17dy-7
岩見 雅紀(慶応大4年)左翼手 187/110 右/右 (比叡山出身) |
「何か変わったのか?」 六大学の1シーズン本塁打記録・7本に並び歴代最多タイ、六大学通算本塁打歴代3位となる21本塁打まで積み重ねてきた 岩見 雅紀 。ラストシーズンに、何か大きな変化があったか改めて考えてみたい。 (打撃フォーム) 春の寸評でも細かく検証したので、変わった部分だけを簡単に。基本的には、春とほとんど技術的には変わっていないように見えます。フォロースルーという感じではないのですが、ボールを下からかちあげるようなスイング軌道になり、角度がついてよりホームランを打つ確率が高まったのかもしれません。しかしあとのところには、技術的に変化は見つかりませんでした。 (成績から考える) この春と秋のリーグ戦、それに国際大会の試合の成績も加算して、大学4年時の成績を検証してみたい。 36試合 104打数 25安 12本 28打 28三 25四死 0盗塁 打率.240厘 まずこの成績をイメージしやすいように、プロのレギュラー選手並の500打席で換算してみよう。 58本 134打点 134三振 打率.240厘 いくら大学生相手とはいえ、1シーズン58本ペースで本塁打を放っていたのは驚き。134打点の勝負強さがあることがわかった。確実性というものにはやや粗いものがあり、相手投手が一線級になると脆い印象は否めない。しかしそれも、経験を積むことで改善して行けるのかもしれない。 三振比率は26.9%で、かなり高いのが気になります。二軍の選手すら一軍を意識するのに、三振比率が20%以内が目安。それより劣る大学生相手でも26.9%は高過ぎだと言えるであろう。振ったバットが、なかなか当たらなかったことを物語っている。 四死球比率は、24.0%という数字は破格。アマチュアならば15%を越えてていれば優秀だと言えるところを、実に24.0%だというのは驚異的。それだけ警戒されて四死球を出しやすかったという一方で、ボールを見極める目は確かなものがあった可能性があるということ。 そのためボールは見えていたものの、振ったバットが中々ボールを捉えることができなかったという、技術的な部分に課題があることが伺える。 (最後に) 春~秋にかけて、何か大きく変わったという印象はありません。まだ粗くボールに当てる能力には課題があるものの、ボールを見極める目には非凡なものを持っています。果たしてどちらの能力が、結果となって現れてくるだろうか。 貴重な、右の和製大砲候補なのは間違いない。ただしプロの左翼としては厳しく、守れても一塁ぐらい。それならば、そこは外人で良いのではないかという球団も出てくるだろう。そういった意味では評価は球団によって別れる選手だと思うが、和製大砲がどうしても欲しい楽天という球団にはまたとない人材ではないのだろうか。 蔵の評価:☆☆(中位指名級) (2017年 秋季リーグ戦) |
岩見 雅紀(慶応大4年)左翼 187/107 右/右 (比叡山出身) |
「意地を魅せた」 シーズン前半~中盤戦にかけて、5本塁打を叩き出した 岩見 雅紀 。しかし後半戦は、苦手な内角を攻められ調子を崩し、得意の外角前捉えられなくなるなど絶不調。それでも試合では、なんとか試合に貢献しようと、守備でレフトファールグランドにダイビングキャッチを試みるなど、ガッツ溢れるプレーを魅せ意地を魅せていた。 走塁面:☆★ 1.5 走塁偏差値 38.6 一塁までの塁間は、右打席から4.6秒前後を。これをドラフト指名された右打者のタイムで偏差値化すると 走塁偏差値 は、実に 38.6 。恐らく、プロ入りする打者の中でも、最も遅い部類だろう。それでも全力で一塁まで駆け抜けようという意志があり、プレーに手抜き感はない。ちんたら走って全力だったらセーフだろなんてプレーの多いプロ野球の世界においては、意外にこの姿勢で内野安打を拾えるかもという感じはしてくる。実際の走力よりは、内容は悪くない。 守備面:☆☆ 2.0 確かに走力の無さからも、守備範囲の狭さは気になる。しかし昨秋は守備でもキレの無さが目立ったが、今春の動きはけして悪くなかった。ボールに食らいつく姿勢、捕ってからの返球までの素早さ、ゴロで転がって来るときのボールのキャッチングや扱いなどに雑なところは感じられない。守備力は、エルドレッド(広島)級と評していたが、この春はそれ以上ではないか。プロで鍛えたら、助っ人外人よりは上手い左翼手としてやって行けるのではないかという気にさせてくれた。また肩も強くはないが、基準レベルぐらいはあり、けして弱肩ではない。 (打撃内容) 打球がポ~ンと高く打ち上がる、天性のホームラン打者の軌道をたどる。同校~日ハムに入った 横尾 俊建 のような広角に打ち返す中長距離ヒッターではなく、明確な長距離砲なのだ。それも右方向に起用に対応するというよりは、センターからレフト方向にポ~ンと打ち上げるタイプ。 <構え> ☆☆★ 2.5 前足を少しだけ引いて、グリップは下げ気味。腰の据わりは並で、肩越しからボールを睨むような独特の立ち方。そのため構えとしては癖があり、全体のバランスとしてもどうだろうか? ただしこれが彼のスタイルなので、一概にそれを否定しようとは思わない。構えは、本人が1番しっくりする形が良いのだろうから。一つ言えることは、あまり打席で力みが感じられないのは良いこと。 <仕掛け> 早め 投手の重心が下る時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。これは、アベレージヒッターに多く観られる仕掛けで、対応力を重視していることがわかる。 <足の運び> ☆☆ 2.0 足を軽く上げて、真っ直ぐ~少しベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすいはず。重量級の選手ため、やや内角の捌きは窮屈になりがち。踏み込んだ足元がインパクトの際にブレていたので、外に逃げてゆく球や低めの球にも開きが我慢できず、シーズン後半は得意の外角球もさばけなくなってしまった。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 打撃の準備である「トップ」に近い位置に早めにグリップを持ってくるので、速い球に立ち遅れる心配はない。ただあまり打撃の準備である「トップ」の形をきっちり作れないまま振り出すので、スイングが消化不良を起こすことも少なくない。バットの振り出しも、少しインパクトまで遠回り。外の球を叩くには大きなロスは感じられないものの、内角の球を捌くのはキツそうだ。それほど大きなロスにならないのは、インパクトの際にヘッドが下がらないのでドアスイングにならないからだろう。 大きな弧を描くことはできているが、フォロースルーまでうまく取れているわけではない。そのため、何かスイングが波打って見えてくる。 <軸> ☆☆★ 2.5 足の上げ下げは静かなので、目線の上下動は並ぐらい。身体の開きが我慢できなくなっており、自然と軸足の形も崩れがちになっていた。軸足の形が崩れる選手は、どうしても好不調の波が激しくなりやすい。 (打撃のまとめ) 本格的にレギュラーになった3年春は..318厘、3年秋は.345厘だった。しかし今春は5本塁打こそはなったが、.224厘と後半戦になり失速。しかし今春のオープン戦で、昨年のドラフト候補にあがっていた 斎藤 友貴哉(桐蔭横浜大-HONDA)の140キロ台後半のストレートを、狙い済ましたようにセンター前にはじき返す打撃を目撃した。この選手で気になっていたのは、身体にキレがない分、一定レベル以上のストレートをはじき返すことができるのかという疑問を持っていたからだ。しかしその不安は、この試合で見事に払拭してくれた。 技術的にも課題は多く、発展途上の選手であるのは間違いない。しかし良いハートの持ち主だし、粗さも許容範囲のレベルではないかと考える。今春は打撃を崩したが、充分に修正可能性あり悲観する必要はないだろう。 (最後に) この春の早慶戦を観て驚いたのが、ショートゴロを放った際に折れたバットがショートの横まで飛んでいったこと。折れたバットが、あそこまで飛んでいったのを、私自身見た記憶がない。それだけ 岩見のパワー が、並大抵ではないということの現れではないのだろうか? ただパワーがあるだけでなく、ボールに角度をつけて上げることができること。こういうのを見ると、天性の長距離砲の飛球だなと思うわけです。まさに助っ人級のパワーであり、こういった選手を拾ってゆかなければ行けないと改めて実感しました。思った以上に、走塁・守備でなんとかなるのではないか。そう実感できたことが、この春の一番の収穫だった。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2017年 春季リーグ戦) |
岩見 雅紀(慶応大3年)左翼 187/110 右/右 (比叡山出身) |
「飛ぶことは飛ぶが」 当たった時の飛距離は、17年度の候補の中でも指折りだという 岩見 雅紀 。3年時の1年間で、春4本・秋3本の計7本のホームランを叩き込んでいる。それでいて打率.318厘と.345厘をマークしており、ある程度確実性も兼ね備えた長距離砲として評価されている。ただ飛ばせるだけの選手はいるが、コンタクト能力も兼ね備えたスラッガーはなかなかいない。 (守備・走塁面) 一塁までの塁間は、右打席から4.65秒前後。これを左打者に換算しても、4.4秒前後と相当遅い。三桁の体重が示すとおり、走力は正直期待できない。 その走力の無さから、守備範囲も狭い。またキャッチング含めてもイマイチ。プロの左翼としても厳しく、一塁かDH要員ではないのだろうか。地肩も基準以下であり、この守備力の無さは走力以上に深刻な問題。 (打撃内容) 自慢の打撃でも気になるのは、根本的にスイングにキレがないということ。大学生レベルならば打ち返せるが、これがプロレベルの投手の球速、キレにどこまで通用するのかには疑問が残る。そのためドラフト級の素材と対峙した時に、どんな打撃を見せるのか注目してゆきたい。 <構え> ☆☆★ 2.5 前足を軽く引いて、グリップは下げて構えます。腰の据わり具合、両眼で前を見据える姿勢、全体のバランスともう一つ。打席でリラックスして構えられているところは、良いところではないのでしょうか。 <仕掛け> 早め 投手の重心が下がり始めてから動き出す、「早めの仕掛け」を採用。より確実性を重視したスタイルで、アベレージ打者に多く観られる仕掛けです。本質的にスラッガーがどうかは、もう少し見極めてみる必要がありそう。 <足の運び> ☆☆☆ 3.0 足を引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は充分とれており、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたい万能タイプ。 気になるのは、外角の球を捌くときは早めに地面を離れてしまうこと。それでいて、内角の球を捌くときは足元がブレないで我慢できているという、全く逆の動作をしている点。早めに開いてしまうと、外角に逃げてゆく球や低めへの対応は厳しくなる。逆に内角は、早めに足元を解放してあげて身体が抜けるのを促す必要があるのだ。その点で、この選手の下半身の使い方には疑問が残る。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 打撃の準備である「トップ」を早めに作ることはできているので、速い球への準備はできている。バットの振り出しはインサイド・アウトではないので、内角の捌きは窮屈。しかし外角の球に対しては、バットの先端であるヘッドも下がらず打ち損じの少ないインパクトができている。スイングの弧が大きいとか、フォロースルーを取れているとかそういった後押しはなく、腕力でかっ飛ばしている印象が強い。 <軸> ☆☆☆ 3.0 足の上げ下げはあるが、目線の上下動は少なめ。むしろ身体の開きが我慢仕切れないのと、振り終わったあと軸足の形が崩れてしまい、打撃の波が激しいタイプかもしれません。 (打撃のまとめ) まともに捉えれば飛ばせる圧倒的な能力があり、それでいて当てる能力も低くはありません。しかし上記にも述べた通り、スイングにキレがないこと。また仕掛け、スイングの形、軸足の内モモの強さなどを観ていても、けして天性のスラッガーには疑問が残ります。 (最後に) 最近のトレンドは、走力や守備力に目をつむってでも打力のある和製大砲候補を評価し、育ててゆこうという機運は高まっています。しかしそのために必要な技量を、無視しても良いわけではありません。 まずスイングがプロのそれではまだないこと、また横尾俊建(慶大-日ハム)の場合、三塁はきっちり守れる守備力がありました。横尾よりもより飛ばし屋の傾向が強い素材ではありますが、今のままでは厳しいと判断せざるえません。守備・走力はともかく、プロで通用するだけの、スイングのキレ生み出せるようになれるのか? そこが、チェックポイントではないのでしょうか。 (2016年・秋季リーグ戦) |