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伊藤 康祐(中日)外野手のルーキー回顧へ







伊藤 康祐(中京大中京3年)中堅 174/75 右/右 





                  「大学進学タイプのイメージ」





 何処と無くそのプレーを見る限り、高校からプロというよりも、六大学や東都に進んで野球を続けるタイプに見えた 伊藤 康祐 。この夏の甲子園では、優勝した広陵戦でセンターバックスクリーンに本塁打。この試合で3安打を放ち、U-18の日本代表にも選出された。


走塁面:
☆☆☆★ 3.5 走塁偏差値 57

 一塁までの塁間は、右打席から4.30~4.15秒前後。これを左打者に換算すると、4.05~3.90秒ぐらいに相当する。これをドラフト指名された右打者のタイムで偏差値化すると、走塁偏差値は 57 。 プロ野球選手の中でも、上位30%以内には入ってくる脚力を持っている。

 しかし、この夏の愛知予選の6試合では盗塁1個。夏の甲子園での1試合・U18での9試合でも、盗塁は1個も記録していなかった。そのため、よほど余裕のある展開ではないと、盗塁を仕掛けて来ることはないというのが現状だ。走力はあるので、プロで走塁技術を磨いたり、生き残るための術として走塁を強く意識することで、こういった部分が変わってくることを期待したい。

守備面:
☆☆☆★ 3.5

 落下点までの打球の入り、打球への反応もまずまず。高校生としては、安定した守備力があるのではないのだろうか。肩も基準以上であり、走攻守すべてに中の上~上の下ぐらいの能力を秘めている。その一方でプロに混ぜた時に突き抜けたものもないだけに、埋もれてしまわないように注意したい。





(打撃内容)

 愛知予選では、打率.407厘。甲子園でも6打数3安打と打ちまくった。しかしU18では、9試合に出場するも9打数1安打に終わっている。観ていて独特の脆さがある部分があり、どうしても個人的には気になった。その原因が何なのか考えてみたい。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢、それに全体のバランスと平均的。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下がる時に足を引き上げて来る、「早めの仕掛け」を採用している。こうやってみると、対応力重視のアベレージヒッターであることが伺われる。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を長く引き上げたままにして、踏み込むタイミングを図ってくる。踏み込みは、真っ直ぐ~少しベースから離れたアウトステップ気味。始動~着地までの「間」が充分取れており、速球でも変化球でもスピードの変化に対応しやすい 線 でボールを捉えるタイプ。少しベース側から離れた方向に踏み出すので、真ん中~内角寄りを意識していることが伺われる。

 その打撃を得意にしているのは、腰の逃げが早いことからも伺うことができる。足元のブレを無理に押さえ込もうとすると、外に逃げてゆく球や低めの球に対し手打ちになってしまう危険性がある。そのため外角低めのチェンジアップなどは、高めに浮かないと厳しい。引っ張って巻き込むのは得意なので、真ん中~内角寄りの球をセンターからレフト方向へ打ち返すことに適している。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのが、少しバットを引くのが遅れ速い球に立ち遅れやすいのでは? その辺が、U18でも苦労した一つの要因だと考えられる。バットの振り出し自体は、上からミートポイントまでロスなく振り抜けている。けしてスイングの弧が大きいとか、フォロースルーを活かしてボールを遠くに運ぶタイプという感じではない。あくまでも長打は上手く巻き込めた時であり、元来ははじき返す打撃が持ち味なのだろう。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは静かで安定しているので、目線の上下動は少なめ。足元がブレないようにしてある程度のところで止められてはいるが、腰は早く逃げて開いてしまっている。

 特筆すべきは、軸足の内モモの筋肉が非常に強いということ。これが強烈な打球を生み出す原動力になり、甲子園でもセンターバックスクリーンに叩き込む、大きな後押しになったのではないのだろうか。

(打撃のまとめ)

 始動も早くボールを線で追える選手で、けしてミートセンスが悪いわけではない。しかし腰が早く開く欠点があり、どうしても外角に逃げてゆく球や低めの球を我慢できない部分がある。そのため捌けるコースが、非常に限られているのではないのだろうか。

 この部分をプロ入り後改善できるかにかかっており、それを確認できる前に指名してしまったのは正直どうだろうか?という不安は残る。スイング軌道が良いので、打てる球と打てない球の割り切りがしっかりできるかも大きなポイントに。軸足の内モモの強さは、高校生でも上位の部類に入る。そういった意味では、今後もっと長打力が伸びてくる可能性も否定できない。


(最後に)

 守備・走塁とまずまずではあるが、A級かと言われると現時点ではそこまでのものは感じられない。そのため打撃で特徴を出してゆかないと、埋もれてしまう危険性も否めない。その一方で肝心の打撃も、腰の逃げが早くリスクの高い素材。私ならば、大学で様子をみたいと判断する。果たしてこの段階での指名が、今後どのように影響するのか? 注視して見守りたい。


(2017年夏 甲子園)