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椎野 新(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







 椎野 新(国士舘大4年)投手 194/88 右/右 (村上桜ヶ丘出身)
 




                      「殻を破ったのか?」





村上桜ヶ丘時代から、プロからも注目されてきたた大型投手。しかし国士舘大に進んでからは、リーグ戦でも良く投げていたものの、何かこちらが期待したほどの成長は観られず歯がゆい思いで見ていた。しかし今春の青学戦では、多くのスカウトが集まるなか、今までのイメージを一新する、素晴らしい投球を魅せてくれた。


(投球内容)

 194センチという大型投手ながら、実にバランスの取れたフォームで投げ込む正統派。力でガンガン押してくるのではなく、しっかり変化球を織り交ぜて投球を組み立ててくる、典型k的な先発タイプの投手だと言えよう。

ストレート 常時140キロ前後~MAX89マイル(143キロ) 
☆☆☆ 3.0

 今までは、常時135~出ても140キロぐらいという物足りない印象があった。しかしこの日のストレートは、ビシッとした勢いと角度があり、ボールにしっかりとした存在感があった。また両サイドにしっかり投げ分けられる制球力があり、打者の内角を厳しく攻めるなど、力で押せるところを魅せてくれた。ボールには角度がある割に低めに押し込めないところが、今後の課題だろうか。

変化球 スライダー・ツーシーム・・カーブなど 
☆☆☆ 3.0

 変化球に絶対的なものはないものの、上手くコンビネーションに織り交ぜてくる。しいて気になる点をあげれば、スライダーが高めに浮いてその球を痛打される場面が多いということ。この不用意な球を減らせば、接戦でも勝てる投手になるのではないのだろうか。

その他

 クィックは1.15秒前後と平均的で、牽制も走者を刺すような鋭いものは投げ込んで来ない。大型故に機敏な動きは期待できないが、高校時代よりは投球以外にも成長は感じさせ、無難なレベルまで来ている。

(投球のまとめ)

 ランナーを背負うと、ボールを長く持ったりと「間」を変えながら投げられる先発タイプ。一杯一杯になったのかな?と思いきや、そこから踏ん張れると精神力もある。爆発力こそないが、淡々と波の少ない投球でイニングを刻める安定感がある。

 まだ投球全体に発展途上の印象は残すものの、プロの指導者やその環境で1年ぐらい漬け込んだら、一軍ローテーションも意識できる存在になっても不思議ではない。今年のドラフトの中ででも、上位指名をせずに獲得できる数少ない先発タイプではないのだろうか。


(投球フォーム)

実際どの辺が発展途上なのか? フォームを分析して考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足をはそれほど地面に向いているわけでもないのだが、お尻の落としは甘くバッテリーライン上に残りがち。そのため身体を捻り出すスペースは充分とは言えず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種にはあまり適してはいない。

 「着地」までの粘りも淡白で、身体を捻り出す時間もイマイチ。そのためキレや曲がりの大きな変化球を望むのは難しく、決め手に欠けるきらいがある。現状ピッチングを見ていても、そういった印象をうける。こういった投手は、スピードのある小さな変化を中心に、ピッチングの幅を広げてゆくべきだろう。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドの投げ分けはつけやすい。その一方で軸足が地面から浮いて投げてしまっているので、どうしてもボールが上吊りやすい。「球持ち」自体も並で充分にボールを押し込めないので、角度のある割に低めに集まらないのだ。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせないものの、それほどカーブやフォークといった球種を投げて来ないので肘への負担は少なめ。腕の送り出しも無理は感じられないので、肩への負担は少ないのだろう。力投派でもないので、消耗はし難いと考えられる。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りがあるわけではないので、打者としては苦になり難い。それでも身体の「開き」自体は抑えられているので、球の出どころが見やすいわけではない。そういった意味では、コースにしっかり投げ分けられていれば痛打は浴び難いのではないのだろうか。

 振り下ろした腕は身体に絡んでおり、速球と変化球の見極めはつき難い。しかし体重が乗せきる前にリリースを迎えてしまっており、まだ打者の手元までグッと来るような勢いや球威は感じられない。この辺が変わってくると、投球の印象も大きく変わってくるだろう。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」において、「開き」こそ抑えられているが、まだ「着地」「球持ち」「体重移動」などの粘りが物足りない。この辺は改善可能なメカニズムをしているので、股関節の柔軟性を養いつつ下半身を強化し、着地のタイミングを意識して鍛錬を積んで行けば良くなってゆくはずで、まだまだ伸び代を残している。

 足の甲が押し付けられない、球持ちが浅いなどの理由でボール全体が高めに集まりやすいが、故障のリスクはそれほど高くないフォーム。下半身の使い方を覚えたら、大化けする可能性を秘めている。


(最後に)

 今春のリーグ戦では、7試合で 2勝5敗 防 1.89 とけして悪い成績ではなかった。特に私が観戦した青学戦では、延長14回まで息詰まる投手戦を演じ力尽きている。52回1/3イニングで、被安打は37本。被安打率は、70.8%と悪くない(二部なら70%割りたいが)。四死球は17個で、四死球率は32.5%とイニングの1/3以下をなんとか満たして制球も基準レベル。奪三振は39個で、1イニングあたり0.75個。先発投手の基準である0.8個こそ割って決め手があるというほどではないが、比較的三振でアウトにできてはいる。二部の成績ではあるが、適度なまとまりと力があることがわかってくる。

 精神的なムラは感じられないが、投球フォーム、投球内容からしてあと一歩の粘りが物足りない。ここをプロ入り後磨いて身につけられれば、近い将来プロでも先発を任される投手 になっても不思議ではない。1年ぐらいファームで漬け込むことを覚悟に指名するのであれば、けして悪い選手ではないのだろう。下位指名でも穫れそうな、数少ない先発タイプという付加価値がある。


蔵の印象:
 (下位指名級)


(2017年 春季リーグ戦)








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