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猪田 和希(20歳・JFE東日本)捕手の本当に凄いやつへ







猪田 和希(神戸国際大附3年)捕手 183/80 右/右 





「選抜ではよくわからなかった」 





 選抜では緒戦で破れ、3打数0安打。スローイングの機会もなく、よくわからないことも多かった 猪田 和希 。 しかしこの夏は甲子園で2試合戦うなど、選抜では見えなかった部分がいろいろわかった気がした。


(ディフェンス面)

 周りにしっかり指示を出し、投手をガンガン引っ張ってゆくタイプの捕手。投手にしっかりミットを魅せて、狙いをつけやすくしている。そのグラブを地面に下げる癖もなく、ワンバウンドするような球にも立ち後れず素早く対応。大型ながら、打球への反応やフットワークもよく、カバーリングに入るのも怠らない。選抜時よりもボールをしっかり捕球する押し込みが効くようになり、審判からもストライクのコールを導きやすくなってきた。選抜時からキャッチングが好い選手であったが、更に夏に向けワンランク成長してきた印象。捕手は、まず捕れることが大事だというのが私の持論なので、その点では好感が持てる。

 ランナーがいる時には、しっかり立って投手にボールを返すなど、とかく雑になりがちなところも丁寧にプレーしている。打者の微妙な変化にも気がつくように、細かく洞察する習慣も持っている。そのためリードに関しても、けしてスジの悪い選手だとは思えない。ただし一つ気になる点があるとすれば、自慢のはずの強肩が活かしきれていない点。ランナーが走るとわかると、持ち直したり力んだりで、送球が乱れるケースが多い。地肩はかなり強いはずなのに、思いのほか刺せないことが多いのでは?この点を、いかに今後改善してゆくかではないのだろうか? 慌てることはなく、しっかり型を作って送球すれば、投手がモーションを盗まれるとか、送球が乱れるということが無ければ刺せるようい野球はできているのだ。もう少し余裕を持って、プレーできるようになりたい。スカウトの間では、打撃を買って他のポジションとしてならという声も上がっていた。しかし私は、この選手は捕手をしてなんぼという気がしているし、ディフェンス能力自体を指名級だと評価したい。


(打撃内容)

 選抜ではノーヒットで終わったものの、夏の兵庫予選では 7試合 4本 14打点 打率.450厘 と強打者ぶりを遺憾なく発揮した。けして長距離打者というスイングではないが、体が強くパワフルな打撃が目立つ。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えバットを倒して構えている。腰の据わり具合、全体のバランスも好いのだが、少し両目で前を魅せる姿勢がクロス気味になっているのが気になるところか。選抜の時ほどは極端ではないにしろ、まだそういった傾向は観られる。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が下がりきったあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力をバランスよく兼ね備えた仕掛けで、中距離打者やポイントゲッターに多く観られる始動。選抜時は「遅めの仕掛け」だったので、少し早めることで確実性を高めようとした狙いが感じられる。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を地面からあまり上げずに、回し込んで真っ直ぐ踏み出して来る。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりの対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも対応したい万能型。

 気になるのは、選抜時には気にならかった足元のブレが見られたこと。つま先自体はある程度閉じられているので、体の開きは抑えられていたのかもしれない。しかしながらインパクトの際に、パワーロスが起きているのでその辺は気になる材料。それだけ引っ張って打ちたいという意識が高かったのかもしれない。こうなると少しクロス気味に構えているのに、センターから右方向への打撃にも影響が出ていたのではないかと考えられる。春まではしっかりできていた部分なので、改善することは難しくはないだろう。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力みが感じられないところは良いところ。選抜の頃はちょっとバットを引くのが遅く、立ち遅れ気味だった。しかしこの夏はこの辺は問題がなかったことが、予選の好調さにも繋がったかもしれない。

 バットの振り出し自体は、けしてインサイド・アウトに出てくるタイプではない。振り出しの際にはグリップを下げて、水平に切る感じのスイングをする。そしてインパクトの際には、バットの先端であるヘッドが下がることなくスイングはできている。これにより広い面でボールを捉えることができており、フェアゾーンに落ちる確率は高くなる。

 スイングの弧自体はそれなりに大きいが、フォロースルーを使ってボールを遠くに運ぶというタイプではないだろう。あくまでも腕っぷしの強さと金属バットの反発力を活かし、思いっきり引っ張った時にホームランが出ていたのではないのだろうか。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが小さいので、目線の上下動は少ない。足元のブレは観られるものの、足の爪先は閉じられており「開き」は思いの他抑えられていた。軸足の形も地面から真っ直ぐ伸びており、好不調の波は少なめなのではないのだろうか。

(打撃のまとめ)

 上下のバランスを崩してでも、強くバットを振れていたのが予選で好い方に出たのかもしれない。しかし全国レベルになると、なかなかそれだけでは打たせてもらえなかった。夏の甲子園でも2試合で 9打数2安打 打率.222厘 と、自慢の打棒をアピールするまでには至らなかったのはそのせいかもしれない。

 引っ張りを好むスイングの割に、インサイド・アウトのスイング軌道ではない。真ん中~外角の甘い球を引っ張るのを好む。そのため外角の厳しい球や低めの球にはついていけないのではないのだろうか。打てる幅は、かなり狭いことが考えられる。クローズスタンスならば、センターから右方向中心に打ち返さなければいけないのだが、そのへんの動作の矛盾も改善して行きたい。


(最後に)

 攻守のバランスの取れている選手で、志望届けを提出すれば本会議中に指名されるだろうということ。しかし、社会人に進むとの話しも耳にしている。ドラフトで下位指名ぐらいならば、3,4年後で更に上位をという気持ちもわからなくはない。

 ただし彼ほどの素材が社会人に流れるのであれば、やはり解禁の年にはチームのレギュラーとして、ある程度結果を残していて欲しいところ。攻守にスケールの大きな選手だけに、勝つための野球で小さくまとまって欲しくはないと願っている。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2017年夏 甲子園) 









猪田 和希(神戸国際大附)捕手 181/78 右/右 
 




「スケールは選抜NO.1捕手」 





 選抜出場組の中でも、捕手としてのスケールを1番感じさせたのは、この 猪田 和希 だった。残念ながら緒戦で破れてしまい、もう1試合はぐらいはじっくり見てみたかったと思わせてくれる選手だった。


(ディフェンス面)

 周りにしっかり指示を出し、投手をガンガン引っ張ってゆくタイプの捕手。ミットを投手に示し的をつけやすくし、その後もグラブを地面につける癖がないので低めの球にも素早く対応できます。キャッチング等の押し込みに際立つものはありませんが、ミットがブレたり勢いに押されるようなことがないのは好感。特にワンバウンドするような球に対し、下からとっさにミットが出てくるところは素晴らしい。そのためことキャッチングに関しては、想像以上に上手い捕手という印象を受けました。

 けして投手の気持を察してとか、そういったきめ細やかなタイプではないと思います。それでもランナーがいる時には、しっかり立って返球。また一塁へのベースカバーにも素早く入りに行きますし、打者をしっかり洞察して狙い球を探ろうという習慣も身についています。雑だったり、プレーに手抜き感がないのは良いところ。地肩も相当強そうですし、選抜での悪送球や判断が、彼を更に一回り大きくしてくれそう。ことディフェンスに関しては、全国の高校球界でも上位レベルの捕手であるのは間違いないでしょう。


(打撃内容)

 むしろ心配だったのは、選抜でノーヒットに終わるなど粗い打撃の方ではないのでしょうか。それでも三遊間へのヒット性の当たりも放っており、もう一試合はじっくり見てみたかった気がします。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 両足を揃えたスクエアスタンスに見えますが、センターカメラからもはっきり背番号が読み取れるようにクロス気味に構えていることがわかります。グリップを高めに添え、腰の座りはよく安定感はあります。しかしながらクロスに構えている分、両眼で前を見据える姿勢が悪く、全体としては少し癖のあるフォームになっています。

 クロスに構えるということは、体が一二塁間に向けて立っているわけで、打球をそちらの方向に打ち返すことを重視しなければなりません。しかし引っ張ることも多いので、どうしても引っ掛けやすくなってしまいます。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

 投手の重心が沈みきって、前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。ボールをできるだけ手元まで引きつけてから動き出すので、より強烈なエネルギーをバットに伝えやすいわけです。通常こういった打撃をする選手は、長距離打者に多く観られるスタイル。ただし彼の場合は、けして長距離打者には見えません。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く浮かし回し込み、まっすぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は短いので、狙い球を絞って叩く 点 の打撃。まっすぐ踏み出すように、内角でも外角でも打ちたいタイプなのがわかります。踏み込んだ足元はインパクトの際にもブレないので、外角に逃げてゆく球や低めの球にも、開きを我慢して食らいつくことができます。

<リストワーク> 
☆☆★ 2.5

 打撃の準備である「トップ」を作るのが遅れがちで、一定レベル以上のスピードやキレのある球に立ち遅れやすい打ち方。バットの振り出しも少し遠回りに軌道するので、確実性に乏しい印象を受けます。それでもバットの先端であるヘッドは下がらずにインパクトしているので、しっかりタイミングさえ合えば打ち損じは少ないはず。最後までしっかり、振り抜いてきます。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は少なめ。体の開きは我慢でき、軸足も大きくは崩れません。

(打撃のまとめ)

 動きはシンプルで下半身の使い方は悪くありません。上半身の使い方に方に課題があるので、この辺を今後いかに改善できるのか? 新チーム結成以来の秋の成績は

147打数 66安打 6本 44打点 10盗塁 打率.449厘

 これをプロの規定打席である500打数で換算すると、20本 150打点 34盗塁 だということがわかります。こう見ると打者としては、ツボにハマればスタンドインの可能性があるものの、長距離打者ではないことがわかります。そのかわり勝負強い打者あること、また思ったより走力があることが伺えます。ただし一塁までの到達タイムは、右打席から4.55秒前後(左打者換算で4.3秒前後に相当)。そう考えるとプロレベルで、それほど足を売りにする可能性は低いだろうという気がします。


(最後に)

 ディフェンスに関しては、高校からプロに入るぐらいの資質の持ち主であることがわかりました。しかしトップの形成が遅れがちなのと、スイング軌道に課題があり粗い印象は否めません。

 しかしながら147打数で18三振であり、三振比率は12.2%と、けして高くはありません。高校生レベルとはいえ、15%以上でなければコンタクト能力に大きな問題があるとは言えないでしょう。四死球はチームトップの26個で、四死球比率は17.7%。高校生ならば15%以上が優れていると思われ、基準以上のボールを見極める「眼」を持っています。それゆえに秋の成績では、チームトップの.449厘という高い打率を残すことができたのでしょう。

 そう考えると選抜でノーヒットで終わるも、もう少し対応力はあるのではないかと考えられます。この辺は夏に向けて、確認したい部分。選抜では見れなかった送球も含めて、夏まで追いかけて能力の詳細をつめてみたいところです。最後に一言、あまり顔つきや目がどうとか言うのは私は好きではありません。しかしこの選手、面構えが凄く良い選手だと思いました。


蔵の評価:
追跡級!


(2017年 選抜)