西巻　賢ニ（仙台育英３年）遊撃　１６８／７３　右／右

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「プロっぽくないけど」

　小柄なセンス型の遊撃手で、高校からプロというよりは、大学に進学するような選手に見える　西巻　賢ニ　。　しかしプロ志望届けを提出し、ドラフトを待つのだという。今年のドラフト戦線においては、右打ちのニ遊間選手が不足しており、そういった意味では彼に追い風が吹いているのかもしれない。果たして悲願のプロ入りは、実現するのだろうか。

走塁面：☆☆☆★　走塁偏差値　５６

　一塁までの塁間は、右打席から４．２秒前後。これを左打者に換算すると、３．９５秒前後とまずまずの俊足。これをプロ入りした右打者のタイムで偏差値化すると　５６　。　これは、プロ野球界の右打者の中で、上位３０％以内に入る脚力だということ。

　夏の甲子園４試合で盗塁は１個、U18での9試合でも1盗塁と、それほど盗塁を積極的に仕掛けて来るわけではない。その走力ほどは、足を全面に出したプレースタイルではないようだ。今後は自分の売りをアピールするために、走塁への意欲を高めて来る可能性はあるだろう。また盗塁よりも、次の塁を陥れる状況判断の良さが光る。

守備面：☆☆☆☆　4.0

　打球への一歩目が鋭く、フットワーク、キャッチング、スローイングまでの流れがよくスピード感が感じられる。投手としても130キロ台後半が投げられるように、地肩も基準以上。送球が乱れることも少なく、実に軽快な遊撃手。上のレベルでもニ遊間を担える素材であり、ファームの試合ならばすんなり入って行ける守備力がある。彼の最大の魅力は、やはりこの守備だと言えよう。

（打撃内容）

　広角に鋭くはじき返す打撃が持ち味だが、ドラフト候補としては打撃が物足りないという印象は受けている。

＜構え＞　☆☆☆★　3.5

　前の足を少しだけ引いて、グリップは高めに添えられている。腰はあまり据わらず、後ろ足に重心を預けがち。全体のバランスとしては並だが、両目で前を見据える姿勢は悪くない。

＜仕掛け＞　平均

　投手の重心が下がりきった、底のあたりで動き出す「平均的な仕掛け」。ある程度の確実性と長打力をバランス良く兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く観られる始動。今後は彼のプレースタイルを考えると、若干始動を早めることで確実性を重視してゆくかもしれない。

＜足の運び＞　☆☆★　2.5

　足を軽く上げて、ベース側に踏み込んで来る。始動～着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。ベース側に踏み込むインステップなので、外角を意識していることがわかる。気になるのは、踏み込んだ足元がインパクトの際にブレてしまっていて、「開き」が充分我慢できなかったりパワーロスをしているところ。そのため外に逃げてゆく球や、低めの球にも充分に我慢して叩くことができない。もし外角の球を捌くとするならば、高めの球であるはずだ。真ん中～甘めの外角球を、引っ張るのが彼の好む打撃ではないのだろうか。それが外角球だと、引っ張ったつもりでもセンター方向に伸びてゆくのがこの選手の打球の傾向。

＜リストワーク＞　☆☆☆★　3.5

　打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で悪くないものの、「トップ」の形を作るまでが遅く速い球に立ち遅れがち。バットの振り出しは、上からミートポイントまで振り下ろすインサイド・アウトのスイング軌道。そのため踏み込む割には、内角寄りの球にもキレイにバットが抜けて来るタイプかと。

　あとはバットのしなりを活かしたスイングにして行かないと、プロレベルの外角球を木製バットで打ち返すのは厳しいかもしれない。そういったスイング軌道は、今後改善して行かないといけないポイントでは。

＜軸＞　☆☆☆　3.0

　足の上げ下げ小さいので、目線の上下動が少なめ。そのため狂いなく、球筋を追うことができている。しかし体の開きが早いので、外角の難しい球を我慢して打ち返すということに向いていない。軸足は地面から真っ直ぐ伸びているので、軸回転でスイングできているのは好いのだが。

（打撃のまとめ）

　プロを想定するとスイングの修正や足元の盤石さなど、改善してゆかなければ行けないことも少なくない。しかし意識が高い選手でもあり、甘い球を逃さない「鋭さ」も持っているので、時間がそれを解決して行ってくれる可能性は高そう。

（最後に）

　いずれにしてもプロ入り後は打撃で苦労することが予想され、そういった意味では大学経由の方がいいのではと思える部分も多い。しかし本人がプロで飯を食ってやろうという意思が強いこと、そして守備・走塁はプロ級なだけに実戦の中でいろいろと掴んでゆくことが期待できるのではないのだろうか。

　個人的にはまだ「旬」ではないと判断して指名候補としては観ていないが、こういったタイプが少ないことを考えると、下位指名や育成あたりで指名して来る球団があっても不思議ではない。果たして会議当日、彼の名前は読み上げられるのだろうか？

（２０１７年夏　甲子園）