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山下 輝(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ







山下 輝(法政大4年)投手 188/100 左/左 (木更津総合出身) 





 「確かによくなっていた」





 この夏のオープン戦で、山下 輝 が本格化したという噂を耳にしていた。しかし、法政大は部内で発生したコロナの影響で、開幕はドラフト直前の週末から。そこでの山下の出来が、彼の評価を決定すると言っても過言ではなかった。その立教大戦では、7回を7安打 1四死 12三振 2失点でまとめ、ドラフト1位の評価を決定づけた。


(投球内容)

 188/100 という体格が示す通り、かなりモッサリとした感じのサウスポー。イメージ的には、東北福祉大から横浜ベイスターズに進んで活躍した 吉見 祐治(現スカウト)を、ぶっとくした感じです。

ストレート 145キロ~150キロ強 ☆☆☆☆ 4.0

 春の時点でからコンスタントに145キロ前後、リリーフでは150キロを越える球を投げていました。しかしこの秋は、先発でも安定して140キロ台後半を叩き出すなど、さらにパワーアップした印象。ボール自体はキレや伸びといった空振りを誘う球質ではなく、球威で詰まらせて打ち取るといったタイプです。時々甘いゾーンに入ってくることもありヒットも打たれますが、基本的に長打や連打を喰らい難いことで失点を防ぎます。そういった馬力は、今年のドラフトで上位指名された左腕にも他にない魅力です。

変化球 スライダー・カットボール・ツーシーム・カーブなど ☆☆☆★ 3.5

 スライダーでしっかりカウントを整えられるのかが一つ調子のバロメーターなのですが、これが決まらずにボールゾーンに行ってしまうときは苦しいピッチングになります。カウントを悪くするとカットボールでカウントを整えたり、時々にうまく抜けたカーブなども交えてきます。チェンジアップというよりも、ツーシーム気味に小さく逃げる球がありますが、左投手にしてはこの球に絶対的なものはありません。変化球も空振りを誘うというよりは、どちらかというと微妙に芯を外したり狙いを絞らせない役割が大きいです。

その他

 牽制はかなり鋭いものを織り交ぜることができ、結構上手いです。クィックも、1.1秒台で投げ込んでくるので左投手としては速い方。フィールディングも、その巨体の割に打球への反応は素早いです。

 何よりランナーを背負っても、点をやらなければいいだろ? 的に肝のすわったマウンドさばきです。

(投球のまとめ)

 淡々と投げ込むスタイルで、相手を完璧に抑え込むというよりは、2~3点取られてでも試合は作るイニングを食えるタイプといった打たれ強さを感じます。故障やそれに伴う手術などで順調な4年間だったとは言えませんが、ようやく木更津総合時代から期待するレベルに、近づきつつあるのかなといった感じに。高校時代は、一学年上の 早川 隆久(早大-楽天)よりも、この山下の将来性の方を私は高く評価していたぐらいなので。


(成績からわかること)

 この秋の成績は、5試合 0勝1敗 27回2/3 19安 7四死 27三 防 0.98 (1位) といった内容に。自身初の、最優秀防御率賞に輝いた。

1,被安打は 投球回数の80%以下 ◎

 被安打率は、68.7% で、春の 93.4% から大きく改善したことがわかる。ボールの威力を増したことで、相手の打ち損じを誘えるケースも増えたのだろう。春に書いた、70%以下の圧倒的な数字が欲しいと書いた通りの結果を残してくれた。

2,四死球は投球回数の1/3以下 ◎

 四死球率は、25.3% 。春は 21.9% だったので、若干悪くはなっている。しかし投球回数自体が少ないので、この差は誤差程度かもしれない。コントロールが特別良くなって、成績を伸ばしたわけでは無さそうだ。それでも充分、投球回数の 1/4 程度に押さえており、四死球で自滅するような危うさは感じない。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◎

 1イニングあたりの奪三振は、0.98個とほぼ投球回数と同等。春は0.78個で絶対的なボールがないといった感じだったが、真っ直ぐで押せることで三振率も高まった。この割合は、先発の基準だけでなく、リリーフの基準をもクリアできている。

4,防御率は1点台以内 ◎

 防御率は、0.98 で、この秋の最優秀防御率に。春は 2.25 だったことを考えると、かなり安定感も増してきている。特に1位指名を目指すのであれば、0点台の絶対的な数字が欲しいといってきたことを、ラストシーズンで達成した。3年春・秋 でも、この数字を満たしているが、先発をして規定投球回数をクリアしての記録に大きな意味がある。

(成績からわかること)

 日本最高峰の大学リーグである東京6大学において、全てのファクターで文句なしの数字を残している。この内容をプロ入り後も持続できるのであれば、一年目から即戦力としての活躍も見込めるであろう。


(最後に)

 この春までの印象は、淡々と投げ込む反面どこかピリッとしない感じだった。そのため評価も、2位ぐらいまでに指名されるぐらいかなと観ていた。しかしこの秋は、もっさりした感じは残っていたものの、相手を力で押し込むだけの投球ができており、これならばプロでも一年目からローテーションで回って行けるだけの内容になってきたのではないかと。順調に能力を出してもらえれば、1年目から7,8勝は記録しても不思議ではなく、2年目以降の選手の成績にもよるが、セ・リーグの新人王でも最有力な候補なのではないのだろうか。そのぐらい今は、充分してきている。あと心配なのは、故障などに泣かされないこと。身体のケアには、充分に注意を払って取り組んで頂きたい。


蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級)


(2021年 秋季リーグ戦)

 









山下 輝(法政大4年)投手 188/95 左/左 (木更津総合出身)
 




 「淡々と」





 巨体をから投げ込む左腕で、少しもっさりとした感じの 山下 輝 。しかし、一見同じようなリズムで投げ込んでいるように見えるのだが、投げるタイミングを変えたりと考えて投げていることに気がつかされた。


(投球内容)

 4年春になって、法大の第二戦先発を任された。この春の成績は、5試合 2勝3敗 防 2.25(3位) という成績で、防御率ではエースの 三浦 銀次 を上回る成績を残している。

ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆★ 3.5

 リリーフだと150キロ前後を記録する山下だが、先発だと常時145キロ前後ぐらい。ボールの質としては球威型で、打者の空振りをバシバシ誘うような球ではない。基本的には、内外角に集めて詰まらせて打ち取るのが持ち味。それでも右打者の内角を厳しく突いたりはできていた。

変化球 スライダー・カット・カーブ・ツーシーム ☆☆☆★ 3.5

 曲がりながら沈むスライダーでは空振りが奪えるものの、基本は多彩な球種で的を絞らせないようにするのが持ち味。特別、打者を仕留めるような強力な縦の変化球などは持っていない。同じような軌道からスライダーとは違うカットボールを使ったり、速球かと思ったら小さく逃げてゆくツーシームなどを使って微妙にタイミングを外してくる。

その他

 大型だが、フィールディングの動きは基準レベル。牽制も鋭く、走者が刺されることもある。クィックは1.2秒前後と標準的だが、1.3秒前後で投げ込む時もあり、投げるタイミングを微妙に変えている節はある。

(投球のまとめ)

 巧みな投球術や繊細なコントロールがあるといった感じではないが、安定して内外角に集めヒットは打たれても大量失点を浴びないで試合を作ることはできている。まだまだ絶対的なものは感じられないが、これだけのスペックでこれだけの球威とコントロールを持っている選手は全国的に貴重。そういった意味では、今後の伸び代も含めてある程度高くは評価されるのではないのだろうか。


(成績から考える)

オフの寸評ではフォーム分析をしているので、この春残した成績から考えてみたい。

5試合 32回 30安 7四死 25三 防 2.25

1,被安打は投球回数の80%以下 ☓

 被安打率は、93.4% と、けして低くない。そのため、先発では相手を力でねじ込めているわけではなく、何かピリッとしない印象を受ける。これを、70%台に持ち込むような、圧倒的な内容が欲しい。

2,四死球は投球回数の1/3以下 ◎

 四死球率は21.9%であり、基準である33.3%以下どころか投球回数の1/4以下に留めている。大型でも、四死球で自滅するような、そういった危うさはない。

3、奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 △

 1イニングあたりの奪三振は、0.78個 。先発ならば、0.8個以上ないと決め手があるとは言えず、その点絶対的なボールがないと感じられる部分だろうか。基準にはかなり近い数字であり、あともう少しで、この数字も到達できるところまで来ている。できれば、もう少し身体にキレを出して球質を改善したい。

4、防御率は1点台以内 △

 この春の防御率は、2.25 と僅かに届かず。学生最高峰の六大学だけに、他のリーグよりもかなり敷居の高いファクターではある。ただし、この春でも慶応の増居や森田は1点台前半をマークしているので、けして不可能な数字ではないはず。

(成績から考える)

 制球以外のファクターに不安があり、まだ絶対的な存在ではないことが伺われます。この選手の場合、昨年の 入江 大生(明治大-DeNA1位)のように、即戦力というよりは半即戦力、数年後にといったタイプではないかと思います。


(最後に)


高校時代から非常に評価してきた選手なので、現時点での内容はこちらが思い描いていた成長曲線に比べると物足りないものを感じなくもありません。それでも最終学年では、しっかりシーズン通して役割を全うし存在感を示すことはできています。1位の12名にとかいうのは荷が重いと思いますが、2位~3位ぐらいの間には指名されても不思議ではないところにいるのではないのでしょうか。この春の経験を糧に、秋にさらなる飛躍を期待しております。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2021年 春季リーグ戦)










山下 輝(法政大3年)投手 188/95 左/左 (木更津総合出身) 
 




 「まだ絶対的ではない」





 木更津総合時代、世代屈指のサウスポーと評価し、一学年上の 早川 隆久(早大-楽天1位)よりも魅力を感じると評した 山下 輝 。法大進学後、3年生になってようやく公式戦に登場してきた。高校時代よりもさらに逞しさを増した印象だが、まだその投球に絶対的なものは感じられない。


(投球内容)

 188/95 という骨太の体格から、ワインドアップで振りかぶって投げ下ろしてきます。3年時には春・秋合わせて8試合に登板していますが、リリーフでの起用であり投球内容にも絶対的なものはありませんでした。

ストレート 常時145~150キロ 
☆☆☆★ 3.5

 無理をしなくても、145~150キロ級のボールを投げられる馬力があります。両コーナーにボール散らせて討ち取って来るタイプですが、それほど打者の手元でグ~ンと伸びるとかピュッとキレるわけではないので、バシバシ空振りを誘うといったほどではないように思います。丁寧に両コーナーに散らすというのが彼の持ち味であるのですが、そのため細かい制球に気をつけ過ぎて、四球を出してしまうことも少なくないように感じました。その辺、もう一歩踏ん張れるように開き直って投げることが求められます。。

変化球 スライダー・ツーシーム・カット・フォーク?など 
☆☆☆★ 3.5

 曲がりながら沈むスライダーを中心に投球を組み立て、右打者には小さく外に逃げるツーシーム的なボールが観られます。またカウントを悪くした時には、140キロぐらいの球速を殺したカットボールのような球でストライクを稼ぎます。他にも130キロ台縦に鋭く落ちるフォークナようなボールがあったのですが、コレが何なのかはっきりわかりませんでした。逆にこの球が苦しい時に使える精度を身につけられるようだと、また投球の幅やピッチングスタイルががらりと変わってきそうです。

その他

 クィックは1.1秒ぐらいでまずまずで、ボール処理なども基準レベル。ベースカバーなども早く、大型でもそれほど緩慢さは感じられない。ただし、牽制などを入れたのを観たことがないので、そのへんがどうなのかはチェックしてみたいポイント。

(投球のまとめ)

 速球自体が訴えかけるようなボールというよりも、少々淡々とコーナーに置きに来る感じなので、けして球威・球速があっても打者が打てないなといったボールではまだない。変化球も一通りの球種を操れる器用さはあるものの、現状はまだ絶対的なボールが見当たらない。この辺は早川の3年時もそんな感じだったのだが、最終学年でどう変わって来るだろうか? 秘めたるポテンシャルは、高校時代も高く評価したように、早川以上のものを持っていると思うので楽しみにしたい。


(投球フォーム)

 ワインドアップから振りかぶり、足の引き上げは平均的な高さまでで、軸足の膝には適度に余裕があってバランス良く立てていた。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足をかなり二塁方向に送り込むことでバランスをとるので、お尻の落としはやや甘さが残る、カーブやフォークを投げるのに無理はないと思うが、変化が鈍る可能性は否定できない。

 「着地」までの地面の捉えはそこそこで、身体を捻り出す時間もそれなり。一通りの球を投げられる下地はあるものの、そこから武器になるような球を習得できるのかは微妙といった印象は受けた。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。軸がブレ難く、両サイドへの投げ分けも安定しやすい。足の甲の地面への捉えも浅すぎることはなく、深いといったほどではないが浮き上がろうとする力はある程度抑えられていそう。実際に、高めに抜ける球はあまり観られなかった。

 「球持ち」も比較的前で放せており、指先の感覚も悪く無さそう。逆にコースを突く意識が強すぎて、最後に開き直って投げられないので、微妙なコースを突いてでの四球が多いのかなといった印象は受けている。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークといった球を投げても窮屈になるほどでは無さそう。ましてそういった球種の頻度も少ないので、現状肘への負担は少ないと考えられる。

 また腕の送り出しをみても、それほど無理は感じられず肩への負担も少ないのでは? リリーフということもあり適度に躍動感のあるフィニッシュにはなっているが、それほど力を入れなくても速い球を投げられるまでにはなっており、疲労も溜めやすいというほどではないように感じられる。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそこそこで嫌らしいといったほどではないものの、ボールの出どころも適度に隠せており投げミスをしなければ痛手は喰らい難いのではないのだろうか。

 腕は強く振れて勢いがあるので、打者としては吊られて空振りは誘えそう。ボールにも適度に体重を乗せてリリースできており、球威のある球を投げられている。あとは、ボールにもっとバックスピンをかけられるようになるとか、球質を上げる工夫が持てれば、球威だけでなく質の点でも上がるのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たらない。ただどれも 中~中の上 ぐらいの動作なので、さらに上を目指すならばより粘りや動作を追求して欲しい部分はある。

 制球を司る動作は悪くないので、追い込んでから慎重にならず大胆に開き直って投げて欲しい部分はある。故障のリスクはそれほど高い感じはなく、武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙なものの、多彩な球種を操れる土台は持っている。縦の変化にさらに磨きがかけられるようだと、投球内容が一変する可能性は感じるのだが。


(最後に)

 高校時代の投球をベースに、さらに出力が上がってきた感じがする。高校時代からちょっとボヤっとした投球だったところもあり、それがまだメリハリが効いて来ないなという物足りなさも残る。そのへんが、最終学年でもっと変わってくると一躍最上位クラスの存在になれても不思議ではない。世代屈指の左腕が、ドラフト屈指のサウスポーに変わる瞬間をぜひ目撃したい。


(2020年 秋季リーグ戦)









 山下 輝(木更津総合3年)投手 187/82 左/左





 「恐らく全国NO.1」





 17年度は、高校球界で上位指名されるような左腕はいないと観られていた。現時点で一番高く評価されている左腕は、選抜に出場していた 川端 健斗(秀岳館3年)左腕だろう。確かにこの投手はボールにも力があるが、どちらかというと将来的にはリリーフタイプという印象を受ける。そういった意味では、この 山下 輝 は、まさに将来のローテーション候補の匂いがしてくる。


(投球内容)

 187/82 の立ち姿は、グランドにいてもひと目でわかる存在感。その立ちふるまいは、まさにドラフト候補のそれである。一冬の間に大きく化けた投手なんて感じは微塵も感じられない、天性のドラフト候補の雰囲気を持っている。

ストレート 常時135~MAX91マイル・146キロ 
☆☆☆★ 3.5

 手元でピュッとキレる球質というよりも、ビシッとミットに突き刺さる感じで球威がないわけではない。特にフォームの構造上、ワンテンポ打者が差し込まれる。球速自体は、普段は130キロ台中盤程度なものの、勝負どころでは確実に140キロ前後を刻んでくる。そのため力を入れて投げれば、いつでも140キロ台を連発できる能力があり、最速では140キロ台中盤まで到達している。両サイドに投げ分けるコマンドもあり、制球も高校生としては上位レベル。体格の割に凄みで圧倒するタイプではないが、この春は23イニングで12安打と安定感は抜群だった。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップなど 
☆☆☆★ 3.5

 横滑りするスライダーとのコンビネーションが基本で、この球でカウントを整えたり三振を奪ってきます。23イニングで実に32個の三振を奪うなど、奪三振の多さにも目をみはるものがあります。時折緩いカーブやチェンジアップなども織り交ぜるなど、変化球全体のキレ・精度も低くありません。

その他

 クィックは1.15秒前後でまとめられており、基準レベル。ボール処理も実に落ち着いていて、経験の浅くても脆さはありません。

(投球内容)

 打ちづらいフォームやボールの威力だけでなく、何よりテンポよくポンポンと心地よりリズムを作ります。それでいてピンチになっても、精神的に揺らがないところが素晴らしい。ある程度の完成度を誇りながらも、素材的にも伸び代も残している。先輩の 早川 隆久(早大)は、まずは大学に行ってボールや体に「強さ」を付けてからの方がと評価していましたが、この選手は断然高校からプロに入った方が良いタイプです。







(投球フォーム)

今後の可能性について、フォームを分析して考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて、少し前に倒れ込むようなフォームのため、お尻はバッテリーライン上に残ってしまいます。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種の習得は体を捻り出すスペースが確保できていないので厳しいでしょう。

 しかしながら「着地」までの粘りは適度にあるので、体を捻り出す時間は確保。カーブやフォークといった球種でなければ、良い変化球を身につけられるのではないのでしょうか。緩急や落ちる球を、他に求められることができるかでしょうね。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉えているので、それほど高めにも抜けてきません。「球持ち」もまだ並み程度ですが、将来的にはもっと長く持てたり押し込めるようになれば、もっと低めへのコントロールも身につくはず。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせないませんが、カーブは滅多に使いませんしフォークも観られません。そういった意味では、肘への負担も少ないのでは?腕の送り出しを観ていても、ちょっと独特のメカニズムの選手ではあるものの、肩に負担はかかっていないように思います。それほど力投派でもないので、消耗も激しいタイプではないのでしょう。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りも適度にありながら、体の「開き」も抑えられています。それでいてピュッとボール出てくるので、打者としては合わせ難いのでしょう。

 腕も適度に振れているので、速球と変化球の見極めつけ難い。ボールへの体重の乗せは発展途上ではありますが、けして乗せられていないわけではありません。もっとしっかり乗せられてくれば、打者の手元までグッと迫って来る迫力が出てくるはず。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、突出して良いところがあるわけではありませんが、大きな欠点もありません。今後の取り組み次第では、更に嫌らしい実戦的なフォームになってゆくはず。

 制球を司る動作に優れ、故障のリスクも高くありません。素直に肉付けしてゆけば、それが結果に現れやすいタイプかと思います。


(最後に)

 まだ凄み溢れる投球をするわけではないのですが、心技体すべてに基準以上のものを感じます。今年の場合、大学や社会人左腕でもプロでの先発を意識できる素材がいないのは確か。そういった意味では、比較的短期間の間に将来のローテーション投手になり得る素材として期待できます。

 私が知る限り、全国で総合力NO.1の高校生左腕であり、ドラフトでも志望届けを提出すれば3位以内で獲得されると評価します。まともな左腕に今年出会えていなかったので、ようやく探し求めていた選手に出逢えた、そんな気にさせてくれる、この春1番のサプライズでした。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2017年 春季千葉大会)