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平井 克典(西武)投手のルーキー回顧へ







平井 克典(25歳・HONDA鈴鹿)投手 180/83 右/右 (飛龍-愛知産業大出身) 
 




                    「プロはしなるサイドが苦手」





 プロの打者は、こちらの想像以上に腕がムチのようにしなるサイドハンドを苦手にする傾向がある。それはかつて、ベイスターズで活躍した 木塚敦志 や、広島でリリーフとして想像以上の活躍を魅せた 梅津智弘 が当初思った以上にやれた経験からそう思うようになった。この 平井 克典 は、まさにそういったしなる腕ののサイドハンドなのだ。


(ここに注目!)

 腕が柔らかくしなってタイミングが狂わされるだけでなく、コースの微妙な出し入れができる投球術、コントロールがあるということ。そういった意味では、プロの打者でも最初は戸惑うのではないかという気はしている。

(投球内容)

サイドハンドから、それほど足を引き上げないで投げ込んでくる。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 
☆☆☆ 3.0

 サイドハンドにしては、ボールが手元でピュッと切れるとか、グ~ンと伸びてくるようなインパクトのある球は投げてこない。むしろ球速は並であり、球質としてはドラフト指名される投手としては平均以下だろう。しかしそのボールを両サイドに散らせるコマンド力があり、外角一杯のゾーンで微妙に出し入れできるコントロールを持っている。この点では、高く評価できるポイントではないかと。特に腕がしなって、合わせ難いという特徴もあるだけに。

変化球 スライダー、シンカー? 
☆☆☆ 3.0

 ほとんどは横滑りするスライダーとのコンビネーションで、このスライダーを左右両打者に対して、インスラ・外スラと自在に使い分けてくる。ただし精度は高いものの、打者を空振りを誘うような鋭さや曲がりの大きさはない。また時々、シンカー系でショート回転して沈むような球を投げているように思えるのだが、ぬけ気味でスライダーなのかの区別はつき難い。

その他

 牽制は非常に鋭く、走者をベースに釘付けにできる。クィックは、1.15~1.25秒ぐらいと、若干遅め。そのへんモーションが盗まれると、刺すのは厳しくなる。

(投球のまとめ)

 打者の空振りを誘うというよりは、微妙なところ引っ掛けるさせる、内角を突いて詰まらせるといった芯を外す投球が身上。しかしその投球を支えるだけの、確かな制球力と投球術を持っている。決め手がない分長いイニングは辛いが、リリーフならば相手の目が慣れる打者一巡ぐらいならば、大崩れしないだけに抑えられるかもという可能性は秘めている。



(投球フォーム)

 投球内容を観る限り、微妙な印象を受ける。そのためフォームが、何処まで実戦的なのか考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて来るので、お尻は一塁側に落ちません。そういった意味では、サイドハンドも相まってカーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化球には適さいないでしょう。

 それでも前に足を大きくステップさせることで、身体を捻り出す時間は確保。球種はフォームの構造上も限られますが、もう少し武器になる球種を身につけてもおかしくはありません。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆★ 4.5

 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉えており、ボールはそれほど上吊りません。「球持ち」もまずまずであり、細かいコントロールも可能に。しいて言えば低めを丹念に突いてという、そういうタイプではありません。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせないものの、カーブやフォークといった球種も投げて来ないので、肘への負担は少なそう。腕の送り出しにも無理はなく、肩を痛める可能性も少ないのでは。それほど力投派でもないので、身体の消耗も激しくはないのではないのでしょうか。しいていえば、前に大きくステップするので腰ヘの負担がどうかという部分でしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」のタイミングは遅らせられており、打者としては合わせやすいわけではありません。まして腕がしなってきますし、サイド独特の球筋も右打者には厄介。身体の「開き」も抑えられており、特に打者から合わせやすいというサイドではありません。

 腕もしっかり絡んで来るので、速球と変化球の見極めも困難。ボールにも適度に体重は乗せられており、多少身体が流れて充分に力を伝えきれていない部分はあるかもしれませんが、悲観するほどではなさそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大要素である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点でいえば、「着地」「球持ち」もよく、「開き」「体重移動」も基準レベルはあります。故障のリスク、コントロールを司る動作にも問題はなく、実戦的なサイドハンドという気はします。


(最後に)

 ボールそのものにあまり訴えて来るものがなかったり、決め手になる球がないのは気になります。最初は、腕のしなりや投球術に翻弄される可能性はありますが、球筋や投球に慣れられた時に、苦しくなる危険性があります。そのため今後いかに投球の幅を広げて行けるかで、活躍期間も変わってきそう。

 チームには速球派が多いだけに、対象的にこういった選手が出てくると戸惑う可能性はあります。特にこういった選手がチームにいないのであれば、1人加えてみたいと思わせるものはあります。ハマるかハマらないかは正直微妙であり、1年目からある程度結果が出ないと厳しいプロ生活になりそう。正直ボールだけみたときはダメかなと思ったのですが、コントロールの良さと実戦的なフォームを評価して、指名リストに名前を残してみることにします。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2016年 都市対抗)