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佐藤 隼輔(西武)投手のルーキー回顧へ







佐藤 隼輔(筑波大4年)投手 182/83 左/左 (仙台高出身) 
 




「最終学年のアピールが弱かった」 





 21年度のドラフト戦線において、早くから1位で消えると言われていたのは、この 佐藤 隼輔 ぐらいだろうという感じだった。しかし、その佐藤が、終わってみれば2位指名に。春のリーグ戦では、ボールが走らず物足りないピッチング。秋は、いかなるシーズンだったのか? 振り返ってみる。


(投球内容)

 この秋の登板は、初戦の東海大戦で、152キロを記録し復活を印象づけた直後に脇を痛めて途中降板。武蔵大戦に復帰するも、らしくない投球で打ち込まれた。入れ替え戦では調子を取り戻していたが、ドラフトのあとだった。

ストレート 145キロ前後~152キロ ☆☆☆★ 3.5

 東海大戦の投球を見る限り、ボールの勢い・球速は完全に取り戻していました。また打者の外角中心に集めるピッチングで、制球力も安定している。ただしボール自体が、体重がグッと前に乗ってくるタイプではないので、球速ほど訴えかけてくる感じがしないのは、以前からあまり変わっていなかった。恐らく打席の打者も、それほど苦にはならないタイプなのかもしれない。

変化球 カット・スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5

 カットボールとスライダー中心に織り交ぜていって、決め球にチェンジアップをというパターンがあります。ただし、チェンジアップ自体は、それほど多くは使ってこない印象がありますし、そのため絶対的な球があるかと言われると微妙です。速球と変化球を織り交ぜ、相手の打ち損じを誘うというのが、この選手のピッチングスタイルなのでは?

(その他)

 クィックは、1.0秒前後の高速なものから1.2秒ぐらいのオーソドックスなものなど、投げるたびに微妙にスピードを変えてきています。牽制も結構上手いですし、フィールディングでも落ち着いてボールを処理できています。またランナーを背負ってからも、じっくりボールを持つなど、「間」を意識した投球もできるようになってきました。

(投球のまとめ)

 秋の東海大戦の内容を観ても、調子自体は元来の状態に戻ってきていたと言って過言はありません。ちょっと単調な印象だった投球も、投げるタイミングを変えたり、ボールをじっくり持つことで、かなり奥行きが出てきていたのではないのでしょうか。下級生の時から、大きな上積みがあるのかと言われると微妙ですが、問題は投球内容以外にあったと考えるべきではないのでしょうか。


(最後に)

 春もそこまで悪いとは思わなかったのですが、下級生時代の内容も加味しての1位評価でした。それに比べると、この秋は内容が1位評価に戻ってきたことを改めて感じました。しかし、冒頭にも書いたように、152キロを記録した直後に脇腹を痛めて降板。以後、ドラフト前にアピールできずに終わり心象を損なった感じはします。その辺のプロの長く険しいシーズンを想定すると、肉体的な不安が無くはありません。しかし、左腕でこれだけ投げられる投手が2位まで残っていたというのは、やはり野手評価の高い近年のドラフトを象徴していたように思えます。2位の入団になったことで、ある程度自分のペースで調整できそうな状況でもあり、彼にとっては結果的に良かったかもしれません。順調に能力を出せれば、一年目から先発入りして、7,8勝 ぐらいあげても不思議ではない。そのぐらいの力は、あるのではないのでしょうか。西武にとって美味しい指名となったかどうか、答え合わせのシーズンが楽しみです。


蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級)


(2021年 秋季リーグ戦)










佐藤 隼輔(筑波大4年)投手 181/83 左/左 (仙台高出身) 
 




 「特に何か悪いわけではない」





 シーズンが始まるまでは、今年の大学・社会人NO.1投手として、高い注目を集めていた 佐藤 隼輔 。しかしこの春季リーグでは、ピリッとしない投球が続き冴えなかった。しかしその投球を見る限り、何が悪いという感じでもなく原因は良くわからない。


(投球内容)

 淡々と投げ込むみ、試合を作って来るタイプです。何かすごい球で圧倒するとか、気持ちを全面に出すとか、そういったタイプではありません。

ストレート 常時140キロ前後~中盤 ☆☆☆ 3.0

 この春は、全体的に5キロぐらい遅く、ボールのキレ・勢いもやや鈍かった気は致します。元々は、淡々と145キロ前後の真っ直ぐを両サイドに散らしつつ、要所では150キロ前後で真っ直ぐで仕留めるといったピッチングスタイル。ベースになる投球内容は代わりませんでしたが、やはりストレートが劣化したことが冴えない投球の最大の要因になったのではないのでしょうか。

変化球 スライダー・カットボール・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0

 しっかり曲がるスライダーと、少しだけズレるカットボールを使い分けているように見えます。このカット気味なボールは、昨年までは投げなかったのか? 投げてもいても目立なかったのか? あまり記憶にありません。小さく右打者外角に逃げるツーシーム的なチェンジアップも投げるのですが、以前ほどこの球を投げる頻度も少なく、曲がりも小さかったことも今シーズン苦戦した要因かもしれません。

その他

 クィックは1.10~1.25秒ぐらいとバラツキがあり、投げるタイミングを一球ずつ微妙に変えているのかもしれません。牽制も上手い選手で、フィールディングも落ち着いて処理できています。微妙な出し入れや、あまりじっくり持って「間」を使った投球をするというよりも、両サイドに散らせつつ、力加減を変えることで勝負して来るタイプではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 ベースとなる投球はあまり変わっていないと思いますが、ボールの勢い・球速が出ず、チェンジアップのキレもイマイチだった感じがします。そういった一つ一つのボールの劣化がパフォーマンスの低下に繋がったのではないかと。しかし何処かが痛いとかいう問題で無ければ、しっかり調整できれば秋に巻き返すことは充分可能であろうと思います。イメージ的には、石田 健大(法大-DeNA)左腕に似たタイプにように思えます。


(成績から考える)

 オフシーズンにはフォームを分析しているので、今回は春に残した成績から考えて行きたいと思います。ちなみにこの春は、

6試合 2勝4敗 41回 27安 10四死 39三 防 2.63

1,被安打は投球回数の80%以下 ◎

 被安打率は65.9%なので、この点では充分合格点だと言えます。これまでの通算でもほぼ同じぐらいなので、特に数字の上からは大きな変化は観られません。

2,四死球は投球回数の1/3以下 ◎

 四死球率は、24.4%であり、投球回数の1/3どころか1/4以下と制球力も合格点。通算では28.2%ぐらいなので、それまで以上に安定していたことがわかります。

3、奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◎

 1イニングあたりの奪三振は、0.95個 。リリーフの基準どころか、先発投手の基準をも上回っている。この辺の数字も、通算成績と大きくは差はなく、何か大きな変化は感じられない。

4,防御率は1点台以内 ☓

 今シーズンの防御率は2.63であり、この点では大きく見劣る。特に通算では1.46 ということで、要所で踏ん張れなかったということだろう。過去には、絶対領域の0点台を3回も記録している投手なので、持っている能力としては申し分がない。

(成績からわかること)

 各ファクターに大きな違いはなく、今シーズンどうしてここまで悪かったのかはわからない。ただし、防御率の悪さからも、要所での踏ん張りが効かず失点を重ねてしまった可能性がある。そのへんはストレートやチェンジアップの劣化が、失点に結びついてしまったのかもしれない。


(最後に)

 貴重な、開幕ローテーションを意識できる素材であり、左腕であることも加味すると1位指名は濃厚だろう。しかし、秋のシーズンでも春同様の内容だった場合、1位競合級の評価が、単独1位あるいはハズレ1位ぐらいにまでなっても不思議ではない。しかし、その辺は同じ轍を踏むような投手でも無さそうなので、秋のシーズンでの巻き返しを期待してみたい。


蔵の評価:☆☆☆☆(1位指名級)


(2021年 春季リーグ戦)











佐藤 隼輔(筑波大3年)投手 181/80 左/左 (仙台高出身) 





 「ポスト早川隆久





 このまま順調に最終学年を過ごせず、ドラフト1位指名が濃厚なレベルにある 佐藤 隼輔 。下級生までの実績ならば、最終学年まで伸び悩んでいた 早川 隆久(早稲田大-楽天)を上回るパフォーマンスを魅せており、さらに最終学年での上積みがあれば彼に近い領域にまで行ける可能性を秘めたサウスポーなのだ。

(投球内容)

 球数を制限するなど、これまで計画的にかつ大事に育てられてきた感がある。3年間の通算成績は、8勝4敗 防 1.15 と、彼の潜在能力からすれば、まだ物足りないぐらいの実績。最終学年での、爆発が期待される。

ストレート 140キロ台前半~MAX151キロ ☆☆☆★ 3.5

 普段は140キロ~中盤ぐらいと、驚くようなボールを投げ込んでくるわけではない。むしろ、両サイドに丁寧に投げ分けて来る感じでコントロール重視。ただし要所では、力を入れて150キロ前後の速球を投げ込んだり、打者の内角を厳しく突いたりもできる。

 投げミスをしないことが彼のピッチングスタイルであり、通算での被安打率は70.2%とかなり低い。四死球率に至っては、28.3%と、基準である投球回数に対し1/3(33.3%)以下も充分満たしている。

変化球 スライダー・チェンジアップ ☆☆☆★ 3.5

 左打者の外角に逃げ、右打者のインハイを突くスライダーでカウントを稼げる。この球の精度も高く、コントロールミスは少ない。また右打者の外角に低めには、チェンジアップを沈めることもできている。変化球自体のキレや変化量よりも、しっかり制球することで相手の打ち損じを誘うタイプ。それでもリーグ通算では、1イニングあたり0.98個の三振を奪っており、先発投手の基準である0.8個以上を上回っている。

その他

 クィックは、1.1秒前後とまずまず。牽制も左腕らしく、結構上手い。フィールディングも、落ち着いてボールを処理できていて下手では無さそうだった。

 それほど「間」を意識してとか、巧みな投球術といった感じはしない。しかし、コントロールを大事にしながら、勝負どころでは力を入れてというメリハリはできている。まして、内角を厳しく突くなどの攻めの厳しさも忘れない。

(投球のまとめ)

 淡々とコースを投げ分けて来る感じで、あまり投球に抑揚が感じられず訴えかけてくるといった感じはして来ない。それでもコントロールは安定しており、要所では力を入れた球や厳しい攻めを魅せるなど持っている能力には確かなものがある。それでもまだ突き抜けたものは感じられず、最終学年にそういったものが出てくれば即戦力投手の目玉的存在になりうるのではないのだろうか。


(投球フォーム)

 セットポジションから、足を高く引き上げてきます。また、軸足一本で立ったときにも、膝がピンと伸びがちですが、全体的にはバランスよく立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 少し前に倒れ込むような感じの体重の落としなので、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっています。こうなると身体を捻り出すスペースは確保されず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種を投げるのには適しません。

 それでも「着地」までの地面の捉えはそれなりで、適度に身体を捻り出す時間は確保できています。カーブやフォークのような球種は厳しいですが、スライダーやチェンジアップの変化は悪くなく、ピッチングの幅を広げてゆけるのではないのでしょうか。問題は、緩急や縦の変化をいかにして作って行けるかだと考えられます。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸がブレ難く、両サイドへの投げ訳はしやすいと考えられます。また足の甲の地面の捉えにも粘りがあり、ボールも上吊りません。しいて言えば、「球持ち」が平凡で、繊細なコントロールや低めへの押し込みという部分ではまだ物足りなさを残しています。しかし大雑把には、狂いの少ないフォームになっています。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻が落とせないフォームなので、カーブやフォークなどを投げるとスペースが確保されていないので窮屈になります。しかし実際には、そういった球種は観られないのでは肘への負担は小さいのではと。

 ただし、ボールを持っている肩は上がりグラブを持っている肩が下がっているので、ボールの送り出しという意味では肩に負担を感じないわけではありません。また、ゆったりと入るフォームではあるのですが、結構フィニッシュでは力投派の身体の使い方なので、疲労は適度に溜まりやすいのではないかと。けして、故障のリスクが低いフォームとは言えないでしょう。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りも適度に作れており、ボールの出どころも隠せています。したがって、見えないところからピュッと来るギャップは感じられ、打者は差し込まれる可能性が高そうです。

 また腕もかなり強く振れており、空振りを誘いやすい勢いは感じます。しいて言えば、体重がしっかり乗りきる前にリリースを迎えているように見え、そのため、打者の手元までグッと来るような訴えかけるようなボールにはまだ至っていないように感じます。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「開き」「球持ち」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」にまだ改善の余地が残され、そこが変わって来られるかが大きなポイントではないかと。制球を司る動作は良く、今後もピッチングの幅を広げて行ける可能性も感じます。しいて言えば、多少負担の大きなフォームで故障には注意して欲しいということでしょうか。


(最後に)

 コントロールにも狂いはなく、厳しい攻めもできる。ただまだ目玉選手としては、ボールに訴えかけてくるほどの迫力や相手を力で押し切るほどの凄みみたいなものには欠けているのかなと。そのため1位指名の有力選手ではあるものの、まだ目玉級といった図抜けた存在感は感じません。そういったものがでてきた時には、一躍ドラフトの目玉へと踊り出てくるのではないのでしょうか。


(2020年 秋季リーグ戦)



 








佐藤 隼輔(仙台高3年)投手 180/76 左/左 
 




 「コンビネーション投手」





 今年の高校生の中でも、全国で3本の指に入ると訊いて、どうしても生で見ておきたかった 佐藤 隼輔 。進学も噂される選手ではあったが、最後の夏だということで仙台へと赴いた。けして力でねじ伏せるタイプの投手ではなく、あくまでも変化球を交えたコンビネーションで打ち取る先発タイプの好投手だった。


(投球内容)

 通常時はかなり力抜いて投げており、要所や得点圏にランナーが進まないと力は入れて投げて来ない。

ストレート 135キロ前後~140キロ台前半 
☆☆☆ 3.0

 普段は135キロ前後のボールを、両サイドに散らせて来るといった感じ。そのためボール自体のキレや球威にも、驚くものは感じられない。しかし力を入れたときは、腕をムチのように使い思わず打者が差し込まれたり、振り遅れてしまう。力を入れた球は滅多に見られないが、そういったときのボールが容易には捉えることができない勢いがある。これは球速やキレという以上に、フォームや腕の振りによるところが大きいそうだ。こういった球が安定して投げられるようになれば、プロでも充分先発として勝負できるだろう。しかし現時点では、こういった球は多くはみられない。

変化球 スライダー、カーブ、チェンジアップなど 
☆☆☆★ 3.5

 曲がりが鋭く、速球との見分けがつき難い実戦的なスライダーが最大の武器。それにもっと緩いカーブ、右打者の外角低めにはチェンジアップも違和感なく落としてくる。特にスライダーは、右打者の内角膝下に食い込ませることができ、これが左打者に攻めとしては珍しい。速球と変化球を違和感なく織り交ぜることができ、相手に付け入る隙与えない、的を絞らせないのが最大の特徴。

その他

 牽制はまずまず鋭く、左投手らしくうまい。クィックは、1.10~1.15秒前後と基準レベルを満たしており、フィールディングの動きも悪くなかった。野球センスが高いのか、こういった投球以外の動作にも筋の良さが感じられる。

(投球のまとめ)

 自分のペースでコンビネーションが作れているときは、なかなか付け入る隙を与えない。またいざ力を入れたときの速球は、高校生レベルでは容易に打ち返せない。ただし味方のエラーだとか、不運なヒットでランナーを背負い自分のペースが崩されると、やや精神的に乱れる部分もあり、思ったほどクレバーではないのかと思える部分もある。

 まだ安定して高いレベルの球が投げられないという基礎筋力・基礎体力に不安な部分があり、体づくりには1,2年を要することにはなるだろう。この辺は本人も自覚しているのか? プロ入りに興味がないわけではないが、進学への迷いが生じている理由なのかもしれない。

この夏の成績は

5試合 41回 23安打 10四死 58奪 防 0.44

 被安打率は56.1%(基準は70%以内)、四死球率は24.4%(基準は33.3%以下)、奪三振は1イニングあたり1.41個(基準は0.8個)以上と、どのファクターも文句なし越えているところは、完成度の高さが伺われる。ただし相手が本当に全国レベルの強豪校となると、この投球が通用するのかは微妙なところ。しかしこの春は、センバツ帰りの仙台育英相手に2失点完投の投球を見せていた。

 この投手の評価は、現時点の投球を元としながらも、これから更に基礎体力・基礎筋力を向上させ今後スピードアップを期待した上での評価だということ。あくまでも現時点での投球で、どうとかいうことはない。ただしマウンド捌き、投球スタイルからしても、順調に期待通りの成長を遂げれば、近い将来ローテーションを意識できる存在。そういった左腕であるということで、高く評価されているのだろう。





(投球フォーム)

今度は、フォームの観点からこの選手の本質と将来像に迫ってみたい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残りがち。そのため身体を捻り出すスペースは充分とはいえず、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない投げ方。

 また「着地」までの粘りも充分ではないので、身体を捻り出す時間も充分とはいえない。そうなると今後武器になるような変化球を習得し、ピッチングの幅を広げて行けるかは微妙。それでも現時点で切れ味鋭いスライダーと効果的なチェンジアップは習得しているので、悲観することはない。今後はカットボール・ツーシーム・スプリットなど球速の小さな変化を中心に、ピッチングを広げてゆくことが期待される。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面をしっかり捉えており、ボールも上吊らない。「球持ち」は現時点ではそれほどでもないので、もう少し指先まで力が伝えられるようになると、さらに細かいコントロールが期待できるかもしれない。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻を落とせないフォームではあるが、カーブはそれほど投げないし、フォークも現時点では投げていないので悲観する必要はなさそう。

 腕の送り出しも、けして無理な感じはしないので肩への負担は少なめ。けして力投派ではないので、消耗も少ないタイプなのだろう。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはないものの、身体の「開き」は抑えられており、見えないとこからピュッとボールが出てくるギャップはあるかもしれない。更に長い腕をブンと強く振ってくるので、打者としては球速以上に差し込まれやすい。

 腕の振りはよく勢いもあるので、力を入れたときには思わずバットを振ってしまう。しかしボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているわけではないので、まだ打者の手元までの勢い、球威という点では改善の余地が残されている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」こそ抑えられているものの、「着地」「球持ち」「体重移動」に課題を残し、まだあと一歩の粘りが欲しいところ。

 コントロールを司る動作には優れ、故障のリスクもさほど高くない。しいて言えば今後ピッチングの幅を広げて行けるのか?という疑問は残るが、現時点でスライダーやチェンジアップのキレ・ブレーキも悪くないので、これも悲観しなくても良いのではないのだろうか。


(最後に)

 左腕としてはコントロールが安定していて、マウンド捌き、変化球レベル、投球術は高校生としては高いものを持っている。まだボールそのものや技術的に絶対的なものはないものの、今後高いレベルで野球に取り組み、レベルアップして行ければ、近い将来プロでも先発が期待できる素材としてマークされている。

 私が観戦した試合では、大会の中でも最も省エネピッチングに心がけていたという試合だったとのこと。そのためボールそのものの凄みや、圧倒的な内容は観られなく、その片鱗は観られたものの若干物足りない内容に留まった。しかし彼を何度もみてきたプロ側の評価と、今年のドラフト市場を考えると、志望届けを提出した場合に3位以内での指名は充分期待できるのではないかという気がする。できればもう一試合勝ってくれるとテレビ中継があったので、そこでの投球を確認してクロスチェックを行いたかっただけに残念だった。ということで、今度はプロの舞台でぜひ確認してみたい投手だった。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2016年夏 宮城大会)