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山本 拓実(市立西宮3年)投手 167/70 右/右 |
「小さな巨人」 今年の関西には、「小さな巨人」と呼ばれる投手が、スカウトの注目を集めていると耳にした。その男の名前は、山本 拓実 。 普通160センチ台の小柄な右投げ投手は、力量問わず高校から指名されることはない。しかしこの山本は、その常識を打ち壊す可能性を秘めている。 (投球内容) ノーワインドアップからゆったりと入りながらも、足を勢い良く引き上げて加速する。 ストレート 常時140~140キロ台後半 ☆☆☆★ 3.5 投球はすライダーの比率の方がストレートより多い印象で、7,8割が変化球で速球は2,3割といった珍しい配球をして来る。それでもストレートはコンスタントに140キロ台を越えてくる勢いがあり、ボールもやや高めのゾーンに浮きがちだが両サイドにしっかり投げ分けられるコントロールもある。この夏の兵庫大会でも、23イニングを投げて四死球は僅か2個と、抜群の安定感を誇っていた。ただし速球に威力はあるものの、速球を見せ球にというタイプではない。速球は、コンビネーションの中の1つでしかないといった感じなのだ。 変化球 縦横のスライダー・カットボール・カーブ・チェンジアップ ☆☆☆★ 3.5 横曲がりするスライダーを中心に、投球を組み立ててくる。その他に、たまにカットボール・チェンジアップ・カーブなどがある。そして追い込むと、縦に切れ込むスライダーらしき球で空振りを誘ってくる。速球と横のスライダーで投球を組み立ててつつ、追い込むと縦スラという投球パターンが確立されている。 その他 クィックは1.0秒前後と高速で、フィールディングの動きも実に良い。牽制はよくわからなかったが、非常に運動神経に優れたタイプといえるのではないのだろうか。 (投球のまとめ) 右打者に対しては、速球とスライダーで両サイドに散らせつつ、追い込むと縦スラで空振りを誘う配球。左打者にはスライダーは影を潜め、速球を内外角に投げ分け追い込むと縦スラという投球パターン。左打者への球種が少ないことは気になるが、投球としてはすでに完成されていると言っても過言ではないだろう。 高校生でも、投げている感じは大学や社会人の好投手のようなレベルにあり、ある程度即戦力として観られる高校生ではないのだろうか。逆に今後、どの程度上積みが見込めるかは微妙。イメージ的には、ハム~中日にトレードされた 谷元 圭介 を高校生にしたような投手だった。 (投球フォーム) 今のフォームで、上のレベルではどの程度通用するものなのか考えてみた。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、前に倒れ込むような感じで体重を落としてきます。こうなると体を捻り出すスペースが確保できていないので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適しません。 それでも前に大きくステップすることで、「着地」までの粘りは作れています。そのため体を捻り出す時間は確保できているので、カーブやフォークといった球種以外ならば、キレや曲がりの大きな変化球の習得も期待できるでしょう。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後までは抱えきれておらず、外に逃げようとする遠心力は内にとどめていません。その割にボールがある程度制御できているのは、「球持ち」がよく指先の感覚に優れているからではないのでしょうか。 足の甲の押し付けは、膝小僧が地面についてしまうぐらい深く地面を捉えています。しかし逆にここまで落ちてしまうと、ボールが低めに集められるかは疑問です。またボールの押し込みは不十分なところがあり、速球は高めに集まったり抜けてしまいがちなのは気になります。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は落とせていませんが、カーブやフォークといった球種はほとんど投げないので肘への負担は少なそう。腕の送り出しにも無理は感じないので、肩への負担も大きいとは言えないでしょう。ただしかなりの力投派なので、疲労が蓄積しやすい恐れがあります。そういった意味では、日頃から体のケアには充分注意を払いたいところ。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの粘りもあり、体の「開き」も抑えられているので、合わせやすいということは無さそう。腕は非常に強く振れているので、フォームに勢いがあり空振りを誘いやすいのでは? ボールへの体重の乗せも悪くないので、打者の手元まで生きた球が投げられています。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に欠点らしい欠点はありません。故障のリスクはそれほど高くないのですが、思ったよりは制球を司る動作が粗いのは気になったぐらいでしょうか。技術的にも高く、かなり完成度の高い投手なのがわかります。 (最後に) あくまでも多くを望まないのであれば、高校からのプロ入りもありだと思います。精神的にも強そうですし、マウンド捌き、技術的にも完成されています。アマの絶対的なエースになって消耗するよりは、早めにプロ入りするのもありだと思います。 ただし今後の伸び代などはあまり期待できず、球種も多くすでに引き出しは出し切っていることは否めません。高卒ですが、3年以内に結果を出して欲しいタイプでしょうか。160センチ台の右投手が高校からプロ入りといった例がほとんどないのですが、下位指名~育成ならば、ありの選手ではないのでしょうか。 蔵の評価:☆ (下位指名ならば) (2017年春 兵庫大会) |