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渡邉 啓太(ロッテ)投手のルーキー回顧へ







渡邉 啓太(24歳・NTT東日本)投手 177/72 右/右 (いわき光洋-神奈川工科大出身) 





                     「左打者への攻めはいい」





 多くの右投手の場合、左打者を苦手にするケースが多い。しかしこの 渡邉 啓太 の場合、むしろ左打者の方が投げやすいのではないのだろうか? 


(投球内容)

ランナーがいなくてもセットポジションで、オーソドックスなフォームから投げ込んでくる。

ストレート 130キロ台中盤~140キロ台前半 
☆☆★ 2.5
 
 先発だと常時140キロ前後ぐらいとプロの投手としては平均以下で、その割に手元でピュッとキレるとか球威があるとか、フォームが打ち難いというほどでもない。何より気になるのが、コントロールがアバウトでストライクゾーンの高めに浮きやすく、その球もコースに散っているわけではないということ。球威や切れがあれば、ある程度甘くても打ち損じてくれる可能性があるが、このぐらいだとプロは見逃してくれないのではないのだろうか。その一方で打者の内角を厳しく突きつつ、外角にズバッと決める爽快感は、この投手の魅力。

変化球 カットボール・スライダー・ツーシーム・フォークなど 
☆☆☆★ 3.5

 冒頭にも書いたように、左打者の内角を厳しく突く130キロ台中盤のカットボールが厄介。この球を魅せておいて、左打者の外角にスライダーでカウントを稼いだり、勝負球のストレートを外角に投げ込む投球パターンが確立されている。また外に逃げながら落ちるツーシームも使うので、左打者にとっては的が絞り難く厄介だと言える。

 一方右打者に対しては、外角に速球にスライダーやカットボール、内角に速球やツーシームなども使い分ける。しかし左打者ほど厄介になる球がなく、追い込む前に打たれるケースが多い。また追い込むとフォークはあるが、まだ絶対的な精度を誇っているとは言えない。

その他

 牽制には自信があるのか、二塁でも刺そうという意欲が感じられる。またクィックは、1.15~1.20秒ぐらいと平凡。微妙な出し入れで勝負したり、相手に的を絞らせない多彩な攻めが、この投手の持ち味。

(投球のまとめ)

 結構すでに引き出しは使い切っているので、今後は一つ一つの球種の精度・切れを高めること。特に投球の核となる、ストレートのコントロール・球威をもう少し磨きたい。それができれば、もっと多彩な変化球も活きてくるだろう。今のままだと、プロの一軍打者を抑えきるのは厳しいとみる。





(投球フォーム)

今後プロでの進化が可能なのかどうか? フォームを分析することで考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 基本的にお尻の一塁側への落としは甘く、バッテリーライン上に残りがち。そのため身体を捻り出すスペースは不十分で、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない。

 「着地」までの粘りもそれほどではなく、身体を捻り出す時間も充分とは言えない。そのため変化球が平凡で決め手不足になりがちなところを、ツーシームやカットボールという小さな変化を駆使することでピッチングの幅を広げることに成功している。フォークというよりも、もう少し握りの浅いスプリットのような球の方が合うのではないのだろうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブが内に抱えられているものの、最後後ろに抜けがち。そのため、両サイドの投げ分けはアバウトになりやすい。足の甲での地面への押しつけは好いように見えるし、「球持ち」も非常に良く見える割にボールが上吊るのは何故なのか? もう少しボールを押し込んでリリースできると、低めにも集まりそうなものだが・・・。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻が落とせないで捻り出しが窮屈なのに、フォークなどは使って来る。しかしその頻度は少なく、それほど気にしなくても好いだろう。

 腕の送り出しには無理がなく、肩の負担は少なめ。けして力投派というほどでもないので、疲労も貯め難いのではないのだろうか。

<実戦的術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りが平凡で「開き」も並で直線的なフォームであることからも、打者としては嫌らしさを感じるフォームではないだろう。そのことを逆手にとって、微妙にズラす球でイメージを狂わしているフシはある。

 腕の振りは適度に振れているので、速球と変化球の見極めはつき難い。ボールも前で放せているように見える割に、体重がグッとボールに乗っている感じがして来ないのは何故なのだろうか?

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「開き」に物足りないものがあり、ここに粘っこさが出て来るとフォームにも嫌らしさが。

 制球を司る動作が悪くない割にアバウトなのは気になるが、故障のリスクはさほど高くない。投球の幅を広げられるか心配なところを、微妙に動かす球で相手の芯をズラす投球ができている。


(最後に)

 個人的には、即戦力を期待するのは難しいのではないかとみている。しかしその割に、今後の上積みがとかそういったタイプでないのも気になるところ。元来は多彩なタイプなので先発が向いているように見えるが、速球が140キロ台を連発するようじゃないと見栄えがしないし苦しい。そのため最初は、リリーフから入って行くべきではないのだろうか。

 いずれにしても、もうワンランク上の球威・球速・制球を磨かないと、一軍で通用するのは厳しいと見ている。一年ぐらいファームで漬け込んで、どのぐらいの投球ができるようになっているのか? そこに懸かっている選手ではないのだろうか? そのため「旬」だとは判断できず、☆ を付けるのは控えたい。ロッテの育成力の高さに期待して、2年目以降に注目してみたい。


(2017年 都市対抗)