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丸山 和郁(ヤクルト)中堅手のルーキー回顧へ







 丸山 和郁(明治大4年)中堅手 174/78 左/左 (前橋育英出身)
 




「彼にはこれがいいのか?」 





 春はしっかり「間」の取れた打撃をするようになっていた 丸山 和都 だったが、この秋は再び「間」を取らず、狙い球を絞って叩くスタイルに戻していた。せっかく良くなってきたのにと思ったものだが、彼には今のスタイルの方がしっくり来るのかもしれない。


走塁面:☆☆☆☆ 4.0

 コンスタントに3.8秒台で駆け抜ける脚力は、プロに混ぜてもトップクラスなのは間違いないでしょう。しかし、この春は6盗塁を決めたものの、秋は4盗塁に留まりました。絶対的なスピードがあるものの、盗塁技術・センスというのはイマイチなのか、現時点ではプロでの盗塁成功率が期待できるかは微妙です。何かそういった部分を、教えられる指導者などに恵まれ改善されることを期待します。能力的には盗塁王を狙えるぐらいの脚力はありますが、技術を何処まで身につけられるかではないのでしょうか?

守備面:☆☆☆☆ 4.0

 前後の打球の判断力が少し怪しい部分があり、その辺をみると抜群に守備が上手いわけではなく見えます。しかし、目測がしっかりできている打球に対しrては、非常に脚力を活かし広い守備範囲を誇ます。特に、左右の守備範囲の広さは一級品です。

 遠投よりも、低く素早い送球が彼の持ち味。中継への送球など雑な一面もあったのですが、そのへんはかなり解消されてきているのではないかと。無理に強肩を生かして遠くに投げるよりも低く鋭い送球を心がけているのだと思います。元々肩も一級品の選手であり、送球に関してはプロでも充分やって行けるのではないかと。脚力を活かし、球際でのキャッチングも悪く有りません。

 春の寸評にも書きましたが、走力では盗塁王、守ってはゴールデングラブ賞を狙えるだけの身体能力があります。しかし、現時点での技術は、そこまで突出していません。その辺を、プロでいかに磨いて追求して行けるかに懸かっています。


(打撃内容)

 打撃では、コツンコツン当てる粘っこさよりも、きっちり振って来るタイプ。むしろ、右投げ左打ち特有の脆い部分も感じます。それでも最終学年では、

春 10試合 0本 5点 6盗 打率.357厘(5位)
秋 10試合 0本 6点 4盗 打率.343厘(8位)


と、それほど成績に大差ありませんでした。しかし、春と秋とでは、スイングの仕方が違います。

<構え> ☆☆☆☆ 4.0

 前の足を引いた左オープンスタンスで、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合、両眼で前を見据える姿勢、全体のバランスとしてもまずまず。構えた時に、スッとした感じで違和感なく構えられるところは良いところ。打席でも、高い集中力が感じられる。

<仕掛け> 遅すぎ

 春は「早めの仕掛け」で「間」が取れるようになっていたが、この秋はリリース直前に動き出す「遅すぎる仕掛け」を採用。ここまで遅いタイミングだと、日本人の筋力やヘッドスピードを考えると、プロのキレや球速のある球を木製バットで打ち返すのは難しくなる。ただし彼の場合、できるだけボールを手元までひきつけてから振り出す選手なので、この方が合っているのかもしれない。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 ベース側につま先立ちして、小さく真っ直ぐから少しアウトステップ気味に踏み込んで来る。始動~着地までの「間」がないので、いろいろな球に対応しようというよりも、狙い球を絞りその球を逃さない「鋭さ」が求められる

 内外角幅広く対応しようとはしているが、少し内角への意識の方が強そうな踏み込み。これは、内角へのさばきがやや窮屈な面があり、それを補う意味合いが強いのではないのだろうか。また踏み込んだ前の足のつま先は閉じられ、インパクトの際にはしっかり止まることを意識できている。そのため壁を長く作れているので、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができる。春は、足が早く地面から離れる傾向が強かったが、そのへんはだいぶ粘っこく地面を捉えられるようになってきた

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は早めにできており、始動の遅さを補えている。バットの振り出しは、けしてインサイドアウトではないので、内角へのさばきにはある程度のスペースが欲しいタイプ。むしろ外角の球に対しては、ロスなく振り下ろして来ることができている。引っ張りへの意識が強かったスイングも、流して強い当たりが増えてきた印象。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は小さい。身体の開きも我慢できているが、足元が少し窮屈に見えるのは内角のスペースの関係と「間」があまりうまく取れていないからではないのだろうか? 

(打撃のまとめ)

 スイングを元の「遅すぎる仕掛け」に戻した感じだが、引っ張りの多かった打球がかなり打球の方向に幅がでてきた感じに。緩急に対する対応には心配を残すが、コースへの対応には成長が観られるといった感じだろうか? 確かに右投げ左打ちの脆さは感じられる一方で、打てる球をきっちり強く叩くことができるタイプ。いかに、自分の打てる球を打ち損じることなく仕留められるかに懸かっている


(最後に)

 守備・走塁の技術がともなってくれば、そこで一流の領域で勝負できる能力がある。打撃に関しては、現状良いところと悪いところがあり、ポジションを確保するまで行けるのかは微妙といった感じだろうか? しかし、甘い球を逃さず叩くという「鋭さ」は増してきており、そのへんはプロで何かを掴む嗅覚次第では、レギュラーまで昇りつめて不思議ではない。評価としては、春と据え置きということになるが、やっている内容は春と秋とでは結構違っていたというのだけは頭に入れておきたい。どちらが良いとか悪いとかいうよりも、それだけ引き出しが増えたと捉えることにした。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年 秋季リーグ戦)










丸山 和郁(明治大4年)中堅 174/77 左/左 (前橋育英出身) 
 




 「守備はプロ級」





 下級生までの 丸山 和郁 の守備は、打球判断がイマイチで、球際でも強い印象はなかった。しかしこの春は、プロに行ったら一番売りにできるのは、実は守備なのではないかと思えるまでになってきた。


走塁面:☆☆☆☆★ 4.5

 一塁までの塁間は、コンスタントに3.7秒台を記録する快速。この脚力は、プロでもまさに足を売りにできるほどのタイムである。甲子園で8盗塁の大会タイ記録保持者ではあるが、今まではあまり技術に優れていなく、成功率はけして高くはなかった。しかし今春は6盗塁を決めるなど、大学でも最多記録を更新。まだ課題は残すものの、純粋の走力はあるだけに、プロでさらに磨かれれば足を売りにして行けるまでになっても不思議ではない。

守備面:☆☆☆☆★ 4.5

 冒頭にも書いたように、打球への反応がやや遅れたり、球際で強い印象がなかった下級生時代。しかし、一旦加速しはじめる極めてからは極めて広い守備範囲を誇る。そのへんも最終学年のプレーを見る限り、打球への勘や球際でのプレーも、かなり改善されてきたのではないのだろうか。抜群の守備範囲の広さに加え、地肩も一級品。少々中継への送球が雑なところがあったが、その辺どの程度改善されてきたのか、残りの観戦では注視して行きたいポイントとなっている。

 こと守備・走塁に関しては、まさにプロの素材といった感じがする。まだ身体能力に頼る部分は残っているが、このへんはプロでさらに磨かれれば、盗塁王やゴールデングラブをも狙える素材ではあるだろう。


(打撃内容)

 独特の脆さがあった打撃も、この春は自己最高打率の.357厘(5位)の記録を残した。ひ弱というよりも脆い印象があった打撃も、この春はそれなりにしぶとさも出てきたのかなと思える部分はあった。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 前の足を引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり、両眼で前を見据える姿勢、全体のバランスと、まずまずといった構えになっている。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下るときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。今までは、ボールできるだけ引きつけて叩く「遅すぎる仕掛け」を採用したが、アベレージヒッターらしく早めに動きだすタイミングに変わっていた。これを功を奏したのか? 今春は、打撃に幅が出てきた。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を軽く地面から浮かし地面をなぞるようにしながら、少しベース側に離れたアウトステップを採用。始動~着地までの「間」が取れ、速球でも変化球でも幅広く対応できていた。またアウトステップをするように、内角への意識が強い。

 踏み込んだ足は、早めに地面から離れる傾向が強い。そのためしぶとく流すというよりも、センターからライト方に強く打ち返す傾向が強い。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配は無さそう。バットの振り出しは、上から下にダウンスイングして来る傾向は見られるものの、インサイドアウトといった感じではない。そのためキレイに腕をたたんで内角をさばくというよりは、外角の球もロスせずにしなりを生かしてスイングしてくる。ただし打球は、引っ張りが多いという不思議な選手ではある。長くバットが使えるので、体格の割に外角低めの球を拾うこともできている。バットの先端であるヘッドも下がりもそれほどではないので、広い面でボールを捉えられフェアゾーンに落とせていた。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが静かなので、目線の動きがとても小さいのが特徴。身体の開きは我慢できているといったほどではないのだが、ボールをギリギリまで引きつけられるので、それを補っている。軸足の形はあまり良くないのだが、軸足自体には強さが感じられ強い打球を打ち返す原動力になっている。

(打撃のまとめ)

 始動を早めることで、対応できるボールは増えてきた気がします。しかし、センターから引っ張り中心のスイングのためか、打球の幅は限られているように感じます。こういった部分が、独特の脆さみたいなものを作っているのかもしれません。潜在能力は秘めているように感じるので、プロの指導者のもと少しずつ打球の幅を広げてゆくことが求められる。


(最後に)

 純粋な走力・地肩・守備範囲などは、プロでもトップクラスになりうる素材ではないのでしょうか。その反面、技術といった意味では発展途上の部分は残ります。特に打撃に関しては、プロである程度数字を残すのには数年時間がかかる可能性があります。秘めたる潜在能力はありそうなので、その辺が上手くプロで引き出されると面白いと思いますが・・・。打撃に関しては、チームメイトの 陶山 勇軌 の方が優れた資質を感じたことは否めませんでした。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年 春季リーグ戦)










丸山 和郁(明治大3年)中堅 173/74 左/左 (前橋育英出身) 
 




 「足が武器」





 昨年に比べ今年は、足を売りにするタイプの外野手が少ない。そんな中、21年度の大学球界で最も足を売りにするタイプの代表格と言えるのが、この 丸山 和郁 。高校時代は、左腕投手としても活躍し、攻守に優れた資質を示していた。


(守備・走塁面)

 一塁までの到達タイムは、左打席から 3.85秒前後を記録するなどプロでも上位クラスの脚力の持ち主。甲子園では、1大会で8盗塁を記録する離れ業を魅せた。しかし、大学入学後は、3年秋のシーズンで5盗塁を記録したものの、それほどまだ目立った活躍は魅せていない。打ってからの走り出しやトップスピードに乗るのが早く、確かに純粋な走力はかなり速そう。また打席では、セーフティバントを試みるなど、走力を全面に出して揺さぶってくることも少なくない。

 またこの脚力を活かした、広い守備範囲が魅力。ただし高校時代から、打球への一歩目の勘などはあまり良い選手には見えない。一旦加速し始めればよいが、それまでに課題を感じる部分はあるし球際でも、さほど強いという印象はない。また高校時代は常時140キロ前後の球速を刻めていたなど地肩も強いのだが、中継までの送球が雑だったり、精度や細かい部分での守備力は、さほど上手くは見えない。

 こうやってみると、走力・地肩などの身体能力は高いものの、まだ守備や盗塁技術含めて、技術的な部分では改善の余地があるのではないのだろうか。そのへんは、最終学年でどのレベルにあるのか? しっかり見極めてみたいポイントではある。


(打撃内容)

 打撃はひ弱いというよりも、やや脆いというか弱い部分がある。2年春に初のレギュラーとして出場したときこそ.318厘を記録したが、シーズンによってレギュラーで無いシーズンもある。3年秋は、10試合に出場し打率.263厘を残しレギュラーとして出場。高校でも大学でも、ジャパンに選出されて国際大会を経験している。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前の足を少しだけ引いて、グリップは高めに添えている。腰の据わりや両目で前を見据える姿勢は良く、全体のバランスとしてはそれなりといった感じだろうか。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手がリリースを迎える直前に動き出すという、「遅すぎる仕掛け」を採用。日本人の筋力やヘッドスピードを考えると、なかなかプロレベルの投手の球を木製バットで対応するのは厳しいのではないのだろうか。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を小さく上げて、ベース側から離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地までの「間」が短く、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さない「鋭さ」がそれだけ求められます。アウトステップをするように、内角への意識が強いことがわかります。彼の場合は、内角が得意というよりも、より走力を活かすために一歩目のスタートを重視した結果なのかもしれません。

 踏み込んだ前の足は、なんとかブレずには我慢できている。そのため逃げてゆく球や低めの球にも、身体を残して流すことは上手い。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、始動の遅さを補えている。バットの振り出しは、けしてインサイドアウトとような内から出てくる軌道ではない。そのため内角のさばきが得意だからインステップしているわけではないようで、むしろ外角の球に対し上手く上体を残して流す打撃を得意としているのではないのだろうか。引っ張る時も、内角をうまくたたんで引っ張るというよりは、真ん中近辺や引っ張り込める球を引っ張っての長打が多いのではないのだろうか。

 それでもインパクトの際には、バットの先端であるヘッドは下がらずフェアゾーンには打球が飛びやすい形にはなっています。身体は小さいのですが、けしてひ弱というよりはしっかり捉えた打球は外野手の頭を越えたりといった小力はあるように感じます。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げは小さく、目線の上下動は少なめ。身体の開きはなんとか我慢でき、軸足にも粘りがは感じられます。

(打撃のまとめ)

 始動が遅すぎる分、タイミングの一致するポイントが限られ確実性が高い打ち方とは言えません。また小柄ですが、キレイに内からバットが出てくるといった感じではなく、ひ弱さは無いのですがさばけるコースも限られているのではないかという印象があります。特に当てる能力が非凡だとか、へっドスピードが図抜けているとか、そういった特別なものは打撃からは感じられませんでした。


(最後に)

 走力や肩といった身体能力はA級ですが、守備力や走力、特に打力に関してはけして図抜けた存在ではありません。その辺を最終学年に、どのレベルにまで引き上げて来られるかに懸かっているのではないのでしょうか。ただしこの手の快足・強肩タイプとしては、大学球界を現時点で最も代表する存在であるのは間違いないでしょう。ドラフトは本人の意志にもよりますが、春季リーグの内容次第ではないのでしょうか。


(2020年 秋季リーグ戦)









丸山 和郁(前橋育英3年)中堅 170/69 左/左 





 「こんなに足が速いなんて」





 選抜までは、左腕からキレのある140キロ前後のボールを投げ込む投手としてマークされていた 丸山 和郁 。 まさか、野手としてもここまでの才能の持ち主だと思わなかった。夏は故障などもあり、投手としては充分なアピールができる状態にはなかった。果たして今後、どちらの才能を活かすことになるのだろうか? 


走塁面:
☆☆☆☆ 4.0 走塁偏差値 59

 一塁までの到達タイムは、速い時で左打席3.95秒前後を記録。これをドラフト指名された左打者のタイムで偏差値化すると 59 にあたいする。プロ野球選手の中でも、上位20%以内入るような俊足選手であることがわかる。

 その走力以上に、出塁とすかさず盗塁を試みる積極性が光る。この夏の甲子園では、わずか3試合で8盗塁を決めるなど、この活躍が認められU18の日本代表メンバーに選出。走力以上の走塁技術で、上のレベルでも足を武器にして行ける選手だろう。

守備面:
☆☆☆★ 3.5

 この走力を活かし、守備範囲は非常に広い。ただし打球への追い方、キャッチングなどは、まだまだ不安定な部分もあり、守備自体が上手いのかには疑問が残る部分も。地肩は選抜の時点で140キロ前後投げられた投手なので、さすがに高校生としては上位の送球。守備に関しては、身体能力的にはプロでも充分やって行けるが、技術的にはこれからといった印象を受ける。ちなみに中学時代は、ショートを守ったりもしていたというだけあって、野球センスに優れた選手なのだろう。


(打撃内容)

 打球自体は強いので、けしてひ弱な印象は受けない。ただしまだ打てる球などが限られているので、弱いとか脆いとかいった感じがする。打撃に関しては、上のレベルでも少し苦労するかもしれない。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは高めに添えられている。腰の据わりは悪くないが、両目で前を見据える姿勢、全体のバランスとしては並ぐらい。

<仕掛け> 遅すぎ

 一度つま先立ちして、リリース直前に動き出す「遅すぎる仕掛け」。どうしても。今後日本人の筋力やヘッドスピードを考えると、このタイミングではプロレベルの球に対応するのは厳しいのことを考えると、若干始動を早めて動作に余裕をもたせることになりそう。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を小さく引き上げて、真っ直ぐ踏み出して来る。始動~着地までの「間」が短いので、どうしても 点 の打撃になってしまう。それだけ狙い球を絞り、逃さず叩くことが求められる。

 真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも対応したい幅広いタイプ。踏み込んだ足元はなんとか我慢できており、。逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことはできている。そういった低めの球に対する、膝の柔らかさは持っている。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、けして立ち遅れてはいない。振り出しはインサイドアウトの軌道で、上からミートポイントまでキレイに振り下ろしてくる。そういった意味では、真ん中~内角寄りの球を引っ張るのには適している。

 インパクトの際には、バットの先端であるヘッドも下がらないので、広い面でボールを捉えられフェアゾーンに飛びやすい。今後木製バットを握ったときに、もう少し遠心力を活かしたスイングじゃないと、外角の球には苦労するかもしれない。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは静かなので、目線の上下動は少なめ。球筋を錯覚起こすことなく、追うことができている。体の開きもなんとか我慢できており、軸足にも内ももに強さが感じられる。打球の強さは、この部分の筋力によるところが大きい。調子の波は、比較的小さな選手なのではないのだろうか。

(打撃のまとめ)

 小柄だが、打球は鋭くひ弱さは感じない。ただし外角を中心に、脆さというか弱さがあり、その辺が上のレベルを考えるとまだ物足りない。仮にプロに入っても、始動の遅さなどもあり、打撃では苦労することが予想される。


(最後に)

 上のレベルでも足を売りにして行ける可能性を秘めており、その点では高く評価したい。特に走れる勇気を持った選手であり、盗塁をするということに関しては、全国でも指折りの存在であるはず。

 あとは、大学など社会人で、守備の精度を高めつつ、上のレベルで通用する打撃を磨くべきではないのだろうか。個人的にはまだ「旬」ではないと評価しているが、投手としても社会人あたりならば活躍しても不思議ではない素材。将来的に、どちらの才能が秀でてくるのか楽しみである。


(2017年夏 甲子園)


 








丸山 和郁(前橋育英3年)投手 170/69 左/左 





 「ストレートは面白い」




 
 昨夏の甲子園でも、キレの良い球を投げていた 丸山 和郁 。一冬越えて、140キロ台中盤まで球速を伸ばしてきたと大会前から話題になっていた。その噂に違わず、選抜の舞台でもMAX144キロまで叩き出して見せた。そのキレの良い速球は、ドラフトを意識できるものを持っている。


(投球内容)
 
普段はセンターを守るなど、攻守に高い資質を持った選手。秋までは、リリーフ中心にチームでは起用されていた。しかしこの春は、エースの 吉沢 悠(3年)が故障していたため、先発でマウンドにのぼることになる。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX144キロ 
☆☆☆ 3.0

 打者の手元でピュッと切れるストレートは、常時140キキロ前後を記録する。140キロ台中盤まで記録することは滅多にないが、左腕らしい小気味の良いピッチング。それほど細かいコントロールはないものの、ストライクゾーンの枠の中にはポンポンと集められ、テンポ良く投げ込んでくる。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆ 2.0

 基本的には、横滑りするスライダーとのコンビネーション。この球と速球で投球を組み立てて来るが、それほど打者の空振りを誘うとか、活かし方が上手く討ち取るのが上手いわけでもない。その他にも緩いカーブやチェンジアップ系のボールもあるが、投球における割合は低い。速球がドラフト候補に相応しいものがある一方で、変化球はドラフト候補としては物足りない。

その他

 クィックは、1.1秒~1.15秒ぐらいとそれなり。普段は野手をしているので、フィールディングなどの動きは良い。しかし左腕ながら見分けの難しい牽制を入れるとか、そういった姿は見られない。

(投球のまとめ)

 先発というものをやって来なかった選手なので、速球とスライダーのコンビネーションという単純なピッチングスタイル。そのため間合いを意識するとか、ボール球を振らせるとかそういった奥深い投球ができるわけではない。あくまでも現在は、勢いのある球を中心に組み立てるという単純なもの。上のレベルでは、リリーフという形しか見えて来ない。





(投球フォーム)

 では今後球種を増やすなどして、投球の幅を広げて行けるか考えてみよう。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足をかなり二塁側に送りこんで来るので、お尻の三塁側(左投手の場合は)の落としには甘さが残る。そのためお尻が落とせていないわけではないが、充分身体を捻り出すスペースを確保できているかと言われれば微妙。

 「着地」までの粘りはそれなりで、身体を捻り出す時間はそこそこ。現状は、いろいろな球を投げてピッチングの幅を広げて行ける可能性はあるものの、どれも中途半端な曲がりやキレで留まる可能性も否定できない。そのため球種を増やせるものの、決め手に欠ける投手になるかもしれない。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへ投げ分けはつけやすい。足の甲での押しつけは充分ではないので、力を入れて投げてしまうと、ボールが真ん中~高めに浮きやすくなっている。思ったよりも前でボールを放せており、「球持ち」は悪い選手ではない。もう少し指先まで意識が持てると、もっと細かなコントロールもつきそうだ。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は甘さは残すものの落とせているので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種も投げられないことはないだろう。実際にはスライダーが投球のほとんどなので、肘への負担は少ないと考えられる。

 腕の送り出しは思ったより角度はあるものの、肩に負担がかかるほどではない。またそれほど力投派でもないので、疲れも溜まり難いタイプではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそれなりで、打者は合わせやすいわけでもないだろう。身体の「開き」も抑えられており、甘く入らなければ痛手は食らい難いはず。あとは、アバウトなコントロールだけに、投げミスに気をつけたい。

 気になるのは、振り下ろした腕が身体に絡んで来ないこと。そのため腕の振りに勢いがなく、打者の空振りが誘い難い。これがもっと身体に絡んで来るような、粘り強さが出て来ると投球の淡白さも薄れるかもしれない。
ボールへの体重の乗せは悪くなく、ある程度乗せてからリリースできている。これも更に良くなれば、キレだけでなく球威が出て来るはずだ。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、どれも大きな欠点がないかわりに、極めて優れている部分もない。故障のリスクも、制球を司る動作もそこそこで、大きな欠点は見当たらない。そのかわり、特別優れている部分もない。


(最後に)

 本格的に投手に専念してきた経験が浅いせいなのか? 元のフォームは悪くないのだが、各動作に甘さが残っている。逆に言えば、そこに伸びしろを残しており、今後の改善も充分見込めるということ。

 まだまだ投球に奥深さはないものの、けしてセンスが悪いとか不器用な選手には見えない。この部分も投手に専念してゆけば、埋めて行ける部分。

 
 ただし170センチそこそこの小柄な左腕であり、高校からプロに入るほどの絶対的なものがあるかと訊かれると疑問が残る。このままゆくと大学や社会人に進んでプロ入りを目指すという、ワンクッション置いてからという判断になる可能性が高い。大学でも社会人でも、比較的短時間で一線で出てきそうな投手ではあるのだが。夏までに更に大きな成長が見込めれば、高校からのプロ入りがないとは言い切れないだろう。


蔵の印象:
追跡級!


(2017年 選抜)