17dy-1
宮本 丈(奈良学園大4年)遊撃 183/78 右/左 (履正社出身) |
「良い意味でも悪い意味でも変わっていない」 15連覇していたチームがこの春はリーグ制覇できず、今年の 宮本 丈 は、全国大会とは無縁だった。しかし自らは3度目の首位打者に輝き、自己最高の 打率.543厘 を残した春のシーズン。そんななか6月に平塚で行われた、大学JAPANの強化合宿で社会人チームとの対戦で生観戦。良い意味でも悪い意味でも、宮本 丈 は、これまでと変わっていなかった。 守備面:☆☆☆★ 3.5 彼の良さは、目の前でイレギュラーが起きても、瞬時に対応できる天性の反応の良さにあるのではないのだろうか。これは、守備だけでなく、打撃でもその良さが生かされている。打球への一歩目の反応も鋭く、それでいて丁寧にボールを扱うという意識も感じられる。地肩も強く安定感があり、上のレベルでもニ遊間を意識できる選手。ただしプロの遊撃手としてはそこまで図抜けてはいないので、将来的には二塁もしくは遊撃手として一流になるには何年かかかるかもしれない。 走塁面:☆☆☆★ 3.5 走塁偏差値 56 一塁までの塁間は、左打席から4.05秒前後。これをドラフト指名された左打者のタイムで偏差値化すると、走塁偏差値は 56 程度。これは、身体能力の化物が集まったプロ野球選手の中でも上位30%以内に入る走力です。 盗塁は、1年秋と2年春のシーズンで11個を記録。その後も毎シーズン5個前後は記録しており、プロに混ぜても中の上~上の下ぐらいの走力があると考えられます。プロの環境に馴れて出場機会が増えてくれば、走力でも存在感を示せる可能性は充分あります。特に出塁すれば、すかさず盗塁を試みる意識や盗塁する勇気は持っている選手なので。 (打撃内容) とにかく徹底的に無駄を排除したフォームから、甘い球を逃さない「鋭さ」を持っています。はっきり言ってプロ仕様のしなりを活かしたスイングではありませんが、その集中力の高さは特筆もの。4年春までのリーグ通算打率が、なんと.418厘。秋はやや調子を落としたようですが、通算100安打を達成しました。 <構え> ☆☆★ 2.5 昨年は両足を揃えたスクエアスタンスだったのですが、この秋はベース側に立ち、前の足をベース側に置くクローズスタンスになっていました。腰を深く沈める構えは相変わらずですが、グリップを高めにバットを縦気味添えます。両眼で前を見据える姿勢はそれほど悪く感じませんが、かなり癖のある構えで全体のバランスとしてはどうでしょうか? <仕掛け> 遅め 昨年までは「遅すぎる仕掛け」でしたが、若干早めて「遅めの仕掛け」ぐらいになっていました。いずれにしてもボールをできるだけ引きつけて叩く、生粋の二番打者が採用するスタイルです。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足のカカトをその場で上げ降ろすのみの踏み出しで、構えたままえクロスの形でインパクトを迎えます。始動~着地までの「間」は短く、狙い球を絞ってその球を逃さないことが求められます。踏み出した足元はブレないので、逃げてゆく球や低めの球に食らいつくことはできています。後ろから前に体重移動してゆかないので、プロの球を前に飛ばせるのかには不安が残ります。 オフに作成した寸評にもあるように、キレイな流す打撃よりも外角寄りの球をセンターからライト方向に打ち返すのを得意としています。ベース側に構えるのは、苦手な内角球を投げさせないためと、外の球を寄り確実に叩くためなのでしょう。 <リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0 あらかじめバットを捕手方向に引いて、「トップ」の形をつくって振り出してきます。こういった打撃は、速い球に立ち後れないのには良いのですが、リストワークに遊びがなく柔軟性を損ないやすいです。しかしこの選手は、こういった打撃にしても柔軟な打撃ができるので、その点は悲観する必要はなさそう。 バットの振り出しも、インサイド・アウトではないものの、外の球に対してはロスなく振り抜けています。バットのヘッドをうまく残して、外角の厳しい球や低めの球もうまく拾うことができています。強くとか鋭く叩くタイプではなく、うまく合わせるタイプだと言えるでしょう。 <軸> ☆☆☆☆ 4.0 足の上げ下げは殆どないので、目線の上下動に狂いはありません。身体の開きも我慢できていますし、軸足の形も崩れず粘りも感じられます。この軸の狂いの無さが、的確なミートを実現しているのかもしれません。 (打撃内容) 癖のある打撃フォームが、余計に癖のある方向へと変わっているようにも感じます。何処が本人にとって良いのかはわかりませんが、かなり特殊なメカニズムだと言えるでしょう。それゆえに他人が真似できないような、突出した成績を残してきたのかもしれません。 完全に飛ばすことよりも捉えることを重視したスイングなので、これでプロレベルの投手の球をどの程度打ち返せるかは半信半疑です。それでも天才的なミートセンスと強いこだわりの持ち主で、いずれはプロで通用する術を見出し頭角を現すだろうなという気はしています。 (最後に) とにかく高い集中力と意識の高さのある選手なので、最初はプロ世界で戸惑っても数年後には出てくるだろうなという気はしています。守備も走塁もプロに混ぜると、現時点ではA級ではないのですが、これも年々存在感を高めて来るのではないのでしょうか。 ポテンシャルがあるのかないのか?と言われれば、典型的にそういったものはなく、意識と技術で補うタイプだと思います。それでも将来は、ニ遊間のレギュラーにまで昇りつめプロでも3割をコンスタントに残るような打者になるのではないかとみています。この順位で、そういった選手を獲得できたのは大きいのではないのでしょうか。来年即結果を残せるかは微妙ですが、数年後はヤクルトのショートに収まっている可能性は高いのではないのでしょうか。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2017年 秋季リーグ戦) |
宮本 丈(奈良学園大3年)遊撃 181/79 右/左 (履正社出身) |
「大学NO.1野手」 2017年度の大学NO.1野手は誰ですか? と訊かれたら、私は迷うことなく 宮本 丈 の名前をあげるであろう。好守・強打の内野手で、上位指名を意識できる、数少ないニ遊間候補だ。 (ここに注目!) プロでニ遊間を任せられる素材なのか? ステップの小さな打撃は、プロでも通用するのか? その観点でこの一年間観てゆきたい。 走塁面:☆☆☆★ 3.5 一塁までの塁間は、左打席から4.05秒前後。これは、プロに混ぜると中の上レベルの脚力。出塁すれば、積極的に盗塁も仕掛けるが、プロに混ぜるとそこまで突出しているのかは微妙ではないのだろうか。 守備面:☆☆☆☆ 4.0 打球への一歩目の反応も鋭く、それでいて丁寧にボールを扱うという意識も感じられます。地肩も強く安定感があり、上のレベルでもニ遊間を意識できる選手だと考えています。最終学年では、本当に守備を売りにして行けるほどなのかも含めて、見極めてゆきたいところです。 (打撃内容) 1年秋と3年春にリーグで首位打者を獲得。2年春と3年秋もリーグ2位の好成績でした。特に3年春は、打率.556厘という驚異的な成績を残し、その勢いで大学選手権に出場。九州国際大戦、関西国際大戦でもホームランを記録。特に関西国際大戦では、延長タイブレークの場面での、さよなら満塁ホームランという印象的なプレーを全国大会で示しました。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに添えます。腰を深く沈めており、全体のバランスとしては少し癖があります。両目で前を見据える姿勢はよく、球筋を錯覚を起こすことなく追うことができます。アゴを引いて、打席での高い集中力を感じます。 <仕掛け> 遅すぎ 投手の重心が下る時につま先立ちして、本格的に動き出すのはリリース直前という「遅すぎる仕掛け」を採用。ここまで始動が遅いと、日本人の筋力やヘッドスピードを考えると、プロレベルの投手のキレやスピードに対応できるのかには疑問が残ります。 <足の運び> ☆☆☆ 3.0 小さくステップして、ベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」がなく、狙い球を絞ってその球を逃さないことが求められます。手元までボールを、できるだけ引きつけて叩くスタイル。 ベース側に踏み込むので、外角を意識していることがわかります。そのため内角の捌きは、窮屈に見えます。踏み込んだ足元は早く地面を離れるので、外角の球を綺麗に流すというよりも、甘めの真ん中~外角球を引っ張る打撃を得意にしている感じがあります。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 早めにバットを「トップ」に近い位置に持ってきているので、始動の遅さを補おうとしています。こういった打撃は、リストワークに遊びがない分、打てる球は限られる印象があります。 バットの振り出しも、インサイド・アウトではなく外の球を強く叩くことに重きが置かれています。内角寄りの球が窮屈なのは、踏み込むだけでなくスイング軌道にも影響がありそうです。外の球に対しては、少し遠回り。それでも大きな弧を描いてしっかり振り切ります。そういった意味では打率は高くても、好打者なのではなく強打者なのでしょう。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は少なめ。身体の開きはさほど我慢できず、外角に逃げてゆく球や低めの球に対してはあまり強くないのではないかと感じます。軸足には粘りが感じれるので、この辺は良いところではないのでしょうか。 (打撃のまとめ) 極力無駄を排除して、ボールをコンタクトしようという意識が感じられます。その反面、外角をきっちり叩けるスイングでもなければ、内角も窮屈なスイング。すなわち真ん中近辺の甘いゾーンの球じゃないと打てないのではないかという疑問が残ります。 このスイングでここまでのハイアベレージを残せるというのは、よっぽどボールをよく絞り込んで、打てる球を逃さず叩いているからではないかと考えられます。 (最後に) バットにボールを当てる能力、ボールを見極めるセンスなどは、かなり優れていると考えられます。しかし動作を観る限り無駄を極力廃したスタイルで、プロの球をこれで打ち返すことができるのか不安が残ります。そういった意味では、自慢の打撃でもプロでは苦労するかもしれません。 上のレベルでも通用するであろう守備が、現時点では1番即戦力になりえる部分。走塁のレベルも含めて、今後一年間かけて見極めてゆきたいポイント。昨年の 吉川 尚輝(中京学院大)のように、大学NO.1野手は、今年も地方リーグの選手から出るかもしれません。 (2016年 大学選手権) |