしれない。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻が落とせない割に、カーブのような球で緩急を、縦スラだと思われるが縦の変化がフォークボールだと肘への不安は大きくなる。 腕の送り出しには無理がなく、肩への負担は少なそう。物凄い力投派でもないので、疲労の蓄積は少なそうだ。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りや身体の「開き」は並だが、全体的にフォームが直線的で合わせやすいのではないかと考えられる。 腕は強く振られており、速球と変化球の見極めは困難。そういった意味では、縦スラで空振りを誘うという意味では大きい。ボールへの体重の乗せはまだ不十分で、もう少しリリースを我慢してから投げられれば、打者の手元までの球威・勢いのある球が投げられるようになるだろう。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」でいえば、「開き」と「体重移動」が発展途上という感じがする。極端に悪いということではないが、すべての動作にもう少し粘りが出てくると面白い。 お尻が落とせないことで肘への負担はあるのと、今後ピッチングの幅を広げて行けるのかという疑問は残る。それでも故障のリスクは少く、順調に伸びて行けそうなところは明るい材料。 (最後に) まだドラフト候補確定というほどの選手ではないが、面白い素材であるのは間違いない。この世代ではそういった素材に出会う機会も少ないだけに、ひと冬越えた成長を期待せずにはいられない。春季大会から、その名前が響いて来るようだと楽しみなのだが。 (2016年夏 福岡大会) |