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田中 優大(巨人)投手のルーキー回顧へ






田中 優大(羽黒3年)投手 183/75 右/右 
 




                    「かなりのインステップ」




 残念ながら試合の模様を確認できなかった 田中 優大 投手。僅かにニュース映像の際の2球ほどでしか投球を見ることができなかった。その僅かな情報を元に、どんな投手なのか考察してみたい。パッと見、かなりインステップして来る癖のあるフォームに特徴があるのだとわかる。


(投手におけるインステップとは?)

 そもそも、投手におけるインステップとは何か? 簡単にいえば、後ろの軸足より踏み込んだ足が右投手ならば三塁側に、左投手ならば一塁側に着地することを言います。


(インステップは何故嫌われるのか?)

 三塁側に斜めに踏み出すのに、ボールはベース側に正面に投げなければいけない。そのため余計なひねりが加わる分、身体への負担が大きく故障に繋がりやすい。あるいはボールが抜けやすく、コントロールがつけ難いという傾向があります。


(インステップのメリット)

 右打者にとっては、なんだかボールが抜けてきそうで恐怖感を抱き腰が引けやすくなります。ですから右投手でインステップする投手は比較的右打者に強く、左投手でインステップする投手は左打者に強い傾向にあります。プロ野球界では、山崎 康晃(DeNA)がインステップする投手で有名ですが、それも含めての本人の特徴なので、重々承知の上でここまで野球を続けてきたのでしょうから、私はプロ入りするまでインステップをしてきた投手に関しては、無理に矯正しない方が良いと考えています。またインステップのメリットとしては、「開き」の早さを抑えられる特徴があります。


(投球内容)

 さて田中投手に話を戻しますが、非常にインステップした後にスリークォーターから投げ込んできます。腕の振りの良さにも特徴があり、ボールやフォームには勢いを感じます。

 ちょっと映像を見る感じだと、130キロ台後半ぐらいで、MAXも142キロだということ。育成の3位まで残りプロテストでの入団などであることも考えると、やはり通常指名された投手に比べると球威・球速の面では若干物足りないのではないかという気がします。しかし映っていた映像では、左打者の内角にズバッと投げ込んで来る大胆さもありました。

 素晴らしいのは、スライダーの切れにあります。映像に映っていましたが、スリークォーターの腕の振りを活かし大きく曲がりながら落ちるスライダーが武器なのがわかります。その他の球は確認できませんでしたが、カーブを混ぜたり左打者にはシンカー系もあるようです。腕の振りが良いので、効果的に変化球が使える可能性があります。

 そしてスカウトのコメントを読む限り、気持ちの強さを感じさせる力投派との印象を受けました。羽黒は春季大会で東北大会まで進出しているのですが、いずれも登板はリリーフだったようです。現状は、ゲームメイクする先発型というよりも、ボールの勢いで押すリリーフ型という感じでしょうか?


(投球フォーム)

わずか2球の映像だったので、フォームを分析することで今後の可能性について考えてみましょう。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 前に倒れるようにインステップして来るフォームなので、お尻の落としはバッテリーライン上に残りがちです。そのため身体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急をフォークで空振りをという投球には適していません。カーブをどの程度の頻度で使って来るかわかりませんが、ひねり出せないぶん投げる時に窮屈になっている可能性はあります。

 しかし「着地」までは大きく前にステップさせることで、けして地面を捉えるのが早すぎる感じはしません。それだけ身体を捻り出す時間は確保できており、カーブやフォークといった球種以外ならば良い変化球を習得できる可能性があります。スライダーの曲がりが良いのも、この時間がある程度稼げているからではないのでしょうか。


<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで身体の近くにあるので、両サイドの投げ分けはそれほど悪くないのでは? 足の甲での地面への押しつけは浅く、足のツマ先のみが地面を捉えて回転しています。そのためボールは上吊りやすい危険性があります。インステップで抜け球が多いのかわかりませんが、「球持ち」自体はそれほど悪いようにには見えないので、手元である程度ボールを制御できているのではないかという感じもします。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としは甘いのですが、それほどカーブやフォークといった球種を使っていないのであれば、悲観するほどではないでしょう。腕の送り出しには無理は感じないので、肩への負担も少ないのではないかと感じられます。しかし気になるのは、インステップによる弊害でしょうが、このへんはこういうフォームだと思いうまく付き合ってゆくしかありません。むしろ修正してボールがゆかなくなったり、個性がなくなったらプロでは元も子もないので。日頃からアフターケアに努めて、うまくやっていって欲しいものです。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも適度に作れていますし、スリークォーターでもインステップの影響も相まって「開き」が抑えられているところは良いところ。

 腕の振りも良く、フォームに勢いがあります。それだけ、空振りを誘いやすいフォームだということ。ボールへの体重の乗せはまだ発展途上ですが、思ったよりはうまく体重移動できています。もう少し股関節の柔軟性とリリースの我慢ができてくれば、グッと前に乗るようにもなってくるのではないのでしょうか?



(最後に)

 まだまだ投手としての完成度・肉体は発展途上の選手なのでしょう。彼の場合は、インステップは欠点ではなく個性であり、長所になるタイプかと思います。かなり右打者にとっては、厄介な投手に思えるでしょうから。個人的には育成枠指名らしい、個性的な投手ということで、ありだと思います。評価づけは観戦できていないのでできませんが、ぜひ3軍の試合あたりで出会ってみたい一人でした。


(2017年 山形大会)