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中村 奨成(広島)捕手のルーキー回顧へ







 中村 奨成(広陵3年)捕手 181/78 右/右





                    「一躍1位指名候補に」





 甲子園に来る前から、甲子園でのアピール次第では1位候補になってもおかしくはないだろうと考えられていた 中村 奨成 。 しかし 清原 和博 が甲子園で記録した5本塁打の記録をも抜く大会6本塁打で、一躍甲子園の主役へと躍り出た。ちょっとこれはできすぎだろうと思っていたが、U18の大会では一転して不調に陥った。一体彼の本当の実力は何処にあるのか考えてみたい。


(ディフェンス面)

 大会前から、中村の肩は全国屈指ではないかと言われるぐらいの捕手であった。ただ地肩が強いだけでなく、実に捕ってから投げるまでの動作が素早い。彼の凄さは、圧倒的なスローイング能力にあると言っても過言ではないだろう。

 投手にミットを示し狙いをつけやすくし、そのグラブを地面に下げる癖はない。そのためワンバウンドするような球に対しても、立ち遅れることなく素早く反応。彼の良さは、大型でも瞬時の動きが素早く実に反応が鋭いところにある。そのためか? 何処か全身でボールを止めにゆこうとせずに、腕を伸ばすだけで対処しようとする雑な面があることは否めない。グラブの出し方や反応にボールの押し込み等が悪いわけではないが、安易なミスがあったりと残念なプレーも少なくない。この辺は、プロで徹底的にに鍛えないと行けないだろう。

 またリードもまだ勘に頼る部分も多く、内角を使うタイミングもおかしい。そのためしっかりとリードを教えられる人に、付く必要があるだろう。また投手の気持ちを察したり、相手の微妙な変化に気づくような細やかな部分が不足している。捕手としての適正に欠けるとまでは思わないものの、かなり捕手としては時間はかかるだろうと感じている関係者は少なくないはず。捕手というポジションを考えると、5年ぐらいでモノになれば早いほうだろう。ディフェンスから信頼を得るというよりも、打撃で存在感を示しそこからチャンスを広げてゆくタイプではないのだろうか。


(打撃内容)

 下級生の時からスイングの前を大きくとり、フォロースルーが使える飛ばせるタイプの打者だった。甲子園を見ている限り内角でも外角でもホームランをしていて、穴が少ないように見える。しかし打っているのは速球系がほとんどのため、変化球への対応が今後の課題。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 スクエアスタンスで両足を揃え、グリップを高めに添えた強打者スタイル。腰はあまり据わらないが背筋を伸ばし、両目で前を見据える姿勢や全体のバランスは並ぐらいだろうか。昨年はグリップを体の近くで添えていたが、自然体になり余裕のある構えには変わってきている。

<仕掛け> 平均~遅め

 投手の重心が沈みきった底のあたりから、前に重心が移動する段階で動き出して来る。そのため「平均」~「遅めの仕掛け」の中間ぐらいだろうか。いずれにしてもボールを手元まで呼び込み思いっきりひっぱたくスタイルで、中距離~中長距離打者あたりの打者だと考えられる。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足をあまり引き上げず、回し込んで真っ直ぐ踏み出してくる。始動~着地までの「間」はそれほど取れていなく、狙い球を絞って叩く「鋭さ」が求められる。彼の場合狙い球は速球系であり、緩急への対応にはそれほど優れていない。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。踏み込んだ足は多少ブレることもあり、「開き」を充分我慢できておらず、パワーロスをしているのではないかと疑問が残る。

 基本的にセンターからレフト方向に引っ張るのを得意としているが、高めの球ならば上手く払って右方向へも長打に繋げることはできている。昨年からそうなのだが、下半身のエネルギーを内に溜め込んでから放出するのは上手くない。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、始動の遅さを補えている。特に印象的なのは、非常に「トップ」が深く取れているということ。これが弓矢の弓を強く引くが如く、強い反発力を生み出している。けしてインサイドアウトのスイングではないのだが、肘の使い方が上手くキレイに抜けて来る感じ。そのためインパクトの際にもヘッドが下り気味で少しロスがあるはずなのだが、しっかり前が大きくとれるスイング軌道。下半身が上手く力がため込めていないのに対し、上半身はインパクトの際に強く押し込めており、一番強いエネルギーをぶつけることができている。

 ボールを捉えてからも、大きな弧を描きつつ、フォロースルーを適度に使いボールを遠くに運ぶことができている。ヘッドスピードも鋭く、甘い球を逃さず叩く「鋭さ」を持っている。とにかく見た目以上に、ボールを遠くに運べる能力を持っている。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動はそれなり。体の「開き」は充分という感じではないので、この辺の下半身の使い方が課題。軸足の内モモの筋肉は昨年よりも強さが感じられるようになり、この辺が素直に結果に現れるようになってきた。

(打撃のまとめ)

 下半身の使い方に課題が残す一方で、上半身の使い方は上手くなってきている。この辺の上半身と下半身のバランス・一致ができてくると、木製バットでも結果が残せるようになってくるのではないのだろうか。

 今は速球系などさばけるタイミングが限られており、変化球への対応が課題。内外角へのコースへの対応や、右、左、センターへと叩き込める打球への幅は持てている。まだ確実性には課題を残すが、非常に非凡な部分と未熟な部分が混在しているスイングで、この辺のバランスが取れてくると打撃でも存在感を示せる捕手になれるのではないのだろうか。しいて一番素晴らしい点をあげるとするならば、インパクトの際の押し込み が素晴らしいことに尽きるのではないのだろうか。


(最後に)

 甲子園で6本の本塁打を打ったことで打撃が注目されたが、プロレベルの球に対応するのには少し時間がかかりそう。更に直さないといけない部分も多く、自慢の打撃でも一軍で通用するには数年はかかるだろう。

 ディフェンス面も課題は多く、これまた時間がかかることが予想される。確かに飛ばす能力・スローイングという両方の能力に秀でており、、素材としては数年に一人の高卒捕手ではないのだろうか。しかしプロの正捕手に定着するまでには、5年ぐらいはかかることを覚悟した方が良さそう。そのぐらいは失敗を繰り返しても正捕手に育てようという、忍耐力と覚悟のある球団にぜひ指名してもらいたい。そして獲得したからにはチームの正捕手に、そして球界を代表する捕手に育てなければいけないぐらいの素材ではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆☆☆ (1位指名級)


(2017年夏 甲子園) 









 中村 奨成(広陵2年)捕手 182/77 右/右
 




                「攻守にバランスがとれている」





 攻守にバランスがとれているという意味では、全国屈指の捕手なのではないかと思われる 中村 奨成 。1年春からマスク被り、チームの1番を担うなど、走れる身体能力も兼ね備える。2年夏の予選では、4番・捕手として出場していた。


(ここに注目!)

やはり最大の売りは、上から叩きつける形のスローイング。塁間1.8秒前後で到達するなど、全国指折りの強肩ぶり。


(ディフェンス面)

 180センチ台の大型捕手ながら、フットワークは身軽。ミットをしっかり示し、下に下げる癖もない。特にミットが捕球時にブレないので、審判からストライクカウントを導きやすい。やや低めの球を捕りゆく時に上から出るのは気になるが、総じてキャッチングはしっかりしている。捕手は、まず捕れることからという意味では合格点。

 上記に書いたように、スローイングの能力も申し分ない。ただし別の動画みたら、大きくスライドしてショート方向に流れる返球があり、これに関しては疑問が残った。セカンド方向にゆくことは許されても、ショート方向に流れることは、滑り込んで来るランナーと逆方向なので捕手としては許されない。

 リードに関しては、結構内を使いたがるなど強気な部分があるので、それほどリードセンスは感じられなかった。またそれほどきめ細やかさがあるというよりも、西日本の捕手らしく攻撃的なプレースタイルなのかという気はする。個人的には好みの捕手ではないものの、現時点では全国でも指折りの捕手ではあるように感じられる。





(打撃内容)

スイングの弧が大きく、フォロースルーもとれ、しっかり振ってくる強打者タイプ。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 両足を揃えたスクエアスタンスであり、グリップを高めに脇を閉めて身体の近くで添えている。少し背筋を反らせ気味立ち、全体のバランス、両眼で前を見据える姿勢は並ぐらいだろうか。

<仕掛け> 遅め

 投手の重心が下がりきって、前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。ボールをできるだけ引きつけて叩くスタイルであり、長距離打者か生粋の二番打者に多く見られる仕掛けです。将来的に、長打力がグ~ンと伸びて来る可能性を秘めています。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 軽く足をあげて、真っ直ぐ踏み込んできます。始動~着地までの「間」は短く、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められます。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも幅広く捌きたい意識が読み取れます。

 踏み込んだ足元もなんとか我慢してスイングできているのですが、できればもう少し内にエネルギーを貯め込んでから放出したいので、踏み込んだ足のつま先をもう少し閉じて構えた方が良いのではないかという気もします。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、かつ早めに作れています。そのため始動の遅さを補うことが、ここでできています。バットの振り出しは、少し遠回りでありボールを捉えるまでにロスはあります。さらにインパクトの瞬間では、バットの先端であるヘッドが少し下り気味なので、打ち損じも少くないかと。そういった意味では、確実性という意味ではそれほど特別なものは感じられません。

 それでもスイングの弧を大きめにとり、フォロースルーも多少使えているので、遠くにポ~ンと打球が飛んでゆきます。強く鋭くはじき返すというよりも、上に運べるタイプの打者ではないかと。

<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の引き上げが小さい割には、目線はそれなりに動いている印象。身体の開きは足元がもっと閉じられると、開きを我慢できて引きつけて叩けるようになりたい。軸足は地面から真っ直ぐ伸びて、打撃の波は少なそう。それでも軸足の内モモの筋肉にあまり強さが感じられないので、この辺が打球の強さ・飛距離という意味で、まだ突出していない要因かもしれません。

(打撃のまとめ)

 現時点では、バットの振り出しやヘッドの下がり、開きの我慢などの点で、ボールを捉える能力としては特別なものは感じられません。

 しかし大きなスイングの弧・フォロースルーがとれること、始動が遅くボールを呼び込んで叩ける部分を見ていると、ボールを遠くに飛ばせる才能があるように感じます。軸足の内モモの筋肉の締り、強さが出てくるよう
だと、飛距離は全然変わってくるかもしれません。


(最後に)

 攻守にバランスがとれている選手であり、その点では全国でも指折りの存在。ディフェンスだけ見ていれば、福永 奨(横浜)の方が好みですが、打撃の将来像という意味では中村の方に分があるように感じます。現時点では、超A級ではないものの、ドラフト候補としてマークできる、数少ない捕手の一人であることは間違いないのではないのでしょうか。


(2016年夏 広島大会)