17dp-20


 




與座 海人(西武)投手のルーキー回顧へ







 與座 海人(岐阜経済大4年)投手 173/74 右/右 (沖縄尚学出身)
 




                       「希少価値は高い」





 プロでも中々いない、正統派のサブマリン。このレベルの下手投げとなると、アマ球界を見渡しても殆どいない存在なのだ。プロでも 牧田 和久(西武)などぐらいしかおらず、非常に面白い存在になるのではないのだろうか。


(投球内容)

 ポンポンとテンポよく投げ込んで自分のリズムに相手を引き込み、両サイドにきっちりボールを散らせてくるくコーナーワークで勝負。

ストレート 125~132キロ 
☆☆☆★ 3.5

 いつも言うように、下手投げの体感速度はプラス15キロぐらいすると上手投げ投手と比較できると書く。そう考えるとこの投手は、140~140キロ台中盤ぐらいのストレートで、グイグイ勝負していることがわかる。投球の多くは、このストレート中心に組み立ててられている。

 高橋 礼(専修大)などは下手から140キロ台を記録するときもあるのだが、下手特有の下から浮き上がって来る球筋がなく、ボール自体も球威で仕留めるタイプ。しかしこの與座に関しては、下から浮き上がってくる感じもし、ボール自体もキレで勝負する正統派のサブマリン。ただしプラス15キロぐらいに感じるといっても実際は120キロ台後半なので、まともに捉えられれば長打を喰らいやすいことは忘れてはいけない。それゆえコーナーにしっかり投げ込める、確かな制球力が求められる。その点この選手のコマンドは、その条件を満たしている。

変化球 スライダー・シンカー・カーブ 
☆☆☆ 3.0

 小さく僅かにズラす程度のカットボールのようなスライダーが、この選手の主な変化球。また左打者に対してはシンカーを投げるのだが、これも少しショート回転して逃げる程度で、空振りを誘うというよりは芯をズラすためのもの。たまに緩いカーブも使うが、この球は滅多に投げて来ない。

 そうこの投手は、明確に空振りをとれる変化球がないのだ。そのため結構プロレベルの打者相手だと、決め手に欠けて苦しむ可能性があるということ。これらの変化球のコマンドはまずまずで、カウントを稼ぐという意味では悪くないのだが。

その他

 アンダーのためにモーションが大きくクィックは、1.2~1.35秒ぐらいかかり少し遅い傾向にある。しかしそのぶん牽制が鋭いことで、この部分を補おうとしている。またフィールディングは非常に上手いので、中途半端な送りバントなどしたら、すぐに二塁で刺されてしまうだろう。

(投球のまとめ)

 アンダーらしい浮き上がる球筋、キレで空振りを誘える球質、確かなコントロールもあるということ。変化球の曲がり幅が小さく、決め手に欠けるところが、プロレベルの打者相手になると心配にはなる。また長い腕をしならせてといった、フォームで相手のタイミングをずらすとか、そういったタイプではないのも若干気になるところだろうか。

 それでもプロアマ含めて、これだけのサブマリンはほとんどいない。そういった希少価値からも、プロ志望ならば指名されるのではないのだろうか。





(成績から考える)

 1年春からリーグ戦では主戦として活躍し、通算19勝をあげている実力者。今回は、彼の4年春の成績を元に、傾向を考えてみたい。

4年春 4勝1敗 46回 25安 6四死 35振 防 1.17

1,被安打はイニングの70%以下 ◎

 地方リーグの選手なので、ファクターを70%以下と厳しめに設定。それでも被安打率は、54.3%と極めて低い。何より1年春からリーグ戦で投げて馴れているはずのリーグの選手達でも、4年春のシーズンでこの被安打に抑えている点は素晴らしい。

2,四死球は、イニングの1/3以下 ◎

 四死球率は、13.0% 。イニングの1/3以下(33.3%)どころか、脅威の10%台前半なのは素晴らしい。大学選手権の石巻専修大戦では、序盤に2つの四球を出していた。しかし後半戦からは、いっさい四球を出さなかった。コーナーにしっかり投げ分けるコントロールもあり、この点も問題ない。ただしプロの打者の打力を恐れたり、ギリギリを突こうとしてプロ入り後は四死球が増える可能性は秘めている。

3,奪三振は1イニングあたり0.8個以上 △

 1イニングあたりの奪三振は、0.76個と僅かに基準を満たしていない。ストレートでは空振りを取れる球質で、コース一杯を突くコントロールもある。しかしながら、変化球で空振りを誘えない部分があり、この傾向はプロレベルだと顕著に出るのではないかと危惧している。

防御率は、1点台以内 ◯

 この春の防御率は、1.17 と安定。地方リーグの選手だけに、1.50以内に抑えていて欲しいなと思ったが、その部分もクリア。プロを目指すならば、1シーズンぐらいできれば0点台のシーズンが欲しかったが、これまでそこまでの絶対的な数字を残したことはない。それでも大学選手権では、12イニングを投げて自責点は0だった。今後にむけて、大いなる自信に繋がったのではないのだろうか。

(成績からわかること)

 奪三振の部分が若干物足りなかったことを除けば、ほぼファクターを完全に満たす形となっている。それだけに実績的には問題がないので、自信を持ってプロに進んできて欲しい選手だった。


(最後に)

 凄いというよりも、チームに一人いたら面白いというタイプ。チーム構成上において、アクセントになる存在で貴重なピースとして当てはまってゆく可能性を秘めている。正統派のサブマリンであり、むしろ 高橋 礼(専修大)よりもプロ側の評価は高いのではないかと思われる。

 上位指名とかそういったことは難しいと思うが、中位~下位での指名ならば本会議中での指名が期待できるのではないのだろうか。変化球の決め手に欠けるところ、腕のしなりなどフォームで幻惑できるタイプではないことは若干の不安要素ではあるが、指名リストに名前が残る選手だと評価している。ぜひ、志望届けを提出して欲しい選手だった。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2017年 大学選手権)