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大下 佑馬(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ







大下 佑馬(25歳・三菱重工広島)投手 179/84 右/左 (崇徳-亜大出身) 





                      「悪くない」





 事前にドラフト候補として大きく取り上げられることのなかった 大下 佑馬 。 しかし社会人3年目のこの投手を、ウェーバー2番目の2位指名という早い段階で獲得するなどヤクルトの並々ならぬ期待の高さを伺わせた。果たしてこの意外な指名は吉と出るのか、検証してみたい。


(投球内容)

 亜細亜大時代は故障にも泣かされ、リーグ通算で10試合ほど。4年秋こそ6試合に登板したが、通算で1勝しかあげられていない。しかし入社1年目の都市対抗でも登板し、140キロ台を連発し存在感を示した。以後全国大会で時々登板するも、昨年は指名漏れ。しかし社会人3年目に入り、球威・球速がワンランク増してきた印象はある。

ストレート 常時145キロ前後(MAX148キロ) 
☆☆☆☆ 4.0

 今年の都市対抗日通戦では、MAX148キロまで到達。空振りを誘うような手元でグ~ンと伸びてきたり、ピュッとキレるタイプの球ではない。あくまでも球威のある、重いストレートを投げ込んでくる。その球を左打者のインハイに集めたりと、両サイドに散らせて詰まらせるスタイル。

変化球 スライダー・カットボール・チェンジアップなど 
☆☆☆★ 3.5

 基本的には、横滑りする120キロ台のスライダーと130キロ台中盤のカットボールとのコンビネーション。それに余裕があると緩いカーブ、左打者にはチェンジアップ系の球で空振りを誘いに来る。特に右打者外角の微妙なところにスライダー・カットボールを集めることができるのと、いつでもこの球でカウントを整えられるのが強味。そのため四死球で、自滅するような危うさはけしてない。ただし、打者の空振りを狙って奪えるような変化球は見当たらない。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的。ほとんど牽制は見られないが、ボールをじっくり持って相手を焦らせたり、パッとマウンドを外すなどの冷静さがある。そのためリリーフだけでなく、先発としての適性もあるように感じる。

(投球のまとめ)

 都市対抗ではリリーフでの登板だったが、元来じっくり自分の「間「」で投げる先発タイプか。コントロール、球種、変化球なども程よく、突き抜けた存在ではないが安定した内容が期待できそう。前評判は高くなかったが、即戦力としてもある程度計算したくなる投球だった。






(投球フォーム)

 では技術的には、即戦力になりえる投手なのか検証してみたい。この投手ランナーがいなくても、クィックのように軸足に体重を乗せることなく、すぐに膝を落として投げ込んでしまう。それでもあれだけの球威・球速の球が投げられるのだから、しっかり体重を乗せて投げたら、どんなボールを投げるのか興味深い。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は適度に一塁側に落とせており、身体を捻り出すスペースは確保。これによりカーブで緩急をつけたり、フォークのような捻り出して投げる球種を投げても無理はありません。

 「着地」までの粘りも悪くはなく、身体を捻り出す時間もそれなり。そのため変化球のキレや曲がり幅もそれなりで、けして変化球が悪くないのは強味。絶対的な球はまだありませんが、ストレートと変化球のコンビネーションで投球を組み立てられます。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブが最後まで身体の近くで抱えられていないので、両サイドへの投げ分けは乱れやすい。また足の甲の押し付けも地面から浮いてしまっていて力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。しかし彼の場合、上原浩治(現カブス) のように、これらの動作をしっかり行わなくても制球が安定している。これは、「球持ち」の良さを活かして、上手く手元でボールをコントロールできているからだと考えられる。そのため、それほど悲観しなくても良いのではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻も適度に落とせており、窮屈さは感じられないので、カーブやフォーク系の球を投げても肘に問題はなさそう。また腕の送りにも無理はなく、肩への負担も少ない。けして力投派でもないので、故障のリスクは低いフォームになっている。

 大学などでは故障に泣かされ大成できなかったが、そのため今のように負担のかかり難いフォームを見出したのかもしれない。現状のフォームならば、それほど悲観しなくても良いだろう。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」の粘りはそこそこで、身体の「開き」も並ぐらい。そういった意味では、けして合わせ難いフォームではない。

 気になるのは、振り下ろした腕が身体に絡んで来ないので速球と変化球の見極めがつきやすく、あまり空振りが誘えないのではないかということ。しかしボールには適度に体重が乗せられてからリリースできているので、打者の手元まで球威のある球が投げられている。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」が良いところがあげられ、あとは並ぐらいだろうか。

 制球を司る動作に課題があるものの、「球持ち」の良さで補うことができている。また故障に泣かされてきた選手だが、今は負担の軽いフォームになっている。将来的にも、多彩な変化球でピッチングの幅を広げて行けるタイプ。あとは、武器になるような球が習得できると、大きく変わってきそうだ。


(最後に)

 ドラフト戦線ではあまり名前が浮上することがなく地味な扱いだったが、実戦力&球の力も兼ね備えており、新人王候補のダークホース的存在 ではないのだろうか。2位じゃ無ければ獲れなかったのか?という疑問の声もあがったが、それだけヤクルトが高くその能力を買っているということだろう。

 開幕からローテーションに入ってくる可能性もあり、上手く流れに乗れると面白いかもしれない。もしそうなれば、5~7,8勝は充分見込め、それ以上の成績も残せるかもしれない。ドラフト戦線の前評判に左右されることなく、自分たちの目を信じて面白い選手を見出したのではないのだろうか。今後どのぐらいの成績を残すのか、期待して見守りたい。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2017年都市対抗・プロ・アマ交流戦)