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北出 浩喜(24歳・パナニック)投手 181/78 右/右 (小松商-愛知工業大出身) |
「速球は一級品」 ビシッとミットに突き刺さるようなストレートは、今年の社会人の中でも屈指の球質を誇る 北出 浩喜 。リリーフならば、即戦力 の期待もかかる。愛知工業大時代にプロ志望届けを提出していれば、上位指名も噂されたほどの存在だった。この都市対抗でも140キロ後半を連発し、健在ぶりを印象づけた。 (ここに注目!) 球速だけで言えば、彼と同レベルの投手は複数いる。特に注目して欲しいのは、空振りを誘えるスピンの効いた真っ直ぐに注目して頂きたい。 (投球内容) ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。 ストレート 常時145~150キロ ☆☆☆☆ 4.0 それほど細かいコースの投げ分けはなく、枠の中に勢いと質の良い真っ直ぐをグイグイ投げ込んできます。ただし綺麗な回転の球なので空振りを誘える反面、けして打ち返すことが苦になるボールではありません。ボールの質自体は素晴らしいのですが、コマンド力がややマイナスポイントでしょうか。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆ 3.0 横滑りするスライダーが、結構高めに浮いて来ることが多いのが気になります。確かにこの球でカウントを整えることができますが、狙い打たれる怖いかなと。むしろ左打者に対しては、外角にチェンジアップをきっちり落としてきてカウントが奪えます。そう考えると右投手ですが、右打者よりも左打者の方がピッチングがしやすいのではないのかと。また空振りを奪えるうような、絶対的な武器はありません。 その他 クィックは1.05秒前後と鋭く、牽制は鋭さはないものの、二塁牽制などを結構するなど苦手ではないのだろう。しかしそれほど野球センス、運動神経の高さを感じさせるようなタイプではない。 (投球のまとめ) 細かいコントロールや、巧みな投球術に高い野球センスで押さえ込むタイプではない。あくまでも勢いのある真っ直ぐを軸に、変化球を織り交ぜ的を絞らせないタイプ。現状は、リリーフでいかに押しきれるかどうか。 (成績から考える) 予選での成績は、3試合・3回 1安打 1四死球 4奪三振 0.00 という少ないイニングなので参考にならない。そこでそれほど昨年と投球内容が変わらないので、昨年の成績から特徴を考えてみたい。 15年 14試合 28回1/3 21安打 10四死球 20奪三振 防御率 2.22 1,被安打はイニングの80%以下 ◯ 被安打率は、74.2% であり、基準を満たしている。この被安打率の低さは、やはりストレートの質の高さが大きな要因ではないのだろうか。 2,四死球は、イニングの1/3以下 △ 四死球率は、35.0% で、基準である33.3%以下には僅かに届かなかった。それほど四死球で自滅するようなタイプではないが、細かいコントロールがあるわけではない。特に本当のコントロールがまだないようなので、プロレベルの打者相手に本当にプレッシャーのかかるま場面ではどうだろうか? という不安は残る。 3,奪三振は、1イニングあたり 0.9個以上 △ 昨年の14試合のうち、先発したのは1試合。そのため、リリーフの基準を採用させてもらった。1イニングあたりの奪三振率は、0.70個。これは、先発の基準である0.8個も満たしておらず、決めて不足であることは否めない。質の良い真っ直ぐでも、それほど三振が奪えていなかったことがわかる。しかし今年の予選では、3イニングで4奪三振を記録。都市対抗本戦でも3回2/3イニングで、3奪三振を奪えていた。そういった意味では、今年の都市対抗予選・本選では、基準を満たす活躍は見せていた。 4、防御率は1点台が望ましい △ 昨年の防御率は 2.22 とやや物足りない数字だが、都市対抗の予選・本選ではいずれも無失点で切り抜けている。 (データからわかること) 被安打以外の部分では、微妙な成績となっている。しかしその微妙な部分も、今年の都市対抗予選・本選に限ってみれば、四死球以外は良くなっていた。 本当の意味で即戦力になり得るかは微妙な数字が並ぶが、実際の投球を見ていても同様の印象を受ける。短いイニングでも、プロの打者相手だと勢いだけで押しきれるかには確信が持てない。 (最後に) アバウトなコントロール、決め手に欠ける変化球なども微妙であり即戦力としての判断は悩む。ボールの勢いは確かなので、そのへんが良い方に転べば一年目からリリーフでならば活躍できるかもしれない。ただしそれを確信できるほど絶対的なものはなく、それでいて今後大きく伸びるような伸び代やスケールを秘めた素材でもない。それだけに上位指名となると、二の足を踏むことになる。恐らくドラフトでは、3位前後ぐらいの評価になるが、プロで何かを掴まないと中途半端で終わるかもしれない。 蔵の評価:☆☆ (上位となると物足りない) (2016年 都市対抗) |
北出 浩喜(23歳・パナソニック)投手 181/78 右/右 (小松商-愛知工業大出身) |
「手元までの伸びが素晴らしい」 今年の社会人候補の中でも、打者の手元までボールの伸びは、この 北出 浩喜 が一番ではないのだろうか。愛知工業時代も東海地区の候補として注目されたが、社会人への入社が決まっていたため、ドラフト戦線からは外れていた選手。しかしその前評判どおり、社会人1年目から都市対抗で存在感を示す活躍を魅せた。 (投球内容) ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。足を勢い良く引き上げて来るので、典型的なリリーフタイプ。腕は少し下がった、スリークオーターと言えます。 ストレート 常時145キロ前後~MAX151キロ 打者の手元までに、しっかり伸びてくる勢いのあるボールには見応えを感じます。都市対抗のJX-ENEOS戦では150キロ台を連発するなど、ストレートで押せるという意味では社会人でも指折り。しかしボールは両サイドには散っているものの、真ん中~高めへの球筋が多く、時々甘い球も少なくありません。そしてそれほど上背や上からボールを叩くフォームではないので、打者の打ち損じが誘い難い傾向にもあります。 変化球 スライダー・カーブ・スプリット? 主な変化球は、スライダーとのコンビネーション。スライダーもカウントを整えにゆくものと、低めのボールゾーンに落ちてゆくような縦スラのようなボールが130キロ台であります。他には110キロ台の緩いカーブや打者の手元で小さく沈むスプリットなのか、チェンジアップなのかわからないボールが他にも。チェンジアップにしては落差が小さく、球種の判断が難しい。しかし投球の多くは、二種類のスライダーを中心に組み立てられるように見える。スライダーの精度・活かし方は悪くないが、カーブ・スプリットはそれほど多くは投げて来ない。そのため投球は速球中心であり、リリーフならばこれで良いが、先発だったらやや単調な印象を受ける。 その他 牽制は、走者を刺すような鋭いものではない。しかし二塁牽制も頻繁に入れるなど、自信を持っているのだろう。クィックも1.0秒前後と高速で、非常に素早く投げ込むことはできている。 (投球のまとめ) ボールの勢い・球速は、本当に素晴らしいものがあります。その一方で、見た目ほど苦にならないタイプのボールかもしれないということ。というのは、時々甘く入ってくる球があり、その球を打者が打ち損じないところからも、そう感じられます。球筋が全体的に高いのと、ボール自体が割合平面的なのが、その理由ではないのでしょうか。 そのため両サイドに散っている時は抑えられるのですが、そうじゃないと確実にプロレベルの打者だと合わせて来る危険性があるということ。また変化球レベルも低くはないものの、絶対的に頼れる変化球はまだありません。打者としては、やはり速球に的を絞り、甘く入ってくるのを待たれるという危険性は残ります。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点からいろいろ見てみましょう。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側には落とせません。そのため体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークといった球種には適さない。 「着地」までの粘りも感じるほどではないのですが、ほぼ平均的と観て良いのではないのでしょうか。体を捻り出す時間が並なので、今後武器にできるほどの球種を身につけられるかは疑問が残ります。カットボール・ツーシーム・スプリットといった、球速のある小さな変化でピッチングの幅を広げてゆく可能性があります。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲での地面への押し付けが浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい傾向にあります。 「球持ち」自体は悪くないのですが、指先まで力を伝えきれているかと言われると、そこまでの繊細さはまだ感じません。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻を落とせないフォームではありますが、現状カーブやフォークといった体を捻りだして投げるような球種をほとんど投げないので、肘への負担は少ないのでは。 腕の送り出しみるとスリークオーターであり、肩への負担は少ないと考えられます。現在の投球ならば、それほど無理をしなければ問題ないのではないのでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りは並で、打者としてはそれほど苦にならないでしょう。更に「開き」も並ぐらいであり、嫌らしさは感じないはず。甘く入らなければ問題はないレベルですが、角度で合わせ難くするとか、威圧感があるタイプではないので、気迫とボールの勢いで圧倒するしかなくなります。 腕は強く振れており、速球と変化球の見極めはつきにくいのでは? ボールへの体重の乗せも悪くはないのですが、もっと「球持ち」が粘られるようになると、体重がグッと乗るまで我慢できるのでは? そういった意味では、ボールの勢い・威力という意味では、もうワンランク上がっても不思議ではないはず。 (フォームのまとめ) 投球の4台動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に悪いところも良いところもありません。それだけまだ発展途上であり、伸ばせる余地が残されています。 コントロールを司る動作では、足の甲の押し付けの甘さからボールが上吊りやすい。しかし故障のリスクは、今のところ大きくはないのでは。投球フォームとしては、可も不可もなしといった感じです。 (最後に) 現状は、高めに集まりやすい球筋・アバウトなコントロールという欠点がある。その割にボールの勢いは一級品という部分では、昨年の 熊原 健人(仙台大-DeNA2位)投手と良く似たタイプであるように感じます。 熊原は高めに集まりやすい傾向はあったのですが、フォークなど縦系の球種は低めに集まる傾向にありました。北出も低めのボールゾーンに切れ込むスライダーなどを投げられる投手なので、その辺の高低の球筋の違いを上手く活かして欲しいところ。 マウンド度胸も素晴らしく、ボールの勢いも一級品。あとは、チェンジアップをモノにしてピッチングの幅を広げて行ければ、上位指名を期待できる素材だと言えるのではないのでしょうか。現時点では、上位24名(2位以内)の有力候補の一人という位置づけではないのでしょうか。これを更に伸ばすような、快刀乱麻なピッチングを期待しております。 (2015年 都市対抗) |