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池田 駿(巨人)投手のルーキー回顧へ







池田 駿(24歳・ヤマハ)投手 174/71 左/左 (新潟明訓-専修大出身) 





                    「ストレートのコマンドが」





 専修大の下級生時代は、140キロ台中盤の速球を連発し、先輩の 江草 仁貴(現広島)のような投手に育ってゆくのではないかと期待していた。しかし肘の故障などもあり冴えないシーズンを送り、最終学年でも140キロ台を記録するまでには回復していたが、下級生時代のような力はなかった。昨年ヤマハに進み、その球速は150キロ迫ろうかというほどになっていた。しかし力で抑えこもうとして、投球を乱し失敗したルーキーイヤー。2年目の今年は、力の抜き加減を覚えたとしてエースとして都市対抗出場に大きく貢献する。

(ここに注目!)

 先発でもコンスタントに140キロ~中盤を記録。リリーフならば140キロ台中盤~後半を記録するなど、スピード能力は社会人左腕でも上位だと言える。そのスピード能力に、注目して頂きたい。


(投球内容)

ストレート 140~140キロ台後半 
☆☆☆ 3.0

 確かにスピード能力は左腕としては上位であるものの、それほど打者が苦になるという球威・ボールの力があるわけではない。この辺は、自由枠でプロ入りした江草と比べると大きく見劣るところ。両サイドにボールを散らせることはできるものの、根本的にストレートのコマンドはまだ低い。昨年150キロ近い速球を投げても期待に応えられなかったのは、この制御の効かないストレートで押そうとしたことに最大の要因があったのではないのだろうか。

変化球 カットボール・スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 投球の多くは、130キロ台を超えて来る高速スライダーだか、カットボールとのコンビネーションで組み立ててくる。曲がり幅は少ないが、速球よりも安心してカウントを稼ぐことができる。その他にも120キロ台のスライダーもあるようだが、こちらはあまり使って来ない。むしろ多めに、チェンジアップなどの右打者外角に沈む球を使って来る。こちらも空振りを誘えるほどではないが、コマンドは高く両サイドへの投げ分けを可能にしている。

 むしろ心配なのは、左打者に対する攻め。どうしても外角にスライダーを集めて来るピッチングに終止し、内角を突く球がないので狙い打たれる。それほど背中越し来るような恐怖感が生じる球筋ではないので、外角に踏み込んで来る打者を封じきれない。左腕なのに、左打者相手を苦手としている。

その他

 クィックは、1.2秒台と少し遅め。左腕は一塁走者が見える格好で投げるので、総じて右打者よりクィックが遅い選手が多い。それでも牽制は結構鋭く、走者に釘を刺すことはできている。

(投球のまとめ)

都市対抗予選の4試合では

32回2/3 14安打 10四死球 25奪三振 防 1.10

という成績に。この数字を見る限り、四死球率は30.7%と基準であるイニングに対し1/3個以内に抑えていて、ストレートのコマンドの低さを変化球で補えていることが伺われる。奪三振率は 0.77個であり、先発投手の基準である0.8個以上には若干足りず絶対的な決め手がないことがわかる。左腕は右腕に比べ奪三振率が高くなる傾向があるが、それでもその基準を満たしていない。しかしそんななか驚異的なのは、被安打率が 42.9% しか打たれておらず、社会人の基準である 80%以下を大幅に下回っている。この数字の秘密が何なのかは、都市対抗本選を観ても正直よくわからなかった。

 都市対抗の投球を見る限りは、収まりが悪くピリッとしない投球であり、球速は出るもののドラフト指名は微妙だというのが率直な感想だった。





(投球フォーム)

被安打の秘密が何かフォームにあるのか? 考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすフォームで、お尻は三塁側(左投手の場合)に落とせず、身体を捻り出すスペースは確保できていない。すなわちひねり出して投げる、カーブやフォークといった球種には適さない。

 着地までの粘りは並で、身体を捻り出す時間も平均的。曲がり幅が大きいとかキレのある変化球を生み出すためには、この身体を捻り出す時間を確保したい。そういった意味ではコマンドこそ高いが、武器になる変化球を修得できない要因の一つに、この着地までの粘りがもう少し欲しいことが考えられる。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分け安定。実際の投球を見ていても、両サイドの投げ分けが身上の投手。しかし足の甲での地面への押し付けが遅いので、力を入れて投げるとボールが上吊るなど制御し難い。更に腕の振りが外旋して身体の外側でブンと振られており、制球を乱す要因になっている。

<故障のリスク> 
☆☆ 2.0

 お尻が落とせないフォームなので、無理にカーブやフォークなどを投げると肘への負担が大きい。しかしそういった球は殆ど見られないので、肘への負担に関しては悲観することはないだろう。

 むしろ結構角度をつけて腕の送り出しに無理があったり、腕を外からブンと振るなど肩への負担などが生じやすいフォーム。かつて肘を手術したように、故障の可能性は今でも低くはないだろう。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、それほど合わせ難いフォームではない。しかしそれでも身体「開き」は抑えられており、コントロールを間違わなければ痛手は食らい難い。

 腕の振りは好いので、速球と変化球の見極めは困難。ボールを押し込む前にリリースを迎えてしまっているので、体重が充分に乗せきれていない。そのため球速の割には打者が苦にはならないし、速くは感じられない球になってしまっている。

(フォームのまとめ)

 投球の4大要素である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」というか、上手く作り出したエネルギーをボールに伝えきれていいない。もう少しボールを長く持つとか、押しこむ意識をリリースに持ちたい。

 足の甲の押し付けが遅かったり、腕の外旋などもあり、コントロールを乱す要因に。結構負担の大きなフォームでもあり、好いパフォーマンスを長く持続できるのかには不安が残る。


(最後に)

 左腕でこれだけの球速があり、ヤマハの主戦として活躍。普通ならば、ドラフト上位候補と位置づけられてもおかしくはないように思う。ヤマハというチームは、上位指名じゃないと選手を出さないとも言われる選手であり、今の池田に上位指名を用意できる球団はないだろう。実際そういう縛りがなくても、指名があるのかは微妙なレベルだと言わざるえない。まだ旬の時期かと言われれば、私はNO.という判断になる。もう少し実戦的な部分を磨いて、来年までの成長に期待したい。


(2016年 都市対抗)