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玉井 大翔(日ハム)投手のルーキー回顧へ







 玉井 大翔(24歳・かずさマジック)投手 178/78 右/右(旭川実-東農大オホーツク出身)
 




                       「ブレない安定感」





 玉井の大学時代は 風張 蓮(ヤクルト)が同期におり、むしろ下級生からの実績は玉井の方が上だったといえる。しかし高校時代からのネームバリューや最終学年でのアピールの違いで、風張の陰に隠れる形となってしまった最終学年。しかし社会人1年目には調子を取り戻し、打者の手元までピュッと切れてくる速球に思わず目を奪われた。そのため2年目の今年は、社会人で最も気になる投手の一人となっている。


(ここに注目!)

驚くような球威・球速はないが、打者の手元までピュッと来る球のキレに注目して頂きたい!

(投球内容)

 ワインドアップから、足を高く引き上げて投げ込んできます。それでも力投派というよりも、自分のペースで投げ込んでくる先発タイプかと。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 
☆☆☆★ 3.5

 打者が差し込まれるようなキレで勝負するタイプで、それほど球威・球速はありません。そのため昨年の公式戦では、42イニングで40安打と、被安打率が95.2%(基準は80%以下)とやや高いのが気になります。両サイドに投げ分けるコマンドや、カウントを悪くしても取り戻せる修正できるコントロールはあるのですが、甘く入ると怖いという側面があることも否定できません。ボールのキレが鈍ってきた時に、いかに交わすだけの技術があるのかがポイントになりそう。

変化球 スライダー・チェンジアップ カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 カットボールのような130キロ台の高速スライダーと、左打者にはチェンジアップを両サイドに投げ分けてきます。打者を仕留めるほどの威力はないのですが、速球同様に変化球を投げ分けコマンド力があります。昨年の奪三振率は、42イニングで34個であり、1イニングあたり0.81個 と先発投手の基準を上回ります。彼の場合は、速球で三振が取れるので、その影響が高いと考えられます。これらの球を上手く織り交ぜながらコンビネーションで仕留めるタイプなのですが、右打者にはスライダー・左打者にはチェンジアップぐらいであり、やや単調になりやすいところが被安打の多い要因ではないかと考えられます。また大学時代は、結構左打者を中心にコントロールがアバウトなところがあり、その辺はだいぶ改善されつつあるように感じました。

その他

 牽制も適度に鋭く、走者の進塁に釘を刺します。クィックも1.05秒前後とまずまずで、フィールディングの動き、ベースカバーに至るまでしっかりしており、野球センスの高さは感じます。

(投球のまとめ)

 今年に入り、ソフトバンク三軍戦で好投。スポニチ大会でも活躍し、チームのエースとしての役割を果たしています。もともとゲームメイクできるまとまりがあり、アバウトだったコントロールにも改善が観られ安定感を増してきました。

 ボールのキレも社会人で増し、見ていてある程度計算のできる投手という感じがします。上位指名で獲るほどのスケールはありませんが、使い勝手がよく1年目から一軍でもある程度やれるのではないかという期待が持てます。





(投球フォーム)

では今度は、フォームの観点からプロで通用する技術があるのか考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻が一塁側には落ちないフォームであり、身体を捻り出すスペースは確保されていません。そのためカーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない投げ方です。

 前へ足を逃がすのは下手ではないので、「着地」までの粘りは悪くありません。そのため身体を捻り出す時間は確保できており、カーブやフォークといった球種以外ならば、好い変化球を修得したりピッチングの幅を広げて行ける可能性はあります。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲の押し付けが短い印象で、力を入れて投げるとボールが上吊る危険性を感じます。「球持ち」はよく、ボールを前で放せており、指先の感覚は悪く無さそう。

 大学時代はむしろ逆で、グラブの抱えが良くなく、足の甲の押し付けの方ができていた投手だと思うのですが、その辺は随分と変わっているように感じます。しかしアバウトだった制球も安定するようになっており、大学時代よりも制球は改善されています。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 4.0

 お尻は落とせないフォームですが、カーブを投げる割合も多くないですし、フォークといった球種も観られません。現状は、悲観することはないのではないのでしょうか。

 腕の送り出しも無理があるという感じではないので、肩への負担も大きくはないのでは。それほど力投派でもないので、身体の消耗も少なそうなので、故障のリスクは心配ないように見えます。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りはあるので、球威には欠ける部分はあるものの合わせやすいわけではなさそう。更に身体の「開き」も抑えられているので、単調なコンビネーションに陥りがちでも長いイニング投げることができるのかもしれません。

 投げ終わった腕の身体に絡んでおり、腕の振りはそれなり。ボールにも適度に体重が乗せられており、打者の手元まで生きた球が投げられています。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、いずれも高いレベルでまとまっており、実戦的なフォームだといえます。

 お尻が落とせないことで、カーブで緩急をフォークで空振りを望み難い部分があります。また足の甲の押し付けが短いことで、力を入れて投げてしまうとボールが上吊る心配があり、その辺が気になる材料でしょうか。


(最後に)

 もともと持っているマウンド捌きの良さに加え、コントロールの改善・球質の向上を果たし、プロを意識できる投手になってきました。このまま順調に都市対抗予選・本戦とアピールできれば、ドラフト会議で指名される可能性は高いと考えられます。

 投球フォームも非常に実戦的ですし、プロでも即戦力として一年目から重宝されそうです。元来は先発タイプだとは思うのですが、プロで先発を任されるほどのスケールがあるのかと言われると微妙であり、まずはリリーフから実績を積み上げてゆくことになるかもしれません。また先発の頭数不足のチームが、5本目・6本目・谷間の先発要員として期待するのも悪くないでしょう。個人的には、今年の社会人の中ではお薦めの一人です。


蔵の評価:
☆☆ (中位~下位指名レベルだが即戦力の期待が)


(2016年 関東選抜リーグ)









玉井 大翔(東農大生産学部)投手 178/68 右/右(旭川実出身) 
 

 1年生ながら大学選手権に出場し、140キロ台中盤をなげていた投手でした。その時はリーグ戦で、5勝0敗 防御率 0.21 と抜群の成績でした。しかし3年生になった今年は、2勝1敗 防御率 0.94 と数字を悪化させて戻ってきました。その数字が示す通り、伸び悩んでいる感は否めません。

 足をゆっくりとあまり高い位置まで引き上げず、大人しいフォーム。やや肘を下げた、スリークオータです。球速は、135~MAX141キロぐらいと平凡で、結構シュート回転するなど気になります。変化球はスライダーとのコンビネーションで、たまにカーブ・チェンジアップ気味の球を投げて来るように思います。

 ストライクゾーンにはボールが集まりますが、枠の中では結構アバウト。特に左打者への球筋が乱れがち。牽制などは悪くないのですが、以前ほど繊細が欠けているように思います。

(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足は、甘さは残るものの一塁側には落とせています。そういった意味では、見分けのつかないカーブや縦に鋭く落ちるフォークのような球種を投げられる下地はあると思います。

 「着地」までの粘りは平均的で、もう少し体をひねり出す時間が確保できるようだと、もっと変化球のキレ・曲がりも鋭くなるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブをしっかり内に抱えられていないので、フォームが暴れて球筋が安定しません。ただ足の甲では地面を押しつけられているのと、「球持ち」はそれほど悪くないので、そのことである程度ボールをコントロールしています。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻は落とせますので、肘への負担は少ないはず。腕の角度にも無理は感じないので、肩への負担も少なそう。そういった意味では、故障の可能性は低いのでは? それでもパフォーマンスが以前より低下しているのは、何かしらの故障に見舞われたのでしょうか?

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平凡で、体の「開き」が早いのが気になります。これでは、コースを突いたような球でも、球筋がいち早く読まれて打たれてしまいます。

 腕は体に絡むように、最後までしっかり振られています。速球と変化球の見極めはつき難いので変化球を有効に活かせるはず。ボールへの体重の乗せも悪くないので、打者の手元までは勢いが落ちないボールが期待できるはずなのですが・・・

(最後に)

 まずは、一年生の頃できていたパフォーマンスを取り戻すことから始めたいですね。ボールの勢いだけでなく、投球の繊細さが損なわれています。その上で、ピッチングの幅を広げて行ければと期待します。来年は最終学年、成長した姿で大舞台に戻ってきて欲しいと思います。

(2013年 大学選手権)




(どんな選手?)

 1年生ながらリーグ戦で、5勝0敗 防御率 0.21 と素晴らしい成績を残しました。大学選手権二戦目の慶応戦では、ロングリリーフで、その存在感を全国に知らしめました。

(投球内容)

 オーソドックス右上手投げ投手ですが、球速は130キロ台後半~140キロ台中盤まで到達。特に打者の内角に厳しく突く球が目立ちました。また曲がりながら沈むスライダーにも威力があり、この球とのコンビネーションで投球を組み立てます。

 おおよそ両サイドに球散らせ、勝負どころでは厳しいところを突けます。マウンド捌きも経験豊富な印象で、ピンチでも動じずに投球。クィックも1.0秒台前後と高速で、牽制などは見分けが難しく、思わず一塁走者が刺される場面も観られました。持っている野球選手としてのセンスが高いのでしょう。肉体の資質よりも、そういったセンスで相手牛耳るタイプです。

(投球フォーム)

 静かにおとなしめに入るフォームで、一塁側へにはお尻を落とせます。そのためもっと見分けの難しいカーブや縦の変化も身につけそうなものなのですが、着地までの粘りがなく時間が足りないのが今後の課題でしょうか。

 グラブをしっかり抱えきれていないので、フォームは暴れ気味。足の甲の押しつけも、やや甘い傾向にあります。球持ち自体が良いので、これでもある程度の制球を保てていますが、もっと高い精度の制球力を追求するのならば、この辺の細かい部分まで神経を行き届かせて欲しいところ。
 
 体の「開き」は平均的で、「着地」までの粘りが作れれば、もっとフォームにイヤらしさが出てくるはず。腕の振り・体重移動に関しても、可も不可もなしといった感じでしょうか。

(今後は)

爆発的に資質を伸ばしてゆけると言う伸びしろは、正直感じません。ただ一年生にして、確かな実績を残しましたから、その段階で全国を経験できたことは、新たな目標を持つためにも大きかったと思います。これから卒業するまでに、何処まで資質を高めてゆけるのか、じっくり見守って行きたいと思います。

(2011年 大学選手権)