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皆川 喬涼(前橋育英3年)投手 178/79 右/右 





                     「不思議とプロの臭いが」





 コンスタントに145キロ前後を記録し、MAX149キロまで到達した 皆川 喬涼 。 しかし低めでグイッと伸びる素晴らしい球を投げる割に、何処か高校からプロにゆくという匂いがして来ない。その理由について、今回は考えてみた。

 元々皆川は、昨夏の甲子園で144キロに到達。この大会で投げた下級生ピッチャーでは、藤井 黎来(大曲工)と並び、今年に期待を持たせる存在だったのだ。しかし選抜では野手としての比重が高く、投手・皆川という魅力は薄かった。しかし夏の大会に向け、投手への比重を高めて、甲子園まで勝ち進んできたのである。


(投球内容)

ノーワインドアップから、スッと足を勢いよく引き上げて来る。

ストレート 常時140キロ台~MAX149キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 打者の手元までしっかり伸びてくる球質で、適度な球威と勢いを兼ね備えた素晴らしい速球。その球が、低め膝下に決まることも少ない。先発でも安定して145キロ前後を連発するパワーがあり、一見ドラフトでも上位指名できる素材ではないかと思えてしまう。

 しかし気になるのは、打者が意外なほどこの球を苦にせずにはじき返している。これは何故か考えると、上背の無さからボールの角度に乏しく平面的。そして「開き」が早いことで、合わせやすいフォームだということに気がつく。さらに結構コントロールもアバウトな部分があり、時々甘く入って痛打を浴びることになるのだ。ボール自体は素晴らしいのに、不思議と打ち返されてしまう理由がここにある。

変化球 縦横のスライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 変化球は、横に軽く滑るスライダー。この球で、カウントを整えてくる。その他にも追い込むと、縦に切れ込むスライダーやチェンジアップなどを使い、空振りを誘いに来る。また余裕があると、カーブなどの緩い球も投げてくる。現状、打者の空振りを誘うような絶対的な球種は見当たらない。右打者外角のギリギリのゾーン、左打者膝下に食い込んで来るゾーンにスライダーを使ってくるのが持ち味。

その他

 クィックは、1.1秒~1.3秒ぐらいと、バラツキは多い。状況に応じて使いわけているのかは、正直よくわからない。牽制もフィールディングもまずまずで、普段は他のポジションを守ったりしているので、投球以外の動作も悪くはない。

(投球のまとめ)

 昨夏投げたときは、常時130キロ台~140キロ台中盤だった。しかし今は、コンスタントに140キロ台中盤~後半を先発しても出せるほどにパワーアップ。そういった馬力、体力には非凡なものを持っている。ただし先にあげたように、まだ相手がどう感じるかというところまで踏み込めておらず、速い球をただただ投げ込んでいるだけというところに終始している。

 横滑りするスライダーの精度・キレには優れているが、その他の変化球は発展途上であり空振りを誘えるまでには至っていない。この辺が磨かれてくると、ストレートが素晴らしいだけに内容も大き変わってきそうだ。



(投球フォーム)

昨夏のフォームに比べ、どの辺が変わったのか?考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 軸足一本で立ったあとに、前に倒れ込むような外人投手に多く観られるような動作。そのためどうしても、お尻を一塁側に落とし難い。まして体を捻り出すスペースが確保できず、カーブで緩急をつけ難かったり、フォークのような縦に鋭く投げる球に適しない投げ方になっている。それでも、昨年ほど極端ではなくなってきている。

 「着地」までの粘りも平均的で、体を捻り出す時間も並に。そのため以前よりは、変化球のキレや曲がり幅に特徴が出てきている。それでも、絶対的な武器を持つには至っていない。こういった投手は、空振りを狙うよりも、カットボールやツーシーム・スプリットなどの高速で小さな変化を中心に、ピッチングの幅を広げる方がいいのではないのだろうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブが抱えきれず後ろに解けてしまっているのは、昨夏と変わっていない。そのため両サイドの投げ分けなどが、どうしてもアバウトになる。それでも足の甲の地面への押しつけが遅かったのが、早い段階から深く押し付けられるようになってきた。このことにより、低めに勢いのある球が増えてきている。「球持ち」自体も良いので、指先の感覚を意識できれば、もっとコントロールも改善できそう。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落とせないフォームではあるが、カーブやフォークといった球種をほとんど使わないので、肘への負担は気にしなくても良いだろう。

 腕の送り出しにも無理はないので、肩への負担も少なめ。それでもそれほど無理していないくても、速い球が投げられるように、体の消耗も少ないタイプではない。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは平均的なものの、体の「開き」が早くなってしまっている。そのため球筋がいち早く読まれやすく、球速・球質の割に苦になく合わされたり、縦の変化を見極められてしまったりしている。また上背の無さと腕の角度からか、ボールが平面的なのも、打者が打ち損じせずに打ち返す要因になっているのではないのだろうか。

 腕は適度に振れていて悪くないのだが、ボールにも体重が乗せられているように見える。しかし投げ終わったあと強く地面を蹴り上げていないところを見ると、何処かでロスしているのか?最後まで力が伝えきれていない恐れがある。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」に優れている反面、「開き」に課題があることがわかる。

 故障のリスクはそれほど高くないが、グラブが抱えられないことからのコントロールのアバウトさ。また将来的に、武器になるほどの変化球を覚えられるかの不安は残る。今後は、いかにピッチングの幅を広げて行けるかだろう。


(最後に)

 ボールの勢いは素晴らしいものの、まだ相手を意識した投球という部分では底が浅い。それゆえに、これだけ凄いボールを投げているわりに、不思議とプロの匂いがして来ないのだろう。

 その辺を大学なり社会人で追求して行ければ、3,4年後には即戦力として高い評価でプロ入りしても不思議ではない素材。進学志望だということもあり、今後も追いかけてゆきたい選手の一人だった。


(2017年夏 更新) 









皆川 喬涼(前橋育英3年年)中堅手レポート(無料)








皆川 喬涼(前橋育英2年)投手 178/76 右/右 
 




                        「センバツで密かに楽しみ」 





 センバツ出場を決めた前橋育英には、楽しみな投手が乱立している。その中でも、密かに期待しているのが、この 皆川 喬涼 。秋はその名前を訊くことがなかったが、昨夏甲子園で投げた下級生投手の中では、 藤井 黎来(大曲工)とともに、最もインパクトのあるボールを投げ込んでいた。一冬越えて、どのぐらいの投手に育っているのか期待したい。


(投球内容)

 春季関東大会では、関東一相手に7回1安打に抑えて無失点。昨夏の甲子園では、MAX144キロまで到達した。ワインドアップで振りかぶり、足をグイッと勢いよく引き上げて来る力投派。

ストレート 130キロ台後半~MAX144キロ 
☆☆☆★ 3.5

 ズシッと重い球が持ち味で、けして空振りを誘う球質ではありません。球威と勢いで、詰まらせるタイプ。体幹が強そうに見えるのだが、非常に球筋がアバウト。恐らく秋は、このコントロールの不安定さが災いして大事なところを任されなかったのではないかと危惧する。

変化球 スライダー・チェンジアップ・フォーク 
☆☆ 2.0

 甲子園では暴れる速球だけでなく、スライダーやチェンジアップなどの変化球が決まらずに苦しみました。フォークも少し投げていましたが、精度は低く大事なところでは使えなそう。唯一の救いが、みなこの変化球が地面にワンバウントするような低めに集まっていたこと。そのため甘くなって痛打をされる、そういったことがなかったことではないのでしょうか。逆にこの辺の変化球が制御できるときは、関東一を抑え込んだように安定感のあるピッチングができるのかもしれません。

その他

 フィールディングは落ち着いて処理できていましたし、クィックは、1.2秒前後と基準レベル。それほど投球以外の部分からセンスを感じるということはないのですが、中学時代は通算20本塁打を放つなど長打力には魅力のある選手のようです。

(投球のまとめ)

 チームメイトの吉澤や丸山のように、先発タイプなのではないのでしょう。リリーフをやってなんぼというタイプでしょうが、更にパワーアップしているようだと、凄い球を投げられるようになっているかもしれません。そういった期待込みも含めて、センバツでは密かに期待したいと思います。


(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて、まるで突っ立つような感じの外人投げ。そのため、お尻は一塁側には落ちません。お尻を落とせないということは、身体を捻り出して投げるカーブやフォークを投げるのには身体を捻り出すスペースが確保できず、とても窮屈なフォームになるということ。

 それでも「着地」までの前への足の逃し方は悪くないので、身体を捻り出す時間はそこそこ確保。これによりカーブやフォークといった球種は適さないものの、他の変化球ならば身体の近くでキュッと変化したり、大きな曲がり幅のある球を習得できる可能性は感じます。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 内に抱えていたグラブが最後後ろで解けてしまっていて、外に逃げようする遠心力を充分抑え込めていません。また足の甲での地面への押しつけも遅く、これでは浮き上がろうとする上体の力を充分には押さえ込めません。「球持ち」自体は前で放せているものの、ボールを充分押し込むまでにはリリースできていないので、ボールが上吊ってしまいがち。その辺が修正できると、もう少し低めにボールが集まるのではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻を落とせないフォームではあるのですが、カーブやフォークといった身体を捻り出す球種への依存は現在少ない。そのため肘への負担は、それほど大きくないと考えられます。

 腕の送り出しには無理がなく、肩への負担は少なめ。フォームは力投派なので、疲労を貯めやい傾向にはあると思います。登板過多の時には、特に注意が必要ではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそれなりにあり、けして合わせやすいフォームではないのでしょう。更に身体の「開き」も早すぎることはなく、甘く入らなければ痛打を浴びる可能性は低いのでは? 問題は甘く入らないように、細かいコントロールがつくかということ。

 腕は強く振れており、速球と変化球はつき難いはず。ボールにもしっかり体重を乗せてからリリースを迎えられているので、打者の手元まで勢いと球威が落ちない球が投げられています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はありません。「球持ち」自体は悪くないのですが、もっとボールを押し込めるようになったり、ボールにバックスピンがかけられるぐらいの指先の感覚を磨けると、制球力や球質、低めへの球筋なども改善できるのではないのでしょうか。

 制球を司る動作全体に甘さがあり、これが伸び悩む最大の要因では? 故障のリスクはさほど高くはなく、投球の幅を広げて行ける可能性は秘めています。


(最後に)

 こういったタイプには、あまり細々したことは言いたくありません。それを気にするあまり、持ち味が損なわれる危険性があるので。しかし持っている資質は高いので、導き方次第では一気に素質が開花してもおかしくはないでしょう。ただしその才能が開花するのは、高校の間ではなく大学などに進んでからかもしれません。果たしてセンバツでは、その能力を示す機会に恵まれるのか? 密かに今は、その時を待ちたいと思います。


(2016年夏 甲子園)