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遠藤 淳志(広島)投手のルーキー回顧へ







 遠藤 淳志(霞ヶ浦3年)投手 186/74 右/右





                       「春まで無名」





 この春まで雑誌などで取り上げることもなく、ドラフト戦線では全く無名だった 遠藤 淳志 。この春一気にその名前は知られるようになり、関東大会では多くのスカウトが集結しその名を知らしめることになる。一躍ドラフト候補に浮上した、ドラフト界の新星について今回は触れてみたい。


(投球内容)

 スラッとした投手体型で、見るからに筋の良さが感じさせる好素材。186センチの長身から、角度のあるボールを投げ込んでくる。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台前半 
☆☆☆ 3.0

 ボールには適度な勢いが感じられる、ボールの勢いだけで行けば、先輩の 綾部 翔(DeNA)より上かもしれません。ただしその先輩よりも、高めに甘く入る球が多いのとフォーム的に合わされやすい傾向があるように思えます。そういった意味では、見た目の勢いは上回っても、トータルで考えると先輩の高校時代のストレートよりも総合力では劣る可能性があります。

変化球 カーブ・スライダー 
☆☆★ 2.5

 スライダーも曲がりながら落ちるので、どっちがカーブなのかスライダーなのかわかり難い。おおよそカーブのような曲がりながら沈む球とのコンビネーションで投球が組み立てられている。そのため基本的には、速い・緩いのどちらかで、中間球の変化球がまだ弱い。変化球事態は、真ん中~低めに決まることが多く、思いの他狙い打たれるケースは少ない。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒とまずまず。牽制も基準以上で、フィールディングも平均的。特に微妙な駆け引きや、繊細なコントロールは持ち合わせていない。現状は大まかな両サイドへの投げ分けをしつつ、ストライクゾーンに投げ込んでくる感じ。

(投球のまとめ)

 茨城大会の準決勝では、ボールには適度に勢いがあり高めの速球を芯で捉えられるケースが少なかった。しかし疲労なのか? 決勝では高めに浮いたところを痛打される場面が目立った。特に両サイドには散っているものの、高めの球を左打者に苦になくはじき返される場面が目立った。

 いずれにしても先輩の綾部同様に、これからもっとボールが強くなる、変化球を覚えて投球の幅を広げる。そういったことを期待できる素材として、評価される選手だということではないのだろうか。





(投球フォーム)

では今後、どのような未来像が予測できるのか? フォームの観点から考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻はバッテリーライン上に残ってしまっている。そのため身体を捻り出すスペースは充分確保できず、捻り出して投げるカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない投げ方。

 しかし足を大きく前にステップさせることで、「着地」までの時間は適度に確保。これにより身体を捻り出す時間は確保できているので、カーブやフォーク以外な球種ならば好い変化球を習得できる可能性は秘めている。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定しやすい。しかし足の甲の押し付けはできずに浮いてしまっていて、力を入れて投げるとボール上吊ってしまう。ボールは前で放せており「球持ち」自体は良いので、指先まで力は伝えやすくコントロールはつけやすいフォームではある。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 もし多投しているのがスライダーではなくカーブだとすると、お尻が落とせないフォームだけに肘への負担が心配。

 腕の送り出しには無理がなく、肩への負担は少なそう。それほど力投派でもないので、消耗の激しそうなフォームではない。そういった意味では、無理をしなければ故障のリスクはさほど高くないのではないかと考えている。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは悪くないのだが、思ったよりも苦になく合わされている印象がある。その最大の理由は、前に身体を折るように体重を落としてゆくので、フォームが直線的になりやすいこと。そしてなにより身体の「開き」が早くなりがちで、球筋がいち早く読まれやすいから。そのためコースを突いていても、打ち返されてしまうことが多い。

 腕は適度に振られ、打者の空振りは誘いやすい。しかしまだボールにしっかり体重を乗せてからリリースできていないので、打者の手元までの球威・勢いには発展途上の印象を受ける。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動においては、「開き」「体重移動」に問題を抱えていることがわかる。そのため甘くない球を痛打されたり簡単に合わされやすく、速球もまだまだ打者の手元までの球威がという意味では課題を残す。

 制球を司る動作においては、足の甲の押し付けができないので高めに浮きやすい。故障のリスクはさほど高そうに見えないが、お尻が落とせないためカーブで緩急をフォークで空振りをという広がりは期待しにくい。他の球で、いかに代用してゆくかではないのだろうか。


(最後に)

 実はこの投手を、関東大会で確認する予定だった。しかし当日常磐線の人身事故の影響で、会場までつけず断念。その後に行われた試合の模様を拝見したり、練習試合でも生で少し見たことがあったが、そのときは序盤でボコスカに打たれてしまっていた。そういった意味では、夏の大会に入るまでは私自身半信半疑の評価だった。しかし夏の予選では、見事に立て直しに成功している。

 プロとしてはまだまだだが、将来ビシッとしてきたら凄く良くなりそうだとか、上積みが充分見込める余地が残されているという部分に期待して、指名リストに名前を入れてくる球団はありそう。それもこの選手の場合は、育成ではなく本会議中に指名されそうな素材であり、個人的にも指名リストに名前を残してみたいと思うようになった。必ずものになるとは言えないが、可能性を秘めた素材ではないのだろうか。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2017年夏 茨城大会)