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阪口 皓亮(DeNA3位)投手のルーキー回顧へ






阪口 皓亮(北海3年)投手 186/80 右/左 
 




                 「この夏一番のサプライズ」




 この夏の甲子園において、最も驚かされたのが、この 阪口 皓亮 の快投だった。南北海道予選では、27イニングで16失点もしていた男が、突如甲子園前から豹変したのだという。むしろ何故そこまで県大会で打たれていたのか教えて頂きたいぐらいの、悪いところが見当たらないピッチングだった。

(投球内容)

 186/80 という、スラッとした手足の長い投手体型。ノーワインドアップから投げ込んでくる、オーソドックスな本格派。

ストレート 常時140キロ台~MAX148キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 それほど力を投げているわけでもないのに、コンスタントに145キロ前後を記録。両サイドにボールを散らせつつ、角度のあるボールが膝下の高さでしっかり伸びてくる。ボールの質も素晴らしく、これで更に成長したら一体どんな投手に育つのか?といった期待を抱きたくなる。ただしボール自体は素晴らしいものの、甲子園でも3回2/3イニングで8安打を浴びたように、合わされやすいフォームをしている。この投手の素晴らしいのは、左打者外角低めに伸びて来る球筋ではないのだろうか。

変化球 カーブ・フォーク・カットボールなど 
☆☆☆ 3.0

 投球の多くが、緩いカーブとスプリットのような小さく沈む球でで構成されている。そういった意味では、中間球のスライダーがないので山を張りやすいのかもしれない。その他にも、小さく横にズレるカットボールも時々織り交ぜて来る。もう少し縦の変化球の精度が高まって来ると、簡単には捉えられないのではないかと思うのだが・・・。この沈んでいる球は、スライダーだとかカットボールが縦に沈んでいるのかもしれないが・・・。

その他

 牽制は鋭いものは混ぜて来ないが、ランナーをへの意識は怠らない。クィッも0.95~1.05秒で投げ込み、かなり素早い。フィールディングの動きや判断力もよく、大型の割には動けるタイプの選手だと言えよう。そのため、持っている身体能力は高そうだ。

(投球のまとめ)

 特にランナーを背負うと、バタバタするといった精神的に脆さみたいなものは感じられなかった。ただし県大会の成績が示すとおり、まだまだ素材型の域を脱していない。甲子園では大崩れする前に、監督が上手く投手交代させた印象も強い。

 ボールの質・素材としての奥行きはピカイチだが、簡単に打ち返されてしまうフォームの欠点や配球が今後の課題。ここさえ改善できれば、将来物凄い投手に化けても不思議ではないだろう。志望届けを提出すれば、間違いなく本会議の中で指名されるはず。





(投球フォーム)

この合わされやすいフォームは、何処に原因があるのか考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足は比較的高い位置でピンと伸ばされているものの、お尻はバッテリーライン上残ってしまっている。そのため体を捻り出すスペースは不十分で、やや窮屈な捻り出しになってしまう。こうなるとカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球などには投げづらい。

 何より前に軽くステップすることはできているものの、まだまだ「着地」までの粘りが作れていない。それゆえ体を捻り出す時間が足りないので、カーブやフォークといった球種だけでなく他の球でも、充分曲がりきらなかったり切れ味がイマイチになりやすい。足の伸ばす高さは好いので、もう少し下半身が強くなって股関節に柔軟性が出て来ると、お尻がもっと一塁側に落とせるようになりそう。元々のフォームが悪いというよりは、筋力・柔軟性がまだ発展途上によるところが大きい。そのため今後、今のフォームでも充分改善は見込める。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けはつけやすいはず。足の甲でも地面を捉えることはできており、ボールが低めでしっかり伸びている。「球持ち」も前で放せており、指先の感覚がいいかは微妙なものの、球筋が安定しはじめた。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻が充分落とせない割に結構カーブなどを使ってきているので、捻り出す時に窮屈になりがちで肘への負担は少なくはないだろう。それでも、悲観するほど無理がかかっているようには見えない。

 腕をしっかり上から叩けている割に、腕の送り出しに無理がなく肩への負担は少ないのではないのだろうか。それほど力投派でもないので、疲労も蓄積し難いのではないかと考えられる。それでもまだ体ができていないので、あまり無理はできないのだろうが。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りがイマイチなので、打者としては合わせやすい。更に体の「開き」が早く、いち早く球筋が読まれやすい。結局コースなどを突いていても、打ち返される可能性が高いし縦の変化なども見極められやすくなっている。「着地」までの粘りが出て下が使えるようになれば、合わせ難くなるだけでなく体の「開き」も自然と遅らせることができてくる。

 振り下ろした腕は体に絡むなど、速球と変化球の見極めはつけやすい。ボールにもある程度体重を乗せられるようになり、打者の手元まで生きた球がゆくよう<になった。恐らく北海道予選~甲子園までの間に、span style="color:#FF00FF">体重移動のコツを自分なり掴んだことが大きな飛躍に繋がったものと思われる。「着地」の粘りは不十分なものの、「体重移動」はある程度できているからである。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「開き」に大きな課題を抱えており、そのぶん「球持ち」と「体重移動」には優れている。

 制球を司る動作や故障のリスクは悪くないので、今後いかに球種を増やしピッチングの幅を広げて行けるかだろう。そのためには、下半身の強化・股関節の柔軟性を並行して行ってゆけば、見違えるような投手になっても不思議ではない。


(最後に)

 素材としては、全国でもトップクラスの選手あるのは甲子園でも実証済み。その一方で、まだ体も発展途上で投球内容も未完成といった感じで、過度な期待をかけすぎるのもどうかと思う。正直甲子園のピッチングのみで判断したら、上位指名されても全然不思議ではない内容だった。

 しかし北海道予選や、甲子園でも3回2/3イニングで8安打を打たれていたことを冷静に分析すると、非常に可能性と共にリスキーな素材でもあることがわかってくる。そのため素材は上位指名級の高校生ではあるが、少し割り引いて評価した方が妥当で中位~下位ぐらいでの指名になるのではないのだろうか。ただし実戦派ではないので大学などでは埋もれてしまう危険性もあるだけに、進路としてはプロの指導者に託した方が、長所が引き出されて良いのではないかと思える選手だと評価する。うまく環境がフィットすれば、
物凄い投手 に化ける可能性を秘めている。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2017年夏 甲子園)