17ky-10


 




村上 宗隆(ヤクルト)内野手のルーキー回顧へ







村上 宗隆(九州学院3年)捕手 186/96 右/左 
 




                     「捕手としては・・・」





 昨夏見たときはバッティングが散々で、思ったよりも捕手としても悪くないと思った 村上 宗隆 。しかし最終学年になって改めて見てみると、やはりプロの捕手としては厳しいのではないかと思えてきた。あくまでもバッティングの良さを活かし、他のポジションでというのが前提ではないのだろうか。


(ディフェンス面)

 周りにしっかり指示を送る、リーダーシップ溢れる捕手。ミットを投手に示し的をつけやすくし、そのグラブを地面に下げないのは良いところ。しかし昨年などは、ワンバウンドするような球に対しパッと下からミットを出して反応の素早さを魅せていた。しかし今年は、上から被せるように捕球したり動作の反応も鈍くなりと、キャッチング自体が退化したのではないかと心配になる。ドカッと腰を落とし、コースから外れたボールは腕を伸ばすだけで捕ろうとしており、全身で止める意識がない。また次の動作への移行も遅く、フットワークの部分でも疑問が残る。

 捕ってからスローイングまでの流れや形もイマイチで、二塁までの塁間も2.05秒前後と並。ちなみに昨年図ったときは、1.9秒前後だった。地肩自体も平均~中の上ぐらいで、将来プロの捕手としてやって行けるイメージがどうしても湧いて来ない。昨年は想像以上に良かったというギャップもあったが、もう少し丁寧にプレーをしていた記憶があるのだが・・・。 けして身体能力が低い選手ではないので、他のポジションで勝負した方が良いのではないのだろうか。


(打撃内容)

 コンタクト能力はけして高くないものの、うまくバットをボールの下に潜り込ませ、かち上げたときの長打には目を見張るものがある。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前の足を軽く引いて、グリップは高めに添えている。腰は適度に据わり、背筋はしっかり伸ばされて構えている。両目で前を見据える姿勢が並だが、あとは全体にバランスの取れた良い構えではないのだろうか。適度に身体を動かして構えることで、固い印象は受けない。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下るときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。早めに動き出すことで、いろいろな球にボールを対応しようとするアベレージヒッターに多く観られる仕掛け。少なくてもこの夏は、確実性を重視して挑んでいたことがわかる。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足を地面から少しだけ浮かし、回し込んで真っ直ぐ踏み込んできます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角にでも対応しようとする、万能型と言えるでしょう。

 踏み込んだ足元もインパクトの際にブレないなど、「開き」を我慢しつつロスがないのは良いところ。外角に逃げてゆく球や、低めの球に対しても食らいつくことができます。引っ張っても流しても、長打を打てるのがこの選手の良さ。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 バット自体は早めに引いているものの、打撃の準備である「トップ」の形をしっかり作れないまま振り出すので、どうしても消化不良の打撃になりやすい。どうして「トップ」をちゃんと作れない選手がダメなのかと長年考えたのだが、ボールとの距離感を測るのが下手だということに繋がるのではないのだろうか。そのためどうしても、打ち損じることが少なくない。

 バットの振り出しは、上から下に振り下ろして来るインサイド・アウトのスイング軌道。そのため真ん中~内角寄りの球を巻き込むのは、下手ではないはず。外角の球に対しても、上から下に振り下ろしつつも、ボールの下にバットを潜りこませかち上げるという、かなり特殊な打撃をしている。ボールをしっかり捉えられる確率は低そうだが、うまくタイミングが合えば長打が期待できる。大きな弧を描き、特にフォロースルーを使って、ボールを遠くに打ち上げるのは上手い。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが小さいので、目線の上下動は少なめ。身体の開きも我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて安定している。特に軸足の内ももの筋肉が発達しており、強烈な打球を生み出す原動力になっている。

(打撃のまとめ)

 「トップ」をうまく作れないことでの、ボールとの距離感の作り方が下手で、コンタクトに課題を残す。さらに上から振り下ろしつつも、ボールの下に潜らせて打ち上げるという、かなり特殊なスイングをしているので、タイミングを一致させるのが難しいということ。

 そういった確実性の低さや粗さは感じられるものの、ボールを飛ばす能力は、持っているパワーだけでなく技術的に興味深い。大型のスラッガータイプに見えるが、メカニズムや梶谷隆幸(DeNA)とか茂木英五郎(楽天)などに近いタイプなのではないのだろうか? いずれにしても、スイング自体は昨年とほとんど変わっていなかった。


(最後に)

 捕手として使えれば、打てる捕手という魅力が備わり、まさに 阿部慎之助(巨人)2世 になりえる素材だろう。しかし捕手としては正直どうかと思える部分があり、もし他のポジションを担ったときの守備力から、中途半端な位置づけにならないかという心配も拭えない。特にコンタクト能力がけして高い素材ではないだけに、余計に不安に思う部分はある。

 そのため化けたときは大きいものの、上位指名では怖いなという不確定要素が高い選手。個人的には中位指名ぐらいが妥当ではないかと思うが、プロ側はもっと上位での指名もあるのかもしれない。個人的には半信半疑な面は拭えず、少し控えめの評価に留めたい。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級!)


(2017年夏 熊本大会)











村上 宗隆(九州学院2年)捕手 187/93 右/左
 




                    「ディフェンスがまとも」





 1年夏に、4番・一塁手として甲子園に出場。以後強打者として注目されてきた 村上 宗隆。捕手村上を初めて真剣に見てみたが、思いの外しっかりした技量の持ち主で驚いた。むしろ売りである打撃の方が、私には心配になった。


(ディフェンス面)

 投手に細かく指示したりと、ガンガン引っ張ってゆくタイプの捕手。ミットを示したあと下げる癖もなく、特に低めの球に対し素早くミットを下から出すことができる。この反応の良さ・間違いの無さは、なかなか見ることができないレベル。ボールを一つ一つ押し込むようなキャッチングの強さはないが、際どいコースには上手くフレーミングを使うなどそれなりに考えて捕球しようとする意識は伺われる。しいていえばドカッと深く据わり過ぎていて、少しコースから逸れると対応仕切れずグラブからこぼれてしまう。しっかり強く捕球できれば、コースが外れた球でも溢れることはないはずなのだ。

 結構考えてリードしているフシは感じられ、プレー全体にも雑なところも見当たらない。スローイングは、しっかり型が作れていないで投げるので、球筋はバラつく。二塁までの到達タイミは、1.85~1.95秒ぐらいと平均的で、地肩は中の上ぐらいだろうか。送球の仕方を、プロでしっかり磨きたい。総合的には、ディフェンス面でプロを意識できる素材だと言えよう。


(打撃内容)

 1年夏から見ていてバットに当たらない空振りが多かったり、当たっても芯で捉えていなく変な打球が多いのが気になる。それこそこの身体ですから、まともに捉えれば飛んでゆくのでしょう。しかし根本的に、ボールを捉えるセンスには疑問を持ちます。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前の足を軽く引いて、グリップは高めに添える強打者スタイル。腰の据わりはよく、全体のバランス・両眼で前を見据える姿勢は並ぐらいでしょうか。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が沈み始める時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力を重視したアベレージヒッターに多く観られる仕掛けです。当たれば身体の力で飛ばせますが、本質的にはスラッガーではないのかもしれません。逆に追い込まれると、「遅めの仕掛け」に切り替えてきます。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 早めに足を引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み込みます。ボールを線で捉えるスイングで、速球でも変化球でも幅広く対応。追い込むと、狙い球を絞り「点」の打撃になります。

 真っ直ぐ踏み込むので、内角でも外角でも幅広く対応したいタイプ。踏み込んだ足元もブレないので、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができます。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 早めにバットを引いており、速い球には立ち遅れません。ただしあまり「トップ」をしっかり作れない感じで、なんだか消化不良のスイングをします。バットの振り出しは、上からインサイド・アウトに振り抜く傾向が強くインパクトまでのロスは少なめ。外角の球を捉えるときは、少し遠回りになっています。それでもバットの先端であるヘッドは下がらないので、大きなロスは感じません。

 ボールを捉えてからも大きな弧を描き、しっかり振り抜いてきます。フォロースルーを使って、ボールを運ぶようなタイプには見えませんが。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 頭の上下動は抑えられており、目線は安定。身体の開きは我慢でき、軸足の内モモには強さが感じられ、強烈な打球を生み出す原動力になっています。

(打撃のまとめ)

 追い込まれるまでは「早めの仕掛け」を採用し、追い込まれると動作を小さくして「遅めの仕掛け」に切り返します。技術的には想像以上にしっかりしたものを持っているのですが、ボールとの距離感を作るのが下手な印象を受けます。そのためミスショットが多かったり、変な打球が多くなるわけです。

 まだまだ持ち得る能力を、上手く表現することができていないのでしょう。ただし研究熱心なのか? 技術的にはしっかりしています。そういった意味では、肉体の資質に頼った素材型ではありません。


(最後に)

 ディフェンスに関しては、想定外の球に対する対応とそのための準備ができているかということ。またスローイングの型を、しっかり作ってから送球できるようにしたい。ただし低めの球に対するミットの出し方は、瞬時にここまでしっかり下から出せる選手がいないので関心してしまう。

 打撃に関しては技術的にはしっかりしているものの、ボールとの距離感、アテ勘の悪さは気になってしまう。よほどタイミングが合わないと、なかなか結果に繋がってゆかない。現状はドラフト候補の1人ではあるが、上位指名候補とかそういった凄みは感じられなかった。日々研究・努力できる選手のようなので、夏までの大いなる進化を期待してみたい。


(2016年夏 熊本大会)









村上 宗隆(九州学院1年)一塁手のレポートへ(無料)