17kp-34


 




大江 海透(北九州下関フェニックス)投手 182/92 左/左 (神埼清明-久留米工大出身)





「指名されると思っていた」





 秋のフェニックスリーグを観ていて、大江 海透 は、指名されると思っていた。ガッチリした体格から、実に力強い球を投げ込むサウスポー。育成枠ならば、何処かの球団から指名されるだろうと。高校時代から寸評を作成したことがあった選手なので、その存在は気になっていた一人だ。


(投球内容)

 九州の独立リーグに入って2年目の選手で、今シーズンは 
44試合 5勝1敗2S 78回 68安 29四死 90三 防 2.31(1位) といった成績だった。

ストレート 常時150キロ前後~MAX153キロ 
☆☆☆★ 3.5

 中継のスピードガンは、5キロ増しぐらいには感じられた。それでも目測でも、140キロ台中盤~後半ぐらいは記録しそうな
力強さと勢いがあった。気になるのは、かなりアバウトなところ。そして、球速の割に打者に簡単に合わされている点は正直気になった。

変化球 カット・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 140キロ前後のスライダーのようなカットボールで、カウントを整えてきます。他にも、チェンジアップだかツーシームようなフォークボールがあります。どちらも、打者からしっかり空振りが取れるほどのキレはありません。しかし、真っ直ぐを意識させた上での変化なので、一定の効果は期待できます。

その他

 クィックは、1.25~1.45秒 ぐらいと遅く、左腕でもこの辺はプロ入り後磨かないと行けなそう。観戦した試合では牽制は観られませんでしたが、鋭い牽制なども持ち合わせていないと厳しそうです。特に「間」を意識してとか、微妙な出し入れといった投球術は見られず、
力のある球をストライクゾーンめがけて投げ込んでくるといった力投派です。

(投球のまとめ)

 一年目から、一軍でと言われると、制球力・投球術・
クィック等含めて厳しいように思えます。ただし、投げっぷりは悪くないですし、真っ直ぐの力は確かです。気になるのは、左腕ですが左打者への制球が乱れること。むしろ、右打者へは両サイドにしっかり散らすことができていました。





(投球フォーム)

 
ランナーがいなくても、クィックのように軸足に体重を乗せることなく、すぐに重心を沈めてきてしまうフォームです。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻は深く三塁側(左投手の場合は)沈ませることができているので、体を捻り出すスペースを確保できており、カーブやフォークといった球種を投げるのには無理は感じられません。

 むしろ気になるのは、「着地」までの地面の捉えが早く、体を捻り出す時間の方が足りないこと。したがって、現時点では曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げることになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆ 2.0

 グラブがしっかり抱えられ暴れてしまい、外に逃げようとする遠心力を内に留めていません。ヒップファーストの弊害としては、軸がブレやすいこと、そして力投派であることも、
両サイドのコントロールを乱す要因になっています。

 足の甲での地面の捉えも短いので、充分浮き上がろうとする力を抑えられてはいません。そのため「球持ち」が悪いようには見えないのですが、高めに行ってしまう球も少なくないのでは。見ている限り、指先の感覚は良く無さそうに見えます。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 
お尻は落とせている
ので、カーブやフォークを使ってきても、そこまで窮屈になることはなさそう。腕の送り出しにも、無理は感じられません。ただし、物凄い力投派なので、疲労を溜めやすい恐れはあります。そういったところからフォームを崩し、思わぬところに負荷がかかる危険性は感じます。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 ボールの出どころは隠せているものの、「着地」までの粘りがないので、
イチ・ニ・サンでタイミングが合わされやすいのは気になるところです。試合を見ていても、ボールの勢いの割に簡単に打ち返されるなと感じたのは、この部分が影響しているのでは?

 
腕は強く振れているので、打者としては吊られやすそう。投球回数を遥かに上回る奪三振が奪えているのも、この部分が大きいのでは。ボールにもある程度体重を乗せてリリースできているのですが、最後に三塁側に重心が流れ気味です。これは、作り出したエネルギーを最後まで伝えきれていない証です。おそらくステップが狭いことで、上半身の強さに下半身が支えきれていないからでしょう。股関節の柔軟性を養いつつ下半身の筋力を強化して、適切なステップを身につける必要がありそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「着地」と「体重移動」に課題を感じます。故障のリスクは力投派過ぎて負担が大きいそうなのが気になるのと、軸が大きくゆらぎ制球が不安定になっているのが気になります。ヒップファーストはできるものの、「着地」までの時間が稼げないことで、武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙です。大人しくなると持ち味を損なわう恐れがあるので難しいところではありますが、現状はリスキーなフォームだと言わざるえません。


(最後に)

 短いイニングならば、勢いでなんとかといったタイプのサウスポーです。ただし、現時点では、二軍でならともかく、今の力では一軍では厳しそう。クィックや制球力なども含めて、二軍でいろいろ修正なりしないと、厳しいように思います。そういった意味では、育成枠での指名は妥当な評価だと考えます。したがって 
(支配下級)の評価までは、できませんでした。


(2023年秋 フェニックスリーグ)


 






 大江 海透(神埼清明3年)投手 180/80 左/左





「面白い投手がいる」 





 今年の春先に、佐賀に面白い投手がいるとの情報が入ってきた。残念ながら夏の予選では、鳥栖商業相手に2回戦で敗退してしまい、その勇姿を確認できなかった。しかし投球練習の映像を見せてもらい、フォーム分析はできそうなので情報は少ないものの取り上げてみることにする。


(投球内容)

 チームでは2番手の存在ながら、春のNHK杯で活躍し一躍プロからも注目される存在になってきた。ゆっくりと足を引き上げる静かなフォームで、柔らかい腕の振り、滑らかな体重移動など、癖のない正統派サウスポー。

 普段は、130キロ台前半ぐらいで、力を入れると130キロ台後半を連発できるという。MAXは143キロということになっているが、まだまだ140キロ台連発とは行かないようだ。ブレーキの良いカーブだか、スライダーを確認。発展途上の投手ではあるが、フォームに悪いクセがないので、素直にパワーアップして行ければ面白そう。

 課題だった制球力を改善することで頭角を現したそうだが、最後の夏は僅か1/3イニングで降板している。こうやってみると、まだまだ素材型の域は脱していないのではないのだろうか。


(投球フォーム)

実際の投球は確認できなかったので、フォームを分析することで本質に迫りたい。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 お尻はバッテリーライン上に残ってしまっており、身体を捻り出すスペースは充分とはいえない。そういった意味では、捻り出して投げるカーブで緩急を、フォークで空振りをという投球には適さない。

 「着地」までの粘りは平均的で、身体をひねり出さす時間はそれなり。カーブやフォークといった球種以外ならば習得は可能だと思うが、切れ味鋭いとか曲がり幅が大きな決め手となる変化球を習得できるのかは微妙。

<ボールの支配> ?

 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定しやすい。足の甲での地面の押しつけもできているように見えるが、足の甲を押し付ける時間が短かったり、「球持ち」の押し込みが浅くボールが上吊る危険性は否定できない。この辺は、ちょっと映像を見ただけでは、はっきりわからなかった。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻が落とせないフォームではあるが、カーブらしき球を投げてくるので、この球の頻度がどのぐらいなのか気になる。腕の送り出しの際には、グラブを持っている肩は上がり、ボールを持っている肩が下がり気味で、肩への負担は少なくないだろう。それほど力投派ではないので、疲れを貯めやすいということはなさそうだが。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは並だが、身体の「開き」は抑えられている。そのためコースを間違わなければ、痛手は喰らい難いのでは? 

 柔らかい腕の振りは、最後まで身体に絡んでくる。強く振るというよりも、長く柔らかいので絡んでくる感じ。ボールへの体重の乗せはまだ発展途上であり、打者の手元まで勢いや球威という意味ではこれからといった感じだろうか。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」に課題を残す形となっている。しかしこの辺は、今後の意識、鍛錬次第では充分に改善が見込めそうなフォーム。

故障のリスクがやや高いののが気になるが、制球を司る動作は悪くない。今後ピッチングの幅を広げて行けるかは微妙だが、これから良くなる余地が残されている。


(最後に)

 実際の投球を確認できていないのでなんとも言えないが、素材としての魅力はあるのだろう。しかし最後の夏の終わり方を見ていると、高校からプロというよりワンクッションおいてからという判断になっても不思議ではない。果たしてプロ志望届けを提出し、指名されることはあるのだろうか?