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永井 敦士(広島)外野手のルーキー回顧へ







永井 敦士(二松学舎大付3年)左翼 178/91 右/右 
 




                      「意外に足が速い」





 178/91 というガッチリした体格からは想像できないぐらい、この 永井 敦士 の足が速いことに驚かされた甲子園。また腕っぷしの強い強打が自慢の選手ながら、甲子園ではセンターから右方向への打撃に徹し、5打数5安打の離れ業。この2つの意外性から、ただの強打者ではないことを印象づけたことが、指名を大いに手繰り寄せたことは間違いない。


走塁面: 
☆☆☆ 3.0 走塁偏差値 51

 一塁までの到達タイムは、右打席から 4.30秒前後。これを左打者に換算すると、4.05秒前後に相当する。ドラフト指名された右打者のタイムで偏差値化すると、走塁偏差値は 51 とほぼ平均レベル。けしてプロの混ぜたら俊足とは言えないが、足で見劣るということはないということ。この夏の東東京大会でも、6試合で2盗塁とそれなりに走る意欲も持っている。

守備面:
☆☆ 2.0

 むしろ気になるのは、守備の方。打球への反応、落下点への入りなどもイマイチで、守備に関しては下手な部類。走塁を見る限り肩もけして強くはなく、足は遅くはないのに左翼を守っていたことも頷ける。しかしプロで鍛えれば、レフトならば許容範囲の左翼手にまでなれる可能性は秘めている。プロで一番伸びるのは、守備面ではないかと私は思っている。





(打撃内容)

技術で運ぶというよりは、腕っ節の強さを活かしたパワフルな打撃が自慢。

<構え> 
☆☆ 2.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに添えた強打者スタイル。腰は適度に据わり、背筋を伸ばしつつ立っている。ただし両目で前をしっかり見据える姿勢がいまいちなのと、構え全体が固く脆い印象は否めない。両目でしっかり前を見据えられないと、錯覚を起こしやすく打ち損じが多くなってしまう。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が沈みきったあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」。ある程度の確実性と長打力を程よく兼ね備え、中距離打者やポイントゲッターに多くみられる。彼を見ていると生粋のスラッガーといよりは、強烈な球足で野手の間を抜けてゆく中距離ヒッターという感じがしてくる。

<足の運び> 
☆☆ 2.0

 足を引き上げて、ベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。ベース側に踏み込んで来るインステップで、外角を強く意識していることがわかります。しかし踏み込んだ足元がインパクトの際にブレてしまって、開きを我慢できなかったりパワーロスをしてしまっているのは残念。外角球を引っ張るという、かなり強引な打撃になっており、現時点では捌ける範囲は限られている。しかしこの辺は、プロ入り後修正することは意識次第で難しくはないだろう。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備であるトップの形を作るのは早く、速い球に立ち遅れるか心配はない。バットの振り出しもインサイド・アウトであり、むしろ内角の方がキレイにバットが抜けて来る。

 そのぶん外角の逃げてゆく球や、低めの球への対応には課題があるが、真ん中~内角寄りの球を引っ張るのには適したスイングをしている。腕っぷしが強くパワフルだが、けしてスイングの弧が大きいとかフォロースルーをうまく使って打球を遠くに運ぶ技術はまだない。ようは、まだまだ上半身に頼ったスイングになってしまっているということ。

<軸> 
☆☆ 2.0

 足の上げ下げはそれなりで、目線の上下動も並ぐらい。体の開きも我慢できないので、軸足も前にツッコミがちになることも少なくない。もう少し自分からボールを追うのではなく、手元まで引きつけて叩くスイングを身につけたい。


(最後に)

 天性のスラッガーというほどでもなければ、守備などで融通が効かないのもどうだろうか? 貴重な右の強打者ではあると思うが、高校からのプロ入りとなると疑問が残る。しかし足が思ったよりも速く、打撃も意外にセンターから右方向へ打ち返す器用さは兼備している。

 高校の先輩である 鈴木 誠也(広島)の成功もあり、鍛えがいのある頑強そうな身体。何より「野球が好き」ということを強く意識したスカウティングをするカープの指名ということで、今後見違えるほどに成長する可能性は秘めている。

 個人的にはプロ入りには時期尚早だと判断するが、こちらの想像以上の早さで成長してゆくかもしれない。今後どのような活躍をするのか、注視して見守ってゆきたい。カープにとっては、若年層の外野手がいなかったこともあり、待望久しい高校生外野手の指名になったのではないのだろうか。


(2017年夏 甲子園)