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稲森 宏樹(オリックス)捕手のルーキー回顧へ






 稲富 宏樹(三田松聖3年)捕手 178/88 右/左
 




                 「紫外線アレルギーを乗り越えて」





 紫外線アレルギーを発症しながらも、周りのサポートを受けながら闘い抜いた高校生活。今は症状も治療により改善し、プロ入りを決意した。


(ディフェンス面)

 最大の武器は、塁間1.8秒台で投げ込めるスローイングにある。またその一方で、大きな課題もこのスローイングにあるという感じがする。プレッシャーのかからない場面での送球では、走者の滑り込んで来るところに地肩の強さをいかして余裕を持って送球。しかし試合に入ると、投げ急いでしまいキャッチングミスをしたり送球を乱してしまうことも少なくない。自分の地肩を信じて、焦らず投げればしっかり刺せるだけのものがあるのだから。自分に自信を持って、堂々とプレーして頂きたい。

 投手にミットを示し、地面に降ろす癖もない。ワンバウンドするような球にも素早く腰を落として対応。キャッチングに特別ものは感じられなかったが、フットワークは結構機敏でカバーリングなどにも入ることはできている。チームの主将だけあって、周りにも指示がしっかり出せている。ディフェンス面でもまだまだ未熟な部分はあるが、素材としては悪くないので時間をかけてじっくりと技術を習得していって欲しい。試合の流れが相手に流れると、真っ白になって思考が低下してしまうことがあるようだ。その辺は、場数を踏んで改善していって欲しい。





(打撃内容)

 2年夏の予選では3番、3年夏の予選では5番を担っていた。最後の夏は4試合で、15打数3安打 長打は記録していない。元々長打で魅了するといった強打者タイプというよりも、逆らわずセンターからレフト方向にはじき返す好打者タイプに感じられた。

<構え> 
☆☆☆☆ 4.0

 前の足を軽く引いて、グリップは高めに添えて捕手側に引いて構えている。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢もよく、それでいて力みも感じない構えは理にかなっている。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手の重心が下がるときにベース側にツマ先立ちし、本格的に動き出すのはリリース直前という「遅すぎる仕掛け」を採用。日本人の筋力・ヘッドスピードで、プロの球を木製バットで打ち返すのは困難な打ち方。しかし慣れしたんでタイミングのとり方というものがあると思うので、今のスイングでどのぐらいやれるのか? プロの球と対峙して、どうすればよいか考えれば良いと思う。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を一瞬だけ浮かし、軽くベースから離れた方向に踏み出すアウトステップ。始動~着地までの「間」がなく、打てるタイミングを一点に絞った打ち方。すなわち狙い球を絞り、その球を逃さない「鋭さ」がより求められることになる。

 アウトステップするということは、内角に意識が強いことの現れ。踏み出した足元はインパクトの際にもブレないので、逃げてゆく球でも高めならばついてゆけるはず。低めの球にも、「開き」を我慢して食らいつくことができるだろう。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 あらかじめグリップを捕手方向に引いており、できるだけボールを引きつけて叩くことを意識しています。始動の遅さを、無駄を廃することで補おうとしていることがわかります。

 バットの振り出しは、けしてインサイド・アウトのような印象は受けない。しかし外に球には素直にバットが振り下ろされており、うまくヘッドを残してセンターからレフト方向への打撃を可能にしている。けしてスイングの弧が大きいとかフォロースルーを活かしてボールを遠くに運ぶ強打者タイプではなく、キレイにはじき返す巧打者タイプ。

<軸> 
☆☆☆☆★ 4.5

 足の上げ下げは殆どないので、目線の上下動は見られない。身体の開きも我慢できており、軸足も地面から真っ直ぐ伸びていて安定感と粘り強さが感じられる。調子の波は少なそうなタイプであり、うまく逃げてゆく球や低めの球にも拾ってゆけるタイプではある。

(打撃のまとめ)

 ドラフト指名選手としては、打撃も現時点では下位のレベルだろう。しかし技術的にはしっかりしたものを持っており、プロのスピードに慣れれば全く打てないという感じはしない。もちろん幾ら技術が高くても、根本的にボールに当てる能力・ボールを見極める眼がないと厳しいのだが・・・。





(最後に)

 平常心の時のプレーは良いが、精神的に余裕がないと送球が乱れたり、キャッチングミスをするなどテンパることが多い。自分を信じプレーできるようになるには、周りの忍耐と自らの経験・練習で培った自信が必要となってくるのではないのだろうか。

 打撃に関しては、技術的には非常に高いので、将来的にどのぐらいやれるのか楽しみ。しかし現時点では、けして際立つものはないので、プロに入るとレベルの差に戸惑うことになりそうだ。攻守に時間がかかりそうな素材だが、球団の育成力と忍耐力が求められることになりそう。しかし苦しい経験を人一倍してきた選手だろうから、壁を一つ一つ乗り越えて行ってくれるものと信じたい。試合の模様を一部動画で確認しただけなので、評価付けは行わいことをご了承願いたい。


(2017年夏 兵庫大会)