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進藤 拓也(DeNA)投手のルーキー回顧へ







 進藤 拓也(24歳・JR東日本)投手 184/78 右/右 (西仙北-横浜商科大出身)
 




                    「三上朋也(DeNA)の再来!」 





 5月にサイドハンドに転向したものの、都市対抗では登板なく敗退。社会人屈指の脅威・球速を誇る剛球投手が、まさかのサイドハンド転向に驚かされた。そんな進藤の現状がどのようなものなのか、ようやくシーズン最後で確認できた。


(ここに注目!)

 それまでは球威・球速こそ凄まじかったが、コントロールも不安定で、甘く入ったところを痛打されることが多かった。悪く言えば、ただ速いだけの投手、そんな印象さえあった。しかしサイドに変わり、球質も球威型から空振りの誘えるキレのある球質に変化。とても同じ投手とは思えない変わりよう。これは、三上 朋也(JX-ENEOS-DeNA)投手が、腕を下げたときの状況によく似ている。

(投球内容)

セットポジションから、軸足を早く折って投げ込んできます。

ストレート 常時140キロ前後~MAX91マイル・146キロ 
☆☆☆★ 3.5

 春観戦したときは、常時145キロ~150キロ台前半ぐらいと、球威・球速は社会人でも屈指のものがありました。それに比べると腕を下げたことで、球速は5キロ近く落ち迫力という意味では見劣りします。しかし両サイドに散らせつつ、ストライク先行で投球できるようになってきた。それにより、余裕を持って相手と対峙できるようになったことが最大の違いではないでしょうか。

 またサイドにすることで、球質が球威型からキレ型へと変わっています。以前はバットを押し返すような詰まらせるタイプの球でしたが、今は空振りを誘えるような球に。その分甘く入ると、長打を食らう心配はありますが。それでも91マイル・146キロを記録した指にかかったときのボールは素晴らしく、こういった球がコンスタントに投げられるようになると手がつけられません。

変化球 スライダー、シンカーなど 
☆☆☆★ 3.5

 元々速球が暴れるところを、スライダーでカウントを整える投手でした。しかし腕を下げることで、そのスライダーの曲がりに磨きがかかり、右打者外角に切れ込むスライダーで空振りを誘えるようになっています。腕を下げたことで球種は減ったかもしれませんが、スライダーに特徴が出てきたことは大きいかと。他にもシンカーなどがありますが、どれほど効果的なのかは不明。元々が速球とスライダー投手という投球は、腕を下げてもそれほど変わっていないのではないのでしょうか。

その他

 牽制を入れるタイミングが上手く、ターン自体も鋭い。クィックも0.9秒台と高速で、極めて早いのはサイドになっても変わらず。マウンドをいち早く降りて処理する、フィールディングの動きも悪くありません。投球は不器用なタイプでしたが、投球意外の部分の能力が高いのが、この選手の特徴です。センスというよりも、元々の運動能力が優れているのかもしれません。





(投球のまとめ)

 サイドにすることで、暴れていた制球が許容範囲のレベルまで改善。それによりカウントを安心して稼げるようになり、余裕を持って打者と対峙できるようになりました。また速球の球威・球速は落ちたものの、空振りを奪える球質とスライダーに特徴が出てくるという効果も。それに何より球筋に特徴が出ることで、右打者には厄介な投手になってきたことが大きいかと。

(投球フォーム)

では腕を下げたことで、どのような効果があったのかフォームを見てみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 腕を下げたことで、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に大きく沈む球を投げるのは難しくなりました。「着地」までの粘りもそれほどなく、身体を捻り出す時間も短め。そういった意味では、スライダーやシンカー系、更にボールを微妙に動かすなどして、投球の幅を広げてゆくことが求められます。そういった球種の選択肢は、どうしても腕を下げることで狭まってしまいます。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定しやすいはず。足の甲での地面への押しつけもできており、それほどボールは上吊りません。「球持ち」はそれほどでもなく細かいコントロールはつきませんが、ある程度狙ったところに集められるようにはなってきたと考えられます。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は落とせないフォームですが、カーブ、フォーク系の球をそれほど投げないので肘への負担は少ないのでは?腕の送り出しにも無理は感じないので、肩への負担も少ないと考えられます。それほど力投派ではないので、故障のリスクは少なめかと。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りがそれほどでもないので、打者としては合わせ難いフォームではないでしょう。それでも「開き」は抑えられており、球の出処は隠せています。コントロールを間違わなければ、痛手は食らい難いのでは。

 思ったほど腕が身体に絡んで来ないなど、まだフォームに粘っこさに欠けます、特に軸足に体重を乗せられるフォームではなくなっているので、以前よりも上体や腕の振りでキレを生み出すタイプのフォームに変わり球威が損なわれました。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」こそ良いものの、その他の要素にまだ粘りが足りません。この辺を磨くことで、より粘っこい実戦的なフォームになるのではないのでしょうか。

 それでも制球を司る部分や故障のリスクが少なくなり、鍛えがいのある投手になってきています。腕を下げたことで失ったものもありますが、それ以上に得たものの方が大きいと判断します。


(最後に)

 それまでは、ただ速い球を投げるだけのそこに特化した投手でした。そういった魅力は腕を下げることで薄れたものの、その分特徴と実戦的な術に磨きがかかり、何より精神的な自信を掴みつつあるのかもしれません。

 三上投手も上から投げているときは、持ち得る才能を生かしきれないもどかしさがありました。しかし腕を下げることで、自分の居場所を見つけた感があります。進藤からも、そういったものを感じます。長いイニングをこなすような、投球の奥深さはないかもしれません。しかしリリーフならば、活路を見出だせると期待します。腕を下げる前よりも、評価としてはワンランク上げることにします。今回見たのがたまたまなのかはわかりませんが、それだけの高いポテンシャルを秘めているのは間違いないでしょう。期待して、プロでの活躍を待ちたいと思います。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2016年 関東選手権)









 進藤 拓也(24歳・JR東日本)投手 184/78 右/右 (西仙北-横浜商科大出身)
 




                    「球威・球速は社会人屈指」





 横浜商科大時代から、140キロ台後半を連発速球には定評があった 進藤 拓也 。しかし確かに速い球を投げ込むのだが、それを実戦に活かしきることはできず、僅か3勝と結果を残せずに終わった大学時代。しかしJR東日本に進み、その才能が開花し始める。昨年は、ルーキーながら都市対抗・日本選手権のマウンドにも昇り、MAX153キロを記録。今やその球威・球速は、社会人屈指の速球派といえる存在だろう。

(投球内容)

 真上から投げ下ろし来る本格派というよりは、少しスリークオーター気味な腕の振りでガチガチしたフォーム。

ストレート 145~MAX94マイル・151キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 打者の空振りを誘うとかそういった伸びやキレがある球質ではなく、勢いと球威で圧倒するタイプ。リリースが不安定なせいか? ボールが抜けることも少なくなく、球筋が大いに暴れる不安定な内容。昨年の公式戦の成績も、97回1/3イニングで、四死球は44個。四死球率は、45.2%に昇り、これは基準であるイニングの1/3以下(33.3%)と比べても高い。ボールに力はあるものの、細かいコントロールはなく、かなり危なっかしい投球をして来る。

変化球 スライダー・カーブ・スプリットなど 
☆☆☆ 3.0

 ストレートの制御ができない一方で、スライダーではしっかりカウントを整えることができている。そのため今シーズンは、余計な四死球は少なくなりつつあるのでは? その他緩いカーブ、それに球速があり沈みの浅いスプリットのような縦の変化球もある。しかしこの球は目先を変えることはできるものの、打者の空振りを誘うほどではない。

その他

 牽制もそれなりに、適度に織り交ぜ下手ではない。クィックに関しては、0.9秒台と高速であり非常に素早い。マウンドもいち早く駆け下りてボールを処理するなど、投球以外の部分の動きは、見た目以上に俊敏。

(投球のまとめ)

 ボールの勢い・球威は本物で、バットを押し返す・詰まらせるだけの球威・球速がある。長いイニングだと合わされてしまう危険性はあるが、短いイニングならばプロの一軍打者相手でも誤魔化せるだけのものがあるのではないのだろうか。

 特にカウントが悪くなっても、スライダーなどでカウントを整えてなんとか四球を出さずに抑えることができてきた。昨年から比べると、なんとか踏ん張れるだけの下地はできつつある。これだけの球威・球速を出せる投手は、社会人でもほとんどいない。





(投球フォーム)

 かなりクセのあるフォームなので、何が問題なのか考えてみたい。ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んでくる。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足を空中でピンと伸ばさないので、お尻が一塁側(右打者の場合は)に落ちてゆきません。したがって身体を捻り出すスペースが確保できず、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さないフォーム。

 「着地」までの粘りは、けして十分とはいえないのの早すぎるというほどでもない。身体を捻り出す時間は並ですが、カーブやフォークといった球種以外ならば、ピッチングの幅を広げてゆくことは期待できます。ただし空振りを誘うような、絶対的な曲がりやキレを見出だせるかには疑問が残ります。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで身体の近くにはあるので、両サイドの投げ分けはそれなり。しかし足の甲での地面への押し付けが浮きがちで、力を入れて投げると、ボールが上吊る傾向にあります。また「球持ち」自体悪くないように見えますが、指先の感覚が悪く基本的にコントロールは悪い方だといえます。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻が落とせないフォームの割に、フォーク系の縦の変化球を使って来るのは気になります。これが、スプリットのように浅い握りで投げていれば、悲観するほどではないとは思うのですが。
 
 腕の送り出しには、無理がないので肩への負担は少ないと考えられます。力を入れて投げたたり、身のこなしが固いので、消耗は激しいタイプかもしれません。肘あたりの故障には、十分注意したいところ。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは並で、特に合わされやすいわけでもありません。身体の「開き」も並ぐらいなので、コントロールミスをしなければ大丈夫かと。特に球威・球速で圧倒できるので、アバウトな制球も打ち損じてくれる可能性は高まります。

 気になるのは、腕が身体に絡んで来るような腕の振りが見られないこと。これだと速球と変化球の見極めがつきやすく、打者からなかなか空振りは奪えません。また踏み込んだ足がブロックしてしまい、「球持ち」が悪くない割にボールに体重が乗せきれていません。これがもっと前に体重が移ってゆくようなフォームになると、打者の手元までもっとグッと迫ってくる感じになってくると思います。

(フォームのまとめ)

 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に課題を残します。あとの部分は、平均レベルはあり思ったほど悪くはありませんでした。

 お尻が落とせないことへの肘への不安、足の甲で押し付けられないことからのボールの抜けなどは気になり、フォームとしては推せる材料に乏しいのは確かです。しかし思ったほどは悪くなかったというのが、率直な感想でしょうか。


(最後に)

 大学の頃は、ただ速いだけという感じで一辺倒になり打ち込まれていました。イメージ的には、大場 達也(鶴見大-日立-ヤクルト)のような感じで見ていました。しかし今年になり、変化球でカウントを整えられるようになってきたこと。球速だけでなく、確かな球威で押し込めることなどを考えると、大場とは違うのではないかという思いを抱き始めます。

 先発を期待するのは厳しいのですが、その馬力は素晴らしいので、リリーフでならばプロでも通用するかもしれません。過大な評価はできませんが、プロに混ぜても面白いのではないかと思います。恐らくドラフトでは3、4位あたりの指名に落ち着くのではないのでしょうか、都市対抗での活躍注目してみたいと思います。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2016年 関東選抜リーグ)