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田浦 文丸(秀岳館3年)投手 170/75 左/左 |
「U18で急浮上」 高校JAPANU18の国際大会では、投手陣の中心として大活躍した 田浦 文丸 。 この大会での内容で、明らかにプロ側の評価はワンランク上がったと言えよう。元々熊本予選では、MAX148キロを記録するなど高校NO.1の呼び声高い 川端 健斗 以上のパフォーマンスを魅せていた。しかし甲子園では、足が吊るなど県大会ほどのパフォーマンスを魅せられず。確かにU18の田浦の活躍には目を見張るものはあったが、熊本予選ほどのボールの勢いがなく、私には物足りないものが残ったことも否めない。 (投球内容) ワインドアップから、ジワ~と足を引き上げて来るフォーム。むしろ投球動作だけみていると、川端より田浦の方が先発タイプなのではないかと思えてしまう。 ストレート 135~MAX148キロ ☆☆☆ 3.0 この投手のスピード能力を何処に位置づけるかは難しいのだが、普段は140キロ前後の速球に変化球を交えて来るタイプとみて良いだろう。ストレートのコマンドはさほど高くないが、両サイドにボールを散らせて来る。時には右打者内角にズバッと投げ込んだり、140キロ台中盤のボールを連発する馬力もある。そういった勝負どころでの強さこそ、この投手の真骨頂。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ・カットボールなど ☆☆☆☆ 4.0 カナダでハマったのは、日本のボール以上に変化球がよく曲がったからではないのだろうか。曲がりながら落ちるスライダーのブレーキはよく、チェンジアップも同じようなところから逆方向へと逃げてゆく。更に緩いカーブやカットボールなどがあり、打者としては的が絞り難い。また海外勢の反応を見ていると、わかっていても捉えることができていなかった。 気になったのは、チェンジアップを投げる時に球離れが早いこと。この腕の振りで、球種がわかってしまうのではないかという不安は残った。この辺は、プロで改善して行きたいポイントではないのだろうか。まっすぐの勢いでは川端に劣るものの、変化球の威力・特にチェンジアップ系の曲がりは、川端にはない魅力だと言えよう。 その他 クィックは、1.1秒台でまずまず。牽制もそれなりで、しっかりランナーに目配せしつつ、時々混ぜてくる。フィールディングもうまく、投球以外の部分にも大きな欠点は見当たらない。 細かい駆け引きができる器用さはないが、最後の最後で開き直って投げられるところは素晴らしい。 (投球のまとめ) 夏の甲子園・横浜戦では、足がつった影響で県大会よりも15キロ近く遅く論外。しかしその後の試合でも、思ったほど調子が上がって来なかった。U18でもスピードを取り戻すまでには至らなかったが、カナダの環境やボールなどがフィットしたのか、素晴らしいパフォーマンスを魅せて甲子園の挽回ができた格好。 この選手の本当の能力が何処にあるのかは掴み難いものの、高校からプロに入るだけの力量があるのは間違いない。特に変化球という、明確な武器を持っているのは大きいだろう。川端ほど差し込まれる感じは薄いが、しっかり変化球を交えてピッチングを組み立てられる幅を持っているところは評価できる。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から彼の将来像を考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばしているものの、かなり二塁方向に向けて送り込んでいるので、お尻の落としは甘くなりがち。体を捻り出すスペースは少し窮屈なものの、カーブやフォークを投げられないフォームではないだろう。 「着地」までの粘りがさほどある方ではないので、体を捻り出す時間は充分といったほどではない。そのため捻り出して投げない、スライダーやチェンジアップ系の球は良いが、カーブやフォークといった球種の曲がりはいまいち。それでもそのほかのボールでしっかり投球を構成できているので、その点は悲観しなくて良いだろう。 <ボールの支配> ☆☆ 2.0 グラブはしっかり体の近くで抱えられているわけではないので、少し両サイドの投げ分けもアバウト。それ以上に足の甲での地面への押しつけが浅いので、どうしても力を入れるとボールが上吊りやすい。「球離れ」も早い方なので、細かいコントロールはつけ難いのではないのだろうか。動作的には、非常にコントロールは不安定になりやすいフォーム。それでも熊本予選の14回1/3イニングで4四死球ということで、投球を乱すことは少なかった。投げようと思えば140キロ台後半も出せるが、制球を乱さないために抑えて投げているのではないのだろうか。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は甘さを残すものの、落とせていないわけではないので悲観するほどでもないだろう。特にカーブの頻度が凄く多いわけでもなければ、フォークのような球種を投げてくるわけでもないので。 腕の送り出しに関しては、グラブを持っている肩が下がり、ボールを持っている肩が上がるぐらいなので、多少無理を感じなくはない。普段はキャパを落として投げているとはいえ、腕を強く振ってくる力投派。疲労を貯めて来ると、故障の原因になりやすいので注意したい。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りはさほどないので、打者とすれば苦になり難い部分はある。それでも体の「開き」も抑えられていて球の出どころが見難いので、ボールが見えてから到達するまでが短く差し込まれやすい。 腕は強く振って来るので、変化球との見極めがつかず効果的。彼のフォームで一番良い部分は、ココだろう。ボールにしっかり体重が乗る前にリリースしてしまい、ボールが高めに抜けやすい傾向にある。まだまだ「体重移動」には、課題を残す。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、>「開き」以外には課題を残している。足の押しつけや球離れの早さから制球力がアバウトで、腕の送り出しに無理があり故障のリスクが感じられ、この辺が今後に向けての不安要素となる。 (最後に) かなり調子にムラがあるので、この選手の平均値・絶対値が掴み難く評価が難しい。それでもスライダー・チェンジアップという良い変化球を2つ持ち、速球を交えた投球で的を絞り難いのは確か。ハートも申し分ないだけに、やはりプロとしては放っておくはずはないだろう。幸いにしてプロ志望ということであり、U18の活躍を考慮すると中位指名でのプロ入りが予想されるのではないのだろうか。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2017年夏 U18ワールドカップ) |