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小野 大夏(20歳・HONDA)投手の本当に凄いやつへ








小野 大夏(健大高崎3年)投手 176/73 右/右 





「面白い素材ではある」 





 リリーフでの登板が目立つが、140キロ台をコンスタントに記録スピード能力は、将来に向け楽しみな素材。そんな印象を、我々に残してくれた大会だった。


(投球内容)

ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。

ストレート 常時140キロ台~MAX145キロ 
☆☆☆★ 3.5

 バーンと捕手のミット押し返すような、ストレートの勢いには見るべきものがあります。球全体が高めに集まりやすい傾向がありますが、ボールに力と勢いがあるのでこのゾーンの球がマイナスに作用しません。むしろこの高めの吊り球で、空振りを誘うことも少くありません。しかし全体的にはかなりボールにバラツキがあり、まだまだ勢いだけで投げている印象があります。比較的、右打者の方が球筋が安定しているように見えました。選抜でも3試合・5回2/3イニングを投げて6三振を奪えている反面、四死球も5つとほぼイニングと同数与えていました。

変化球 スライダー・フォークなど 
☆☆★ 2.5

 速球中心の配球ですが、カウントを整えるために小さく曲がるスライダー。それに縦にフォークを落として来ることがあります。まだまだこれらの球の精度・信頼は薄いようですが、将来的にはもっと良くなって投球での割合も増えていきそう。

その他

 クィックは、1.0~1.1秒ぐらいで投げ込めるなどまずまず。牽制も、適度にターンの鋭い牽制ができています。とりあえず今は、力一杯打者に投げ込んでくるという、単純なピッチングに終始しています。

(投球のまとめ)

 2年秋に投手に本格的に転向したということで、まだまだ伸び代は多く残されているという感じがします。スピード能力は確かなので、将来的には150キロ級の球速を連発しても不思議ではないでしょう。ただし176センチという中背の体格からも、高校からのプロ入りというよりは、ワンクッション大学などで経験を積んでからという判断になる可能性は高いとは思いますが。


(投球フォーム)

今度は、投球フォームの観点から今後の可能性を考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆ 2.0

 引き上げた足を地面に向けて、前に倒れ込むような感じに重心を落としてきます。そのためお尻を一塁側に落ちずバッテリーライン上に残りがち。こうなると体を捻り出して投げるカーブやフォークを投げるのに、スペースが確保できず窮屈になって負担のかかるフォームとなりがち。

 前に倒れ込む分、粘りが作れず「着地」までは早く地面を捉えがち。こうなると、体を捻り出す時間が確保できないので、好い変化球の習得に苦労します。そういった意味では、将来的に武器になるほどの球を見いだせるかには不安が残ります。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドの投げ分けは安定しやすい。足の甲の地面への押しつけは浅いので、どうしても力を入れて投げるとボールが高めに浮きやすい。それでも「球持ち」自体は悪くないので、指先の感覚をもう少し磨いて押し込めるようになると、ボールが制御できるようになる可能性は秘めている。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻が落とせずスペースが確保できていないのにフォークを使ってくるので、より肘への負担が大きくなりがち。今後フォークへの依存度が高くなってきたときには、注意してもらいたいポイント。

 腕を急に角度をつけて投げようとしているので、腕の送り出しに違和感が感じられ肩を痛めないか心配です。現在は上体の力に頼って投げている部分があるので、疲労も貯めやすくあまり過度な登板が続くようだと心配です。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りが欠けるので、打者としては合わせやすいのでは? その辺が選抜で5回2/3イニングで8安打打たれている大きな要因になっているのかも。体の「開き」自体は平均的で、けして出どころが見やすいというほどではないので。

 振り下ろした腕も、まだ体に絡んでくるという粘っこさが足りない。ボールは前で放せているし球威自体あるのだが、まだボールにウエートを乗せきれているとはいえず、もっと勢いと球威のある球を投げられる可能性を秘めている。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」以外には課題を抱えていることがわかります。足の甲の押し付けやボールの押し込みの関係でボールが高めに抜けやすいこと、腕の送り出しやお尻が落とせないことでの、肩・肘への負担の大きさも気になります。

 まだまだ投手歴も浅く、伸び代は沢山残されていると思いますが、リスクも高い素材だけに慎重にその辺は見極めて行きたいポイントです。


(最後に)

 コンスタントに140キロ台~中盤のボール投げ、秋から投手に転向したという素材的な魅力は確かです。しかしフォームを分析する限りかなりリスキーな素材なうえ中背の体格などを加味すると、大学などで様子を見た方がという判断になるかもしれません。

 とりあえずは夏まで成長を追いかけてみたいと思いますが、現状は限りなく高校からの指名は無理かと思っています。しかしそれは才能が足りないからではなく、現時点での完成度とリスキーさんを天秤にかけた上での判断だということ。志しを高く持って、今後も野球に向き合って頂きたい選手です。


蔵の評価:
追跡級!


(2017年 選抜)