17kp-29


 




牧 丈一郎(阪神)投手のルーキー回顧へ







牧 丈一郎(啓新3年)投手 182/82 右/左 





                       「良さそうなのですが」





 準決勝のテレビ中継前に破れてしまった 牧 丈一郎 。しかし幾つか彼の投球の模様が動画で上がっていたので、それを参考にレポートを作成してみたい。しっかり観られた選手ではないので評価付けはできないが、動画を見る限り高校からの指名は濃厚な素材ではないのだろうか。


(投球内容)

 ちょっともっさりした体型の投手ではあるが、馬力型の投手の割には変化球レベル、抜きどころなどのメリハリの効いた実戦的な側面も兼ね備えているところには好感が持てる。

ストレート 常時140キロ前後~140キロ台後半 
☆☆☆☆ 4.0

 見るからに強い腕の振りから放たてるボールの球威・勢いは本物で、コンスタントに140キロ台から力を入れた球は140キロ台後半は出ていそうに見える。実際この夏の予選では、MAX148キロを記録したという。ただボールが強いだけでなく、両サイドに散らすことができるコントロールもあり、けして粗っぽいだけの力投派ではないということ。

変化球 スライダーなど? 
☆☆☆★ 3.5

 キレのあるスライダーとのコンビネーションで、この球でカウントも取れるし三振を奪うこともできている。速球とスライダーの単調なコンビネーションに見えるが、速球にもスライダーにも威力があるのでイニング数前後の奪三振は奪えている。更に何やら、夏を迎えフォークかチェンジアップ系の縦の変化球も使っていたように見える。この球はまだ発展途上であり、これからといった感じだろうか。

(投球のまとめ)

 一見単なる馬力型に見えるが、速球と変化球の使い分け、投球の強弱もつけられており、勝負どころには非常に強い球が投げられる。またコントロールの不安定さも少なく、荒れ荒れの投手ではない。ただし福井商戦は、やや調子が悪かったように見える。その辺、単なる好不調の波なのか? 故障続きで根本的なスタミナがまだ足りないのかは定かではない。





(投球フォーム)

 ノーワインドアップから投げ込んでくるフォームで、足を引き上げたときに軸足の膝がピンと真上に伸びてしまい、バランス好い立ち方ではないところが気になるところ。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残ってしまいます。そのため身体を捻り出すスペースが足らず、身体を捻り出して投げるカーブで緩急を、フォークで決め手という投球が望み難いフォームです。

 「着地」までの粘りは平均的で、身体を捻り出す時間は並ぐらい。そういった意味では、今後武器になるほどの変化球を身につけられるのか? 投球の幅を広げて行けるのかには疑問が残ります。ただし現時点でスライダーのキレは悪くありませんので、その辺は悲観しなくても好いのかもしれません。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドへの投げ分け安定。足の甲での地面への押しつけもできているように見えるが、ちょっと見た動画だけだと確信が持てない。実際ボールは高めに抜けていないので、その辺は問題ないとみる。やや「球持ち」が浅く、腕もブンと強引な腕の振りをしていることからも、この辺が多少制球を乱す要素か。それでも馬力型の投手にしては、コントロールは安定している。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻は落とせないフォームではあるが、カーブやフォークといった球種をそれほど投げないので悲観しなくても好いだろう。腕の送り出しにも無理はなさそうで、しいて言えば少し腕をブンと外から強引に振って来るところがあり、その辺が肩などに負担をかけている可能性はある。しかし極端ではないので、現時点では問題があるようには見えない。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までのタイミングは、それほど粘りがないので苦になることはなさそう。それでも「開き」自体は抑えられており、甘く入らなければ痛打は浴び難い。

 腕は強く振られており、速球でも変化球でも勢いがあって空振りを誘いやすい。まだ充分ウエートを乗せてからリリースを迎えているわけではないので、この辺はもっと下半身の柔軟性や鍛錬を積めば良くなる可能性を秘めている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、>「球持ち」と「体重移動」に、もう少し粘りが欲しい。ここがもう少しねばっこくなると、投球の単調さがだいぶ改善されるのではないのだろうか。

 制球を司る動作は安定しているが、故障のリスクは並。特に今後、好い変化球を覚えてピッチングの幅を広げて行けるのかが大きな鍵になりそう。


(最後に)

 僅かな映像を元にレポートを作成したので、それほど確信めいたことは言えない。しかし幾つかの映像を観て感じたことは、高校からドラフトされるだけの力量をすでに備えているということ。ボールの力だけでなく、投球のメリハリ、コントロール、スライダーという、もう一つ使える球種を持っていること。

 気持ちの強さだけでなく、投手としての総合力、センスも兼備している素材。そういった部分は想像以上であり、ドラフトでも中位(3位、4位)ぐらいならば充分指名があっても不思議ではないだろう。個人的にはこの夏確認した投手の中では、最も好感のもてる選手一人だった。あわよくばテレビ中継まで残ってもらい、もう少し長いイニングを確認してみたかったのだが・・・。


(2017年夏 福井大会)