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大城 卓三(巨人)捕手のルーキー回顧へ







大城 卓三(24歳・NTT西日本)捕手 187/89 右/左 (東海大相模-東海大出身) 
 




                  「そんなには変わっていないけれど」





 昨年はプロに指名されるぐらいの力はあるけれど、まだ打撃への意欲に乏しく「旬」ではないと判断した 大城 卓三 。社会人3年目を迎えた今年は、見た目ではそれほど変わったようには見えない。しかし全日本メンバーとして活躍したり、都市対抗などでも5番打者として先制のツーベースを放つなど打つことでも存在感を示した。


守備面:
☆☆☆ 3.0

 187センチの大型捕手ながら、身体を小さくかがめて投手に的を大きく見せる配慮を持っている。軽くミットを投手に示したあと、地面に下ろしてしまう癖がある。通常こういった余分の動作があると、低めへのワンバウンド処理に立ち遅れる傾向がある。しかし彼の場合、ショートバウンドにも素早く腰を落としグラブも下から出てくるので悲観しなくても良さそうだ。

 キャッチングはしっかり押し込むというよりも、かつての古田敦也のようにボールがス~とミットに吸いこまれる感じでハンドリングも柔らかく、けしてキャッチングが下手な選手には見えない。周りのナインにもしっかり指示が出せる選手であり、その辺も司令塔としても問題はない。

 リードでは常に同じボール・同じコースを続けない、散らす配球を心がけて来る。普段は内角を結構使って来るが、相手が強打者だったり、得点圏にランナーがいる時は、外角中心のリスクの低いリードに切り替えて来る。しかし今年の都市対抗・JR 西日本戦では、勝負どころで外角のまっすぐにこだわり投げ続けた。その結果、逆転のホームランを食らい敗戦している。なぜあの場面だけは、外角高めの速球を続けるリードにしたのか? いまいち、その意図がわからなかった。個人的には、あまりリードセンスは好いとは思わない。

 スローイングは捕ってから投げるまでの動作に大きな破綻はなく、二塁までの到達タイムは1.9秒前後。むしろ大学時代は、コンスタントに1.8秒台で投げていた。それよりも、正確さを重視するようになったのかもしれない。地肩自体は、プロとしてはまさに平均レベルといった感じ。

 プロの捕手としても、ファームレベルならば1年目から問題なく入って行けるレベルには来ている。しかしプロで正捕手を担うというよりは、打撃を活かして第二・第三捕手という位置づけか? 適正次第では、他のポジションへのコンバートも視野に入れての指名かもしれない。


(打撃内容)

 大学4年時には、首都リーグで春・秋首位打者に輝いている。都市対抗のJR西日本戦では、第一打席に浮いた球を逃さず右中間ツーベースを放つ先制を放った。甘い球を逃さない「鋭さ」と、ヘッドスピードは捕手離れしている。

<構え> 
☆☆☆☆ 4.0

 前の足を引いた左オープンスタンスで、グリップは高めに添えられている。腰の据わり具合、両眼で前を見据える姿勢、全体のバランスもまずまずで、特に大きな欠点は見当たらない。

<仕掛け> 早め

 一度引いていた足を、ベース側にツマ先立ちする。しかしその戻す動作が、本格的なスイングに入る前なので、動作に無駄なところは見当たらない。本格的に動き出すのは、投手の重心が下がりはじめたときで、「早めの仕掛け」に該当する。典型的な対応力重視の、アベレージヒッターの打ち方となる。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足を軽くあげて、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」には余裕があり、速球でも変化球でも幅広く対応。昨年まではベース側に踏み出すインステップだったのですが、今年は真っ直ぐ踏み出すオーソドックスなスタイルに。外角の球を強く意識しているのに比べると、今年は内角でも外角でも捌きたいという幅の広さを感じました。特に左の好打者がインステップすると、率が残り難い傾向があります。長打を売りにしないのであれば、真っ直ぐからアウトステップにした方が確実性は増すでしょう。

 踏み込んだ足元は、インパクトの際にはブレません。そのため外角に逃げゆく球や低めの球にも食らいつくことができます。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、リストワークを柔らかく使えています。やや「トップ」を作るのが遅れがちになることがあるので、その辺は立ち後れないように注意したい。外角の球を捌くにはロスはないのですが、けしてインサイド・アウトではないので内角の球を捌くにはボールとの距離間(スペース)が欲しいタイプ。甘めの内角球を引っ張るのは得意だが、厳しい胸元の球に対しては得意ではないはず。

 バットの先端であるヘッドが下がらないことで、フェアゾーンにボールを転がすことはできている。スイングの弧の大きさやフォロースルーを活かすタイプないので、やはり野手の間を鋭い当たりで抜けてゆくタイプではないのだろうか。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げも静かなので、目線の上下動も少なめ。身体の開きも我慢できており、軸足の形も大きは崩れない。そのため調子波の少ない、安定した打撃が期待できるのでは? 軸足には強さはさほど感じられないが、粘りは感じられる。

(打撃のまとめ)

 難しい球を捌くというよりも、自分の打てる球を逃さず叩くことで結果を残すタイプかと。そのため甘く入ってきた球には、鋭くはじき返すスイングができている。当て勘も悪くないので、打てる捕手としての期待は持てるだろう。


(最後に)

 確かに打撃には好いものを持っているものの、左打席から塁間4.4秒前後で速いとは言えない脚力。地肩は強いものの、他のポジションへの融通は低いのではないかと考えられる。あくまでも打撃が勝ったタイプの捕手として、その成長を待ちたい。

 さて正捕手に20代の小林がいて、控えでは打てる宇佐見が出てきた。そんなチーム事情で、なぜ2位・岸田、3位大城の指名が必要だったのだろうか? 1つ考えられるとすれば、まず宇佐見は打撃を活かして一塁への比重を高めたいこと。そして岸田はまだ高卒3年目であり、一軍で戦力になるには1,2年は下での漬け込みが必要そう。そう考えると本当の意味で、ディフェンス型の小林と対照的な打撃型の控え捕手が欲しかったのではないかと。

 大城に即打撃で結果を残せということではなく、そこは宇佐見が補う部分。本当の意味で、小林の控えを来季できる選手が欲しかった。そこで、岸田が育つまでの繋ぎの意味あいが強い指名なのではないかと捉えている。今の巨人は、弱い部分に徹底的に選手を集めて、その中から誰か出てこい的な補強を繰り返している。その一環が、今回の捕手連続指名なのではないのだろうか?

 いずれにしても昨年よりも打てる捕手の色彩は強めているので、今年は指名リストに名前を連ねてみたいと思う。果たして大城が、額面どうり小林の控えとして機能するのか注目してみたい。彼には、即一軍に入ることが求められるだろう。


蔵の評価: (下位指名級)


(2017年 都市対抗)









 大城 卓三(23歳・NTT西日本)捕手 187/86 右/左 (東海大相模-東海大出身)
 




                      「今年は難しいかな」





 東海大3年生の時から、条件さえ出さなければ指名されるのではないかと言ってきた 大城 卓三。大学4年時には、春・秋のリーグ戦でも首位打者に輝き、捕手としても大きな欠点のない選手だった。果たしてあれから2年、今度こそ大城はプロ入りを実現できるのだろうか?


(ここに注目!)

 打てる捕手としての魅力と、社会人2年間の経験でプロでも即戦力になり得る選手なのかどうか見極めて欲しい。


(ディフェンス面)

 捕手としては、可も不可もなしといった感じで大きなアピールポイントもなければ、大きな欠点もない。187センチという大きな身体にも関わらず、身体を小さくまとめて的を大きく魅せる構えはいい。グラブを少し下げてしまう欠点はあるものの、ワンバウンド処理への反応などは悪くなく、それほど気にすることはなさそう。ボール自体の押し込みやキャッチングという部分では、特に可も不可もなし。ゴロの処理の際には、しっかり指示を出せることは捕手としては大事な要素。

 リードは基本的に両サイドに散らせ、相手の的を絞らせないことを重視。しかし相手が強打者だったりすると、危険を察して外角中心に痛打を浴びないように切り替える。普段は、結構内角の割合の多いリードをしているのだが。それなりに相手や状況をみながら、使い分けているように見える。

 スローイングは捕ってから投げるまでの動作に大きな破綻はなく、二塁までの到達タイムは1.9秒前後。むしろ大学時代は、コンスタントに1.8秒台で投げていた。それよりも、正確さを重視するようになったのかもしれない。地肩自体は、プロとしてはまさに平均レベルといった感じ。

 昨年の戸柱 恭孝(DeNA)に比べると、まだ攻守にそのレベルまでは到達していない。本格的にマスクを任されるようになったのは、昨年の日本選手権予選あたりから。そう考えるとまだ一年ぐらいは、プロで即戦力として期待できるようになるには必要かもしれない。





(打撃内容)

 都市対抗予選では、5試合で打率.133厘と守りに意識が行き過ぎたのか? 自慢の打撃が、陰を潜めている。都市対抗本選では、あわやセンターオーバーのホームランという当たりを放っており打席の内容は悪くなかった。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前足を引いた左オープンスタンスで、グリップの高さは平均的。腰の座り・両目で前を見据える姿勢は良いが、全体のバランスとしては並ぐらいだろうか。

<仕掛け> 早すぎ

 投手の重心が沈み始める前から動き出すなど、「早すぎる仕掛け」に。それだけ確実性を重視しているのはわかるが、これだと投手が重心を下げ始める前であり、タイミングを狂わせることができてしまう。プロレベルならば、ここまで早い段階で動き出す選手は殆どいない。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を早めに引き上げて回し込み、ベース側に踏み込んで来るインステップを採用。始動~着地までの時間は充分あり、ボールを 線 で追える選手であり、打てるポイントは多い。そのため速球でも変化球でも、スピードの変化には対応しやすい。

 またベース側に踏み込んで来るように、外角を重視したスタイル。踏み込んだ足元はブレないので、外角の厳しい球や低めの球にも食らいつくことができる。気になるのは、左打者がインステップすると、どうしても右打者の食い込んでくる球筋に差し込まれやすく率が残り難い。できれば真っ直ぐからアウトステップに踏み出す方が、率は上がるだろう。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、リストワークに力みがないのは良いところ。しかし準備が遅れないように、その点は注意したい。バットの振り出しは、けしてインサイド・アウトではない。しかし外の球に対しては、ロスがなくしっかり叩ける形ができている。

 バットの先端であるヘッドが下がりが少ないので、広い面でボールを捉えている。そのため、打ち損じの少ないスイングだといえよう。最後まで、綺麗な軌道で振り抜けている。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはあるものの、目線の上下動は少なめ。身体の開きは我慢でき、軸足も大きくは崩れない。調子の波も、比較的小さなタイプではないのだろうか。

(打撃のまとめ)

 インステップしたり、トップを作るのが遅れがちになるところは気になるが、さすがに首都で春・秋連続首位打者をとっただけに技術的にはしっかりしている。どうしても捕手というポジション柄、リードに力を注いで打撃にまで意識がいけていない気がする。しかし根本的な打力がないとか、技術に問題があるわけではない。


(最後に)

 来年は、打つ方でも結果を残す、そういった貪欲さが欲しい。その点先輩の戸柱は、意識が高かった。大城の打撃の潜在能力は戸柱以上なだけに、打てる捕手として存在感を示して欲しい。

 そういった意味では、指名されても不思議ではないところまでは来ているものの、今プロ入りの「旬」なのかと言われると、個人的には NO. なのではないかと思っている。あえてもう一年待って、文句なしの形でプロ入りを実現して欲しい。あえて今年は、
 をつけないことにする。


(2016年 都市対抗)