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楠本 泰史(DeNA)外野手のルーキー回顧へ







楠本 泰史(東北福祉大4年)中堅 180/77 右/左 (花咲徳栄出身) 
 




                       「毎年3割打てる素材」





 ドラフト8位指名ながら、将来プロで毎年3割打てる可能性を秘めている素材、それがこの 楠本 泰史 。なぜそのような選手がドラフト8位まで残っていたのか? また前回の寸評ではよくわからなかった走塁や肩についてもわかってきたので取り上げてみたい。


走塁面:
☆☆☆★ 3.5 走塁偏差値 53

 一塁までの塁間は、左打席から4.1秒前後で到達。このタイムも、ベース側にインステップして踏み出して来る打者なので、最初の一歩目が遅れることを考慮したい。セカンド到達は、7.7秒ぐらいと速い。純粋な走力は、塁間4.0秒前後ぐらいの脚力はあるのかもしれない。しかし4.1秒を元に、ドラフト指名された左打者のタイムを偏差値化すると、走塁偏差値は 53 。まぁ、中の上以上はあるとみて良いだろう。リーグ戦でも4年春に5盗塁を決めているように、それなりに動ける走力があるのは間違いない。

守備面:
☆☆★ 2.5

 これだけの選手が、この順位まで残っていた最大の要因は守備にある。元々は遊撃手だったが、肩の故障のため3年時は一塁を。そして最終学年には、中堅で出場していた。まだ外野の経験が乏しいためか? 打球への反応、落下点までの入りなど、けして上手い外野手とはいえない。しかしそれ以上に深刻なのが、故障の影響で送球がままならないことにある。今後回復が見込めるかはわからないが、長い送球は正直期待できない。いかに中継の内野手に、素早く返球できるかにかかっている。


(打撃内容)

 大学JAPANでは4番を任されていたが、長打で魅了するタイプではない。圧倒的なミート能力を買われて、JAPANでも4番を担っていただけなのだ。リーグ戦でも3年春こそ3本塁打を放ったが、あとは0本か1本ぐらいしか記録していない。また全国大会や国際大会でも、ホームランは記録していない。基本的には、単打・二塁打・三塁打の多いタイプの中距離ヒッター、あるいはアベレージヒッターの傾向が強い打者だと考えた方が妥当だろう。

(成績から考える)

4年春のリーグ戦・大学選手権・日本代表の成績を合算して傾向を考えてみた。

22試合 92打数 35安打 0本 19打点 9三振 15四死 10盗塁 .380厘

1,三振比率は15%以内 ◎

 振ったバットがどのぐらいの確率でボールを捉えられるかのコンタクト能力を知る目安が、三振比率。その比率が、9.8%と10%を切っているところは素晴らしい。一軍選手の場合20%が一つ目安なのだが、アマとはいえ全国大会や国際大会の成績も含めた数字だけに、かなり優勝なコンタクト能力を持っていることは間違いない。

2,四死球率も15%以上 ◎

 実際どのぐらいボールを見る眼を持っているのかの参考になるのが、四死球率。二軍の選手が1軍を意識するには10%以上が目安となる。しかしこの数字が15%以上あれば、アマでもプロの球が見極められる可能性は高まる。

3,盗塁数は、500打席換算で ◯

 92打数で10盗塁ということで、これをプロのレギュラークラス並の500打席で換算すると、1シーズン54個ペースで盗塁していたことがわかる。実際アマの数字をそのままプロに当てはめることはできないが、どの程度走れる選手のかをイメージするには参考になるだろう。少なく見積もっても、プロで1シーズン出場したら10盗塁前後は期待できるぐらいの脚力はあるのではないのだろうか。

4,3割5分以上は欲しい ◯

 4年春までのリーグ戦通算打率は、.341厘 。3年春と4年春には4割を越えており、4年春には首位打者を獲得。さらに日米大学野球でも、首位打者を獲得し国際大会でも通用。4年春の合算では.380厘を記録しており、大学球界屈指の好打者であることを証明した。

(成績からわかること)

 四死球率と三振率は、一つのデータとしては弱いが両方を組み合わせてみると能力を掴みやすい。というのは、四死球率は打撃スタイルにも左右され、早めに打つタイプ、四球よりも返すことが求められるポイントゲッターでは、つなぐ意識が低くなるからだ。そのため三振比率と組わせることで、本当に コンタクト能力があるのか、ボールを見極める眼があるのかという、潜在的な能力をつかみやすくなる。こう考えるとこの選手は、成績の上からでも非凡な能力を秘めていることが浮き彫りになってきた。


(最後に)

 打撃フォームに関しては、前回の寸評(4年春の大学選手権を元に)で作成したので割愛したい。前回よくわからなかった走塁や肩の部分が明らかになってきたことで、評価付けはしやすくなった。

 走力はそれなりにある選手であるが、守備・肩には不安があるということ。特に肩は、各球団指名を見送った理由がわかるぐらいイカれている。その辺を考慮すると、イメージ的には大洋~ベイスターズで活躍し2度の首位打者に輝いた、鈴木尚典 をイメージして頂けると近いのではないのか? 位置づけ的には、今年ベイスターズを退団した 下園 辰哉 的な存在だと考えられる。

 鈴木尚典ほどの長打力はないと思うが、プロで3割を毎年残せるぐらいの資質を持った選手。少なくても打つことに関しては、1年目から一軍の舞台で活躍しても不思議はないものと考えられる。まだ柔らかさが先行して、筋力・体力という意味では不安は残るものの、代打などでなら即戦力になれる可能性を秘めている。数年後には、ポスト 筒香 嘉智 に収まっているかもしれない。


蔵の評価:
 (下位指名なら)


(2017年 平塚合宿)










楠本 泰史(東北福祉大4年)中堅 182/75 右/左 (花咲徳栄出身) 
 




                       「正直よくわからない」





 下級生の頃から仙台リーグで活躍してきた好打者で、大学日本代表にも選ばれている。しかし肩の故障で現状の肩の状態、そして一塁までの到達タイムなど、大学選手権では緒戦で破れてしまってよくわからなかった。できれば日米野球やユニバーシアードなどの模様もみて最終的な判断を行いたいが、現時点でわかっていることをとりあえずまとめてみた。


守備面 

 元々は遊撃手だったが、昨年は肩の故障もあり一塁。そして今春は、中堅手として試合に出場。まだまだ外野が不慣れなのか? 打球への判断・目測には迷いが観られる。俊足の選手なので、しっかり打球判断ができれば広い守備範囲はあるのだろうが。現状は、けして上手い外野手ではない。肩の方は、強く送球する場面がなくよくわからず。この辺を、今後の観戦で埋めてゆきたい。

走塁面

 一塁までの正確なタイムは計測できなかったが、試合を観ていてのイメージは中の上レベルかなという印象は持っている。この春のリーグ戦でも5盗塁を決めており、プロで売りにできるほどかは別にしてある程度動ける走力があるのは間違いない。この辺も、今後の大いなるチェックポイント。


(打撃内容)

 ツボにハマればスタンドインのパンチ力はあるものの、基本的には柔らかいリストワークを活かした中距離打者。特にボールを捉えるセンスには優れており、この春も打率.415厘 で首位打者を獲得。今年の選手権でも緒戦で敗れたとはいえ、好投手・小久保気(四国学院大)投手から2安打を放っている。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは脇を閉めつつ平均的な高さ。腰の据わりは浅く全体のバランスとしては頼りないが、両目で前を見据えるという部分はしっかりできている。両目で前を見据えることで、錯覚を起こすことなく球筋を追うことができる。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が沈みきった段階で動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を、程よくかね備えた中距離打者やポイントゲッターに多く観られる。まさに、彼のプレースタイルに合致しているのではないのだろうか。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げて回し込み、ベース側にインステップして踏み込んで来る。始動~着地までの「間」はそこそこで、スピードの変化にもそれなりに対応。またベース側に踏み込むことで、外角を強く意識していることがわかる。踏み込んだ足元もインパクトの際に我慢できており、外に逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができる。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、ボールを呼び込む時に力みがない。それゆえ、柔らかくリストを使うことができるのだろう。バットの振り出しは、けしてインサイド・アウトではない。しかし外の球を叩くのにはロスがなく、バットの先端であるヘッドも下がらずキレイに振り抜けている。スイングの弧も大きく、好打者というよりは強打者を意識しているようだ。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが大きい割には、目線の上下動は少なめ。身体の開きも我慢できているが、少し軸足が前に傾きがち。そういった意味では、打ち気にはやって身体を突っ込むのには注意したい。

(打撃のまとめ)

 ベース側に踏み込むインステップなのと、スイング軌道がインサイド・アウトではないので内角の捌きは窮屈になりやすい。しかしそういった部分を捨ててでも、外の球をきっちり叩きたいという意思が感じられる。外の球を叩くのはスイングの基本なので、そこの確率をあげようとするのは当然のこと。ただし左の好打者タイプが踏み込むと、最初の一歩目のスタートが遅れるなどの弊害もあり打率は残り難い。対応力が売りの選手だけに、このままインステップして踏み込むことが得策なのは悩むところ。まぁこれも上のレベルで壁に当たった時に、考えれば良いことだろう。


(最後に)

 ボールを捉える能力には非凡なものがあり、この部分ではプロ級だと言えるだろう。その反面、けして長距離打者ではない左の外野手が、プロからは高く評価され難い土壌がある。特に不慣れな外野守備、故障した肩の不安などもあり、非常に評価は難しいところ。少なくても上位指名でという選手ではないことは、間違いないところ。

 あとは、プロ側にこういう選手の需要があるのかということ。そこに需要があれば、充分に指名される可能性は高い。更にプロ入り後は、その順位以上の活躍を示しても不思議ではないと言えよう。プロでも毎年3割を残せそうな対応力があるだけに、志望届けを提出すれば本会議の中で指名されるのではないかとは考えている。それだけボールを捉える能力は、非凡なものを持っているので。あとは守備・走力の能力をしっかり把握して、最終的な評価を固めてゆきたい。


蔵の評価:
追跡級!


(2017年 大学選手権)