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齊藤 大将(西武)投手のルーキー回顧へ







齊藤 大将(明治大4年)投手 178/75 左/左 (桐蔭学園出身) 
 




                 「コントロールが良くなっている」





 下級生の頃から主力として活躍してきた 齊藤 大将 。1年秋にリリーフで8試合に登板し、防御率 0.52 という数字を残した以外は、思いのほどドラフト候補としては平凡な成績に留まっている。本格的に先発に転向した今春のリーグ戦でも、防御率 2.59(4位)と平凡。大学からのプロ入りを意識するのであれば、やはり1点台の防御率を残したい。そんななか今秋は(10/8現在)、防御率 1.61 とリーグ1位の成績をキープしている。春からの一番の違いは、コントロールが格段に良くなったからではないのだろうか。


(投球内容)

 左打者の背中越しから来る感覚に陥る、左スリークォーター。そのため起用も、リリーフでの登板が多かった。そのため多少粗っぽい投球でも、ボールの勢いで勝負しようとする意識が強かった。

ストレート 140キロ前後~140キロ台中盤 
☆☆☆★ 3.5

 先発での登板ということで、おおよそ140キロ前後~中盤ぐらいと驚くほどの球威・球速はない。球質もキレで勝負するタイプであり、左スリークォーター独特の球筋を活かしたピッチングが持ち味。何より驚いたのが、ボールの多くが膝下の高さに集まることが多くなったこと。低めを丹念に投げ続ける制球力と忍耐力を、先発2シーズン目で身につけつつある。

 どうしても左打者には強さを発揮する一方で、右打者には長くボールを観られて苦手にする傾向がみられる。低めやコースを突いても、ヒットにされてしまうことは少なくない。もう少し内角を大胆に攻められると、外角への微妙なコントロールがつくだけにもったいない。

変化球 スライダー・チェンジアップなど 
☆☆☆☆ 4.0

 左打者の外角一杯に投げ込むスライダーが、最大の武器。このスライダーを右打者の外角や内角低めにも投げ込むことができるが、まだその精度は高くない。この球をもう少しうまく右打者に使えれば、容易には踏み込みを許さなくなるのではないのだろうか。右打者には、外角に小さく沈みながら逃げるチェンジアップが有効。この球は空振りを誘うというよりも、芯をズラし引っ掛けるさせ内野ゴロを打たせる。変化球も高めに浮かずにコースに集められるので、精度自体は悪くない。

その他

 牽制はもともと、小さなモーションで鋭く送球してうまい。クィックも1.0秒前後で投げ込めるなど高速で、春よりも0.1秒ぐらい早くなっている。フィールディングの動きもよく、野球センスの良さ、運動神経の高さが感じられる。

(投球のまとめ)

 高校時代~大学下級生時代までは、マウンド捌きは良くても粗っぽくムラがあるタイプのように見えました。しかしこの秋は、非常にコースを丹念に集めるコントロールと忍耐力を養うことができ、微妙な出し入れができるように感じます。これまで完全なリリーフタイプに見えましたが、先発投手らしくなってきています。



(成績から考える)

 まだシーズンは終了していないものの、10/8現在 の成績を元に傾向を考えてみたい。この秋の成績は、

7試合 3勝0敗 44回2/3 42安打 11四死球 39奪三振 防 1.61

1,被安打はイニングの80%以下 ✕

 被安打率は、94.2% とかなり高い。六大学や東都の被安打率は80%以内と設定しているが、それでもファクターを満たすことはできなかった。逆にこの被安打で防御率は1点台であるということは、かなり粘り強く投げていることが伺われる。春は、被安打率が81.7%だったことを考えると、かなり悪化している。

2,四死球はイニングの1/3以下 ◎

 四死球率は、24.7% と、イニングに対し1/3どころか1/4以下になって大幅に改善。春は38.5%だったのに比べると、この秋はやはり制球力が格段に上がっていることがわかってきた。

3、奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◯

 奪三振は、1イニングあたり0.87個。先発の基準である、0.8個以上を奪えている。春も0.84個だったので、この点では春とほとんど変わっていない。

4、防御率は1点台以内 ◯

 防御率もそれまで 2点台後半~3点台前半だったのが、今シーズンは 1.61 と大幅に改善。プロで即戦力となると、先発なら1.50位内は欲しいところだが、これからの残り試合に期待したい。

(成績からわかること)

 登板を見た感想同様に、制球が大幅にアップしていたことは間違いなかった。その分被安打が悪化したのは気になるが、奪三振は維持しつつ、防御率も大幅に改善。素直に成長し進化を遂げていると、判断しても良いのではないのだろうか。


(最後に)

 春まではイマイチ信用仕切れない部分があったが、そういったところはだいぶ薄れてきた。特に今ならばプロの先発でもローテーションで5勝前後、リリーフならば40試合以上・2点台の安定感で左打者に強い貴重な活躍も期待できるのではないのだろうか。

 精神的にも我慢強くなり、以前のムラッ気は陰を潜めつつある。ドラフトでも2位前後の指名が期待できるのではないのだろうか。ハズレ1位ぐらいだとやや物足りないが、2位の間には消えてしまいそう。春よりもワンランク成長したと判断して、評価を上げてみたい。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2017年 秋季リーグ戦)










齊藤 大将(明治大4年)投手 179/74 左/左 (桐蔭学園出身) 
 




                  「あんまり変わってないけれど」





 左のスリークォーターから繰り出す投球で、昨秋の時点からドラフト指名が有力視されてきた 齊藤 大将 。実際の投球を見る限りは、昨秋から大きな変化は感じられない。それでも良い意味でも悪い意味で、安定した内容だったとも言える。


(投球内容)

 左打者の背中越しから来る球筋で、左打者にとっては身体にぶつかりそうな恐怖感があり厄介。その反面右打者からは、ボールが長く見やすい傾向にある。そのため、対右打者への投球が鍵を握っていると言えるであろう。

ストレート 常時140キロ台~MAX146キロ 
☆☆☆★ 3.5

 独特の球筋とキレのある球質で、打者の空振りを誘えるタイプ。キレで勝負するので、甘く入ると長打を浴びる危険性はある。しかし課題である右打者に対しても、外角にコントロールできるなど普段のコマンドは低くない。しかし精神的に余裕がなくなる、甘く入って痛打される場面も少なくない。本当のコントロールがなく、その辺が絶対的な成績を残せない大きな要因ではないのだろうか。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ 
☆☆☆★ 3.5

 左打者外角に逃げながら沈む、スライダーが最大の武器。左打者にとっては、この球が来ることがわかっていても、容易には踏み込めない。右打者に対しても、外角ギリギリに小さく逃げるチェンジアップを使う技術はあり、左スリークォーターにしては右打者への投球もしっかりしている。

その他

 牽制は小さいなモーションから送球し、まずまずのうまさ。フィールディングの動きもよく、野球センスの高さを感じる。クィックも1.1秒前後で投げられるなど合格ライン。

(投球のまとめ)

 むしろこの選手は、右打者に対し内角を突くことは少ない。そういった意味では、的を絞られやすい配球をしているのも、イニングが進むにつれ捉えられてしまう要因かもしれない。

 また、ランナーを背負うとボールが上吊ったり制球が甘くなる傾向は以前と変わっていません。開幕してシーズン終盤まで先発を務めていましたが、最終節ではリリーフとして起用されていました。プロでも起用は、明らかにリリーフだと考えられます。



(成績から考える)

3年秋  8回     4安打  6四死  7三振 防 2.25
4年春 41回2/3   34安打 16四死 35三振 防 2.59


昨秋はリリーフで起用されていましたが、今春は先発で大半を過ごしました。

1,被安打はイニングの80%以下 △

 被安打率は、81.7%であり、僅かに基準を満たすまでには行きませんでした。昨秋はリリーフとはいえ、イニングの半分だったのに比べると、長いイニングを投げると底の浅さを露呈してしまいます。それでも81.7%という数字は悪くないので、あと一歩のところまで来ているといった印象を受けます。

2,四死球はイニングの1/3以下 ✕

 四死球率は、38.5% と基準を満たしてはいないものの悲観するほどではない。精神的に追い込まれた時など、本当のコントロールがないところが顔を覗かせるが、普段はそれほどコントロール難という感じはしない。昨秋のリリーフでは、8イニングで6四死球だったことを考えると、格段に安定していたことがわかる。

3、三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◯

 1イニングあたりの奪三振は、0.84個。先発としての基準を越えており、キレのある速球と変化球で、適度な三振が奪えている。どのシーズンでも、イニング数前後の奪三振は記録できている。

4、防御率は1点台以内 ✕

 防御率 2.59 は、ドラフト上位を目指すには物足りない。1年秋に、0.52 という抜群の安定感を魅せた以外は、毎シーズン2点台~3点台で推移している。結構ムラがあるというのは、力量の割に防御率が悪く打たれる試合が少なくないから。

(成績からわかること)

 チームのエースとして開幕から先発したが、イマイチ信頼を得るほどの絶対的な内容は示せなかった。その投球を観ていても、今までと大きく変わった印象はない。どうしてもイニングが進んでゆくと、投球のパターンが限られていて馴れられてしまいがち。そういった意味では、短いイニングを勢いで押すリリーフの方が適しているだろう。


(最後に)

 左のリリーフ候補としては、大学・社会人でもトップクラス。そのため上手く使い方や環境がフィットすれば、1年目から一軍の戦力として貴重な役割は担えそう。投球にスケールは感じられないものの、性格的にはむしろプロ向きの選手ではないかと思っている。うまくゆけば将来 宮西 尚生(日ハム)ぐらいの活躍まで見込めるかもしれない。いずれにしてもドラフトでは、2位~3位ぐらいの間に指名されるのではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2017年 春季リーグ戦)









齊藤 大将(明治大3年)投手 179/72 左/左 (桐蔭学園出身) 
 




                       「左打者には厄介」





 左打者にとっては、齊藤 大将 の背中越しから来る感覚に陥る球筋は、相当厄介なはずだ。身体に当たりそうな恐怖感を抱くため、なかなか外の球に踏み込めない。更に内角を突くこともでき、左のリリーフ候補としては、2017年度の左腕投手の中でもトップランクに位置する一人だろう。


(ここに注目!)

 桐蔭学園時代から、左腕から繰り出す140キロ台のボールは目立っていました。しかし気持ちのムラが激しいタイプで、一辺倒になるところがあります。更にコントロールも結構アバウトだったので、大学タイプだと位置づけていました。しかし明治では、良い感じで成長してきているのではないのでしょうか。

(投球内容)

 3年生になり、柳 裕也に次ぐ第二戦での先発などを任される機会が増えてきました。リーグ戦ではまだ際立った活躍はないものの、全日本の大学ジャパンのメンバーに選出し、国際大会での登板も経験。ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。

ストレート 140キロ前後~146キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 左打者にとって厄介な球筋なだけでなく、ボール自体に非常にキレがあるのが特徴。そのため真っ直ぐで、空振りを誘えるのが強味だといえます。両サイドにも投げ分ける制球力もあり、高校時代よりもコントロールもUP。キレ型なので甘く入ると長打を浴びやすい傾向がありますが、左打者は思っきり踏み込めないので芯で捉えるのは大変かもしれません。

変化球 スライダー・チェンジアップなど 
☆☆☆★ 3.5

 左打者外角に切れ込む、横滑りするスライダーが大きな武器。この球は、左打者には相当遠くに感じるはず。外角へのコントロールも悪くないですし、時には身体に当たりそうなところから内角にも決めることができます。もう少しこの精度を高めたら、左打者はたまらないでしょう。

 右打者に対しては、クロスファイヤーの球筋よりも外角中心に組み立てます。外角低めにしっかりチェンジアップを集められるので、対左に特化しているだけの選手ではありません。もう少し右打者のインハイを突けるようになると、右打者への投球も広がるとは思うのですが。

その他

 牽制は小さいなモーションから投げられて、まずまずのうまさ。フィールディングの動きもよく、野球センスの高さを感じます。クィックも1.1秒台で投げられるなど合格ラインなのですが、ランナーを背負うとボールが上吊ったり制球が甘くなる傾向があります。

(投球のまとめ)

 良い時の投球は素晴らしく、短いイニングでエネルギーを爆発させるには適したタイプだと思います。変化球・コントロールも悪くないので、ただのボールの勢いにかまけたタイプではありません。

 悪い時の踏ん張りやランナーを背負ってからの投球に不安は感じられるので、最終学年でその辺がどの程度修正・成長しているのかがチェックポイント。左打者の内角に決めるスライダー・右打者のインハイを突く投球など、ピッチングの幅を広げられるかも注目です。

(投球フォーム)

左のスリークォーターから投げ込む投手ですが、今後の可能性について考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はあまり三塁側(左投手の場合)に落ちるタイプではありません。腕の振りも下げて出てくるので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適しません。

 重心を深く沈めて来るフォームですが、それほど「着地」までの粘りを感じられるフォームでもありません。そういった意味では、身体を捻り出す時間は充分とはいえず、キレや曲がり幅が大きな変化球を習得できるかは微妙でしょう。しかし腕を下げることで、スライダーに大きな曲がりを生んでいること。また小さく沈むチェンジアップの精度は確かなので、それほど新たな球種によってピッチングの幅を広げてゆく必要があるのかは微妙です。むしろ今ある球種を、いろいろなバリエーションで使えるようにして、ピッチングの幅を広げることの方がこの選手の場合大事なのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を深く捉えており、ボールはそれほど上吊りません。セットポジションになると、球筋全体が上がるのが課題でしょうか。

 「球持ち」もまずまずであり、指先までの力の伝え方も悪く無さそう。腕が身体から遠くをまわって振られるので、その点で多少コントロールが乱れる要因かもしれません。ただしそういったことで特徴を出しているフォームなので、修正は難しいかと思います。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせていませんが、カーブやフォークを使ってくることは少ないので肘への負担は少めかと。腕の送り出しにも角度はないので、肩への負担には問題なさそう。

 心配な点をあげれば、腕の振りが外回りでブンと振ってくるタイプであり、多少負担は大きいのかという気はします。また力投派でもあるので、疲れを貯めやすい点。あとテイクバックした際に、背中のラインよりも肩がかなり奥に入り込んでいるので、その点での不安は感じます。いずれにしても、アフターケアには充分注意したい。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りがさほどあるタイプではないので、打者としては苦になるフォームではありません。しかしボールが見えてからは、キレのある球がピュッと来るので差し込まれるのだと考えられます。セットになると、そういった面が薄れて合わされやすいのではないかと危惧します。身体の「開き」自体は遅く、ボールが見え始めるのは遅いと考えられます。

 腕はしっかり振れているので、速球と変化球の見極めはつき難いかと。ボールへの体重の乗せは充分という感じではないので、腕や上体の振りの鋭さでキレを生み出すタイプかと。そのぶん空振りは誘えるのですが、球威がないぶん捉えられると長打を浴びやすいと考えられます。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「「体重移動」では、「着地」と「体重移動」に課題を感じます。その一方で「開き」の遅さには見るべきものがあるのではないのでしょうか。

 制球を司る動作には優れており、身体への負担もそれほど大きくない。今後ピッチングの幅を広げて行けるかは微妙ですが、球種を増やすことよりも、今ある球種でピッチングの幅を広げることの方が充分だと考えます。


(最後に)

 大学選手権の関西国際大戦で見せた時のように、良い時の投球は素晴らしいものがあります。しかし六大学の成績をみれば、けして突出した内容ではない。ここの原因が何なのか、その辺を深く追求し改善して行けるのかがポイントではないのでしょうか。

 左のリリーフ候補という需要は高いと思うので、しっかりしたパフォーマンスを最終学年も示せれば、2,3位ぐらいで指名される可能性は充分あるのではないかと考えています。先発を務めることで、悪い部分があまり出ない限りは。


(2016年 大学選手権)