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正木 智也(ソフトバンク)外野手のルーキー回顧へ







正木 智也(慶応大4年年)一塁 182/87 右/右 (慶応義塾高出身) 





 「大舞台に強いのはさすが」





 春季リーグ戦では、本塁打・打点 の二冠王にこそ輝いたが、打率は.257厘と物足りない成績に終わった 正木 智也 。しかし、大学野球最大の舞台・全日本大学選手権では、準決勝から打ちまくり 2本塁打 9打点 打率.385厘 の大活躍で、チームを日本一に導いた。その活躍が認められ、大会MVPにも選出。まさに、ここ大一番で強いそのバッティングはプロ向きだといえよう。


走塁面:☆☆★ 2.5

 一塁までの駆け抜けタイムは、早いときには4.35秒前後で駆け抜ける。これを左打者に換算すると、4.1秒ぐらいに相当し、ドラフト指名される左打者の平均的なタイムとなる。しかし1年春からリーグ戦に61試合に出場し、盗塁を決めたことはない。そのため動ける走力がないわけではないが、盗塁を期待するというのは難しいのかもしれない。

守備面:☆☆ 2.0

 昨年までは外野をやっていたが、最終学年では一塁手になっていた。外野手としては、打球への反応や守備範囲は広くないものの、フェンスに向かって飛び込んだりと手抜き感のない外野手だった。そのためプロでも、レフトあたりならばこなせるのではないかとみていた。しかしどうもこちらが思っていた以上に、外野守備がまずかったらしく、最終学年では一塁に専念している。プロでも多くを望まなければ、一塁&左翼手 あたりの起用になるのではないのだろうか。また判断力は悪くても、丁寧にプレーをしようという意識は感じられる。地肩が弱いわけではないのだが、送球の形が悪いので制球という意味で不安が残る。


(打撃内容)

 多少守備に目をつむっても、打撃でお釣りがくればといったタイプ。特に打率が上がらない時でも、一定の割合で本塁打を放つことができるのは、天性の長距離打者としての資質を持っているのかもしれない。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 少しだけ前の足を引いて、カカトを浮かせて打席に立つ。グリップを捕手側に引きつつ、高めに添えた強打者スタイル。腰の据わり具合や全体のバランスとしては並な構えだが、両眼でしっかり前を見据えられるところは良いところ。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下るときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。実は早めに動き出すように、いろいろ球に対応しようとする意志が感じられる。

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 足をしっかり引き上げ回し込んで、少しベースから離れたアウトステップを採用。始動~着地までの「間」取れており、速球でも変化球でのスピードの変化には対応できる。またアウトステップするように、内角への意識が強い構えとなっている。

 踏み込んだ前の足が、地面から早く離れる傾向が強い。それだけ、引っ張って巻き込む打撃を得意としている。アウトステップして足元も早く離れるところからも、外角に逃げてゆく球や低めの球には強い打ち方ではないのだろう。そのため外角球でも、高めの球を払うようなスイングして対応することになりそうだ。それでも右方向への意識がある時は、足元もある程度動かず我慢できているので、全く右方向への打撃ができないわけではない。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 あらかじめ「トップ」に近い位置にグリップを添えて構えるので、速い球に立ち遅れる心配はない。昨年も、早川 隆久(早大-楽天)の速球を右中間にはじき返していたのでスピードへの対応は確かなのだろう。また内角の球をさばく時は、上からインサイドアウトでダウンスイング。外角球を叩く時は、少し遠回りにバットが出てくるもののバットの先端であるヘッドを立てて、広い面でボールを捉えドアスイングになるのを防いでいる。ボールに角度をつけて飛ばせるのは、引っ張ったときに多く観られるのではないのだろうか。

 またスイングの弧はそれほど大きいわけではないが、適度にフォロースルーを使ってボールを遠くに運ぶことができている。むしろ昨年のスイングなどは、ヘッドが少し下りながらも大きな弧を描いていたが、フォロースルーが上手く使えていなかった。このへんは、少しスイングの軌道をいじったのかもしれない。

<軸> ☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げはあるが、目線の上下動はそれほど大きくはない。ステップを狭めにとって腰の回転を促しているのかもしれないが、そのぶん足元が動きやすい傾向にある。軸足も少し前に傾きがちで、身体が突っ込むのには注意したい。

(打撃のまとめ)

 足の使い方などは、大学先輩である 横尾 俊建(楽天)に良く似ている。ステップが狭めで足元の盤石さに欠けるところがあり、外に逃げてゆく球や低めの球への対応に、少し課題が残る。確実性は高いとは言えないが、一定の割合で本塁打を放つことができるあたりは、プロでも飛距離を売りに勝負して行ける資質を持っているのではないのだろうか。


(最後に)

 先輩の 岩見雅紀 (楽天)や 横尾 俊建(楽天) のようなゴツい系の選手ではなく、どちらかというと 高橋由伸的なスマートさがあるタイプ。それでいて、高い確率で打球に角度を付けて飛ばすことができている。即プロで大活躍とはゆかないかと思うが、導き方次第では、大化けをしても不思議ではない。しかしその場合に、守るポジションはどうするかなど、起用の幅が狭いところがどう出るかだろう。一塁や左翼などが空いている球団ならば面白い素材だとは思うが、試合に出るためにそれ以外のポジションを望まれると厳しいのではないのだろうか。そのため打撃でも起用でも限られており、かなり入る球団によって未来が変わってきそうな選手ではないのだろうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年 大学選手権) 










正木 智也(慶応大3年)右翼 182/87 右/右 (慶應義塾高出身) 
 




 「大学球界を代表する強打者」





 慶応義塾高校時代から、高校通算50本塁打を記録するなど、神奈川では知られたスラッガーだった 正木 智也 。慶大進学後は、1年春からリーグ戦出場。本格的にレギュラーになったのは2年春のシーズンながら、順調にキャリアを積み重ねてきた。大学ジャパンの候補メンバーにも選出されるなど、名実共に今年の大学球界を代表する強打者だと言えよう。


走塁面:☆☆★ 2.5

 一塁までの塁間は、右打席から4.5秒前後(左打者換算で 4.25秒 に相当)するなど、走力としては 中の下~下の上 ぐらいの脚力とみてよいだろおう。ここまでの3年間でも、リーグ戦で盗塁を決めたことはない。ただし、一塁までの駆け抜けをみていると、全力で走り抜けることが多くプレーに手抜き感は感じられない

守備面:☆☆★ 2.5

 チームではライトを担い、地肩ぐらいは 中の上 ぐらいなのかなといった感じ。ただし、送球の形が悪く、また送球の精度といった意味では高いとは言えない。また右翼手としての守備は、けして打球勘が良いとか守備範囲が上手いといった感じはして来ない。ただし、打球への執念は魅せる選手なので、上手くはないけれど手抜き感は感じられない。また飛んでくるゴロに対しても、しっかり腰を落として丁寧に捕球しようとする姿勢は感じられる。

 プロの右翼手としては少々心もとないが、左翼あたりならば合格ラインなのではないのだろうか。ただし、よほどプロの左翼手を任されるということは、打撃で圧倒しないと厳しいだろう。ただし、自分の持っている能力を出し惜しまないプレースタイルには好感が持てる。


(打撃内容)

 レギュラーに定着しはじめた2年春のリーグ戦では、打率.324厘。また3年秋のシーズンでは、.378厘と動作が大きく粗っぽそうに見えるが、そこまで脆い感じはしない。通算本塁打は6本をここまで放っていてるが、秋季リーグ戦では 早川 隆久(早大)のストレートを右中間にはじき返していたように、150キロ級のスピードボールにも対応することが可能のようだ。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 3年春の(8月開催)のリーグ戦では前の足を引いていたが、秋のリーグ戦では両足を揃えたスクエアスタンスだった。グリップは比較的高めに添えて、投手側にヘッドを傾けている。腰の据わり・全体のバランスとしては並だが、両眼で前を見据える姿勢はできている。全体的に、まだ本人もシックリくる形を見出だせていないのではないのだろうか。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下がり始める時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。始動のタイミングとしては、対応力を重視したアベレージヒッターの傾向が強い。彼の場合早めに動き出すのは、対応力を重視するといった意味合いよりも、大きな動作を行い打ちにゆくので、その動作でも振り遅れないためのなのかもしれない。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げて大きくまわしこみ、若干ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップ気味。始動~着地までの「間」は取れていて、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすいタイプかと。アウトステップ気味に踏み込むことからも、内角への意識が少し高い感じはする。

 踏み込んだ足は、なんとか我慢しているが、地面から離れるのは早い。実際観ていても、内角寄りの球を引っ張って巻き込むのは好きなようだ。また右方向への打撃も得意ではないのだろうが、多く観られるので広角に打ち返せる打者だと観ては良いのではないのだろうか。ただし足元が早めに地面から離れがちなので、本当の意味で逃げてゆく球や低めの球はあまり得意ではないのではないかとみている。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 打撃の準備段階である「トップ」を早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配はない。ただし、バットのヘッドが投手側に傾いて構えているので、どうしてもバットの出はスムーズとは言えず、インパクトまでもやや遠回りに出てくる。インパクトの際にも、少しバットの先端であるヘッドも下り気味かなと思える部分はあるのだが、これである程度率を残しているので、そのへんはあまり気にしなくても良いのかもしれない。

 スイングの弧は大きめで、強烈な打球を飛ばす原動力になっている。フォロースルーをさほど上手く使えていないので、この辺が上手く使えてくると飛距離が伸びて本塁打も増えるのではないのだろうか。バットのしなり自体は、ある程度使えているようには見える。

<軸> ☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げなどのアクションが大きい割には、目線の動きは激しすぎることはない。また身体の開きも、踏み込んだ足がなんとか地面を掴んで我慢はできているので、早すぎるということは無さそう。軸足の形が前に傾いたり地面から真っすぐは伸びていないので、調子の波は比較的激しいのではないかと。

(打撃のまとめ)

 バットの先端であるヘッドが投手側に傾き過ぎていることから、全体的インパクトまでロスがある打撃になりがちだ。それがボールを捉えるまでの一連のルーティンの一部なのかもしれないが、突き抜けた成績を残せないできた要因ではないかと。あとは、右方向に打球を打つ時に足元がまだ盤石とは言えないので、上半身の強さに対し下半身が充分支えきれていないアンバランスさを感じる。

 それでもなんとか各動作が許容範囲内で我慢していることで、一定の結果を残せるようにまとめられたスイングにはなっている。もう少しフォロースルーなど腕っぷしの強さでなく技術で運べるようになると、本塁打も増えてきそうな気はするのだが・・・。最低でも、年間で6本ぐらいの本塁打は、最終学年に積み重ねて欲しい。

(最後に)

 守備でも走力でも、けして上手くはないが雑なところは観られないし力を出し惜しみしない。そういった意味では、好感の持てるプレースタイルではないのだろうか。

 打撃に関しては、課題もありながらもそれを致命傷にならない範囲で留めているのは好感。ただし、持っている能力を安定して出せる、活かしきれているとは言い難い。動作をみていると、先輩でもある横尾俊建(日ハム)に似ている気がする。位置づけ的にも現状は彼の大学時代に近いものがあるような気がするが、サードができた横尾に比べると、外野手だけにプロ側の評価は若干低めになってしまうのではないかと。そのため最終学年で、今までとは一味違う内容を示せないと、指名までこぎつけるのは厳しいとみている。それでも今年の大学生ではトップクラスの強打者だけに、注視して見守ってみたいと思わせてくれる選手だった。


(2020年 秋季リーグ戦)





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正木 智也(慶応義塾高2年)右翼 181/80 右/右 
 




 「飛ばす能力はある」





 見た目も構えもそれほど強打者っぽくは見えないのだが、打球はよ~く飛んでゆく。夏の大会でも、横浜スタジアムに中段に叩き込んでいた。また正木は、引っ張るだけでなく右方向でもスタンドインできる長打力を併せ持つ。


(守備・走塁面)

 走力はそれほど懸命に走ったものを計測ができたことがないのだが、一塁までの塁間を右打席から4.7秒前後だった。これを左打者に換算しても、4.55秒前後に相当。もう少し真剣に走ったところで、上のレベルで足を売りにするほどの脚力があるようには思えない。

 夏までは左翼を守っていたが、秋はライトに変わっていた。打球への反応、キャッチングは無難という感じで、極端に打球勘が悪いとかキャッチングが下手だという感じはしない。上のレベルでも、レフトあたりならば無難に守るのではないかという気もする。また左翼からの返球を観ても、中継の選手に返すだけなので、どのぐらい地肩が強いのかはもう少し観てみないとわからない。


(打撃内容)

 広角に打ち返す強打者という感じだが、打席からは威圧感やギラギラしたものは感じられない。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 前の足を引いて、グリップは少し下げ気味に構えます。腰の据わり、全体のバランスとしてはさほど良くないものの、両眼で前を見据える姿勢はしっかりできている。両眼でボールを観ることは、錯覚を起こすことなく球筋を追える意味でも重要な要素だと言える。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が下がりきったところで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を、バランスよく兼ね備えたスタイル。そのため中距離打者やポイントゲッターに多く観られる仕掛けとなる。彼の打撃を見ていると、本質的には中距離打者なのではないのだろうか。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 投手の重心が下がりきった時に、足をしっかり引き上げて回し込み真っ直ぐ踏み出して来る。始動~着地までの「間」はソコソコで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも同じように捌きたいという意志が感じられる。

 踏み込んだ足元はブレないので、外角に逃げてゆく球や低めの球にも対応。内角の球に対しても、あらかじめ足を開いて構えているので、上手く呼び込んで腰の回転を活かし上手く捌けている。

<リストワーク> 
☆☆★ 2.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは、自然体で力みは感じられない。ただしバットを引くのが遅く、速い球に差し込まれやすいのではないかと危惧する。バットの振り出し自体も、少し遠回りに軌道する。そういったロスは感じられるものの、インパクトの時にはバットの先端であるヘッドが下がらずに、しっかり振り切れている。

 内角の球が来たと思えば、スパッと動き出す振り出しの良さが観られる。またヘッドスピードも鋭く、当て勘も悪くない。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはあるので、目線の上下動は平均的。しかし身体の開きは我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びており、軸を起点に綺麗に回転できています。

(打撃のまとめ)

 下半身の使い方は非常に良いのですが、まだ上半身の使い方に課題を感じます。けして力感がなくても飛んでゆくのは、それだけバットの芯で的確に捉えているからでしょう。元来内角が好きなのか? 内角に来た球はスパンと開いて振り抜くことができますし、少し遠回りなスイングをいかして右方向に流した打球は伸びて行きます。

 ヘッドスピードもそれなりに速いですし、打撃に独特の感覚を持った選手、そんな印象があります。


(最後に)

 あまりギラギラしたものが伝わって来ないので、大学に進むのが規定路線の選手なのではという印象は受けます。本当のところの守備・走塁の能力が掴めていないのですが、その辺の魅力も乏しいことを考えると進学タイプのように感じます。しかし持っているものには面白いものがあるだけに、今後も追いかけてゆきたいものです。17年度の神奈川の中では、増田 珠(横浜高校)と並ぶ強打者であることは間違いないでしょう。


(2016年秋 神奈川大会)