17dp-13


 




小又 圭甫(24歳・NTT東日本)投手の本当に凄いやつへ







小又 圭甫(国学院大4年)投手 182/84 右/右 (千葉英和出身) 





 「球速的には大学NO.1」





 こと球速という意味でいえば、恐らく全国の大学生で1番速いのは、この 小又 圭甫 ではないのだろうか。大学2年時にトミージョン手術を行い、大学の3年間では公式戦登板はなし。千葉英和時代から注目されてきた選手ではあるが、大学での実績は皆無の男が突然この春躍り出た。


(投球内容)

ノーワインドアップから、静かに足をあげて来るおとなしいフォーム。

ストレート 常時145~MAX95マイル(153キロ) 
☆☆☆☆ 4.0

 球速表示は破格なのですが、特に打者の手元でグ~ンと伸びるとか、ピュッとキレる感じはしません。それだからといって、物凄く球威があるわけでもありません。勢いのある球を投げ込んでくるわけですが、それほど空振りは誘えないでしょう。またボールが引っかかり過ぎたり、抜けたりとリリースが不安定。

 高校時代から制球はアバウトなところはあったのですが、ここまで不安定ではありませんでした。この辺は、長く実戦から離れていた影響が出ているのかもしれません。場馴れしたり実戦勘を取り戻してゆけば、ここまで荒れ荒れの投球にはならないのではないかと思います。高校時代はカーブが高めに浮いて打たれるケースが多かったのですが、ストレートは、両サイドに散らす制球力は持ち合わせていたので。

変化球 スライダー・カーブ・スプリットなど 
☆☆☆★ 3.5

 高校時代から、右打者の外角低めに決めるスライダーに良さがあった投手。今でも横滑りするスライダーは健在で、この球でしっかりカウントを稼げます。ストレートが暴れるぶん、この球への依存度は大きいピッチング。高校時代は緩いカーブをなげていましたが、先日の観戦では確認できず。また低めに沈む、スプリットのような球もあるようです。現状は、決め球になるとかそういった絶対的な存在ではありません。

その他

 クィックは、1.05~1.10秒とまずまず。牽制も鋭く、フィールディングも落ち着いてボールを処理するなど下手ではありません。投球以外の部分を、しっかりこなすことができます。

(投球のまとめ)

 この春は先発しても、3イニング以内でベンチに引っ込むなど、まだ多くの球数を放れる状態ではないようです。しかし短いイニング限定とはいえ、登板したすべての試合で150キロ台を計測するのなど、そのスピード能力は傑出しています。

 イニング数以上に被安打を浴びる合わされやすいフォームなのと、イニングを遥かに超える四死球を与えるなど、まだまだ素材型の域を脱していません。まずは実戦登板を果たすことからはじめる段階で、本当の真価が問われるのは秋のシーズンではないかと考えられます。なかなか東都一部で目新しい選手がいなかったので、この春の数少ないサプライズとなりました。


(投球フォーム)

 では何故コントロールに課題があるのか? 打者に合わされやすいかを、フォームを分析して考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足は地面に向けられているものの、思ったよりもお尻が一塁側に落ちてゆく。そのため甘さは残すものの、身体を捻り出すスペースが確保していない感じではない。そのためカーブやフォークといった球種も、投げられないことはなさそう。実際にはスプリットを投げているが、それほど悲観しなくても良さそう。

 「着地」までの粘りも適度に取れており、身体を捻り出す時間も確保。そういった意味では、将来的にいろいろな球種を覚えてピッチングの幅を広げて行くことが期待できる。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブはしっかり内に抱えられていはいないが、比較的身体の近くにある。そのため、両サイドへの投げ分けは悪くない。足の甲の押し付けもできているので、ボールが上吊る原因にはなっていないだろう。制球を乱す最大の要因は、「球持ち」が悪いわけではないものの、指先の感覚の悪さ。このリリースの不安定さが、ボールが大いに暴れる要因となる。

 腕の回旋が身体の内側でまわって来ないのと、スリークォーター気味のフォームのためボールが押し込めないあたりが、制球を乱す要因になっているのかもしれない。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークを多く投げるわけでもないので、肘への負担は少なそう。以前にトミージョン手術を行ったことで、肘に負担のかかり難いフォームに変えているのかもしれない。

 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も少なそう。しかし腕の回旋が身体の中で回ってこない投手なので、その辺が負担がかかりやすいのかもしれない。けして力投派ではないので、身体への消耗は少ないのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは思ったよりもあり、打者としては合わせやすいわけではなさそう。身体の「開き」も並なので、特にボールが見やすいという感じはしてこない。

 高校時代は非常に腕の振りの良さが目立った選手だが、故障したことで以前ほどではないのかもしれない。ボールへの体重の乗せ具合も悪くなく、思ったよりも実戦的なだった。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に大きな欠点はなく、もう少し「球持ち」と「開き」がよくなると良いかと思う。大きな故障を経験したとはいえ、それほど今は負担が大きなフォームではないし、実際の投球よりも制球を司る動作も悪くなかった。

 高校時代の課題であった足の甲の押しつけの浅さと身体の「開き」の早さは、今は随分と改善して来ている。現在の課題である合わされやすさとコントロールの不安定さは、「球持ち」を安定させて来ることで、コントロール・嫌らしさが出てくるのではないかと考えられる。

 しいて言えば、やはり腕の回旋がやや身体から離れて軌道していること。スリークォーターであまり上から叩け無いことで、低めに集められないのかなという感じはするが、極端なほど悪いわけでもなさそう。フォームというよりも実戦勘や精神的なものの方が、要因として大きいのかもしれない。


(最後に)

 実際の荒れ荒れの投球を見ていると、フォームがもっと箸にも棒にもとかからない感じなのかと想像していた。しかし思った以上に実戦力の高いフォームであり、これならば場馴れして試合勘を取り戻せば、そこまでひどいことにはならないのではないかと楽観的に考えている。

 イメージ的には、1年春のリーグ戦で153キロを記録し衝撃のデビューを果たした 村松 伸哉 の大学時代を彷彿とさせる。彼はプロに進むことができずに終わってしまったが、この 小又 はどうなるだろうか? 常識的に見れば、秋よほど劇的に変らない限りは、まずは社会人でワンクッション置いてからという判断になりそう。それでも秋まで大幅に良化すれば、一気にドラフトされても不思議ではない。


蔵の評価:
追跡級!


(2017年 春季リーグ戦) 









小又 圭甫(千葉英和2年)投手のレポートへ(無料)